ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

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18話_俺、初披露しました

「少し待ってくれ」

「いっちゃん?」

「ん?どうしたんだい兵藤君?」

「何すか、一体?」

 

部長の指示に従って体育館近くの森林に潜入しようとした木場と美月、そして俺の手を引いていたれーちゃんを制す…まあ急ぐ気持ちも分かるが。

 

「此処に罠を張る。その説明がしたいから少し待っていてくれ」

「ん?…分かったよ」

「うん、いっちゃん」

「早めに頼むっすよ」

「了解」

 

美月の急かす声に応えつつ、俺はある『図形』をイメージする…イメージするは、1対約1.618の黄金長方形…!

 

「来た…!(ババババババババババァン!)タスクAct2!」

 

俺の爪から放たれた10発の爪弾は森林に、

 

「あれ、もう炸裂した!?」

「まさか失敗じゃないっすか!?」

「まあ見ていろって」

 

向かう途中で炸裂した…その様子に失敗したんじゃないかと慌てる3人だったが、

 

「弾痕が動いた!?」

「そのまんま森に向かっているっす!ありえるんすか、アレ!?」

「いっちゃん…凄いね…」

 

炸裂して出来た弾痕は留まる事無く森林に向かう…そう、これが俺の、タスクの『もう1つ』の能力。

 

「あれが俺の爪弾の1つ…俺はそれを『黄金回転の爪弾』と呼んでいる」

 

黄金長方形…正確には1対(1+√5)÷2の比率で出来た長方形で、此処から一番大きい正方形を切り取ると、残った長方形も黄金長方形となり、そこから一番大きい正方形を切り取ると、残った長方形はまた黄金長方形となり…という風に延々と相似な図形が作られていく図形で、その切り取った正方形達を元の位置に置いたままフリーハンドの線で繋げていくと、巻貝の様な渦巻きが出来る。

そんな黄金長方形を俺の脳内でイメージし、それから数々の正方形を、それらを繋げて出来る渦巻き…俺は此れを『黄金回転』と呼んでいる…を思い浮かべて、それを俺の爪弾にトレースする…すると俺のタスクの、側に浮かんでいるピンク色の妖精だった姿が、同じくピンク色の鋏型の手をしたロボットみたいな姿に変わり、同時に爪も今までみたいにその場をクルクル回っているのでは無く、指を軸に公転する様に変化し、

 

「黄金回転の爪弾は、それその物は今までの爪弾と何ら変わりないが、それが炸裂して出来た弾痕がミソだ。この弾痕、俺がイメージした相手に向かって陸だろうと空だろうと海だろうと追いかけ回し、到達した瞬間に弾痕内の物体を破壊するんだ」

 

尤も今回は特に誰を狙えとか指定した訳じゃあ無く、森林内部の土に向かい、其処で何かが入って来たら破壊する様にイメージした…まあ早い話が、対人地雷である。

 

「一種の追尾弾だね…凄いな…」

「…どんだけチートなんすか、イッセー兄さんの爪弾って…」

「いや、そうでも無いぞ。確かに追い掛け回して破壊する力は有効だが、それなりのデメリットもある。これを見てくれ」

「?手がどうし…!いっちゃん、どうしたのその手!?」

「爪が…生えていない!?」

「大丈夫なんすか!?これ明らかに無防備っすよ!?」

 

そう、これがAct2のデメリット…爪が生え変わるのに時間が掛かるのだ。

Act1の時に発射した爪弾は直ぐに生え変わるのだが、何故かAct2の時は一度発射すると生え変わるのに時間を要する…まあ常人よりは明らかに早いのだが、それでも生えていない間は不便極まりない…俺が何時もAct1を愛用していたのは、後々不便になるのが嫌だからだ。

けれど今回はあの焼き鳥野郎との、部長の将来を賭けたレーティング・ゲーム、手札を惜しむ気は無い。

だから、

 

「大丈夫だ…これは、」

『Transfer!』

「一瞬で生え変わった!?」

「今の声…赤龍帝の籠手からっすね?」

「成る程…『倍化』した力を、爪の再生速度に『譲渡』したんだね」

「そう…尤も、それでも3分掛かるけどね」

「カップ麺じゃないすか…」

 

先程ドライグが神器を出しておけと勧めて来たのはこれが理由だ。

 

「つまり僕達はあの弾痕に巻き込まれない様…木に登っていた方が良いって訳だね」

「それで森に入った敵はあの弾痕踏んづけてドガン、警戒して登って来た敵を私達がモグラ叩きの如く遠くから魔力やら光やらで叩き落として更にドガン…って流れっすね。了解っす!」

「おう、しっかりな」

「兵藤君達も、しっかりね」

 

俺のもう1つの能力の説明、それを踏まえた打ち合わせも済み、俺達は二手に分かれた…

 

――――――――――――

 

「むっ…れーちゃん、隠れて!」

「!分かった、いっちゃん!」

 

鉄球回転をレーダーとして使用、周囲を索敵していた俺達、敵の反応を示す波紋の乱れを察知し、周囲を警戒する…と、その視線の先には、

 

「あいつは…焼き鳥野郎達の女王…確か、ユーベルーナだったか?」

 

ユーベルーナ…肩当ての付いたドレスを着用し、武器として扱う魔法の杖的な物から炎を放つ、典型的な魔法使いタイプで、朱乃さん曰く『爆弾女王(ボムクイーン)』として知られているらしい。

見た所、俺から100m位先で体育館の周囲、特に入り口付近を注意している様だ…大方、出て来た所をドガンって寸法か?

なら…

 

「黄金回転の爪弾で先手を打つ。女王はチェスでもレーティング・ゲームでも最も強力な駒、此処で潰せば相手の動揺は大きい筈」

「そうだね…それに体育館には小猫ちゃんに佳奈、それにフリードも入っている…3人を失うと大きな痛手だし」

 

見た所向こうは体育館ばかりに意識が向いて、こっちには気付いていない…今がチャンスだ!

 

『Explosion!』

「黄金回転の爪弾!」

 

赤龍帝の籠手からの電子音声、そして響き渡る俺の声と銃声に気付いた様子だが…もう遅い!…構える暇もなく、ユーベルーナの全身を取り込むように弾痕が広がり…そして破壊、消えた後には何も残っていなかった。

 

『ライザー・フェニックス様の『女王』、リタイア』

「グレイフィアさんのアナウンス…これで誰が撃破されたか、大まかながら分かる訳か」

「そうみたいだね…やったね、いっちゃん!」

 

良し、どんどん行くぜ!

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