「あ…あれ、此処は…」
「いっちゃん、大丈夫!?」
「主イッセー、無事か!?」
「イッセーさん、具合はどうですか!?」
「イッセー、無理するな!」
「一誠様、立てますか!?」
「イッセー、無理して立たなくてもいいぜ」
「一誠さん、少し安静になさった方が」
「イッセー…!」
目を覚ましたその時に目に映ったのは、此処最近やっと見なれたグレモリー家の屋敷の天井と、れーちゃんを始めとした俺の眷属達、そしてオーフィスの、心配そうな顔だった…ああそうだった、俺たしか熱中症でぶっ倒れたんだっけ…全く何やってんだが俺は…
「悪いな、皆…俺、少し焦っていたかも知れない。禍の団の襲撃に備えなきゃと思う余り、ヴァーリ達の主として恥じない悪魔になろうと思う余り、な。眷属に心配させる事こそやっちゃいけないのにな」
「主イッセーは、今のままでも充分強い。それこそ、主に敵対する可能性があって、現時点で勝てる存在はグレートレッドしかいない、と言える位に。だから焦る必要は無い」
「いっちゃん…気持ちは嬉しいけど、いっちゃんが倒れたら、いなくなったら…何にもならないんだよ…!だから、だから無理しないで!」
「…本当に、ごめん」
皆を守る為と言いながら、結果として皆を傷つけたり、悲しませたりしたらそれこそ本末転倒だ、無闇に焦っても、実を結ばない。
「イッセー。熱中症になったって聞いたが、具合はどうだ?」
「アザゼルさん。すいません…体調管理が出来ていませんでした」
「本当だぜ、主がぶっ倒れたなんて事態、部下達にとっては一大事だ。お前の身体は、もうお前1人だけの物じゃあ無いんだぜ。まあ、反省しているみたいだし、これ以上はとやかく言わないぜ」
「本当にすいませんでした。以後気を付けます」
何処から聞いたのか…恐らくヴァーリかグレモリー家からだろう…アザゼルさんもやって来て、注意されてしまった…確かに、もうとっくの昔から、この身体は俺が思っている以上に影響力が高い。
…ところで、アザゼルさんは俺に注意する為だけに来たのか?それにしてはまだ何か言いたげな気がするが…
「アザゼルさん?何か他に、俺に用事でもあるんですか?」
「ああ、そうだ。今来たのはそっちが本題で、お前の事はその途上で偶然聞いただけだ。嘗ての眷属仲間の事を、小耳にでも挟んで貰いたくてな…小猫が、特訓中にぶっ倒れた」
「こ、小猫ちゃんが倒れた(ガクッ!)うおっと!?」
「イッセーさん!?無理に立っては駄目ですよ!」
「イッセー…状態が良くなったっつっても病み上がりの身だ、無理すんな」
「イッセー、無理は禁物」
「ああ、悪いな。で、小猫ちゃんが倒れたって…一体何があったんですか、アザゼルさん?」
「どうも俺が考えた特訓メニューを、極端と言って良い位のハイペースで行っていた様だ…所謂オーバーワークによる極度の疲労だ。お前の場合は偶々体調が良くなかったからまだ良い、だが小猫の場合…これ以上の無茶は身体に障る」
オーバーワーク…俺も人間だった頃、経験した事がある。
当時はれーちゃんに会いたい一心で、来る日も来る日も己の技術を磨くのに必死だったから、少しばかりの体調の変化は無視していて…その結果、過労でぶっ倒れた事がある。
その際に、両親から涙ぐみながらのお叱りを受けて、それ以来、体調が優れなければ特訓を早めに切り上げる事も覚えた。
しかし、小猫ちゃんは一体どうしてそんな事を…
「恐らくは…焦りだろうな。アイツの『戦車』としての素質は申し分の無い物がある。駒の性質に同調したバトルスタイルというのもその現れかもな…だが、戦車が得意とする前面でのオフェンスには、現時点でアイツより強い奴ばかりだ。禁手の能力もそうだが恐怖とは無縁に近い性根をしているフリード、堕天使としての力の他純粋な身体能力で上回っている佳奈、リアスの滅びの力を疑似的に再現する等の工夫が光る塔也…極めつけは、アイツと同じ戦車の大輔だ。ドラムをやっていた影響からか手首が柔らかで、そこから繰り出される棒術は、粗削りながらも神器とのシナジーは抜群だ。それに神器の扱い方も覚えが良く、ひょっとしたら直ぐにでも禁手に至るかも知れない。そうなれば…アイツの立場はどんどん無くなって来る…そんな想いが、焦りに繋がっちまったのかも知れないな」
…焦りか、さっきまでの俺に通ずる所がある。
俺の場合は比較対象がいなかった…というか、比較しようが無い程の変則的なバトルスタイルだったのだが、それでも小猫ちゃんの想いは分かる。
前面に立ってのオフェンスを得意としているのが『戦車』なのに、その他のクラスの眷属の方がそっちで優れているとなれば、そしてリアスの眷属ではかなりの経歴なのに、ぽっと出の元人間である大輔に戦車としての立場を脅かされるとなれば…
こうしちゃいられない!
「今から小猫ちゃんの見舞いに向かう。皆、ついて来てくれ」
「うん!でも、病み上がりだから無茶は駄目だよ」
「体調が思わしくないならば遠慮なく俺の肩を」
「了解した。小猫が…無事なら良いが」
「大丈夫でしょうか…」
「はい、行きましょう」
「丁度気になっていた事もあったしな」
「では、行ってきます。アザゼル様、態々のご足労、有難うございます」
何が出来るかは分からない、だけど、何か出来る事をしたい…!