「イッセー!?倒れたって聞いたけど、大丈夫なの!?」
「ああ、問題ない。軽い熱中症でさ…ごめんなリアス、心配かけさせて。それより…小猫ちゃんが倒れたんだってな」
「それで…いっちゃん、心配だからって、自分が病み上がりなのを押して見舞いに来たんです」
「そ、そう…ちょっとね。丁度良かったわ、イッセーもレイネルも、小猫とは浅くない仲だし…聞いてくれるかしら?彼女の過去を」
小猫ちゃんの見舞いに来た俺達(今更だが、多人数で押しかけるのもどうかと思ったので、れーちゃん以外の俺の眷属は直ぐ近くの部屋で待って貰う事にした)、其処でリアスから呼び止められ、勧められるまま聞く事にした…持ちかけた時のリアスの顔が神妙そうだったからな、余程の壮絶な過去が、小猫ちゃんにはあったのかも知れない。
「実を言うとね、彼女、妖怪の一種である猫又だったの」
「猫又?確か変わった術を使うんだっけ?」
「ええ、所謂妖術ね。それで…彼女には姉がいたけど、幼い頃の生活は困窮を極めていたらしいわ。その才能と境遇に目を付けた悪魔が、姉と交渉した結果、姉を眷属として引き入れたそうよ。その力はかなりの物で、僧侶の駒を2つ消費した実力を如何なく発揮したけど…或る日、姉は力に呑まれて暴走、主を殺してしまいはぐれ悪魔となり、妹である小猫が1人残ったわ。当時、上級悪魔はこぞって子猫を始末すべきだと声を上げたそうよ。いずれ彼女もまた暴走し、悪魔に刃を向けるのではないか…そう考えたんだと思うわ。其処を助けたのがルシファー様…お兄様なの。お兄様が小猫の身を預かる事で、事態は何とか収拾し、その後、私の眷属になって今に至るわ。私はその話を聞いた時、こう決意したわ…絶対にこの娘を救う、姉がいなくなり、悪魔達に叱責されたこの娘を…」
「そっか…そんな事が…」
力の暴走…確かに危険視するのも無理は無い、一度事故が起きた以上、神経質になるのも分かる…だが!
「その姉の名は黒歌、妹…小猫の本当の名は、白音よ。小猫って名前は、私が付けたの」
「白音…白色の如く純粋な音色…か」
俺の様な病み上がりが色々言っても説得力が無いかも知れない…だけど、それでも何とかしなきゃ…
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「小猫ちゃん、お邪魔するよ」
「…部長から聞いたんですか、私が倒れた事?」
部屋に入ると其処には、ベットで休んでいる小猫ちゃんの姿…何時もとは違い、猫耳と尻尾を生やした姿だった、やっぱり猫又だったんだな…があった。
「いや、アザゼルさんから聞いて見舞いに来たんだ…リアスからは、君の過去を聞いたよ」
「っ…」
俺からの返答に、唇を噛む小猫ちゃん…まあ、そうだよな、姉である黒歌の事故を切っ掛けとしたバッシング…幼かった頃の彼女からすれば、トラウマ物だろうから。
だけど…それを乗り越えなければ一生囚われたままになってしまうだろう。
「1つ…昔話をしよう」
「…昔話?」
「昔…1人の男の子がいた。ちょっとやんちゃで、純粋で、おバカ…そんな、何処にでもいそうな小学生のガキんちょだった。そんな男の子は或る日、空から1人の女の子が降って来るのを見つけたんだ。男の子はその女の子を救助して、一先ず自分の家に住まわす事にしたんだ。こうして始まった男の子とその両親、そして女の子の生活…日を追うごとに、男の子と女の子は次第に惹かれて行って…やがて結ばれた。けど…女の子は直ぐにいなくなってしまった。男の子は、自分が弱いから、女の子を守れないからいなくなったのではないか…そう思い、強くなる事を決意したんだ。偶然だが、男の子には才能があった。戦う事に於ける、『異能』とも言うべき才能が。だが男の子にはその才能の扱い方を知らなかった。故に傷だらけになり、激痛に襲われ、時には生死に関わる程の事態にもなった…それでも男の子は諦めなかった。例え傷付いても、男の子はその才能を使い続けた…その才能を物にする為に、強くなるために…大好きだった女の子にまた会い、そして守り抜くために。そして男の子はそれを物にして見せ、女の子とも再会し…今もこうして、大好きな女の子を守り抜くために強くなろうとしている」
「…!それって、一誠先輩の…」
「まあ、そうなんだけどな」
まあ、れーちゃんと再会した時の事とか、色々端折ってはいるけど。
「リアスの眷属だった頃から強い強いと呼ばれて来たし、堕天使の最高幹部であるコカビエル、魔王の末裔であるカテレア・レヴィアタン、最強の白龍皇と呼ばれたヴァーリをも倒して見せ、今こうして臨時ながら上級悪魔になった俺だが…最初っから強かった訳じゃ無い。そんな強さを得る為に、物凄い努力をしたし…こんな深い傷も負って来た」
「こ、これは…!?」
言いつつ上着を脱ぐ…其処に現れた俺の上半身に刻まれた大量の古傷…れーちゃんを始めとした俺の彼女以外に見せたのは、ギャスパー以来か?
「まあ前置きは長くなったが、何が言いたいかというと…最初から強い奴なんか、全世界何処探したって絶対に存在しない。どんなに才能があったって、その使い道が分からなければ宝の持ち腐れで、たいして強くない…俺は今説明した通りだし、リアスも、ヴァーリも…恐らくサーゼクス様だって、小猫ちゃんのお姉ちゃんだってそうだった筈だ」
「!?」
「小猫ちゃんが猫又としての力を使わなかった事、本気を出さなかった事…ずっと気になっていたけど、今になれば何となくだけど分かる。暴走が怖かった、そうだろう?まあ幼い頃のゴタゴタを考えれば無理もないよ。だけど…扱いこなせない力なんて存在しない。今は暴走させてしまうかも知れないけど、何時かは使いこなせると俺は信じているよ」
「何時かは…?」
「ああ。信じている」
小猫ちゃんのお姉ちゃんである黒歌も、暴走させてしまった時は年端も行かない子供だった筈(当時の小猫ちゃんの年齢とすり合わせての推測だけどな)、術の扱いもまだまだ未熟だった筈だ。
それを最悪の事態にさせない様に導くのが大人…上級悪魔の役目だというのに、問題が起これば、臭い物には蓋的発想で小猫ちゃんを処分する、か…全く。
…待てよ?
かなりの力を持った術等の『異能』、その凄まじさは使い手が一番良く分かっていると俺は思っている。
そしてそれを扱いこなせないと大変な事になると言うのも、ある程度使い慣れれば、試行錯誤していけば分かって来る。
当然、上級悪魔になって幾日を経た黒歌にもそれは分かっていた筈…暴走させれば周りを巻き込んでしまう事位は。
それでも暴走させて主を殺した…まさか?
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「ヴァーリ…ちょっと気になった事があるんだが…」
「どうした、主イッセー?」
「小猫ちゃんを見て何処か怪訝そうな顔していたが…その姉、黒歌とは会った事はあるか?」
「っ!…主、実は…」