ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

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5話_俺、悪魔になりました

い………

 

何だか…暗いな。

真っ暗ってこんな感じだったっけ、て言いたくなる程に暗い。

あ…そうだ、俺死んだんだっけ。

夜道を歩いていたら、胸を何かでぶっ刺された。

あろう事か、俺の初恋の天使…いや、堕天使になっていたな、そのレイネルによって。

彼女が堕天してからの10年のツケを、払わされる形で。

 

い………ん………!

 

果たしてそれは、初恋の人によって命を奪われるという名の『断罪』なのか、或いは俺の『彼女に会いたい』という願いを叶えた『恩赦』なのか。

まあ、俺自身の想いとしてはこれで良いかなとは思う…最期に彼女とまた会えて、想いを伝えられた…これが成されなければ、死んでも死にきれなかった筈だ、と思う…が、

 

い…ちゃ…!

 

けれど…けれど何れにしたって、運命ってのも悪趣味な奴だ…!

俺だけの都合ならそれでも良いが、その下手人となった彼女はどうしていた…!

泣いていた…明らかに泣いていた…!

彼女が何をした…彼女が一体、何の罪を犯したと言うんだ…!

彼女が何故…愛する俺を殺してしまうという『罰』を受けなければならない…!

 

い…ちゃん!

 

前言撤回だ…!

れーちゃんのあんな悲しい顔を見てしまったからには…死んでも死にきれない!

だから…だから待っていてくれ、れーちゃん!

 

「いっちゃん…?いっちゃん!良かった…本当に良かった…!」

「…れーちゃん?…俺は…俺は、生きているのか…?」

「うん…うん!良かった…良かったよぉ…!」

 

あれ、俺は確か公園で死んだ筈…それじゃあ此処は…?

 

「れーちゃん…此処は一体…!?」

「いっちゃん、此処は」

「な」

「な?」

「何じゃ此処はぁぁぁぁぁ!?」

 

俺が再び目を開けると、其処は名状しがたい位にオカルト要素満載な部屋だった。

 

「あら、起きた様ね、彼」

「ええ。色々とありがとうございます!」

 

そんな部屋には何故だか知らないが俺とれーちゃん、そしてもう何人かの存在が…あれ、この声何だか聞き覚えが…!

 

「リアス・グレモリー…先輩?」

「ええ、初めましてと言うべきかしら、兵藤一誠君?」

 

その1人である、れーちゃんに声を掛けた存在に目を向けるとそこには、鮮やかな紅の髪に、俺と同じくらいの長身でプロポーション抜群な体躯の美少女、リアス・グレモリー先輩がいた。

いや、それだけじゃない。

 

「そっちは姫島朱乃先輩!?」

「あらあら、お早うございますわ、一誠君」

 

リアス先輩と並ぶ『お姉様』として有名で、れーちゃんにも引けを取らない位に艶々な黒髪に、リアス先輩にも勝るとも劣らない体躯の、姫島朱乃先輩。

 

「それに木場祐斗!?」

「やあ、兵藤君」

 

俺とイケメンNo.1の座を争う、金髪でモデル体型の『王子様』、木場祐斗。

 

「塔城小猫ちゃんまで!?」

「…どうも」

 

学園のマスコットとして人気の、良く言えば可愛い系、悪く言えばロリ体型の銀髪猫耳の美少女、塔城小猫ちゃん…俺はどうやら、駒王学園の上級悪魔の一角の本拠地に来た様です。

 

------------

 

「粗茶をどうぞ」

「あ、どうも」

 

俺が落ち着いたのを見計らった様に、お茶を出してくれる朱乃先輩…何だか様になっているなぁ。

それにしても…悪魔であるリアス先輩達の本拠地に、堕天使であるれーちゃんと、人間…だったよな、俺が此処にいるという事は…色々と『そっち』関連で聞かれるって事かな。

まあ良いや、俺も気になっている事は山ほどあるしな。

 

「目覚めて早々で悪いけど、私の質問に答えてくれないかしら?」

「は、はい。分かりました」

「ではまず、これは確認になるけど、『この世界について』説明してくれる?」

「はい」

 

リアス先輩に促され、俺は『この世界について』…3大勢力その他大勢による情勢、嘗ての大戦及びその余波を、れーちゃんやドライグから教わった事を全て説明したら、リアス先輩は「話は早いわね」と頷いていた。

 

「じゃあもう1つ確認。数年前から何度か、この街で出没していたはぐれ悪魔の惨殺体が見つかっているわ。昨日もはぐれ悪魔バイサーの死体が見つかっているの。あれって貴方の仕業?」

 

バイサー…きっと昨日俺が倒した奴の事だろう…まあ、隠す気も無いしな。

 

「はい。数年前から俺、はぐれ悪魔の駆除をしていました。リアス先輩達にも遅かれ早かれ、知り合いを通じて挨拶に伺うつもりでしたが…すいません」

「…神器を宿しているとはいえ、兵士の駒8個でも全然足りない筈だわ…狙われるのも納得ね…」

 

…色々と突っ込み所があったが、やっぱり俺狙われていた訳か…れーちゃんが来たって事は、堕天使陣営かな?

 

「単刀直入に言うわ、一誠君…貴方は狙われたの。人間でありながら高ランクのはぐれ悪魔とも渡り合える実力と、その身に宿した強力な物と思われる神器…その両方を危惧した堕天使にね…レイナーレ、後は頼めるかしら?」

「…はい」

 

…へ、レイナーレって誰だ…と言うか何でれーちゃんが反応しているんだ?

 

「いっちゃん…良く、聞いてね?」

「う…うん」

 

それかられーちゃんから、俺と別れてからのありのままを聞いた。

俺に嗅ぎつかれるのを恐れて『レイナーレ』という偽名を名乗っていた事。

人間である俺との恋が原因で堕天した事、堕天使としては下級から中級程度の力しか無かった事で、力のある堕天使から蔑まれて続けていた事。

そんな中で、堕天使の組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』代表であるアザゼル、副代表のシェムハザから気に掛けられていた事。

そして、

 

「アザゼル様やシェムハザ様の期待に答えたくて、私を馬鹿にした堕天使達を見返したくて、至高の堕天使になるんだと決めて、私は…今になって恐ろしいと思う計画を立てたの。いっちゃんにも宿っている神器…その1つを宿しているシスターが最近、グリゴリに身を寄せて来たのを聞いて、それを私の物にしようって決めたの。3人の部下の堕天使と、はぐれ悪魔祓い達を連れてこの街の廃教会に潜伏、そのシスターも、この街に赴任するという形でおびき寄せて、儀式によって奪い取ろうって決めたの」

 

そ…そんな事を…多分、そうしなければならない程、れーちゃんへのバッシングは苛烈を極めていたのだろう…そんなれーちゃんの状態に気付かずに、何をしていたんだ俺は…!

 

「そんな中昨日、部下の1人であるドーナシークって名前の堕天使が、この街ではぐれ悪魔をいとも簡単に倒した人間が、高ランクの神器を既に覚醒させていると思しき人間がいるって情報を持って、始末すべきと進言して来たの。そう…それが貴方だったの、いっちゃん…」

 

昨日って事は…ああ、バイサーを駆除した時か…まさかあの現場を見られていたとはな…

 

「本当に御免なさい…!いっちゃんだと気付かずに、私はあの場で貴方に攻撃した…そしてそれが貴方の胸部を貫いて、そして一度死んだの…本当に…本当に御免なさい…!」

「れーちゃんが謝るなよ!悪いのは俺だ!俺が、俺がれーちゃんを堕天させたから、俺が10年もれーちゃんをほったらかしにしたから…けれど、俺死んだ筈なのに、何で今もこうして会話出来るんだ?」

「それは私から説明するわ」

 

俺の疑問を待っていたかの様なベストタイミングで割って入るリアス先輩…何だかさっき兵士の駒だか何だかと言っていたけど、それと関係があるのか?

 

「他の種族から悪魔に生まれ変わらせる事に関して、さっき貴方はこの世界の説明で取り上げていたわね。その手段を用いて、貴方を悪魔として蘇らせたの。これでね」

「これは…チェスのピース?」

 

説明と同時にリアス先輩が取り出したのは、チェスで使われる駒…形状からして兵士(ポーン)か。

 

「これがその悪魔として転生させるアイテム、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』よ。これを使って他の種族に取り込ませる事によって悪魔として転生出来るの。そしてその悪魔に転生した種族は…まあ此処は貴方の説明でも取り上げられていたから省略するわね」

「へぇ…これが。悪魔の技術って凄まじいですね」

「そうね…でもびっくりしたわ。堕天使の気配を辿って来てみればレイナーレが土下座して貴方の蘇生を懇願するし、引き受けたら引き受けたで兵士の駒8つでも足りないし…かと思ったら駒のうち4つが突然心臓の様に何回か脈動したかと思ったら貴方の方にひとりでに入って行ったし…」

 

…へ、色々突っ込みたい所があり過ぎるけど特に、

 

「駒4つが脈動って…もしかしてコイツですか?」

『やっと俺の出番か…会話に入りづらいったらありゃしない』

 

悪かったなドライグ…そう思いつつ、俺の左腕に宿った神器を展開する。

 

「その形状…もしかして『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』かしら?」

「ドーナシークの報告からして亜種、それも何らかのドラゴンの魂が宿った最高位の物…?」

「いいえ、違います。これは『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』…かつての大戦で暴れまわった二天龍の一角、ドライグが封印された『神滅具(ロンギヌス)』です」

『ろ、神滅具!?』

 

…凄い驚き様だな、まあそれもそうか。

神滅具は文字通り1点もの、同じ時に2人以上が所持する事などあり得ないのだ。

その1人しか持ちえない物の所有者を、この広い世界を、天界・人間界・冥界にまで範囲を広げて捜索しようものならどれだけの労力が必要になるだろうか…天文学的な数値が出るに違いない。

それ程までに、神滅具というのはレアなのだ。

ちなみにリアス先輩が言っていた『龍の手』とはいわば赤龍帝の籠手の下位互換版、所有者の身体能力を一時的に倍にする能力を持っているが、そこまで珍しくない神器らしい。

 

「けれど納得ね…赤龍帝の籠手の能力『倍化』と『譲渡』…これによって駒の価値が跳ね上がったと考えれば、あの脈動も説明できる」

 

どうやらリアス先輩も俺と同じ結論に至ったのだろう、驚きもそこそこに何か得心がいった様な口振りで独り言を言っていた。

リアス先輩が言っていた『倍化』と『譲渡』、これが赤龍帝の籠手の、神器としての能力だ。

『倍化』は文字通り、所有者の能力を倍にする能力で、神器を展開中は10秒ごとに『Boost』という電子音声と共に能力が倍になって行くという物だ。

此処までなら龍の手でも出来そうに聞こえるが、最大の違いは龍の手が1回限りの能力上昇なのに対し、この赤龍帝の籠手は能力上昇の制限が無く(あくまで神器としての制限が無いだけだが)、時間の許す限りは際限なく上昇させる事も不可能では無い、という訳だ。

そしてもう1つの能力『譲渡』は、倍化によって上昇した能力を、『誰か』(若しくは『何か』)に渡して、その能力を強化させるという物。

この『誰か』や『何か』の範囲は物凄く広く、人や物体、挙げ句の果てにはある能力に絞って譲渡する事も出来る(ある能力、の場合は所有者自身でもOK)。

…そう、リアス先輩が言っていた駒の脈動は、倍化と譲渡によって駒の価値が跳ね上がった際に見られた現象だ、俺はそう思う。

…ともかく、色々と異常な現象が起こりはしたが、俺はリアス先輩のお蔭で…悪魔としてだが…こうして生き長らえる事が出来、再びれーちゃんと一緒になる事が出来た…経緯は凄まじかったけど。

その恩は…俺にとっては言葉に出来ない位に重い。

 

「リアス先輩…貴方のお蔭で、俺はまたこうして生きる事を許されました。そしてまたれーちゃんと、会う事が出来ました。この恩は…絶対忘れません!貴方の為に、俺はどんな困難にも立ち向かう所存です!」

「そ、そう?ありがとう…でも、礼ならレイナーレ…レイネルと呼んだ方が良いかしら…彼女に言った方が良いわ。貴方が死んだ原因が彼女だったとは言っても事故みたいな物だし、此処が悪魔の管理下に置かれている以上無礼討ちも考えられる状況で、プライドも何もかも投げ捨てて土下座で貴方の蘇生を懇願して来たもの。余程貴方を好いていたって事よ」

「そうですね…れーちゃん、ありがとう。俺を助けてくれて…愛してくれて…ありがとう…!」

「そ、そんな!私が撒いた種だから…でも、良かった…本当に、良かったよぉ…!」

 

感謝の言葉もそこそこに、俺達は人目も憚らず抱き合った…10年という空白を埋めるかの様に…

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