「今の攻撃を見破るとはね、流石は俺の超えるべき目標だ」
「ヴァーリ…まさかお前…!」
ヴァーリの突然の急襲、何とかその一撃は俺が食い止めるも、その事に平然とするヴァーリ…まさか…!
「君の想像通りだよ、兵藤一誠。俺は禍の団に協力する事にしたんだ。アザゼルには済まないと思っているが、俺にとって平和な世は退屈だからね」
「な…!てめぇも、てめぇもあのコカビエルの様に戦争を望むって言うのか!」
「現状が面白くないという意味では一緒だね。だが戦争を起こしたいという気は特に無い。コカビエルは堕天使の台頭を望んでいる様だったが、俺は強い奴と戦えればそれで良い」
「やめとけ兵藤、コイツはそういう奴だ。根っからの戦闘狂でさ…思えば俺は心の何処かでお前が手元から離れて行くのを予想していたのかも知れないな…で、何時だ?」
「コカビエルの身が滅ぼされたのを見届けて本部に帰る途中でオファーを受けたんだ、『アースガルズ』と戦ってみないかって」
アースガルズって確か北欧神話に登場する神の一族だよな…そいつらと戦いたいだけで、アザゼルさんに育てて貰った恩を仇で返すのかよ!
「まあ本当の事を言うと、神を名乗りながら身内同士のゴタゴタも解決できない連中なんてどうでも良いんだけどね。本当に戦いたいのは…君だよ、兵藤一誠!」
「俺…だと…!」
まさか…あの時コカビエルを倒した時に使ったタスクACT4、オーフィスを惚れさせ、ドライグを何故か怯えさせたあの力を見て…!
「禍の団において君がどういう風に見られているか、調べた時には目を疑ったよ。両親・友人共に全くの普通の人間。先祖に強力な術者や能力者もいない。幼少期に一時、天使と同居していた事はあったが、それ以外は特に何の変哲も無い、一般的な男子高校生…悪魔に転生するまではそうだった、『赤龍帝』であること以外は何も無い奴、と。ふざけた話だろう?連中は、君の事を障害にすら思っていないと言う事だ。そんな馬鹿な事があるか!君がコカビエルの身を滅ぼした時に見せたあの無限の回転の力。全盛期の二天龍すらも捻じ伏せるであろうあの力。オーフィスを惹きつけ、禍の団の頭首の座を独断で抜け出させた、あの力!あれを見て、俺は決意した!二天龍の因縁など関係無しに、君と戦いたいと!今が、今がその時だ、兵藤一誠!」
「っ!…良いぜ、どうせ逃れられない戦いなんだ。お前をぶっ飛ばして、アザゼルさんの前で土下座させてやる!…下がっていろ、エレン」
此処から先は二天龍の遥か昔からの因縁、其処に俺、俺とドライグ以外の存在を巻き込むわけには行かない。
そう考え、俺はエレンから降りる。
「ドライグ、確かアルビオン…いや、
『ああ、合っている。で、どうする気だ、相棒?』
「近づけないなら、遠くからぶっ放せば良い。それは俺の得意分野だ。黄金回転の爪弾!」
先手必勝と言わんばかりに、タスクACT2からの爪弾を3連射する。
流石にカテレアとの戦いを見ていたが故に指からの発射は読めていたのか、回避行動を取るも、
「直前で炸裂した?…な!?追いかけて来る!?」
「俺の爪弾から出来た弾痕は相手を徹底して追いかける。差し詰め追尾能力って奴だ」
「だったら…な!?」
「無駄だ!その弾痕は、標的を捉えるまであらゆる物理的干渉を受け付けない!」
これで勝ったとは思わないが、追尾して来た弾痕を魔力による障壁で防ごうとしてすり抜けられた事に驚くヴァーリを見て、ある程度のダメージを与えはするだろう…そう思っていたが、
『DivideDivideDivideDivide!』
「なっ!?効いていないだと!?」
「物理的干渉で防げないなら、力その物を減らしてしまえば良い。今度はこちらから行くぞ!」
「くっ!オラァ!」
「無駄だ!」
『DivideDivideDivide!』
「な…うおっ!」
「どうした?君の力はその程度では無いだろう!」
『半減』の力でパワーを極限まで弱めたのか…!完全な無傷のヴァーリが突っ込んでくるのを見て牽制で爪の斬撃を放つも、それも半減によって空振りしてしまい、危うくパンチが飛んでくるのを回避した。
くっどうした物か…ヴァーリの力量からして鉄球の回転も半減され、単なる鉄のボールによる投擲に終わる…!
…ぶっつけ本番だが、やるしかない!
「タスクACT3!」
「な!?自分を撃った!?」
俺が自分に爪弾を発射した事にヴァーリが驚いている隙に近づき、
「シュッ!」
「なっ!地面から!?…いや、弾痕の中に潜り込んで突進してきているのか!?」
そこから突きを放つ…予定外の攻撃だったが故に回避行動で済ませたのだろうが、既に見抜いているみたいだ、次は半減して防ぐはず…だが!
「シャァ!」
「舐めるな!『DivideDivide!』(ザン!)がっ!?」
「舐めてなんかいないさ。ミカエルさんから貰った龍殺しの聖剣、アスカロンだ。力を半減すると言っても、元ある物体のリーチまでは減らせないだろ!」
木場とは大違いの我流、故に太刀筋が荒いが、俺の扱いに応えてくれたアスカロンはヴァーリの右脚を深々と切り裂いた。
『ヴァーリ!距離を離すんだ!幾ら歴代最強の白龍皇であるお前でも、龍殺しの力を食らえば』
「そしてコイツだ!セイ(ザン!)ハッ(ザシュゥ!)トウ!(ドズゥ!)」
「ぐっがっぎゃぁ!ば、馬鹿な、何故離れているのに斬られるんだ!?」
それを警戒して空中へと避難するが、そんなのお構いなしと言わんばかりにアスカロンはヴァーリの袈裟、手首を切り裂き、そして左肩を貫いた…成功みたいだな。
原理はこうだ…鉄球の回転、それによる波紋でアスカロンに振動を与えた。
やり方は一言だけだが、これによって威力を増しただけで無く、周囲の空気を巻き込んで衝撃波を放つ事も出来、更にその衝撃波に龍殺しの因子を付加させた、という事だ。
差し詰め、
「まずはあの弾痕から追い出さないとな」
『HalfDimension!』
更に仕掛けようとし、電子音声が聞こえたその時、
「うわっ!?な、なんで吐き出されたんだ!?」
ば、馬鹿な!俺のタスクACT3は俺の意志で動く筈…それが何で俺の意志を無視して吐き出されたんだ!?
「俺の禁手は少し特殊な能力もあってね、こうして物体を半減させる事も出来るんだ…どうやらあの弾痕にも有効みたいだね、君を飲み込み切れず、吐き出すとは」
「!?な、周囲の建物が小さく…!」
ヴァーリの言葉に慌てて周囲を見ると、其処には何やら小さく見える建物の姿が…あれで俺が入っていた弾痕を小さくしたのか…!
どうする、ヴィブロ・アスカロンまでは対策を立てられていないが、それ以外は既にタネが割れて対策も立っている…どうする…!
「ところで兵藤一誠…何故本気を出さない?」
「何…!?」
手を模索していたその時だった…ヴァーリの、その如何にも不機嫌そうな声を聞いたのは。
「先程から出してくるのは敵の虚を突くような手ばかり…別に悪い事では無いさ。戦場ではどんな事態も考えられる場所、虚を突いて一撃必殺を狙うのも手段の1つだ。俺が不満なのは…君がこの期に及んでもあの無限の回転の力を使わない事だ!俺を舐めているのか!?」
成る程、そういう訳か…だが、
「悪いがあれは俺1人で出来る事じゃない。それを踏まえるならば、俺は手加減などしていないさ」
「君1人で出来ない…まさか、あの天馬が関わっているのか?なら、何故乗らない!?俺の裏切りを知った時、何故降りた!?俺と戦うとなった途端、何故降りたんだ!?」
「お前になら、白龍皇であるお前になら分かる筈だ…これは二天龍の因縁、其処に俺とドライグ、お前とアルビオン以外を巻き込む訳には行かない。それが俺のプライド…赤龍帝としての、俺のプライドさ」
『相棒…』
正直な事を言えば、随分な付き合いではあれど未だに禁手にすら至っていない、そんな俺が赤龍帝に相応しいのか…そう思った事がある。
それ以外の点で言えば強いのかも知れない…タスクACT4の力はドライグを怯えさせ、オーフィスを惹きつけた。
だが、赤龍帝としては『弱い』んだろう、『弱過ぎる』んだろう、俺は。
そんな俺がエレンから降りたのは、俺のプライド…赤龍帝としての、俺のほんのちょっぴりのプライドの現れだ。
だが、
「下らないな」
な…!?
「下らない、実に下らないよ。じゃあ聞くけど、君は赤龍帝として、その力を十全に使えるのか?未だに禁手を使わない、いや使えない辺り、違うだろう?十全に使えるとは言えないだろう?そんな現状でありながら、君はコカビエルを圧倒した末に消滅させた力がある。全盛期の二天龍をも捻じ伏せられる力がある。オーフィスをも惹きつける力がある!だから俺は君との戦いを望んだんだ!
『赤龍帝』としての君とでは無く、『兵藤一誠』としての君と!
だが今、俺の前にいるのは『赤龍帝』としての君だった…今ほど落胆した事は無い。二天龍の因縁の対決…戦闘狂としての俺はかつてそれを望んではいたが、『兵藤一誠』との戦いという凄まじい輝きの前にはその価値は失せた。今更それを押し付けられて…下らないと言う以外無いね」
てめぇ…今なんつった?
ドライグとアルビオンの、遥か昔からの因縁を…下らないだと?
歴代の赤龍帝と白龍皇、激突しては命を落としていった先人達の想いを…下らないだと?
因縁の戦いを止めようとした聖書の神率いる天使陣営、アザゼルさん率いる堕天使陣営、初代4大魔王様率いる悪魔陣営の決死の苦労を…下らないだと!?
「上等だ…!だったら見せてやるよ!タスクACT4を!『兵藤一誠』としての俺の本気を!『赤龍帝』としてなぁ!」
『Welsh Dragon Balance Braker!』