Side 塔也
ふむ、私の魔力は闇を示す暗紫か…確か闇の属性は、堕天使が扱える光力と相反していた筈、そして魔力は、聖なる力と相反している…となれば、だ。
「朱乃よ」
「はい、何ですか塔也さん?」
「相反する属性同士がぶつかり合った場合、それらはどうなる?」
「消えてなくなりますわよ?それがどうかしました?」
「うむ、少し気になったのでな」
相反する物同士が衝突すれば消えるのは道理…物質と反物質がぶつかれば、+1と-1が合わされば、それらは消えたり、0になったりするのは常識である。
だが消えたり0になったり…そういった『無』に至るには様々な過程がある。
物質と反物質をぶつかり合わせれば、僅かながらエネルギーが生じるし、+1と-1を合わせるには、計算という手間が必要だ。
ならば…
「?塔也さん、どうなさいました?」
「塔也?」
「塔也兄さん?」
「なに、少しばかり試してみたい事があってな」
訝しむ朱乃達を制しつつ、左掌に私の魔力を集めつつ、右掌には、
「光力!?な、何を!?」
「まあ見ておれ」
光力を球状に発現させる。
そして、
「ハァァァァァァァァ!(バシュゥ!)」
一斉に放った…某格闘ゲームで、自らの波動を練って作り出したエネルギー弾を放つ様に。
すると、
「ま、眩しい!?」
「ガガガガって、何この音!?」
「何か地面が削れているっす!」
私が放った闇の魔力と光力の球は直ぐ様ぶつかり…その後眩しい光を放ちながら地面を削り…いや一部を消し飛ばしながら飛んでいき…やがて消えた…中々の結果になったな。
「塔也さん…今のは?」
「闇と光は相反し、魔力と聖なる力もまた相反する。ならばそれらをぶつけ合わせればどうなるか、と思いついたので、試してみたのだよ」
「す…凄い威力ね…」
「思わぬ所からの発想っすね…」
発想、か。
私には主リアスの様な滅びの魔力が無ければ、朱乃やレイネル、美月程の魔力量も無い。
祐斗やフリード、一誠やアーシアの様な神器も無ければ、小猫の様な頑丈さも無い。
佳奈の様に極めた武術も無い。
そんな私がこの眷属の中で、いや、悪魔社会でのし上がって行くには…そう、ちょっとした発想から切っ掛けを掴んでいくしか無いのだ。
堕天使の時からそうだった、下級堕天使の私は地力で劣る以上、そうした発想からランクの高いはぐれ悪魔と渡り合う術を掴むしか無かった。
敵のガードをこじ開ける事で光力を直撃させる術、針状の光力を生成する術…色々思いついては試してみた。
それも全て…のし上がりたかったから。
地力で劣る存在も、努力や発想、工夫によって数段も強い敵と渡り合えると証明したかったから。
その想いは今でも…いや、今の方が大きいと私は思っている。
絶たれた筈だった道…実際に堕天使としては絶たれたが、レイネルや、その恋人だという一誠によって、悪魔としての道を新たに作ってくれた。
私達は再び、のし上がるチャンスを与えられたのだ。
その恩に報いる為には…そう、のし上がって行くしか無い。
必ずや、必ずやのし上がって見せる!
努力と発想、工夫こそが大事であると知らしめて見せる!
「…」
「む、どうかしたか?」
「あ、い、いえ…」
…それにしても、私達堕天使が眷属となってからずっとだろうか、朱乃が私達を見る目が少し妙だ。
何か…そうだな、何か言い知れぬ想いを抱いていると言えようか。
…そういえば何時だったか、一誠がふと気になる事を言っていたな。
「そういえば俺、ちょっと朱乃さんの気配が気になっていた時があったんだよ」
「む、気になっていた、とは?」
「何だかさ、れーちゃんと良く似た気配がしたんだ」
「私が朱乃さんと似ていた?本当に?」
「はーそうなのか。アタシには分かんねぇなぁ」
「な、何なんすかそれ、朱乃姉さんとレイネル姉さんが…信じられないっす」
「まあそうだよな…俺も何時しか『まさか、な』と斬って捨てていたよ。まあちょっとした昔話だ」
…レイネルと朱乃が似ている…か。
今度、聞いてみるか。
…この時、一誠のちょっとした昔話が気になっていたのが私だけでは無かったのを、私はまだ知らない。
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Side 一誠
「ハイっ!」
「うぉっ!」
「隙ありだ!(ドゴォ!)」
「へぶぁ!」
あ痛たたたた…!
訓練の最初に佳奈が立ち合いをしようと提案をして来て、二つ返事で了解したのがまずかったかも知れない。
佳奈の正拳を回避した所、その隙を突かれてハンマーの様に肘打ちを腹に食らってしまい、悶絶してしまった…タスクを使わないとこうも隙だらけだったとはな…!
「…お前、今まであの爪の斬撃とか銃撃とか、鉄球とかに頼り切っていたみたいだな。あの時の凄腕とはまるで別人だぞ」
「…俺も今、その事実を痛感しているよ。人間の身体じゃあ、はぐれ悪魔に太刀打ち出来ないと決め込んでいてさ、それで修行の大半を、爪弾を使いこなすために費やしていたんだ」
「…それにしても、一本槍にも程があります」
『俺も余り使われていなかったしな、専ら助言役止まりで。最近ではその方面も空気な気がするな』
『赤龍帝の籠手を大っぴらに出せるか!後メタい発言は止めろ!』
厳しい言葉をどうも…これは本格的に接近戦の方面を鍛えないとな。
と、現実を痛感していると、
「あ、いたいた…って珍しいな、やられ状態の兵藤君って」
「お前も俺に厳しい現実を叩き付けに来たのか、木場?」
「いやいやそんな訳無いよ。君に見て欲しい物があってね」
「ほぉ、何だ?」
「これなんだけどさ」
木場が見せた物…それは一見すると何の変哲も無い片手剣だった…魔剣創造で作ったのか?
「ちょっと見ていてね」
そう言いつつ構え、そして、
「やぁっ!(ヒュン!)」
「…は?」
「…え?」
「お、おいあれって…」
『間違いない…相棒の爪の斬撃、あれと同じ物だ』
縦に一閃した所、何故か数メートル先まで斬撃が伸び、其処に会った木が切り刻まれていた…ドライグの言っている事が本当なら…まさか?
「俺の爪をモチーフにした魔剣って奴か?」
「うん。僕はこれを
「おお、凄ぇな…まさか再現されるとは」
こう言うと俺の自慢になるが、木場の言っている事は正しい…俺がさっき木場に勝てた理由、それは『武器の優秀さ』が大いに関係している。
正直な事を言うと、俺はあの時、木場のスピーディな立ち回りを目で追うのがやっとだった。
それでもまともに立ち回ったのは、俺の『武器』がタスク、及びその影響を受けた爪弾だったから。
何かの達人を紹介する際、こんな言葉をよく耳にすると思う、『○○をまるで手足の様に扱う』、という言葉を。
何故こう言うのかといえば、それは生物が最も扱いやすい道具、それ即ち己の手足だからだ。
手足にはその末端に至るまでに様々な組織で構成されている。
ベースとなる骨に、操作の為の動力となる筋肉、燃料等を循環させる血管、そして、脳からの命令を直接伝える神経…それらで構成されているが故に、手足は自らのしたい事を、忠実に実行できるのだ。
それは手指と直結している爪も変わらない、増してや俺の爪弾は、俺のタスク…つまり精神を具現化した存在によって回転していて、俺の思い通りに斬撃を伸ばしたり、弾丸として発射したりできる。
そう…薙刀や槍すらも上回るリーチと、ナイフをも超える取り回しやすさと、金属でさえ両断する切れ味…こんなチートとも言える武器があったからこそ、俺は木場相手に、互角以上に立ち回れたんだ…逆に、そんなチート武器に頼り過ぎているのが俺の最大の欠点だが。
そしてそんなチート武器に近い性能を持つ武器を作れたら…これ程心強い仲間はいないだろう。
…そうだ、
「そしたら木場、お前のその、爪弾を再現して見せた腕を見込んで頼みがある」
「ん?何だい?」
「実はな…」
こうして、其々の修業は続いて行く…