ヴァーリの宣言『兵藤一誠に降伏する』…その真意に、俺は仰天するしか無かった。
曰く『3大勢力に降伏する条件として、自分を兵藤一誠の眷属にしろ』という事。
更に『受け入れられなければ、待機している仲間に自分の身柄を奪還させる。しかし受け入れられるならば、その待機している仲間も一緒に降伏させる。仲間はその用意がある』とも。
その要求に、サーゼクス様達3大勢力の首脳は再び、対応を協議する事になった…今度は首脳のみの極秘で。
件の当事者が協議に加わっていないというのもおかしな話だが、この一件は対応を少しでも誤れば情勢を悪化させかねない代物だ、高校2年生の俺に判断させる訳には行かない、という事なのだろう。
…それにしても、
「ヴァーリ…お前どういうつもりだよ?」
「何か、主イッセー?」
「お前もう俺の眷属になった気かよ…命の恩人にして育ての親であるアザゼルさんを『強い奴と戦いたい』という欲だけで裏切って、禍の団に手を貸したと思ったら、今度は手のひら返しで俺の眷属になるだと?お前がどういう神経しているのか分からん」
「確かに…アースガルズと戦える程の力量を持った禍の団に鞍替えしたかと思えば、旗色が悪いと見るや直ぐによりを戻そうとする…俺は傍から見れば典型的な小悪党だろう。だが、主を敬う気持ちは少しも変わりはない。いや、あの二天龍をも凌駕して見せた圧倒的な力に、敵であろうとその真意を図り、救えそうならば救おうとするその器…それを見て、主を敬う気持ちはより高まった。俺はそんな主が、高い地位におられるべきだと考えている。ご存じの通り悪魔陣営は貴族社会、実力が物を言うと口々に言われてはいるが、一方で血縁や階級が幅を利かせている面も否めない。今の4大魔王よりも元72家で最高位だったバアル家を重んずる悪魔は少なくないし、俺は人間とのハーフだったが故に見下されていた。主は人間から転生して僅か数ヶ月、中級悪魔への昇格の機会が無い現状…幾ら二天龍をも凌駕する強さを持った主でも、今の立場で悪魔社会において出来る事は極めて少ない。俺はその現状…主がリアス・グレモリーの一兵士に留まらざるを得ない現状が我慢ならないんだ。その現状を脱却して頂くにはどうすれば良いか…そう考えた時、今の俺の現状…『史上最強の白龍皇』と恐れられ、禍の団に協力している現状は利用できるんじゃないか?と、閃いたんだ」
…今の立場を利用して3大勢力を脅迫、それに否が応でも首を縦に振らせ、俺を出世させようってか…
「お前…意外と腹黒いな。それもドス黒いと言うか、まっ黒というか…それ程までに」
「仰せの通り。これ位の腹黒さが無ければ、入ったばかりの禍の団で、チームを率いる立場には無い。今待機させている仲間も、そのチームのメンバーなんだ」
全く、史上最強の白龍皇に、禍の団のメンバー…それだけでは収まらない位、敵に回すと危険すぎる奴だ。
魔王様達やアザゼルさん、ミカエルさんの判断次第だが、コイツを眷属にしたら、責任もって面倒見ないとな。
…と、出て来たな。
「リアス・グレモリー眷属、兵藤一誠君…君を特例で上級悪魔に昇格させ『重要犯罪人保護観察官』に任ずる。但し上級悪魔の階級、及び保護観察官の任は臨時の物で、期間は君が20歳になるまで。その間に改めて中級悪魔への昇格試験から受ける様に。20歳までに上級悪魔への昇格試験を通過したら正式に保護観察官に任命する。但し通過出来なければ臨時の階級、保護観察官の任は全て没収とし、眷属は解散となる。心して、任を全うする様に。良いね」
「はい!」
サーゼクス様から告げられた通知…それは『3年間だけの上級悪魔の階級と保護観察官の任』…同時にオーフィス(禍の団の元首領故、恐らくは俺の下に入るかも知れない)とヴァーリは最低3年間、俺の監察下に入る事になる…という事だ。
何と言うか、ヴァーリの思惑通りの展開になったな…まさか、俺が臨時とは言え、いきなり眷属を持つ立場に、責任重大な立場になるとはな…
「そしてこれは私から、君へのプレゼント。
「こ、これが悪魔の駒…!ありがとうございます!」
通知の後に渡されたアタッシュケース型の鞄を開けると、其処にはチェス用の駒をかたどった16個の悪魔の駒があった…俺はこの内の
「うおっ!何か吸い込まれて…」
何気なく王の駒を取ったその瞬間、駒が俺の身体内へと吸い込まれていく様に入って行き、そして吸収された様に消えた…これって、王になったって事だよな。
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「いっちゃんの
「イッセーの
「イッセーさんの
3大勢力の会談、禍の団の襲撃、ヴァーリとの決闘、そして突然の独立…そんな騒々しい夜が明けた今、眷属を率いる立場になった俺と、リアスの眷属から移籍(リアス曰く「臨時とはいえ独立祝いよ」と快く移籍を許可してくれた)して来たれーちゃんとゼノヴィアとアーシア、そして禍の団にてヴァーリが率いていたというチームから、俺の眷属として来てくれた面子との顔合わせをしていた。
「今回、主イッセーの
「今回、一誠さんの
「今回、一誠様の僧侶となりました、ルフェイ・ペンドラゴンです!あの伝説の赤龍帝で、しかもオーフィス様と肩を並べる程の力を持つという一誠様の眷属となれて光栄です!宜しくお願いします!」
「イッセーの兵士になった、美猴だ!見ての通り、初代孫悟空の子孫だが、それは気にしないでくれよな!まあ楽しくやって行こうぜ!」
何と言うか…今更ながら想像以上に濃い面子が揃ったな…。
歴代最強の白龍皇と呼ばれたヴァーリは勿論…古代ブリテン(今のイギリスだ)の伝説的な君主、アーサー・ペンドラゴンの末裔にしてその名を名乗る、金髪で眼鏡を装着した端正な顔立ち、スーツを着用した紳士風の男、アーサー…そのアーサーの妹にして伝説の魔女モルガンに倣った名を名乗る小柄で、如何にも魔法使いだと言わんばかりの服装の少女、ルフェイ…そして極めつけは初代孫悟空の子孫である猿の妖怪で、見た目やら何やらまで俺が抱いている孫悟空のイメージにそっくりの男、美猴。
何と言うか…俺、いや俺達(アザゼルさんを始め、皆して仰天していたからな)の想像の遥か上を行っていた。
実力も相当な物で、アーサーは地上最強の聖剣とも言われる『聖王剣コールブランド』を使いこなす類稀な剣術の腕を誇り、ルフェイは魔法や魔力の扱い、魔力量に関して天性の才を持ち、美猴は中国生まれであるが故か中国拳法を極め、仙術と呼ばれる魔法とは一味違った術式に長け、更には筋斗雲を乗りこなしながら如意棒を叩きこむ戦法を得意だとしている。
ヴァーリを始め此処までの実力者揃い、かなりの駒を消費するだろうと思っていたが、此処で予想外の事態が起こった…かつてリアスが俺を転生させた際に起こったらしい、赤龍帝の籠手が原因であろう『駒の脈動』が此処でも起こったのだ。
特にヴァーリの際にはそれが顕著で…7回も脈動した挙げ句、兵士の駒の頭部と言える球体が、ドラゴンの頭みたいに変形したのだ。
そのお蔭か4人共駒1つで済ませられたが…今度、サーゼクス様に聞いてみるか。
余談だが、れーちゃんのランクがリアスの眷属だった頃の兵士では無く女王になっている事については、俺の女王として、改めて転生の儀を行ったからだ…俺にとってれーちゃんは一番愛する女性、俺にとっての女王は、そのれーちゃん以外に考えられなかったから。
「今回、色々あってお前達の王となった、兵藤一誠だ。まだ悪魔に転生して3ヶ月も経っていないし、まだ高校2年生だ、主人として至らない点は多いと思う。こんな俺だが、是非、ついて来てくれ」
「「「「はい!」」」」
「「「ああ!」」」
こうして、3大勢力間で『駒王条約』という俗称で呼ばれる和平条約が締結され…そして俺達、兵藤一誠眷属の日常もスタートした。