26話_俺、疑念を抱きました
「こ、この子が小さい頃のイッセー…可愛い…」
「ですよね、部長!いっちゃんはこの頃から魅力的だったんですよ」
「はわわ、今とはまた違ったイッセーさんの魅力が…」
「今じゃあ考えられない位の可愛げさだなこりゃ」
「…小さい頃の先輩…」
「あらあら、可愛いですね。お持ち帰りしたい位ですわ」
「…人間って分からないっすねぇ、たった10年で此処まで逞しくなるんすから」
「まあイッセーには、色々と訳があったからな」
…どうしてこうなった。
今日は旧校舎が全体清掃の為、オカルト研究部の放課後での活動はウチで行う事になったのだが、何時の間にか俺のアルバム鑑賞になっていた。
本当にどうしてこうなった、凄く恥ずかしいんだが…
「皆、どんどん見てね!これが小学生位の頃のイッセーよ!」
「母さん何勧めてんの!?」
「あら良いじゃない、これから1人息子の御嫁さんや家族になるかも知れない方達なんだし」
「いやそうだけどさ!」
…ちなみに何故母さんが『お嫁さんや家族』と、オカ研メンバーの正体を仄めかす様な事を言ったのか。
それは両親には既に、俺達の事を話しているからだ。
3大勢力を始めとした人外勢力達、れーちゃんの正体、俺に宿った神器、れーちゃんに一回は殺され悪魔として転生した事…等々。
言ってもそうそう信じられないであろう事を何故話したのは、俺の、『赤龍帝としての』俺の立場を鑑みてだ。
赤龍帝の籠手は、神器でも最高級である神滅具の一角な上、宿っているのは3大勢力にとって忌まわしい意味で有名な二天龍の一角、ドライグ。
それを宿した俺が悪魔陣営の、名家で知られるグレモリー家の次期当主である部長の眷属であると知れ渡った以上、俺の意志など関係無いと言わんばかりに厄介事がこの身に降りかかるだろう。
ドラゴンの力は強大、それが力有る者を引き寄せる…ドラゴンの魂が宿った神器を有している俺も、それは例外じゃない。
増してや二天龍には大昔からの因縁があり、その神器を宿した者同士が出会った時、命尽きるまで戦い続けたという話も過去何度もあった。
そう…俺は何時、戦乱に身を落とすか分からないし、家族が巻き込まれないとも限らない。
そうなった時、事の次第を知らなければ…
だから、俺は話した…もう、俺は家族を失いたくないんだ。
その時の反応は、まあ俺の予想通りと言うべきか、両親ともに半信半疑の様相だったが、「悪魔になろうと、イッセーはイッセーだ」とか「イッセーは強い、運命に立ち向かえる位に」と言ってくれ「いざとなった時は、自分たちの事は気にするな」とまで言われた…親って、強いよな。
より一層、俺は失いたくないと決意した…家族を、大切な人を。
「あるぇ?なぁなぁイッセー君、この写真なんだけどさぁ…」
「どうした、フリード?」
そう、改めて決意した俺に、フリードの呼び出しが聞こえた…どうしたんだ、珍しく喋らないと思ったら。
「ああ、これか。こいつは俺の幼馴染、紫藤イリナだ…もう10年なんだよな。アイツ、今頃どうしているんだろうな」
フリードの呼び出しに応じて近づくと、そこに1枚の写真…幼稚園児の頃の俺と、ボーイッシュを通り越して男子と間違われかねない俺の幼馴染、紫藤イリナが並んで映っている写真が目に入った…これがどうかしたのか?
「いやそうじゃなくてだ…なぁなぁ木場ちゃん、ちょっと見てくれない?」
「どうしたんだい、フリード?」
俺の答えに、的外れだと言わんばかりに嘆息し、今度は木場を呼び出した…心なしか、そこには僅かながら憎悪と呼べるような怒りが滲んでいた様な気がしたが…
「木場ちゃん…この写真の…ガキの頃のイッセー君の後ろに映っている物体なんだけどさ…」
「!?…こ、これは…!」
「コイツを見てくれ…コイツをどう思う?」
「凄く…聖剣だよ…」
某ゲイ漫画の様な受け答えをする2人、だが文にすると笑えるこの受け答えとは裏腹に…2人の様子は、何時もとは明らかに違っていた…何て言うか、得体の知れぬ怒りに満ちていると言うべきか…
------------
「聖剣計画、ですか」
「ええ、そうよ」
木場とフリードの様子がおかしかった事について、少なくとも木場に関しては、俺よりも関わりの深い部長なら何か知っているのではと思って翌日聞いてみると、とある計画を聞かされた。
聖剣計画。
教会の裏で嘗て行われた、聖剣使いを人為的に育て上げる為のプロジェクト。
木場を始めとした多数の、僅かながらも聖剣を扱う資格を有しているであろう子供達が掻き集められ、一人前の聖剣使いとなる様、厳しい訓練を強いられた。
だが計画は失敗、聖剣使いは1人として輩出出来なかった様で、木場達は『不良品』として毒ガスによって皆殺しにされてしまった。
その中で木場は唯一、毒ガス部屋から脱出出来たものの、部長が見つけた時には既に息絶えていて、事の次第を知った部長が悪魔として転生させたそうだ。
それから部長はその過去を忘れられる様働きかけつつ現在に至る…という訳だが…
「御免なさいイッセー…私がイッセーの昔のアルバムを見たいと言い出したばかりに…」
「部長は悪くありませんよ。普段の木場からは想像出来ない程の形相…余程その件に関して憎悪を抱いていたと俺は思います。遅かれ早かれ、フラッシュバックしていたかも知れません」
表では神の教えを代弁していると言いつつ、裏でそんなおぞましい事をしていたとはな…ナチスの過ちを認めなかったり、聖剣計画を平気でやってのけたり…教会はとことん腐っちまった様だな…!
「ところで部長…これは俺の推測なんですが、フリードも、聖剣計画の被験者だと思います。木場が以前、フリードを見て「何故君が此処に!?」って驚いていましたし、あの写真で物凄い憎悪を抱いていました…間違いないと思います」
「…考えられなくは無いわね。でもあの日、聖剣計画の被験者で私が助け出せたのは祐斗だけだし、それに、フリードは悪魔祓いとしての所業で教会から追放されて、堕天使陣営に身を寄せたんでしょう?まさかそんな筈は…」
教会への怒りを覚えつつ、俺は1つの疑念を…フリードと聖剣計画との関連を聞いてみたが…まあ、そうだよな。
あのフリードの気性からして、話に聞いた仕打ちを受けて尚、其処に留まる等考えられないが…
「フリードはともかく…木場にそんな過去があったとは…何だか、嫌な予感がします」
「嫌な予感?」
「はい…何となくですが、木場、引いては聖剣に関する、嫌な予感が」
その嫌な予感が現実と化すのに、時間はそんなに掛からなかった。