『相棒、ふと思ったんだが…相棒の武器であるタスクと鉄球回転、そのどちらも回転によって力を発揮し、相棒が言う『黄金の回転』によって更なる力が目覚める…ならば、その『黄金の回転』を、別の『黄金の回転』と重ね掛けしたら、より強力な物になるんじゃないか?』
「!…成る程な」
…あれは焼き鳥野郎とのレーティング・ゲームで勝利を収め、エレンを使い魔にしてから幾日が経った時だったか。
ふとドライグが、思いついたかの様に呟いた事…それは俺にとって目から鱗だった。
『黄金の回転』と『黄金の回転』の重ね掛け…差し詰め音速で飛び交う飛翔体の前方の空気が押し込まれ、数メートル前から現地点の空気が濃縮される事で生み出される『ソニックブーム』の如く…成る程、面白いな。
だが、それを成すには問題がある…『黄金の回転』同士を上手く重ね掛け出来るかどうか…ソニックブームの例えで言うなら、押し込む空気が無ければ発生しない…この考えから生み出されたのが、超音速旅客機『コンコルド』における、あの細長いフォルムだ。
今現在で俺が『黄金の回転』を生み出せるのはタスクによる爪弾と、鉄球だけ…だが片手でやろうとすれば乱れが生じる…人間の手足というのは別々の行動を同時に行える程器用じゃない。
かといって両手で分担させても、重ね掛けするには遠い…どうすれば上手く行くか…待てよ?
例え俺1人で重ね掛け出来なくても、パートナーに『黄金の回転』を生み出させて、それを重ね掛けすれば…!
そうだ…エレンだ…!
よくよく考えれば回転によって力を発揮するのは何もタスクや鉄球回転だけじゃない、極端な話、生物が歩行する事だって股関節の回転による物、増してや馬は、その回転による走行のパワーは伊達じゃない…!
試してみる価値はあるな…!
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こうして俺が立てた推論は、
「喰らいやがれぇぇぇぇ!(ヒュォォォォォン!)」
『ガァァァァァァァァ!?』
「なっ!?ぐぁぁぁぁ!?」
「コカビエル!?」
「ふぅ…どうやら間一髪セーフって所か?」
鉄球からエメラルドグリーンの、人に良く似たヴィジョン『ボール・ブレイカー』を生み出し、それが、三つ首の魔物3体を、後ろで偉そうに浮かんでいた堕天使…良く見たら黒い翼が5対もあった、恐らくコカビエルだろう…ごと突き飛ばした事で、証明された。
「ボール・ブレイカー…これが俺の、俺達の技術の、1つの完成型だ!」
『まさかケルベロスを3体、コカビエルごと余裕で突き飛ばすとは…今更ながら、あの時の俺の何気ない思い付きを、あり得ない程の代物に昇華させた相棒…やはり流石だな』
…まあ、ぶっつけ本番だったけどな。
「俺はあの馬に乗った悪魔をやる…あいつは、俺自身が仕留めなければ気が済まん!お前はその間、他の連中を足止めしてくれ」
「分かった」
だが流石に魔物3体という緩衝材の効果は大きかったのか、コカビエルは立ち上がり、バルパー・ガリレイに何か指示を出しながら俺に視線を向けた…先程突き飛ばされたのが余程腹に据えかねていたのか、その視線は憤怒に染まっていた…お前は怒りを原動力にした悪鬼羅刹か!
「良くもやってくれたな、下級悪魔の分際で…!開戦の前に、貴様を八つ裂きにしてくれる!」
「それはこっちの台詞だ、この老害が!戦争をまた引き起こすなんざ、何を考えてやがる!」
「愚問だ…俺は戦争を続けたかったんだ、2天龍が封印されたあの時、我らが優勢だった…このままやれば、我らの勝ちは揺るがないと言える程に!だが、アザゼルもシェムハザもバラキエルも、戦争を止めると言い張り、それは今になっても変わらん!故に俺は単独で戦争を引き起こしてやろうと考えた!そして今、この街を崩壊させる事でそれが成就するという算段だ!」
「てめぇ…!その戦争によって、恋人や家族、親友や恩師、仲間や部下…そんな大切な存在を失う気持ち、1万年以上も生きたお前になら、そんな大切な存在を持った奴が身近にいるお前になら分かる筈だ!それでも戦争がしたいか!?」
「ふん…
分からない、と言ったら?」
今…こいつ何つった?
大切な人を失う気持ちが…分からない、だと?
1万年以上生きたコイツが、大切な存在を持っている奴が身近にいる筈のコイツが…分からない、だと…!?
「上等だ…!テメェは、テメェだけは許さねぇ…!テメェは…テメェはこの『赤龍帝』兵藤一誠が直々にぶちのめしてやる…!」
『貴様も哀れだな、コカビエル…相棒を、大切な存在が失われる事を誰よりも恐れる悪魔を、一番怒らせてはいけない存在を、怒らせたな…これが、貴様の運の尽きだ』
「何を言うか!唯の下級悪魔が、神滅具を有した位で、俺を偶々突き飛ばした位で良い気に」
今すぐにその無駄口を封じ込めてやる!
「タスク…Act4!(ドォン!)」
「ふん、何をするかと思え…な!?馬鹿な、身体が、動かないだと!?」
『!?…今まで相棒の事をずっと見て来たが、今回の成長は…恐ろしいな…!これは…全盛期の俺ですら抵抗できない…『無限』にも比肩する力…!』
「(ドガァン!)がぁぁぁぁぁ!?」
ドライグが何か怯えにも似た声をあげているが、気に留める必要は無いな…俺は、俺達はただ、目の前の木に磔になっているピエロ鴉を…叩き潰すまで!
そう…俺と、俺の隣に立っている、Act4と化したタスク…今までのロボットだったり妖精だったりといった趣とは違って、ピンク色の全身鎧を纏った人型の姿…と共に、叩き潰す!
「さぁ、覚悟は出来てんだろうなぁ…!そのふざけた幻想を抱きながら…地獄に落ちやがれ!」
「ば、馬鹿な!こ、この俺が、こんな下級悪魔に(ドゴォン!)がぁ!?」
「『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!』」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「『オラァァァァ!』」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
俺とタスクによる怒涛のタコ殴りのフィニッシュを決めると、タスクのヴィジョンがすり抜けながら、コカビエルの身体が滅びて行く様に消えて行った…やったか…!
「皆…やったぜ」
「は、はは…フリード、僕は夢でも見ているのかな?」
「これは現実だぜ木場ちゃん…」
「…」
コカビエルを撲殺(?)した俺を祝福(?)するかの様に歩み寄る木場達…だが、何かゼノヴィアの様子がおかしい…どうしたんだ?
「兵藤一誠…いや、兵藤一誠の中にいる『赤い龍』ドライグ…記憶にあるなら答えてくれ」
「ど…どうしたんだ、ゼノヴィア」
「神は…いないのか?もう既に、お亡くなりになられたのか…?」
え…それって…
「バルパー・ガリレイも言っていたが、木場祐斗やフリード・セルゼンが聖魔剣と言っていた物等、聖と魔の力が混じり合う等、本来はありえない筈なんだ…だが、神が既にお亡くなりになられたとあらば、聖と魔を司る存在のバランスが崩れたとあらば、説明はつく…なあドライグ…神は、いないんだろう?」
「え、そ、それは」
『…本当だ、神は…いない。あの大戦で…死んだ。俺達の争いに巻き込まれて』
!?な、ドライグ、本当なのかよ、それ!?
「は…はは、神は、神はいないのか…」
「ゼノヴィア…」
「まさか…コカビエルの死体すら残さず滅ぼすとはね。『ライバル』は相当な凄腕と見た」
「「「!?」」」
ドライグから驚愕の真実を打ち明けられ、壊れた様な声を上げるゼノヴィアにどう声掛けしようかと考えていたその時、今までに感じた事の無い位に強烈な…いや、なにか何処かで感じた様な懐かしい気配を感じ、振り向くと、どっかのロボットアニメに出て来そうな白い全身鎧を身に纏った奴がいた…今の口振りといい、これって、まさか…!
『ああ…まさか白いのが現れるとはな』
『今回の赤いのは余程良い相棒に恵まれたらしいな…我らでも勝ち目は薄いと思った方が良いぞ?』
「ふふ…余計に戦いたいな!…まあそれは良いとして、今日はコカビエルを連行しようと思ったんだが…既に肉体は滅びたし、そっちも取り込み中だろう?今日は此処でお暇させて貰おう」
「あ、待てよ!」
俺が止める間もなく、今代の『白い龍』の神器を持った奴は立ち去った…直ぐに帰る位なら空気読んで入れや!
…と、今はゼノヴィアだな。
「ゼノヴィア…済まなかった…俺1人が謝ったってどうにもならないだろうけど、神を殺した存在を相棒とした俺からのせめてもの詫びだ…本当に済まない!」
「…良いんだ、兵藤一誠。私は何処かで覚悟していたかも知れない…神は万能では無い、死ぬ事もあるのだと。ただ…な、踏ん切りがつかないだけだ。今まで、もう既に亡くなられた神にお仕えしてきたが、その主がいないと分かった今、誰にお仕えすれば良いのか…とね」
ゼノヴィア…!
「ゼノヴィア…神を殺した存在の相棒である俺が言うのもアレだが…今は泣いてくれ、思う存分。そしてさ、落ち着いたらまた会おう、今度は…そっちにとっての仇敵として」
「!?兵藤君、何を!?」
「イッセー君…それ自殺志願だと言いたいんですかい?」
「それは出来ないさ…兵藤一誠、頼みがある…胸を貸してくれ」
「…分かった、此処で泣いてくれ」
「ああ…う…あぁ…!」
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「何…この感覚…?」
同時刻、某所…
「我と…同じ力…?」
此処でとある少女が…
「ドライグ…?いや…」
立ち上がり…
「…会いたい…我と…同じ力の…使い手に…」
…その場を飛び出した。