ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

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41話_俺、吸血鬼を預かりました

「あ、あのイッセーさん?ど、何処へ向かっているんですかぁぁぁ!?」

「俺の家。取って食おうって訳じゃ無いから安心しな…まあ直ぐには無理だろうが。それより狭くないか?…人目の問題があるから詰め込んじまったが」

「だ、大丈夫ですぅぅぅ!」

 

文章だけで見ると俺とギャスパーが話し合っているだけなのだが、傍から見ると、駒王学園の制服に身を包んだ男子高校生(俺)が登山用(しかも縦走向けの大型の奴だ)のバックパックを背負いながら何処からともなく聞こえて来る少女(ギャスパー)の声に答えるという異様な光景だ…ちなみにバックパックの中身は言わずもがなギャスパーだ、自分でやっておいてあれだが、何処かの高能力芸人みたいだな。

というかそもそも何で俺がギャスパーを、そんな手段を講じてまであの部屋から連れ出したのかというと…

 

「リアス、ちょっと聞きたい事があるんですが」

「…ギャスパーの事かしら、イッセー?」

「はい。俺が歩み寄ろうとした瞬間に見せたあのオーバー過ぎる怯え…神器の件もそうですが、あれは尋常じゃありません。過去に何かあったんですか?それも…トラウマ級の壮絶な物が」

「…ええ、そうよ」

 

それから俺はリアスから、ギャスパーの過去を聞いた。

吸血鬼の父と、その愛人だった人間の母との間に生まれたハーフ吸血鬼という出自故、純血を尊ぶ吸血鬼社会において親兄弟からすらも差別されていた事。

自らの神器が原因で、人間社会からも化け物扱いされていた事。

上述の理由から、幼い頃より侮蔑、虐待、迫害といった理不尽な扱いをされ、自らの居場所が無かった事。

とある吸血鬼の手助けによって故郷を脱出するも行く当てもなく、ヴァンパイアハンターによって殺害され、そこを偶然通りかかったリアスによって悪魔に転生した事。

しかしながら神器を自分でコントロール出来ず、当時のリアスもまたギャスパーの力を制御出来なかった為に、周囲の時間を止め続けた為に、封印された事。

それを聞いた俺はいてもたってもいられず、

 

「リアス…ギャスパーを俺に預からせて下さい!お願いします!」

「え…ど、どうしたの、イッセー?」

「ギャスパーは俺が面倒を見ます!リアスの眷属として、1人の男として恥じない、いや立派な存在に育てます!だから、だから俺に任せて下さい!」

「わ…分かったわイッセー、お願いね」

 

そうリアスに頼み、リアスもそれを了解してくれた。

 

------------

 

「ギャスパー、痒い所は無いか?」

「は、はい大丈夫ですぅぅぅぅ…」

 

安直な手だが、まずは裸の付き合いという事で今俺とギャスパーは一緒に風呂に入っている…見た目的に女子と変わらないので問題ありそうだが、リアスの言っていた通り男子だったから大丈夫だ。

で、今俺はギャスパーの背中を洗っている…しかし細い背に撫で肩、ナニが付いていたと言ってもどう見ても女子としか言えない華奢さだよな、これは。

そうこうしている内にギャスパーの背中を洗い終え、俺達は湯船に浸かる…吸血鬼の伝承の中に「流水を嫌う」という物があるが、リアスに確認してみたらそれは無いらしい、まああったとしたらギャスパーの故郷ルーマニアからどうやって日本に来たのか疑問だからな。

 

「イッセーさん…そ、その、凄い傷ですね…」

「ああ、これか」

 

そんな中ギャスパーが、俺の全身に刻まれた無数の傷を見て聞いて来た…その時の顔色が恐怖で青ざめていたり、若干口調が震えていたりしたのは、恐らくトラウマを思い起こさせるからだろうな…安直な手に頼り過ぎたか、これは。

けれど引きこもりを克服するには避けては通れない道、タイミングは早いが、問題ない。

 

「俺、悪魔に転生する前から1人で、はぐれ悪魔の討伐をしていたんだ。無論、人間だった俺が身体能力で悪魔に敵う訳が無いから、この(チュミミィィィン!)爪弾を使ってだ」

「わっ!?つ、爪が回転していますぅぅぅ!」

「ああ。この回転が俺の能力の肝でな、爪の回転エネルギーによって金属をも切り裂き、その斬撃を5m先まで伸ばせ、更には100m先まで銃撃をも可能にするんだ。今じゃあ俺にとって最高の武器だ」

「す、凄いですぅぅぅ…」

「ただ、昔から完璧に使いこなしていた訳じゃあ無いんだ。今言った事を、俺の意志で自由自在に出来はするが、それは逆に俺の意志1つ1つを敏感にくみ取り過ぎて暴発してしまいかねない危険性も秘めている。その結果がこの所々にある切り傷の跡だ」

 

特にタスクを発現させたばかりの頃にはやらかしていたな。

斬撃を伸ばすタイミングが早すぎて二の腕を斬ったり、振り下ろした後のフォロースルーの際に、伸ばしていた斬撃を引っ込めるのを忘れて足を斬ったり、構えた際に回転している爪をうっかり鎖骨に付けて裂傷を負ったり…

 

「今では完璧に扱いこなせたからか、そういった暴発は抑えられている。だが悪魔になって身体能力が増し、爪弾の暴発の危険性が出て来る密着戦も出来る様にと考えて格闘術も学び始めたんだが…やっぱり素人同然じゃあまともに立ち合うのも一苦労だ。そうして出来たのがこの青痣って訳だ」

 

まだまだ始めて2ヶ月も経過していないが、それでも無駄に多い青痣に恥じない位には実力は付いた…と思う。

指導してくれる佳奈も「飲みこみが良い」と言ってくれるし、戦車である小猫ちゃんとも善戦出来る様にはなったしな。

 

「後、イッセーさん…その、胸の大きい傷は?」

「これか?これは…俺が悪魔になる切っ掛けを作った、罪の証さ」

「罪…ですか?」

 

そう、俺の罪…れーちゃんを堕天させ、10年もの間堕天使社会において理不尽な扱いを受け続けて来た彼女をほったらかしにし続けた、俺の罪…その罰として受けた、れーちゃんの光の槍の、人間としての俺を処刑した凶刃の跡だ。

 

「なあ、何でお前を此処に連れて来たか、分かるか?」

「は、はい?わ、分かりません…」

「ダブって見えたんだ。俺の彼女であるれーちゃんとアーシア…2人と、お前が」

 

そう、あの時後先考えずにギャスパーを預からせてほしいとリアスに頼んだのはそれが理由…壮絶な過去を持ったギャスパーと、俺との恋愛が原因で堕天した経緯で迫害されたれーちゃん、そして身に宿した神器によって天国と地獄を味わったアーシアが重なって見えて、放って置けなかったからだ。

 

「お前には悪いが、リアスから聞いたぜ、お前の過去を。ずっと辛く、苦しかったんだよな…そんなお前が放って置けなかったんだ。俺が何とかしたいって、いてもたってもいられなかったんだ…同じ、リアスの眷属として、大切な仲間として」

「仲間…ですか…?」

「ああ、大切な、大切な仲間だ。お前を絶対に1人にはさせない。お前を絶対に見捨てたりはしない。お前が力を暴走させたとしても、俺が救い出してやる!」

 

それが俺に、ギャスパーの力に抗える俺に出来る事。

 

「イッセーさん…1つ聞いて良いですか?」

「何だ?」

「イッセーさんは今代の赤龍帝だと聞きましたし…それ以外にも凄い力があると…今この目で見ました。その…怖くなかったんですか?そんな力を持った…自分が」

 

怖い、か…周囲の時間を止められる神器を持ちながら、それを制御出来ない現状のギャスパーならそう思うか。

だが、

 

「怖くない、と言えば嘘だな。今まで俺は、俺の力の使い方は学んできても、その在り様を考えた事は無かったから、正確には分からないと言った方が良いな」

 

悪魔に転生するまで、ずっと強くなりたい、れーちゃんの隣に立ちたいという想いが一杯で、転生した後も色々な事があって考える暇が無かった俺には、答えようが無い…いや、本質的には恐れていたのかも知れない…今代の赤龍帝だという事を知られたくないが為に人間時代、赤龍帝の籠手は使用しなかった事がその現れだ。

だが、

 

「けどこれだけは言える。怖がるだけじゃあ何も始まらない。その怖さをどうするか…それが大事だと俺は思う」

「怖さをどうするか…ですか?」

「ああ。例えば俺にとって怖い事…それは大事な人を失う事だ。それに対しての答えは…単純だが、失わせない程の、奪い去ろうとする存在を返り討ちに出来る程の力を有すれば良い」

 

赤龍帝の『色々な物を惹きつける』性質がそういった輩をも連れて来るなら、そいつらも倒して見せる。

俺の大切な恋人…例えば『無限の龍神』ことオーフィスを狙う輩がいれば、そいつも倒す。

以前ドライグから聞いた『歴代の赤龍帝の怨念』…それが目覚めるのならば、それをも克服して見せる。

 

それが出来る位に…余裕でして見せる位に、強くなる…!

 

「僕にも…僕にも、出来ますか?イッセーさんみたいに、強くなれますか?」

「出来るさ…いや、俺とお前で、して見せるさ。そうだろう?」

「は…はい!」

 

やって見せるさ…俺が、俺達が!

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