ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

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43話_俺、天使のトップと対談しました

「今日はコイツでトレーニングするぞ」

「て、鉄球ですか?」

 

現代の白龍皇であるヴァーリとの邂逅があった翌日、俺は引き続きギャスパーのトレーニングの指導をしていた…今日のトレーニングは、俺愛用の鉄球を使う。

尤も、何時もの鉄球とは少し違うが。

 

「今からこの鉄球を回転させる。(ギャルルルル!)まずお前はこれを止めて見せろ」

「な、何で回転しているんですかぁぁぁ!?何の力も加えていないのに!?」

「俺の能力の1つだ…詳しい話は後だ、まずは神器で回転を止めろ…なるべく、鉄球だけを止める様にな」

「は、はい!(ぴたっ!)」

「…まあ及第点といった所か。直ぐに範囲を細かく指定するのは無理があるからな」

 

ギャスパーが神器を発動させると、鉄球は動きを止めたが、その際に鉄球を持っていた右手に違和感を覚えた…恐らく、範囲内に入ってしまった影響だろう。

とは言っても今まで暴走させていた事を考えれば、今言った様に及第点はあげて良いな…俺との出会いで精神的に落ち着きを得られたのなら良いな。

で、これで終わりでは無い。

 

「次だ。鉄球に数字の羅列が書かれているのが見えるか?」

「は、はい。えっと、1.618033って、コレ何ですか?」

「俺の能力を最大限発揮する為のキーワードだ…って今それはどうでも良い。それを読み続けてくれ。但し、俺は鉄球に回転を与え続ける。だから神器を発動させ続けてくれ。再び回転を始めたらやり直しだ」

 

このトレーニングの目的は、ごく限られた範囲の神器発動と、その範囲中にある数字の羅列を読む…つまりごく狭い範囲を見続けながら作業する事で神器のコントロール能力と集中力を養う、という事だ。

 

「わ、分かりました!1.61803398(ギャルルルル!)あっ!」

「はいもう一回だ!」

「は、はい!(ぴたっ!)1.6180339(ギャルルルル!)わわ!」

「次!」

「はい!(ぴたっ!)1.6180(ギャルルルル!)えぇ!?」

「どうしたギャスパー、集中出来ていないな。一先ず深呼吸して落ち着け」

「は、はい…すー…はー…」

「落ち着いたか?大丈夫なら、お前のタイミングで始めるぞ」

「はい、お願いします!(ギャルルルル!)っ!(ぴたっ!)1.618033988749(ギャルルルル!)うぅ…あともう少しなのに」

「嘆いている暇があったら深呼吸だ!」

「は、はい!」

 

こうして、今日もギャスパーのトレーニングに明け暮れる…筈だったが。

 

「(ピリリリリ!)あ、電話だ。少し待っていてくれ、ギャスパー。(ピッ!)もしもし?朱乃さん?」

『イッセー君、ギャスパー君のトレーニングの方はどうですか?』

「良い感じですよ。悪魔であるからか、体力は思っていたよりもありましたし、神器のコントロールも、今まで暴走させていた事を思えば及第点を上げても良い位です」

 

…それにしても、朱乃さんが掛けてくるとは珍しいな、何時もならリアスやれーちゃんが掛けて来るんだが…ゼノヴィアとアーシア?2人共スマホの扱いに慣れないらしい、教会の暮らしってどれだけ古式ゆかしいんだか。

 

「それで、急に俺ん所に掛けてくるとは、何か御用ですか?」

『今、お時間取れますでしょうか?イッセー君にどうしても会いたいと言う方がいらっしゃるんですよ…3大勢力において重要な方なのです』

「3大勢力の?…まさかアザゼルさんですか?」

『いえ、違いますわ。詳しくは現地で説明致しますわ』

「分かりました。それで、場所は?」

『今座標を送りますけど、私が住んでいる神社ですわ』

「じ、神社…」

 

確か朱乃さんの母である朱璃さんが神道を信仰する家系だと、以前リアスから聞いたが…悪魔に転生しながら、血縁が所属していたとはいえ敵対勢力の土地と言える神社に住んで良いのだろうか?

 

「ギャスパー、朱乃さんからの呼び出しがあるから、今日のトレーニングは此処までだ。しっかり身体を休めろよ」

「は、はい!」

 

------------

 

「へぇ、此処が…それっぽい空気は感じるが、俺達悪魔を拒絶する感じじゃない…治外法権があると言っても『郷に入っては郷に従え』って所か?」

 

朱乃さんから送られた座標データを頼りに向かうと、その神社は駒王学園からそれ程離れていない場所にあった…悪魔陣営の管理下の地に立てるにあたって何かしらの対策をしたのか?

と、今現在の時点でどうでも良い事を考えていると、

 

「あら、いらっしゃい。イッセー君」

「こんばんは、朱乃さん…それと、そちらの方は、天使陣営の?」

「流石イッセー君ですわね。はい、そうですわ」

「初めまして、今代の赤龍帝、兵藤一誠君。私の名はミカエル、今の天使陣営の長をしております」

 

…まさか天使陣営のトップが来るとはな。

 

「ささ、こちらですわ」

「ありがとうございます、朱乃さん」

 

まさかの方との対面に驚きつつも、巫女服を身に纏った朱乃さんの先導に従い、金色の肩当が付いたローブを身に纏った金髪の天使の男性…だと思う、声が金髪角刈りのホモ疑惑が出ている調査兵団のメンバーみたいだし…ミカエルさんと共に神社の本殿へと入る。

 

「では改めて、初めましてミカエルさん、俺は今代の赤龍帝で、リアス・グレモリーの兵士、兵藤一誠です。宜しくお願いします」

「はい、こちらこそ宜しくお願いします…イリナからお聞きしました、アーシア・アルジェントの件は主の教えに関わる事ではと抗議していた事、教会が過去に行った蛮行に憤慨している事…全て、私達の陣営の不甲斐なさから起きてしまった事です、申し訳ありませんでした」

「ちょちょ、顔を上げて下さい!貴方が謝る事では無いですよ!」

「いえ、これは私達天使陣営の謝罪の気持ち…そして、彼女の件の原因が私達その物にある事への謝罪です。本当に申し訳ありませんでした」

 

自己紹介を済ませたと思ったら急にミカエルさんが謝罪をして来た…びっくりだ、今度会談すると言っても敵対関係の、それもトップが下っ端相手に頭を下げるなんて普通考えもしない事、慌てて俺は頭を上げる様に言うも、彼はそれでは気が済まないと言わんばかりに頭を上げない…アーシアの件の原因がミカエルさんに?まさかそんな…

 

「一誠君は、私達の主である聖書の神がお亡くなりになられた事は知っていますね?」

「はい…ドライグから聞きました」

「話は前後しますが、かつて神は、自身が引き起こしていた加護と慈悲、奇跡を司る『システム』をお作りになられました。このシステムを用いる事によって、地上に奇跡が、信徒に慈悲が、教会の戦士…悪魔祓い達の事です…に加護が与えられました。私達天使も、このシステムによって生まれたのです」

 

システムによって天使が生まれた…ひょっとして?

 

「以前、その話を聞いた事があります。10年前、当時天使だったれーちゃ…レイネルから、1万年前の大戦から、天使を生み出すシステムに不具合が出て、純粋な天使が極端なまでに生まれにくくなった、と」

「レイネルですか、懐かしい名前ですね。10年前に堕天したとお聞きしましたが…今でも元気でおられる様で安心です」

「あの時はすいません、俺への恋心を抱かせた事で、彼女は勿論、貴方達にも迷惑をお掛けしました」

「いえ、その件は私達こそ謝るべき事です、貴方にも、彼女にも…本来なら、純粋な恋心だけで堕天などしないのですが…」

 

本来なら…ひょっとしてさっきまでの話と関係があるのか?

 

「話を戻しますね。神が亡くなられた事でそのシステムを扱うのが困難になってしまったのです…現状は私を中心とした『熾天使(セラフ)』全員の力で起動させているのが精一杯でして…信者への恩恵は思う様に行き届かず、天使が生まれる数も激減し、その天使も昔では考えられない様な理由で堕ちていってしまう…方々から聞いていた現状ならともかく、10年前に恋心を抱いた『だけ』で堕天してしまったのも、それが理由です…本当に、申し訳ありませんでした」

 

辛そうな、悔しそうな声音で現状を説明するミカエルさん…そんなミカエルさんに俺は掛ける言葉が見つからなかった…天使陣営のトップでも、世界有数の実力者でもどうにも出来ないなんて…世界は、運命は、どれだけ残酷なんだよ…!

 

「その、現状何とか動かせているシステムに影響を及ぼす可能性がある物を、教会やそれに関係する場所から遠ざける必要があった…アーシアやゼノヴィアを、神の教えを純粋な心で実行した彼女達を、教えに反しているという批判も覚悟で追放したのは、それが理由です」

「成る程、悪魔や堕天使すらも回復させる神器を持ったアーシアと、神の死という答えを導き出したゼノヴィア…2人がいると、信者が神を、ミカエルさん達天使を疑いかねない、という事ですね?」

「…はい」

 

そんなミカエルさんの悲痛な思いを知り、俺はある決意を固めようとしていた…が、その話はまた後でな。

 

「さて、暗くなる話は一先ずお開きにして、本題に入りますよ。これは、私達天使陣営から、悪魔…いや、今代の赤龍帝である貴方への、三大勢力の和平の証を兼ねた餞別です。受け取って下さい」

 

悲痛の表情から一転、さっきまでの優しさに満ちた表情に切り替えたミカエルさんが、何かを俺の前に差し出す…ってこれは…!

 

「この聖なる気配…まさか、聖剣ですか?」

「ええ、そうですよ。ゲオルギウスが所持していた『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』の聖剣、アスカロンです。天界で管理していましたが、私達三大勢力のトップによって施された術式によって、貴方でも扱える様になっております」

「す、凄い…本当に貰って良いんですか?」

「はい、どうぞ」

 

試しに構えてみる…おお軽い、龍殺しの聖剣とは思えない位、俺の手に馴染む!

『悪魔』で『赤龍帝』である俺でこうなのだ…余程強力な術式が施されているって事だな…俺の為に此処まで、ありがとうございます。

 

「本当に、ありがとうございます!」

「ええ、どういたしまして…時間も押しているので、此処で失礼しますね」

「はい。また、会談にて」

 

------------

 

ミカエルさんとの対談を経て数日が経ち、今日はいよいよ三大勢力の会談の日だ。

 

「い、イッセーさん…緊張しますぅ…」

「まあ緊張するなというのが無理な話だからな、今回は…だが周りは気にせず鞄の中に籠っていろ」

「は、はいぃぃぃ…」

「ギャスパー、お疲れ」

 

俺はオーフィスと、背中のバックパック入ったギャスパーを連れて、会談の場となっている生徒会室へ足を運んでいた…本来ならまだ神器のコントロールが万全じゃないギャスパーは参加出来ず、オカ研の部室で待機する筈だったのだが、禍の団による襲撃も考慮し、待機場所がバックパックに変更となった。

…閑話休題、俺達は会談の場へ足を踏み入れた…!

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