3話_俺、16歳になりました
私立駒王学園…県下有数の進学校で、かつては女子校だった事の名残から未だに女子の比率が高い(男子が3に対して女子が7だったかな)、俺が在籍している高校だ。
そんな駒王学園には、全校生徒に知られた有名な生徒がいる。
まず、
「あっ!リアスお姉様だ!」
「あそこにいるのは朱乃お姉様!」
「何時も綺麗です、憧れます!」
学園の2大お姉様こと、リアス・グレモリー先輩と
「あ、小猫ちゃんが来たぞ!」
「今日も可愛い~!」
学園のマスコット、
「げっ!松田が来やがった!」
「元浜までいるぞ!」
「あ、アンタ達近づかないでよ!」
学園のエロコンビ、
そして、学園のダブルイケメン、
「きゃ!木場君だ!」
「格好いいなぁ~」
「あっ!こっち向いた!嬉しい!」
『王子様』の
「皆、イッセーさんだ!」
「今日もすっごく男らしい!痺れるぅ!」
「アニキ!お早うございます!」
『兄貴分』の…俺、
「おう!皆おはようさん!」
何時もと同じく、周囲からの『アニキ!』やら『イッセーさん!』といった歓声に迎えられながらの通学…はは、人気者は大変だな。
「イッセーのイケメン野郎がぁぁぁぁ!」
「何でお前ばっかりモテるんだぁぁぁ!」
「うるせぇコラ(ドゴォン!)!」
「「あべしっ!?」」
「お前ら…自分の胸に手ぇ当てて考えて見ろ。俺が女子だったらお前らの事を軽蔑しているぞ」
そして女子に矢鱈と声が掛かる俺に嫉妬心を持った松田と元浜の襲撃をダブルラリアットで返り討ち、これもまた何時も通りだ。
スキンヘッドが特徴的な松田と、典型的な眼鏡男子の元浜、この2人は俺の中学からの親友なのだが、その振る舞い…『エロコンビ』という不名誉な渾名で男女問わず嫌われる原因となっているその振る舞いは、俺のちょっとした頭痛の種である。
エロ本やエロビデオの持ち込みは日常茶飯事、口を開けば放送禁止用語のオンパレード、暇さえあれば女子の着替えを覗き、挙げ句糾弾されるや否や「脳内で犯すぞ!」と無茶苦茶な逆切れ…これでモテないと嘆くのはお門違いだと皆思うぞ、俺もそう思う。
とは言えそんなキャラが何処か憎めず、というかむしろ見ていて面白いと思っている俺も、ある意味同類なのかも知れないな…まあそうで無ければとっくの昔に絶交しているし、俺からあの事で「一緒にやらねえか?」と誘いもしないが。
「アニキに何突っかかっているんだお前ら!」
「イッセーさんが汚れちゃう!早く離れなさい!」
「ちっ!退散だ!」
「イッセー!また休み時間にな!」
「おう、道中気をつけろよ」
俺に挨拶していた無数の生徒達に追い掛け回される形でその場を離れた2人…これも何時もの光景だ。
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「ようお前ら、朝はどうにか切り抜けたみたいだな」
「そう思うんだったら代われよ」
「全くだ、毎朝お前のファンに糾弾される俺達の身になってみろ。お前と話らしい話も中々出来ん」
…むしろ『エロコンビ』の親友である俺の身になって欲しいんだが、お前らの為にも。
「まあそれは置いて、今日のバンドの練習だが…お前、出られそうか?」
「ライブもそう遠くないし、1日でも練習がしたい。何よりお前は、俺ら『GRID』のボーカルなんだ、お前がいないと締まらないぜ」
「ああ、分かっているぜ」
来て早々、バンドの予定を話し合う俺達…そう、俺達3人(+もう1人)は『GRID』という名前のロックバンドを組んでいて、俺はそのボーカル兼ギターを担当している(松田はドラム、元浜はベース)。
元々音楽活動に少なからず興味を持っていた俺、駒王学園に軽音楽部があるという話を聞いてコレだ!と思い立ち、真っ先にこの2人に「一緒にやらねえか?」と声を掛け、「バンドで活躍してハーレム街道だ!」とアホな動機で快諾した2人と組んだのが始まりだ。
「分かっているなら良いんだが…そろそろ『応援』としてじゃあなくて、部員として入ってくれないか?」
「部長も言っていたぞ、「兵藤さえいてくれれば部も安泰だがなぁ…」ってさ」
「あー悪い、そればっかりはな。俺は他にもやる事があるんだ」
だが『GRID』のメンバーで軽音楽部に入っているのはこの2人だけ、もう1人のメンバーは生徒会役員としての活動が主だし、俺は…帰宅部だ。
「けど悪い。今日は用事があるんだ。また明日呼んでくれないか?」
「お、おいおいまたかよ?そろそろ全体練習もしないといけないってのに…」
「イッセーは良いよな、歌は直ぐ物にするし、ギターも上手いし…」
「本当に悪い!この埋め合わせはちゃんとするから、な?」
「はあ…分かったよ。何時もの事だしな」
「本番はちゃんとやってくれる。これがイッセーだもんな」
「御免な、練習に中々行けない不良メンバーで」
そして、俺が軽音楽部に入部出来ない原因である『他にやる事』…それが今日やる事になり、バンド練習を休まざるを得なくなってしまった。
悪いな、松田に元浜、それに……も。
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「情報からして…この辺だな、ドライグ」
『ああ。力量はそんなに無さそうだ。相棒なら楽勝だが、油断するなよ?』
「分かっているぜ、ドライグ」
俺が住む街の外れにある、元は何かのビルだった廃墟、今俺…いや『俺達』はその近辺で噂されている『何か』の気配を探りに此処にきている。
そんな俺…正確には俺の脳内に直接語り掛けて来るのは『
嘗ての大戦で大暴れした挙げ句に封印されたが、本気になれば世界でも5指に入る強さを誇るドラゴンだ。
突然だが、この世界に住んでいる高度な知的生命体は人間だけじゃあ無い。
天界に住まう神様によって作られ人々を導く『天使』、天使が欲望を抱いた事で天界を追われて冥界に落ち延びた『堕天使』、その冥界の覇権を堕天使と争う『悪魔』、他にも吸血鬼に妖怪に、世界各地の土着の神族…そしてドライグを始めとしたドラゴンが、この世界で勢力を築いている。
特に勢力の大きかった天使と堕天使、それに悪魔…俗に言う『3大勢力』は、今から1万年位前にこの世界の覇権を争って戦争をしていた。
だがそこに乱入したのがドライグと、彼と双璧を成す『
その争いに巻き込まれた形となった3大勢力は戦争どころでは無くなり、共同戦線を組んで死力を尽くした末に、2体の封印に成功したらしい。
その封印されたドライグとアルビオンはというと、天界の神様が作り出したアイテム『
一方の3大勢力、2体の封印に成功したまでは良かったのだが、その為に多大な犠牲を払ってしまい、その大きさは戦争の続行どころか、種族の維持すらも厳しい程になってしまったので、一先ずは不可侵条約を締結、現代まで勢力回復に努めて来たとの事。
その1つ、悪魔陣営は何やら他の種族を悪魔として生まれ変わらせるシステムを構築したとの事で、これによって勢力を急速に回復していったそうだが、早すぎる勢力増大は、キックバックともいえる存在をも生み出した。
『はぐれ悪魔』。
悪魔として生まれ変わった存在が、その強大な力に溺れて、生まれ変わらせた存在…まあ『主』と言うべきか?…に反逆、暗殺したり脱走したりでお尋ね者になったいわば『犯罪者』だ。
そんなはぐれ悪魔の大半はその大いなる欲望を主に人間にぶつけ、それを満たしていくという…こっちに言わせれば危険極まりないな。
無論、はぐれ悪魔の中にも込み入った事情がある奴もいる。
追い詰められた末に強制的に悪魔にされたり、主との軋轢で反逆せざるをえなくなったり…純粋な悪魔自身が欲望の塊なのだから、それも大いに有り得ると俺は思うがな。
まあ、それは置いといて…俺がバンドの練習を休む要因となっている『やるべき事』、それは…『はぐれ悪魔の駆除』。
「おや、旨そうな匂いがしたが…甘いのか辛いのか、それとも酸っぱいのか苦いのか…どうなのかな?」
…来たか。
足音のした方向に振り向くと、そこには上半身丸出しの女…此処までなら別の意味で危ない展開だが…下半身が猛獣やら蜘蛛やら…とにかく名状しがたい形状の悪魔がいた。
こいつが、今回のターゲットだな。
「まあ、あえて言うなら…物凄く旨いぞ。尤も…食わせやしないがな!」
「舐めるな人間風情がぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺の挑発にまんまと乗ったはぐれ悪魔、高速でこっちに接近したかと思ったら、急にハイジャンプした…ボディプレスでもする気か?だがな…
「タスク!」
「(ザシュゥ!)ぎゃぁぁぁ!?馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!」
俺にとって…俺の『タスク』にとってはでかい的でしか無いぜ!
…独特の音を出しながら高速回転する俺の指の爪、そして俺の側で佇むピンク色の妖精…脆弱な『人間』である俺が、強大な『悪魔』と戦う為に身につけた『武器』…俺はコレを『爪(タスク)』と呼んでいる。
ある日突然、俺の目の前に現れたタスク…観察している内にコイツは俺の精神を具現化し、俺の意志で現れたり消えたり、そして動いたりしている物だと分かり、そしてコイツが現れている間だけ、俺の指の爪を回転させる事が出来る事も判明した。
この回転はかなり凄まじく、ナイフの如く切り裂いたり、ピストルの如く発射したり(射程は100m位だったかな)、地面に当てれば車の如く高速移動も出来る優れものだ。
挙げ句の果てに、切り裂く際には俺の意志で斬撃を『伸ばす』事も出来る…最大で5mも伸ばせると言えば、それがどれだけぶっ飛んでいるかが分かるだろう。
これを用いて俺は、街に入り込んだはぐれ悪魔の駆除というヒーローじみた事をやっている…あの日の、あの出来事を機に俺がした決意の実現の為に…
「しゃぁっ!」
「ば(ザァン!)馬鹿な…!」
とどめの一撃を受け、倒れ伏すはぐれ悪魔…結果は上々だな。
『お疲れ、相棒』
「おう、ドライグ」
『しかし相棒の腕を踏まえれば、今回は時間を掛け過ぎな感があるぞ。だがまあ、あれは余裕の表れと言うべきかな?』
「そうか?俺はまだまだ未熟さ…もっと…強くならないと…」
ドライグと言葉を交わしつつ、俺は廃墟を後にした…
「あの人間、恐ろしい位の腕前だな。あの独り言からして神器、それも何らかの魔獣の類が封印された高位の物が、既に覚醒している筈…いずれ我らの脅威になる。早急に手を打たねばな」
あの廃墟に、俺の事を監視していた奴がいたとは知らずに。