ぼくとれーちゃんがはじめてあって、ともだちになってくれたあの日から、ぼくはれーちゃんによくおどろかされることになりました。
たとえば、山に出かけたときは、
「れーちゃん、早くいこう!」
「待っていっちゃん。虫よけスプレーはした?」
「あ、やってなかった。まあだいじょうぶだよ!」
「良くないよ。悪い虫さんに噛まれてそこが『肉片も残さないからっ!』てなったら大変だよ?」
「あ、そっか!ありがとうねれーちゃん、ぼくあのまま山みちに入るところだったよ」
…あとになって、それはれーちゃんの中の人はいっていないよって気づきましたが、ぼくを気づかってくれました。
やっぱりてんしさまだからなのか、ぼくとは大ちがいなほど『大人っぽい』そんなすがたに、ぼくはいつも「すごーい!」とおどろいてばかりです。
年そうおう…ていうのかな、そんなぼくと、おない年なのにすごく大人なれーちゃんのそんな日々は、びっくりしつつもたのしいことだらけで、むねいっぱいです。
そんなある日でした。
「はい、タッチ!」
「あは、また捕まっちゃったわね」
「いえいっ!…それにしてもあせでびっちょりになっちゃったね」
「本当ね。早くお風呂に入らないとね」
…てんしさまもあせってかくのかな、とちょっとおもいましたが、それはおいといて。
その日もいつもみたいに、れーちゃんとあそんで(きょうはおにごっこです)、ゆうがたになったので、おうちにかえろうと、おもったときでした。
「じゃあかえろっか、れーちゃ…」
「ん?どうしたの、いっちゃん?」
いつも見ているはずのれーちゃんのすがた…それがきょうは、やけにきれいに見えました。
れーちゃんがかいたあせで、キラキラしたそのすがたは、なんていえばいいのかな…まるでれーちゃんがかみさまになったみたいでした。
「(トクン!)!?…いまの、なに?」
「どうしたのいっちゃん?ま、まさか何処か悪い所が!?」
「あ…だ、だいじょうぶだよれーちゃん!さ、早くかえろう!」
「あ、待ってよいっちゃん!本当に大丈夫なの?」
なんだったのかな、いまの…ぼくのむねが、きゅうにドクドクして…もしかして…
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「…れーちゃん、ちょっといい?」
「いっちゃん。具合はどう?何処か、痛い所無い?」
「ううん、ないよ。でもね…」
あのかんじ、てんしさまのれーちゃんなら、なにかしっているかなとおもって、きいて見ることにしました。
「どうしたの、いっちゃん?何でも良いから、少しでも気になる事を私に教えて、ね?」
「(トクン!)!?」
あ…また、です…こんどはれーちゃんの、しんけんそうなかおを見たら…
きゅうにはずかしくなってしまって、上手くしゃべれなくなっちゃいました…でも…
「あ、あのねれーちゃん…じつは、れーちゃんのかおを見たら、ぼくのむねからきゅうに『トクン!』って音がしたんだ」
「え!?そ、それって…何時から?」
「きょうのゆうがた…あせかいたれーちゃんのすがたを、見てから…」
「…えっと、それってもしかして…」
ぼくのはなしをきいたとたん、れーちゃんのかおが赤くなったとおもったら、なにかもごもごといいながら下をむいてしまいました…ど、どうしたのかな…
も、もしかしてものすごく、わるいびょうきなのかな…?
「うん…言わなきゃ、いっちゃんに、ちゃんと伝えなきゃ…」
けれどとつぜん、いないはずのだれかにうんといったとおもったら、ぼくをじっと見つめて、
「いっちゃん…私の胸、触って?」
とつぜんこんなことをいいだしました…え、えぇ!?
「え、え!?いやどうしたのきゅうに!?ふぇ!?」
「良いから触ってよ、ほら!」
「うわっ!?」
あわてるぼくの手を、れーちゃんはとつぜんつかんだとおもったら、じぶんのむねにぼくの手をあててきました(トクン!)うぅ、またぼくのむねが…
「…え?これって…」
「…そう、私もいっちゃんと同じ。今、いっちゃんの顔見ていたら、胸が凄くドキドキしているの」
れーちゃんのむねも、ぼくみたいにドクドクしていました…れーちゃんも、ぼくとおなじ…
「ねぇいっちゃん…恋って聞いた事ある?」
「こい…えっと、男の人と女の人がしあわせになること?」
「うーん…ちょっと惜しいかな。恋って言うのはね、男の人と女の人が、お互いの事を好きになって、一緒に付き添ったり、遊んだり、好きって気持ちをぶつけ合ったり…そうしながら幸せになって行く事なの」
おかあさんが見るドラマでしか、きいたことありません…こい…
「ねぇいっちゃん…私の事、どう思っているかな?」
「えっと…すごくきれいで…かわいくて…大人っぽくて…」
「もうちょっと短く言って欲しいな。じゃあ…問題。貴方は私の事が好きですか、嫌いですか、どっち?」
「え、そ、それは…」
「早く答えて?さーん、にー、いち…」
「わわ、ちょっまって!す、すきです!」
あわてていっちゃった…またびっくりさせられちゃったな…
けれど…たぶんわかったとおもいます…ぼくの、このドキドキは…
「そう…それが恋よ、いっちゃん…貴方も私も、一緒に恋をしたのよ」
「え、れーちゃん…も?」
「う、うん…子供っぽいけど格好良くて、それでいて可愛い…そんな貴方を、何時の間にか好きになっていたの…良かった、両想いだ…!」
れーちゃんも…ぼくのことが…!
「ありがとう、いっちゃん…私の事、好きになってくれて…!本当に、ありがとう…!」
「れーちゃんもありがとう…ぼく、いますっごくしあわせだよ!だいすき、だいすきだよ、れーちゃん!」
「私も、私も大好きだよ!いっちゃん!」
れーちゃん…かみさま…ありがとう…いまぼくはすごくしあわせです…!
「いっちゃん…」
「れーちゃん…」
「(チュッ)ん…」
「うん…」
その日、ぼくとれーちゃんはむすばれました。
すごくしあわせなこの気もち…こんなしあわせが、ずっと、ずっとつづけばいいと、おもっていました。
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けれど、
「ん…あ、あれ?れーちゃん?どこ、れーちゃん?」
はじめてあったあの日から、ずっとおなじへやでねていたれーちゃんが…いまは、いませんでした。
「あれ、どこいったの、れーちゃん?おーい」
もしかしてさきにおきたのかなとよびかけてみましたが、へんじがありません。
どうしたのかな…
「…ん?なんだろう…?」
ぼくのつくえの上にあった1まいのかみ、とりあえずそれをとってみると、
『いっちゃんへ
大好きだよ、いっちゃん
でも…貴方と一緒に居られなくなりました
御免なさい…御免なさい…!
れーちゃん より』
う…うそ、だよね…これ…
なんで…なんで…こんな…!
「れーちゃん!?れーちゃん、どこ!?いるんでしょ!?へんじしてよ!」
なんで…なんでいなくなっちゃったの!?
あんなにすきだといってくれたのに…キスまでしてくれたのに!
なのに…なんで…なんで…!
ぼくが…人だから?
れーちゃんが…てんしさまだから?
ぼくじゃあ…わるい人は、たいじできないから?
ぼくが…よわいから?
「れーちゃん…れーちゃん…!」
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このときからずっと、ぼくは『つよくなりたい』とおもうようになりました。
つよくなって…わるい人をたいじしたいと、おもうようになりました。
うんどうもべんきょうも、ひっしでがんばりました。
どんなにしんどくなっても、くるしくても、へこたれませんでした。
どんなにいたくても、つらくても、あきらめませんでした。
あるときから、ぼくのそばにピンク色のようせいさんを、出せるようになりました。
そのようせいさんが出ているときだけ、つめをピストルみたいにはっしゃしたり、ナイフみたいにバッサリしたりできるようになりました。
またあるときから、ようせいさんがロボットみたいなすがたに、することができるようになりました。
ぼくが『ちょうほうけいからせいほうけいをつくって、そのあまりからまたせいほうけいをつくって、またそのあまりからせいほうけいを…』とおもいうかべるとなれるみたいで、そのときははっしゃしたつめが、すきなところにとんでいくようになりました。
さらにあるときから、ぼくの左うでに『ドライグ』というなまえの、ドラゴンのおじさんが入っている、ロボットみたいな赤いうでに、へんけいするようになりました。
このうでは『ブーステッド・ギア』というなまえの、『ロンギヌス』というすっごい、『セイクリッド・ギア』…いっているぼくのほうが、ちんぷんかんぷんになってきましたが、とにかくすっごい力をもっているそうです。
『10びょうたつごとに力が2ばいになる』という力と『ばいにした力を『なにか』にわたす』という力があるそうです、すごいです、ドライグおじさん。
そしてぼくは、『タスク』となづけたようせいさんと、ドライグおじさんのいるブーステッド・ギアとともに、わるい人たいじをしていきました。
あぶないときもありましたが、あきらめずにたちむかいました。
これもすべて…つよくなりたかったから。
つよくなって…わるい人たいじが、できるようになりたかったから。
つよくなって…れーちゃんとまた、あいたかったから。
つよくなって…れーちゃんと、しあわせになりたかったから。
そうおもいつづけて、
俺、兵藤一誠は16歳、駒王学園という私立高校の2年生になった。