Side 祐斗
「あの悪魔の事もあるから、急仕上げにしたが…大丈夫の様だな。完成だ」
「そうか。俺はあの馬に乗った悪魔をやる…あいつは、俺自身が仕留めなければ気が済まん!お前はその間、他の連中を足止めしてくれ」
「分かった」
まずい…!兵藤君の攻撃によってコカビエルごとケルベロス達が昏倒したという光景を目の当たりにした次の瞬間、エクスカリバーの統合が終わってしまった…急いで倒さないとこの街が…!
だけど…その前にケリをつけなければならない事がある。
「バルパー・ガリレイ…貴様の計画によって確かに聖剣使いの資格者は劇的に増えた…だがな、その裏で行われた凄惨な実験、そして被験者全てを皆殺しにしたという暴挙は、絶対に許されるべき物では無い…!貴様は追放されるべくして追放され、そして処断されるべく今、我らが処断して見せる…!」
「僕は…いや僕達はその聖剣計画の生き残りだ…尤も僕の場合は貴方に殺された身だ。悪魔に転生して、今こうして生き残っている」
「ジジィも災難だなぁ、俺っちという死に損ないを出しちまって…まあ、因果応報って奴だ…苦しみながら死んだ、俺の、俺達の仲間の辛苦を味わいながら地獄に落ちやがれ!」
「…まさか、くたばり損ないの他にもあの計画の生き残りがいたとは、これは数奇な運命を感じるな。こんな極東の地で、揃いも揃って会う事になろうとは…ふふふ…」
…少し前の僕なら、此処で我慢の限界を越えて飛びかかっていたかも知れない…けれど兵藤君に言われた『怒りに満ちた時こそ冷静になれ』の言葉で踏みとどまれた…何故あんな計画を仕出かしたか、聞き出す必要がある…!
「私は聖剣が好きだ。それこそ…私が聖剣を手にして悪魔共と戦うという夢を見るまでに。幼少の頃に、エクスカリバーの伝説を聞いて、心踊ったからだろうな。故に、自分に聖剣使いの適性が無いと知った時には絶望した物だよ。けれど、自分では使えないからこそ、使える者に憧れを抱いた。その憧れは留まる事を知らず、遂には聖剣使いを人工的に作り出す研究を始めたのだ。それが『聖剣計画』で…そして完成した、君達のお陰だ」
何…!?
「僕達を失敗作と断じて処分した筈だ…完成だって?」
「そう、実際に被験者の誰もが適性に至った訳では無かった…しかしながら研究の途上、私はある事に気が付いた。聖剣を使うのには必要な因子があるという事に。その因子の数値によって、適性があるかどうか変わるという事に。被験者の誰もがその因子が適性数値に至らなかったが、故に私はある結論に至った。『因子だけを抽出し、集められないか?』と」
「成る程、読めたぞ。聖剣使いが祝福を受ける時、身体に入れられる物…あれが」
「そうだ、聖剣使いの少女よ!因子だけを取り除き、この様な結晶にしたのだよ!…実際に私で試してみたら、あの時の絶望が嘘の様に、聖剣を扱えるようになったぞ!」
あ…あれが…皆の…聖剣使いの因子…何て事を…!
「…バルパー・ガリレイ…!自分の研究、自分の欲望の為に、一体どれだけの命を弄んだ…!」
「吐き気を催す邪悪ってこの事を言うんだろうなぁ…このクソジジィ!テメェには…テメェには地獄すら生温い!死んでいった仲間達の苦しみを、唯1人死に損なった俺の苦悩を、1人で逃げなければならなかった木場ちゃんの無念を、その身で思い知りながら死にやがれ!」
「ふん。其処まで言うならばこの因子の結晶、貴様らにくれてやろう…あの時の被験者たちの因子だ。もう量産出来る段階にまで研究は進んだのだ、もう私には不要だ。そして…手始めにこの街を破壊し、後は世界各地で保管されている聖剣を集め、聖剣使いを量産し、バチカンやミカエルに戦争を仕掛けてくれよう!」
あ…あれが…あれが皆の…だ、駄目だ…抑えきれない…!
「皆…!僕は…僕は!ずっと…ずっと思っていたんだ…僕が、僕達だけがのうのうと逃げ延びて、生きて良いのかって…。僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きたかった子もいた。皆、生きたかった筈だった…僕が、僕達だけが平和に過ごして良いのかって…」
「木場ちゃんは…木場ちゃんは何も悪くねぇよ!俺なんか…俺なんか、脱出する程生きたいとも思わなかった癖して、結局皆をほっぽり出して死に損なっちまった…!そして皆の事を忘れて、ずっと自分勝手に生きて来た…!俺よりずっと生きていくべき奴がいた。俺より色々とスゲェ奴がいた。何で、何で俺が…!」
『…れ』
「…え?」
「…何だ?」
『…きてくれ』
「…この声…」
「…!木場ちゃん、これ…!」
フリードの呼びかけに応じて振り向くと其処には…僕の仲間たちの、霊体となった僕の仲間たちの姿、そして…
『自分達の事はもう良い。君達だけでも生きてくれ』
「!み、皆…」
「!お前ら…」
そして聞こえて来た歌声…これは…これは聖歌?
『僕らは、1人では駄目だった――』
『私達1人1人だけでは、足りなかった。けど――』
『皆が集まれば、きっと大丈夫――』
『聖剣を受け入れるんだ――』
『何も怖い物なんて無い――』
『例え神が居なくても――』
『神が見ていないとしても――』
『僕達の心は――』
『私達の心は――』
「「――1つだ!」」
僕達の声に呼応するかの様に光り出し、僕達の中に入って行く皆…行ける、これなら…!
「バルパー・ガリレイ。僕は貴方を滅ぼす!」
「皆と再会を果たした今の俺は、もう何も怖くないってねぇ!」
「ふん、何をするかと思えば幽霊共と合唱か。所詮はその程度しか出来ないという事か。まあ良い、直ぐに貴様らも仲間の元に送ってやる。この3本統合させた聖剣エクスカリバーでな!」
そう言い、飛びかかるバルパー…だが、今の僕達は、負けはしない!
「今、僕は皆を守る剣となる」
「俺は敵を追っ払う剣になるぜ!」
「僕の呼び声に答えてくれ――『魔剣創造』!」
「俺の呼び声に答えろ――『刺客の血』!」
その名を口にした瞬間、僕の、いや僕達の身体の芯から感じる聖なる気配と魔剣の気配…だけど、悪魔である僕達でも害意を感じない、むしろ力を授けてくれる様な…!
「
「禁手『
「な、エクスカリバーが!?馬鹿な、反発し合う要素が混じり合う事などある筈が…!」
「それがあるんだよ、耄碌ジジィ!」
「(ドズゥ!)が!?あ…」
「じゃあな…地獄を楽しんで来な!」
僕が作り出した聖魔剣は、3本統合されたエクスカリバーをも難なく打ち砕き、フリードの指から、まるで触手の様に飛び出て来た血はそのままバルパーに襲い掛かり、急所の数々を貫いた…やった…僕達は…!
「…皆、見ていてくれたかい?僕達の力は、エクスカリバーを越えたよ」
「…やったぜ、皆…お、良い風が吹いてきたな…新しい一歩を踏み出した俺達を、皆が祝福しているみたいだぜ」
フリードの言葉に頷きながらふと周囲を見ると、
「『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!』」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
使い魔である天馬のエレンに跨り、コカビエルをタコ殴り(?)にしている、一誠君の姿があった。