ヴェネラナさんから衝撃の事実を知らされた翌日、俺達はサーゼクス様達魔王様が統治する領地、その中の都市ルシファード(旧魔王ルシファー様が統治していたと言われているらしく、それに因んでこの名が付いたらしい)にある、若手悪魔の会合の会場に来ていた。
今日の会合に参加する若手悪魔は、俺、リアス、シトリー会長含め7人の王と、その眷属だとか…しかもそのうちリアスとシトリー会長含めた4人が現魔王様の兄弟姉妹、更に元72家でも最高位である大王バアル家、第2位の大公アガレス家の次期当主も参加するそうだ…その中に、最近上級悪魔になったばかりの俺が割って入る訳か、少し緊張するな。
「サイラオーグ!」
電車を降りてすぐの場所で待機していた係員さんに連れられてホールに入ると、リアスが知り合いを見つけたらしく、呼びかける。
「久しぶりだな、リアス」
その方向に顔を向けると、其処にはサイラオーグと呼ばれた1人の男が、恐らく眷属であろう数人の悪魔を連れていた。
年齢は俺と同じか少し上位、アザゼルさんに迫る位の上背でがっしりした体格、黒の短髪に野性的な風貌で…何か、佳奈や時雨に似た雰囲気を感じるな。
「アイツ…出来るな」
後ろで佳奈も絶賛する辺り、相当な実力と見て良いだろう。
「ええ、懐かしいわ。変わらない様で何よりね。あ、初めての人もいたわね。彼はサイラオーグ、サイラオーグ・バアル。私の母方の従兄弟なの」
「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」
へぇ、大王バアル家の次期当主…どおりで存在感が凄い筈だ。
というか話を纏めるとヴェネラナさんって、バアル家からグレモリー家に嫁入りしたのか…グレモリー卿が何処か頭が上がらないという感じがしたが、そういう訳か。
と、サイラオーグが俺を見つけるや否や、こちらに歩み寄って来た。
「君が、最近上級悪魔に昇進したという、リアスの元眷属か?」
「ああ、兵藤一誠だ。貴方がバアル家の…凄いな。気迫がびりびりと伝わって来る。余程の実力を持っていると見た」
「君こそ、其処にいる白龍皇を圧倒した挙げ句、眷属にしたそうじゃないか。『歴代最強の白龍皇』とまで呼ばれた彼を、な。その油断なく、しかしながら不敵に佇むその姿、納得だ。機会があれば、拳を交えたい物だ」
「ああ、宜しくな」
そのがたいのよさに違わず、どっしりとした雰囲気…やっぱり出来るな、大王バアル家次期当主の名は伊達じゃないって事か。
その様にライバル心を擽られつつ、握手を交わす。
「ところで、こんな通路で何をしていたの?」
「ああ、下らないから出て来たんだ」
出て来た…恐らく奥の方の扉、あそこに待合室か何かがあるんだろうが、其処から出て来た所か、何があったんだ?
「下らない?他のメンバーも来ているの?」
「アガレスとアスタロトの次期当主、挙げ句ゼファードル・グラシャラボラスもな。着いたら早々に、ゼファードルとアガレスがやり合い始めたんだ」
あれか、同期のライバル同士の敵愾心が故の場外戦って奴か。
でも魔王様も来られる様な場となれば、口論に留まるんだr(ドォォォォォォォォォォン!)…嘘だろ?
「全く…だから開始前の挨拶等いらないと進言したんだが」
「魔王様が来られる場で乱闘かよ…マナーがなっていないな」
気になった様子で扉へ向かうリアスに続くように、俺は和服の帯に取り付けたホルスターから鉄球を1つ取り出して、サイラオーグと共に中に入る…と、
「ゼファードル、こんな所で戦いを始めても仕方ないのではなくて?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら」
「ハッ!言ってろよクソアマが!俺が折角そっちの個室で一発仕込んでやるって言ってんのによ、アガレスの姉ちゃんはガードが固くて嫌だね!だから未だに男も寄って来ずに処女なんだろ?ったく、魔王眷属の女どもはどいつも処女臭くて敵わないぜ!だからこそ俺が開通式をやろうっつってんだろ!」
眼鏡を掛け、青いローブを着た高貴そうな見た目に似合わぬ物騒な台詞を吐く女性…恐らく大公アガレス家の次期当主だろう…と、上半身裸に近い服装、装飾品だらけのズボン、緑の短髪にタトゥーが刻まれた顔、と何時の時代のヤンキーだよと突っ込まれそうな風貌通りの品性の欠片も無い台詞を吐く男…こっちはサイラオーグが言っていた、ゼファードル・グラシャラボラスだろう…が互いに今にも飛びかからんと対峙していた。
その周囲はテーブルや装飾品など、周囲の物が壊され、散乱していた…おいおい、魔王様が来られる会合だろ、外聞だとか良識だとか微塵も考えないのかコイツらは…
「此処は時間まで待機する広間だったんだがな。もっと言えば、若手が集まって挨拶を交わす場でもあったんだ。ところが若手同士で挨拶したらこれだ。血の気の多い連中を集めるんだ、問題の1つも出る。挙げ句、それをも良しとする旧家や上級悪魔の古い悪魔達はどうしようもない」
「…何処の極道マンガだ、それ」
『悪』魔と名乗っている辺り、人間の常識が通じない部分もあるだろうと覚悟していたが、此処までとはな…3大勢力が協定を結んだというのに、これでは他勢力に纏まりを欠いていると思われかねない。
「あ?…来やがったなこの棚ボタの成り上がり野郎が!良くもまあふんぞり返って来れたもんだ!」
「は?…俺の事か?」
棚ボタの成り上がり野郎…成る程な、外から見ればヴァーリの策で上級悪魔に持ちあげられた奴って映る訳か…少しカチンときた。
「惚けんじゃねぇよ、呼ばれた奴の中でお前以外に成りあがり野郎なんざいねぇ!下僕悪魔から偶々上げて貰ったばかりの癖してデカい面しやがって!」
「由緒正しき家柄の癖にお下劣でバカ丸出しよりは千倍もマシだと思うがな、いや本気で」
「てめぇ調子こいてんじゃ(ドゴォォォォォォ!)ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
言い分に腹が立ったので即座に言い返してやったら食いついて来た、詰め寄って来たゼファードルの腹に向けて、鉄球を手首のスナップだけでぶち込む…こう言う時、和服のゆったりとした袖って便利だよな、傍から見れば俺が何もしていないのにゼファードルが何故か急に後ろに吹っ飛んでいる様にしか見えない。
「主!?」
「おのれ貴様、我らが主に何をした!」
「は?何を言ってんだお前ら?アイツが勝手にぶっ飛んだだけだろ?」
「ふざけるな!貴様が手を出したn」
「兵藤一誠が手を出していないのは明らかだ。そんな下らない言い掛かりを付けるより、主の回復の方が先じゃないのか?アガレス、そっちも化粧直しをした方が良い」
「…くっ!」
その様子にゼファードルの眷属が俺に詰め寄るも、サイラオーグが庇ってくれた(更にその際、プレッシャーみたいな物を連中に向けて放っていたみたいだ)お蔭で引き下がり、この場は治まった。
「兵藤一誠、今の攻撃は?魔力とは違う、何か強烈な力を感じた」
「…流石に御見通しか。コイツだ」
「これは…鉄球?」
「ああ、俺の能力をベースに編み出した技術を使って、コイツをぶちこんだ」
「成る程、磨き上げた技術の賜物という事か…ますます、戦いたくなった」
俺がゼファードルをノした鉄球に興味深々といった様子のサイラオーグ、その目からは闘志がにじみ出ていた…もしかしてヴァーリに似た戦闘狂か?
「皆様、大変お待たせしました。魔王様他、来賓の方々が来られました。こちらへどうぞ」
まあ、サイラオーグの細かい人となりは後でリアスから聞くか。
そう結論付け、俺達は係員の呼び出しに従って、会場に入って行く。