35話_俺、堕天使の総督と会いました
結局、聖剣が盗まれた事件は解決、その後イリナは1人、5つのエクスカリバーの欠片を手に、バチカンへと帰って行った…え、何でイリナ『1人』だって?
どうやらゼノヴィアが神の不在を、1万年前の大戦で死んでしまった事を知ってしまったのが、教会の戒律に抵触したそうで、ゼノヴィアは教会を追放されてしまったらしい…確かに、信ずるべき存在がいないと知れ渡ってしまったら、信者は打ちひしがれ…実際にこの話を聞いたアーシアはゼノヴィアと同じく、1時間位、悲しみに暮れていた…教会、引いては天使陣営から人員が大きく流出してしまうに違いない、そうなれば天使陣営は終わり…その気持ちは分かる。
ただ頭では理解出来ても、心の中ではどうも遣る瀬無い気持ちになる…俺の相棒がかつて、彼らの信ずる主を殺してしまった事もその気持ちにさせた…
…どうした物か、と思っていたのもつかの間だった。
「この度、リアス部長の眷属悪魔となった、ゼノヴィアだ。ランクは『戦車』。今後とも宜しく頼む」
「…は?…今、何て?」
「…え?…どういう事ですか、部長?」
「…Oh,my god…って神はいないんだっけ、何この急展開」
「…本当に?」
「mjdsk?」
「ええ、そうよ。行く当てもないから誘ってみたら、イッセーと一緒ならと2つ返事でOKをくれたわ…ちょっと釈然としないけど」
「…成る程、敵討ちの機会を伺おうってか」
「いや違う…君に惚れたのだよ。誰よりも心優しく、そして強い君にね」
「…は?…今、何て?」
「何度も言わせる気か?ならばお望みにお答えしよう…兵藤一誠…いや、イッセー、
好きだ、愛している」
…な、ナンテコッタイ
「いやいやゼノヴィア?俺には彼女が、そこにいるれーちゃんが俺の彼女だって事、前にも言ったよな?」
「ああ聞いた。だがその後、こうも聞いた。自分の家族や親友、主である部長と、仲間達…大切な存在を、絶対護って見せると。つまり其処に私が加わった今…私も大切に想ってくれる、そうだろう?」
「いやいやちょっと待て確かにそう言ったし、お前の事も大切だが、何でそこで頬を赤らめる!話を飛躍し過ぎだ!」
「はいはい飛躍でも何でも無いでしょうに、素直じゃあ無いんだから、イッセー君はっ!もう宣言しちゃえYO、俺は皆纏めて愛してやるぜぇぇ!ってさ」
「お前は黙ってろ諸悪の根源!」
ゼノヴィアが部長の眷属として、悪魔に転生した事や、ゼノヴィアがエクスカリバーの他に持っていた聖剣『デュランダル』を占有する事が決まった事等の重要事項の発表は、何だか締まらなかった…
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「…まあ、そんな事があって、色々と大変だったんですよ」
「ははは、悪魔君も災難だなぁ。彼女持ちでも沢山の女の子に引っ付かれてさ。女難の相でも出ているんじゃね?」
「…シャレにならないから止めてください」
「あっはっは、悪い悪い。こうして青春している少年を見るとついからかいたくてさ」
俺達が悪魔になってから色々と騒動があった一方、悪魔としての通常の仕事…契約取りの方も、ビラ配りの研修を終え、契約を待つ身となった矢先、早速俺を名指しで指名して来た人がいた。
今俺と談話している人がその人で、俺より一回り位大きい体躯(身長で言うと190cm近くだな)、黒髪短髪、整ってはいるがチョイ悪系の風貌、そして今時珍しい着流しを着用したアラフォーのオジサンだ…此処まで書くと古典的な、ヤが最初に付く人っぽいが違う、実際に話してみるときさくで親しみやすく、今回の契約からして結構優しそうな人だ。
だが…
「それで、契約の方だが…俺の対戦相手になって欲しいのは分かっているよな?…コイツの」
そう言いつつ取り出したのは、青地の裏面にDuelMastersと書かれたロゴが印刷されているカードの束…言うまでもなく、デュエル・マスターズのデッキだ。
「はい。それにしても、良く俺がデュエマをやっているって知っていますね」
「ああ。あそこの悪魔達で流行っているって聞いてさ、特にお前さん、かなりの腕前をもっているそうじゃ無いか。それを聞いて、戦ってみたくなったんだ」
「はは…期待に答えられる様、頑張りますよ」
「頼むぜ、手加減は無しだ!」
本当、何処でそれを聞いたんだか…そんな疑問は心に留めつつ、準備を始める。
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ま、負けた…orz
何て事だ…『デュアルショック・ドラゴン』を早い段階で引けたし、『エメラル』とかによる最速ルートでは無いにしても『ライラ・アイニー』を引けて、3ターン目には出せた…なのに…なのに…
あの驚異的陣形は何なんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「はは、中々面白い速攻デッキだが、ちょいと流れに乗れなかったみたいだな」
「…堕天使総督はデュエマも強いんですね」
「おや、バレてたのか?」
自分の身元が既にバレていたにも関わらず男性…堕天使の総督、アザゼルさんは、先程のデュエルに勝った事もあってにこやかだった。
…本人としては気配を隠していたつもりなのだろうが、コカビエルをも上回る力量を持っている存在が、俺の直ぐ傍にいるのだ、気配察知が得意な俺だと直ぐに分かる。
「それにしても、何で俺を名指しで?唯でさえ悪魔と堕天使は停戦中とはいえ敵対状態、その総督が悪魔と契約なんて、国交関係からして不味くはないですか?」
「そこはお前さんの主の兄貴であるサーゼクスから許可取ってある…まあそう固い話は、今回は無しだ。お前さんには、配下の奴等が色々世話になったし、ちょっと御礼と謝罪をしないとなって思ってさ」
御礼と謝罪…?
「数か月前のレイナーレ…今はレイネルだっけな、アイツらの一件と、つい最近のコカビエルの一件…何から何まで解決に奔走してくれたそうじゃないか。ありがとうな」
「ちょちょ、顔を上げてくださいよ!れーちゃん達の件は放って置けなかっただけだし、コカビエルの件は仲間達の用件に付き合っただけですから!」
「だがそれでもだ、レイネルの一件もコカビエルの一件も、国際問題に発展するような代物だったんだ、それをお前さんの手腕で内々の問題で片付けて貰った…礼を言う理由何ざそれで十分だ…そして済まない、全て俺の管理の甘さが招いちまった事だ」
そう言いながら土下座をするアザゼルさん、その背からは、背負っている責任感がひしひしと伝わって来た…れーちゃんが『役に立ちたい』と思う気持ちも分かる、この人は一見しておちゃらけている様で、その実、組織のトップであるべき、カリスマに満ちた人だ。
「サーゼクスから聞いたぜ、レイネル達4人とも、グリゴリの追及を恐れて余り出歩かなかったそうじゃないか…それは俺達にも責任がある、あの4人の処遇は悪魔陣営に一任すると伝えてある。土産話にでもしてくれ」
「!…アザゼルさん」
そう…あの事件の後に部長の眷属となってから、れーちゃん達元堕天使の4人は、グリゴリの追及を恐れて、必要時以外は外出していない。
そういう都合もあって…正直に言うと、れーちゃんとは碌にデートしていなかった…精々、学校からの帰り道を一緒に歩く位だ。
これを機に、れーちゃんとの思い出を積み上げて行こう…最近は色々と騒がしくて、一緒にいる機会も少なくなっちゃったしな。
余談だが、あの後帰還した俺の話を聞き、部長は「営業妨害も良い所ね…」と立腹していた…確かに堕天使が悪魔と契約して対価を支払ったりしたらそれは『賄賂』になりかねない、故に契約を無効とするしか無く、1人の人員を無駄に拘束した事と相違無い…俺にとっては有用だったが、ちょっと軽率だったな。