この街で行われていようとした計画の首謀者全ての説得・懐柔に成功し、教会から帰還した俺達を待っていたのは、驚きの連続だった。
まず、アーシアが悪魔として転生していた事。
どうも、彼女の過去を聞いた部長が不憫に思い、悪魔にならないかと誘ったらしい。
アーシアの過去…その身に宿した神器『
常人とは違う力を持ったが故に、大切に思われていても『異質』な存在としてしか見られなかった過去。
その事を寂しく思いつつも、神から力を与えられた事が、人々に役立つ自分が嬉しく、そして多くの人々を救いたいと励み続けた過去。
そして…怪我に苦しんでいたのが悪魔だとしても放って置けず、救いたいと手を差し伸べた故に、追い出された過去。
神を信じ、感謝し続け…その神に救われず、『聖女』と見て来た誰1人として手を差し伸べてくれなかった過去。
その話に俺は一種の憤りを感じた…確かに悪魔と堕天使、そして神を頂点とした天使の各陣営は、嘗て種族の存亡を賭けた大戦を起こすほど敵対していた間柄…相容れない存在を、敵として見ていた存在を救う等正気の沙汰でないと思う気持ちも分からなくもない。
だが、救いたいと思う気持ちに、神が説く慈悲の心に、「悪魔だから、堕天使だから救うな」等という差別的な思考が必要なのか!?
彼女が、嘗て第二次世界大戦下のヨーロッパの地にてオスカー・シンドラーや杉原千畝達が大勢のユダヤ人の命を救った様に、悪魔を救おうと手を差し伸べたのは、純粋に救いたいと言う気持ち…そう『慈悲の心』に従ったからだろう!
それを『敵対種族を救った』という理由で皆揃って手のひら返しだと…ふざけんなよ、ナチスかよお前らは!
…ともかく、部長も似た様な怒りを覚えたみたいで、悪魔にならないかと持ち掛け、れーちゃんの事情を聞いたアーシアは悪魔になる決心をし、転生したそうだ。
ちなみにランクは『
次に、フリードの姿を見た途端、木場が「何故君が此処に!?」と驚いていた事。
あの驚き様からして、木場はフリードの事を知っている様だが、当の本人は「悪魔の知り合いは今までこれっぽっちもいねぇぜ?」と、全く身に覚えのない様子だった。
…いや、訂正だ、「けど…何となく初対面ってかんじじゃ無えんだよなぁ…」と付け加えていた様に、何処かで会った様な気はするらしい。
…後で木場辺りに聞いてみるかな。
「改めまして、今回リアスさんの僧侶となりましたアーシア・アルジェントです!至らない点はありますが、宜しくお願いします!」
「ドーナシーク、改め、
「アタシはカラワーナ、改め、
「私はミッテルト、改め、
「俺っちはフリード・セルゼン、部長の騎士になりやした!まあ色々教えてくだちゃい」
「アーシア、塔也、佳奈、美月、そしてフリード…私達は貴方達を歓迎するわ、悪魔としてね」
そして5人は部長の眷属となった…ちなみにドーナシーク達3人は、偽名を名乗って貰う事にした…悪魔陣営に移ったと言っても重大な犯罪を起こした身、グリゴリに所在を知られれば引き渡しを要求されかねず、そうなれば命は無いからな。
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深夜、街はずれにある廃屋…此処に潜伏しているはぐれ悪魔の討伐を依頼された部長とその眷属である俺達は、依頼の際に渡された情報と、周囲から感じる気配を頼りに討伐対象の捜索をしていた。
ちなみに俺達は、
「イッセー達、今回は折角だから悪魔としての戦い方を見学して貰うわ。駒の特性についても教えて行きたいからね。特にフリードは同じ『騎士』である祐斗もいるし、勉強になると思うわ」
「了解しました」
「はい」
「分かりました!」
「承知」
「あいよ!」
「はいっす!」
「アイアイサー」
部長から見学の指示もあり、他のメンバーとは一歩後ろで同行していた…まあ気配からしてそこまでじゃあ無いか?
と、その時、
「不意打ちを仕掛けて来るみたいね…祐斗!」
「はい!」
殺気みたいな物を感じた俺達、部長も感知したのか木場を呼び出し、呼ばれた木場は何時の間にか握っていた剣で、殺気の感じられた場所へと斬りつけた。
「(ザン!)がぁ!?馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁ!」
「騎士の特性は目にも止まらぬスピードよ。ああいう風に一瞬で近づく事も難しくないわ」
「あれあれ、部長、木場ちゃんの手に、何処からともなく現れた剣が握られていますが、ありゃあ一体?」
「あれは祐斗の神器『
ほぉー速いなぁ…それにしても様々な魔剣を想いに応じて…か、声は某殺人貴なのに、能力は某理想を抱いて溺死しろと断言される正義の味方だなw
ちなみに木場ちゃん、というのはフリードが木場を呼ぶ際の呼び名だ…どうも「これだ!」と感じたらしい。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
木場の斬撃を受けて尚立ち上がるはぐれ悪魔…この前のバイサーと比べて人間っぽいがそれでも所々異形としか言い様の無い特徴を持った、中年位の男の悪魔だ…は、今度は前に出ていた小猫ちゃんに飛びかかるが、
「なっ!?(ゴッ!)くっ!」
「…ぶっ飛べ(ズドォン!)」
「がはぁっ!?」
飛び蹴りを食らって尚、子猫ちゃんは吹っ飛ぶどころか傷1つつかず、逆にアッパー一発で軽々と舞い上げた。
すげぇ…これが戦車の特性か、或いは小猫ちゃんの素質か?
「戦車の特性は圧倒的な破壊力と防御力よ。並大抵の攻撃では傷付かないし、そんじょそこらの物体も容易く壊せる一撃を放てるわ」
「ほぉー仲良くなれそうだな。今度立ち合いを申し込んでみるかな?」
部長の説明を聞き、何故か躍起になる佳奈…アンタ拳で語る趣味があったのか!?
「後、僧侶の特性は膨大な魔力とその制御よ。そして騎士と戦車、僧侶の特性を併せ持ったのが、」
「あらあら、どうしましょうか?」
部長の説明の最中に聞こえて来た朱乃さんの声…だが、何やらその声音が何時もと違っていた…こう、何て言うか、冷たいというか鋭利というか…ぶっちゃけ、不気味さ全開だった。
「がぁぁぁぁぁぁ!」
「…女王よ。そして朱乃は…究極のSキャラなの」
「うわぁ」
「あ、はは…」
「ひぃぃ…」
「何と…」
「おいおいヤバくねぇ?」
「ドン引きっす」
「わーお、悪趣味」
朱乃さんの隠れた一面に引くしかなかった俺達だった。
そんな俺達を他所に、朱乃さんの一方的な蹂躙もクライマックスを迎え、彼女が落とした雷の落下地点には、息も絶え絶えで、ボロボロな姿のはぐれ悪魔の姿があった。
「さて、最後に言い残す事は?」
「殺せ」
「そう、ならば消えなさい」
部長のその一言と共に放たれた漆黒の魔力が放たれ、はぐれ悪魔は消失した。
「終わりね。皆、お疲れ様。さあ帰りましょ」
そして部長の、討伐の終わりを告げる声と共に、俺達も家路につく事になった…ちなみに俺達の駒、兵士の特性は、王の許可は必要だが、或る条件下で王以外の他の駒に
昇格前の力は貧弱としか言い様が無いが、真価を発揮すればこれ程動きやすい物も無いな。