11話_俺っち、隠し芸やりやした
「初めまして、レイネル・ブリュンスタッドです。宜しくお願いします」
「皆さん初めまして、アーシア・アルジェントです!どうか宜しくお願いします!」
「ういーっす、アタシは脇澤佳奈ってんだ!宜しくな!」
「お初~、俺っちはフリード・セルゼンだ!宜しくお願いするでやんす!」
れーちゃん達が部長の眷属となるのに伴い、この駒王学園に学生(塔也だけは体育教師だ。美月がいないのは、彼女だけ1学年だから)として在籍する事となった。
…その際、れーちゃんとアーシア(ホームステイとして、俺の家に住む事になった)が俺と同居しているとカミングアウトしたのには慌てたな…後々のクラスメート(特に松田と元浜)からの追及含めて。
それと悪魔になった事で部長達と共に悪魔としての仕事に就く事になった。
悪魔はその力を以て、欲の深い人間と契約してその願いを叶え、その対価として魂(余程のデカい願いで無ければ数年の寿命程度だな)を奪う。
俺達も元は違うとは言っても悪魔になった身、契約を集める事となった。
とは言っても直ぐに契約取りをする訳じゃあ無く数日は、契約の為に必要な、部長の眷属を呼び出す為の魔法陣が刻まれたビラの配布をしていた(ちなみにこれ、本来は使い魔…悪魔が常に従えている生物だ、俺達にも近々契約する機会が与えられるらしい…の仕事らしい)。
まあそんな感じで悪魔としての日常を過ごしていた俺達だったんだが、
「はぁ…」
「いっちゃん…最近の部長、ため息ばっかりついているよね?」
「そうだな…何か困っている事でもあるのかな?」
「グレモリー家で何か揉め事でもあったりして」
「あり得るな…グレモリー家は悪魔でも名家、ゴタゴタとは無縁じゃあいられないからな…部長、どうしたんですか?」
「へ、え、イッセーにレイネル?」
「何か困り事ですか?」
「私達に相談できる事があれば何でも言って下さい。貴方の眷属なんですから」
「あ、い、いや、何でもないわ。最近ちょっと疲れ気味だったの、ありがとうね」
…やっぱりおかしい。
何がおかしいって、最近の部長の様子だ。
しきりにため息を吐くのはまだ良いとして、さっきみたいな心此処にあらずといった様子で、俺達が声を掛けるまで気付かないというのもしばしばだ。
流石に毎日の様に、そんな風に振舞われては俺達が気になるのも当然、今みたいに何となく聞いてみてはいるものの、「大丈夫」と言って、打ち明けてくれない。
余程大きなゴタゴタがグレモリー家で起こっている、という事なのか…俺達眷属が介入するには荷が重すぎる位の。
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「木場…部室に知らない悪魔の気配がするぞ。何か心当たりは無いか?」
「何だって?それは本当かい兵藤君?」
「どっかの特撮ドラマの台詞みたいに言うな、『木場』違いだぞ」
「おお、メタいメタい」
「フリードお前茶化すんじゃねぇよ、イッセーが真面目な話してんだろうが」
「あいすいません」
翌日、俺達2年生組が部室に向かっていると、そこから見知らぬ悪魔の気配がした。
何やら強大そうな力の持ち主みたいだ…俺以外が気付かなかった辺り、気配の隠ぺいにも長けているみたいだな。
「話を戻すよ。此処の存在を知っているとあらば、恐らくは部長の家族…グレモリー家の方か、或いは実兄のサーゼクス・ルシファー様の使いの方かな」
ん…ルシファーだって?
「ちょっと待て。確かルシファーって魔王の家名だろう。部長の実兄って…その方はルシファー家と養子縁組でもしたのか?」
「ごめん、説明していなかったね。実は先の大戦で魔王様が亡くなられたんだ。けど、魔王の存在なくして悪魔社会は成り立たないという事で、強大な力を持った悪魔に魔王の名を受け継がせていく事にしたんだ」
「成る程…つまり襲名みたいな制度にしたんだね、落語とか歌舞伎とか相撲とか」
「そうだね。そして今の四大魔王は、サーゼクス様含めて皆が、初代から名を受け継いだんだ」
成る程そういう事だったのか…だとするとグレモリー家は魔王を輩出した名門中の名門って事になるな…こりゃあかなりの大事そうだな。
「!…兵藤君が言っていた通りだ、物凄い実力の持ち主だね。この僕が此処でやっと捉えられるなんて」
「何、この威圧感…」
「イッセーさん…」
「半端ねぇな、こりゃあ…」
「わーお、ピリピリするねぇ」
部室の前に辿り着いた俺達を出迎えたのは…強大な力を感じさせる気配だった。
それを感じ取り、緊張を隠せない皆…約1名除いて。
…そして部室の扉を開けた先には…張りつめた空気とはこういう物だと言わんばかりの様相だった。
如何にも機嫌が悪いですと言わんばかりの部長に、何時も通りの微笑みを浮かべながら目は笑っていなかった朱乃さん、どうした物かと腕くみをしながら考え込んでいる様子の塔也、関わりたくないと隅っこに避難している小猫ちゃんと美月…そして、
「木場…この人は?」
「サーゼクス・ルシファー様の眷属にして奥さんの、グレイフィア・ルキフグスさんだよ」
「へぇ、魔王様の奥さんか…どおりで…」
某少女達による弾幕シューティングゲームに登場する銀髪メイドそっくりの女性…グレイフィアさん、あの強大な気配は彼女から発せられる物だった…流石と言わんばかりだな。
「あら、揃ったわね皆」
こちらに気付いた部長が声を掛けると時同じくして、若干ながら驚きを浮かべるグレイフィアさん…堕天使や元教会所属等の敵対勢力出身の多さからか、或いは…『赤龍帝』である俺に気付いたからか?
「お嬢様、私から話を致しましょうか?」
「いいえ、私から話すわ。実は…」
と、部長がグレイフィアさんを抑えて話をしようとした時、
「…何だこの魔法陣?グレモリー家のじゃないな」
「これは…フェニックスの魔法陣?」
「てか炎舞ってない?熱いんですけ(バシャァ!)どっ!」
グレモリー家とは違う紋様の魔法陣が展開されたかと思ったら、そこから炎が吹き上がり…っておいフリード何を、
「うわっぷ!な、なにがゴボゴボ…」
「火の用心、魔法陣1枚火事の元ってねぇ!」
「いやそれは分かるがお前何で腕を切るんだ!?何で刺客の血で消火するんだ!?」
フリードが自らの左腕を掻き切ったと思ったらそこから吹き出した血を、今しがた発生している炎に向けてぶちまけ…出て来たと思しき男が発する炎もろとも消火していた…何だこれ。
「木場…あそこでフリードの血によって溺れかかっているというシュールな芸をやっている奴に心当たりは?」
「あ、あはは…彼はライザー・フェニックス。フェニックス家の三男にして将来を有望視されている上級悪魔の1人。そして、
部長の婚約者なんだ」
「部長の許嫁か…成る程、読めて来たぜ」
部長が悩んでいた事…それは部長の将来に関する事か。
恐らく部長は、この婚約に反対しているのだろう…まあ、相手が如何にも軽薄そうな格好…着崩したスーツにノーネクタイ、ワイシャツを胸まで開けている…して、フリードと即興でシュールなコントを繰り広げるというチャラ男だしなぁ…