ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

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※引き続き、教会組アンチ要素入っています。


29話_俺達、介入を始めました

「遅かったじゃないか…尻尾巻いて逃げたかと思ったぞ」

「逃げたら逃げたでコカビエル捜索と一緒に、矯正の為に追い掛け回すけどね」

「はっ買った喧嘩から逃げる訳無いだろ。ちょいとした野暮用で遅くなっただけだ」

「野暮用というのは…ずっと後ろで大人しくしている『殺人鬼』と…あとの1人と関係ある事か?」

「まあそういう事だ」

 

ゼノヴィアが指摘した、大人しくしている2人…無論、待ち合わせ場所に出向こうとした俺を引き留めた木場とフリードだ。

2人としては聖剣への復讐を果たす願っても無い機会、俺という第3者では無く自分の手で、という想いもあるだろう。

だが、2人の様子を正直に言うと…復讐心の余り、目的を食い違えている様に思えた…聖剣、というより使い手である2人を叩き潰そうとしているという様に。

復讐は何も生まないとか、復讐心を忘れて幸せになれとか、そんな綺麗事を言うつもりは毛頭ない…俺だってれーちゃんや両親、それに部長達といった大切な存在が殺されたら復讐を考えると思うからだ。

だがそんな、怒りで我を忘れている様な状態では、怒りに振り回されている状態では…復讐など出来る筈も無い。

目的を食い違えたら…それは本当の復讐じゃない。

だから俺はあの時、こう一喝してやった。

 

「今のお前達は復讐心に振り回された道化だ!復讐を忘れろと言うつもりは無いが、捉われ過ぎたら我を忘れ、周囲が見えなくなり、出来る事も出来なくなる!存分に怒って良い、恨みを募らせて良い、憎んで良い…だがその時こそ冷静になれ!己を忘れるな!怒りを、恨みを、憎しみを、どうすれば綺麗さっぱり晴らせるかを考え、忠実に実行するんだ…それが復讐だ!今のお前達はそれが出来ない道化だ!それでは復讐どころか、犬死にするだけだ!」

「「!?」」

「俺がその手本を、あの2人との戦いで見せてやる…積もり積もった怒りの中で、冷静に、思慮深く…どう晴らすかを考えて実行してやる。助太刀はいらねぇ、後ろでじっと見ていろ」

 

とな。

 

「さて…喧嘩の前に1つ提案だが…お前らが勝ったら俺はさっきの言葉を撤回し謝罪する…その代わり、俺が勝ったら…お前らの部長への要求、却下させて貰うぜ?」

「何…?」

「これからお前らが相手するのは、堕天使でも最高幹部と呼ばれていた奴だろ?俺1人ノせない様じゃあ、聖剣を奪還するとかバカかと言いたいな。ぶっちゃけ今持っている聖剣もぶんどられて犬死になんて未来も浮かんで来そうだしなぁ?」

「!…良いだろう、其処まで言うなら、貴様が勝った暁には、この件に関して好きにすると良い」

「ぜ、ゼノヴィア!勝手に決めないでよ!」

「私達が下級悪魔1人位倒せないと思うか?私にはこの聖剣『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』がある。無論お前にも…悪魔1人、訳は無いさ」

「!…そうだね」

 

ゼノヴィアが、帯剣していた聖剣の封を解いて構えた直後に放った言葉に、イリナも応じて腰にぶら下げていた紐を変形させて日本刀型にさせた…ゼノヴィアのは『破壊』と付いているだけあってパワー重視の能力を持っているんだろう…一方のイリナの聖剣は、見た感じ形状を変形させる能力があるみたいだな…極端な話、向こうから伸ばすのも可能じゃないか?

だったら…

 

「さあ貴様…今なら土下座で許してやる」

「イッセー君…謝るなら今の内だよ?後で消滅しても…知らないから」

「御託は良いから来い…10秒でケリを付けてやる!」

「貴様!」

「神よ!彼の者に光を!」

 

相手の挑発に、更なる挑発で返す…案の定、2人とも食いついた。

今現在の間合いはざっと30m…爪弾の射程範囲内だが、ACT2でも無いと対処されるかも分からんし、使って勝ったとしても、絶望感はイマイチだろう…後で「この前は聖剣を使う事無く負けたが、あれはノーカウントだ!」と言われかねない。

もっと近く、爪の斬撃の範囲内に来てから…そこからが勝負だ。

 

「喰らえ!」

「行って、『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』」

 

来た!

爪の斬撃の間合いギリギリに入り、ゼノヴィアが振りかぶっていた聖剣を振り下ろそうとし、イリナが聖剣を変形させようとした…今だ!

 

「しゃぁぁぁぁぁ!(カカカカカァン!)」

「うわぁ!?」

「きゃぁ!?」

「おいおい、あっさりと剣を手放してんじゃあ(ダッ!)ねぇよ!」

「へ?」

「オラァ!(ゴスゥ!)」

「うっ!?(ギュルルルルル!)きゃぁぁぁぁぁ!?」

「イリナ!?」

「よそ見厳禁だ(ドッ!)ぜぇ!」

「な!?」

「遅ぇ!(ゴスゥ!)」

「くぅ!?(ギュルルルルル!)ぐぁぁぁぁぁぁ!?」

「はぁ…10秒も持たないとは、驚きの弱さだな。これでコカビエルから聖剣を奪うだって?とんだお笑い草だな」

 

一連の流れを説明すると、イリナとゼノヴィアが攻撃しようとしている所に爪の斬撃を5連続でぶつけて(手刀の様に振り下ろしつつ、小指の爪から斬撃を伸ばしては引っ込めを繰り返して、インパクトの瞬間を、こちらの勢いに影響が無い程度にした)弾き飛ばし、怯んだ隙に震脚から掌打を打ち込む要領で鉄球を腹部に直撃させた…という訳だ。

全く、こんな程度でコカビエルを倒せる訳が無い…良くもまあ相手と自分との力量差を見極めないままあんな高圧な交渉を仕掛けた物だ、逆に尊敬するぜ…イリナも10年で此処まで変わっちまうとは、これも聖書の神への『間違った』盲信って奴か?

教会の上層部も、良くもまぁそこまで強そうじゃない癖に相手の実力を見誤って高圧的な態度を取る奴に頼んだ物だ、案外破壊する事だけが目的だったりしてな?

さて…と、

 

「木場、フリード…此処に2つの聖剣がある。お前らにとって憎むべき相手だ。アイツらに持たせたままじゃあコカビエルに渡るかも知れんし、向こうも堕天使の手に渡る位なら破壊しても構わないと言っている…破壊を頼むぜ」

「「…(パキィン!)」」

 

鉄球のダメージで倒れ伏した2人が手放した2振りの聖剣を木場とフリードの前に運び、破壊を依頼した…その依頼に少し逡巡しながらも各々の神器を使って破壊したが…まだ晴れないみたいだな。

 

「これで復讐心は晴れたか」

「いや…まだだよ…」

「これでお相子なんざ出来やしねぇぜ」

「そうだ…それで良い。お前らの目的は…本当の復讐は聖剣エクスカリバーを破壊する事。堕天使コカビエルの手から聖剣を引き剥がして破壊する事だ。断じて、破壊しても良いと言ってくれている教会の聖剣使いを殺す事じゃあ無い…分かったな!」

「…うん」

「…オッケーだぜ、イッセー君」

「さて…イリナ達は…って」

「イッセー、大丈夫!?」

「いっちゃん、怪我は無い!?アーシア!」

「は、はい!イッセーさん、今行きますから!」

 

…漸くですか。

 

------------

 

「聖剣使いと決闘なんて何を考えているの…!下手したら消滅させられる所だったのよ!」

「いっちゃんがどうなっちゃうかと心配したんだから!」

「イッセーさん無茶しないで下さい!」

「すいません…頭に血が上っていました。でも…部長がぞんざいに扱われて、アーシアが罵倒されて、れーちゃんの純然な想いが否定された様な気がして…我慢が出来なかったんです」

 

本当に、部長の言う通りだ…下手したら俺は聖剣の光の力で消滅された挙げ句、これを口実に天使陣営が悪魔陣営に宣戦布告する事もありえたのだ…今回は(俺の挑発的に近い一喝があったとは言え)向こうが吹っ掛けた形だし、結果オーライとなったが…

全く、大切な人を失いたくないと思っていながら、火急でも無いのに自分を危険な状況に投じさせ、その大切な人に心配掛けさせては駄目だな…俺がいなくなったら、誰がれーちゃんを…俺の大切な人を守るんだ?

怒りに満ちた中で冷静になれ…俺自身が出来ていねぇじゃねぇか。

だけど…だけど今回はやらせて欲しい。

 

「でも…今回の件はやらせて下さい。木場とフリード、あの2人の鬱屈を、俺は晴らしたいんです…3大勢力間の事については大丈夫です、ゼノヴィアからは言質を取ってあるので、後で介入を指摘されても問題ありません」

「3大勢力どうこう以前の問題だよいっちゃん!相手は堕天使の最高幹部の1人、コカビエルなんだよ!グリゴリにいた私には分かる…今まで戦って来た敵とは次元が違うよ!」

「イッセーは確かに強い…はぐれ悪魔の討伐も、ライザーとのレーティング・ゲームの時も、イッセーは誰よりも活躍している…明らかに、私よりも強いわ。けれどそんなイッセーでも、今回の相手はどうなるか分からないのよ!唯でさえ堕天使が持つ光の力は悪魔にとって天敵、増してや最高幹部となれば…!」

「お願いですイッセーさん…イッセーさんが出なくても、出来る事は有る筈です…だから、だからこれ以上、無茶しないで下さい…!」

 

3人の言いたい事は分かる、けど…それでも譲れないんだ。

 

「…聖剣計画で大切な人を殆ど失った木場とフリードの気持ち…俺には良く分かるんです。幼い頃にれーちゃんと離れ離れになった俺には」

「っ!…いっちゃん」

「良いんだれーちゃん、それより聞いてくれ…れーちゃんと離れ離れになった俺はそれ以来、何となくでありながらも物凄く息苦しいと思ったり、身体の中がぽっかり空いた様に感じたり…分かりやすく言うなら『飢え』をずっと感じていました。ずっと俺は飢えていました…れーちゃんへの想いで『飢え』ていたんです。その飢えを原動力に、俺は強くなりました…俺は結果として10年後、こうしてまた一緒になれたから良い。だけど木場とフリードは、永遠に会えない事が決まってしまったんですよ!それも病気だとか事故だとか所謂『宿命』という言葉で片付けられる事じゃない…悪意に塗れた人間の掌の上で踊らされた挙げ句に物として処分されて!木場もフリードも、永遠に満たされない『飢え』を…『無念』を抱いたまま今も苦しんでいます!それを晴らさない限りは…2人は前に進めない!此処で晴らさないと、2人はずっと苦しまなくてはならなくなるんです!だから…だから…!」

「…分かったわ、だけど、決して無茶はしないで、良いわね?」

「…イッセーさん、危なくなったら、必ず引き返して下さいね?」

「いっちゃん…私も連れてって!」

「駄目だれーちゃん…相手は反逆の身とは言え堕天使の最高幹部…離反した身のれーちゃん達が見つかったらどうなるか分からない…!皆と一緒に待っていてくれ…必ず戻るから」

「…うん、分かった、約束だよ!」

「勿論だ!行ってくるよ!木場、フリード」

「うん、宜しくね、兵藤君!」

「頼みますぜイッセー君!」

 

俺の思いの丈に感じ入り、送り出してくれた皆に応えつつ、木場とフリードと共に捜索を開始した…

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