ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

63 / 94
62話_俺達、奔走しました

「そっちの首尾はどうだ?」

「問題ないぜ。俺達の存在を認識させない様にするなんざ、仙術で楽勝よ」

「いざと言う時の脱出手段もあります、遠慮なく乗り込んで行きましょう」

「…まあ、堂々と立ち入るのではなく潜入するんだがな」

 

アーサーはコールブランドを片手に、美猴は何かしらの術式を練りながら、俺の問いに答える。

…今からやる事はヴァーリの言った通り潜入だ、それもとある上級悪魔の領地へ。

これが明るみに出れば俺達の立場はより危うい物となるだろう、下手すれば即刻上級悪魔としての資格をはく奪されるばかりでなく、斬刑に処されるかも知れない。

そして俺の眷属である皆も巻き込む事になる…既に皆からは快諾されてはいるし、こうして俺含めた4人で潜入するのだが、それでもやるべき事を全うするまでは、慎重を期したい。

…まあそもそも、何故俺達がそんな危険を冒してまで、潜入を行おうとしているのか、というと…

 

------------

 

あの即興ライブの後、小猫ちゃんとリアス、そしてGRIDのメンバーたちは、黒歌とヴァーリから、黒歌がはぐれ悪魔となった事件の真相を聞いた。

黒歌が眷属悪魔となった経緯こそ、リアスから聞いた物と同じではあった。

だが、黒歌が持つ類稀な実力に目を付けた主人は、妹である小猫ちゃんにも術式を覚えさせようとした挙げ句、小猫ちゃんをも眷属悪魔にしようと画策した。

黒歌は契約内容に違反するとして抗議し、急な術式の修得は危険が多いと忠告したが聞き入れようとしなかったらしい。

挙げ句、小猫ちゃんを手に掛けるという脅迫までしていたとか。

このままでは小猫ちゃんが危ない…黒歌は考えを巡らせた末に、術式の暴走を装って主人を暗殺し、はぐれ悪魔となった。

だが当時の黒歌はまだまだ未熟、身を守る術の無い小猫ちゃんを引き連れて行ける程の実力も無かった為に、止む無く置き去りにしたらしい。

それからは想像するまでもなく、黒歌ははぐれ悪魔として人外勢力から命を狙われる事になった…でも、その心底は、小猫ちゃんを想う気持ちで一杯だった。

何時かは迎えに行く…実力を付けて、小猫ちゃんを守ると。

禍の団に入ったのも、その一派であるヴァーリチームに入ったのも、自分1人で行動するよりは、テロ組織ではあったが、いやテロ組織だからこそ自らの安全をある程度保障してくれるから、という考えからだそうで、特に白龍皇の仲間ともなれば、おいそれと手出し出来ないと踏んだらしい。

そんな、事件の真相を聞いた小猫ちゃんとリアス、そしてGRIDのメンバー達は号泣、特に妹である小猫ちゃんは黒歌の胸の中に飛びついて泣きじゃくっていた。

 

「お姉様…お姉様ぁ…!」

「御免なさい、黒歌…私、貴女の事、誤解して…!」

「全く、泣かせてくれるじゃねぇか…アニメとかでこんな展開を良く見たけど、やっぱ来るものがあるぜ…!」

「黒歌さん…理想のお姉さんだ…!」

「俺も、はぐれ悪魔が全て、欲に駆られて主に反逆していたと思っていた…悪かったな、黒歌…」

 

これで姉妹の間の蟠りは解けた、とは直ぐには行かないだろう、小猫ちゃんと黒歌が離れていた時間というのはそれだけ重い…だけど黒歌は勿論、小猫ちゃんも心の底では姉を慕っていたんだ、こっちの解決は時間の問題だろう。

後は、黒歌のはぐれ悪魔の指名手配を何とかしないとな。

 

「ヴァーリ、次は…」

「了解だ、主イッセー」

 

------------

 

で、黒歌が脅迫されていた証拠を探るべく、黒歌の元主の家系の領地にがさ入れ…もとい、潜入調査に入る事にしたって訳だ、が、

 

「これじゃないか?」

「何々…『○月△日 黒歌の力量は想像以上だ、これは妹である白音にも期待できる。白音も眷属とするとしよう』『○月×日 黒歌が私の命に刃向い、「白音は渡せない」と抜かしおった。誰が主か分からせてやる必要があるな』…ビンゴだな、良くあっさりと見つけたな、美猴」

「それっぽい気配がする奴を見つけただけだぜ?」

「兎も角、これで物証は十分ですね。早速魔王様にこれと共に黒歌の指名手配解除を」

「待て、アーサー」

 

入って数分で見つかった、その上々な結果から、アーサーが早速魔王様へ申請しようと進言するが…事はかなり重大だ、俺達の対応次第では思わぬ結果を招く恐れがある。

 

「俺はこれを先に、アザゼルさんに見せて置いた方が良いと思う。所謂内部告発だ」

「成る程な…バカ正直に悪魔陣営に見せた所で握りつぶされる恐れがある。悪魔陣営の代表はサーゼクス・ルシファー達4大魔王ではあると言っても、その権力は十全とは言えず、旧家の意向が大分反映されている。その旧家の大半が自分達純血悪魔の利権を守ろうとする守旧派で、主イッセーの改革方針には反感を示している。態々自分達に不利になる材料を魔王に渡す訳が無いし、魔王に直接渡そうにも、多忙を理由に会わせて貰えない可能性がある…例え魔王の妹であるリアス・グレモリーと恋仲の主イッセーであってもな。そして自分達の立場が不利益になる様な材料を持つ主イッセーを、何かと理由を付けて追い落としを図るに違いない。だが悪魔陣営と同じ位の勢力を誇る堕天使陣営の代表たるアザゼルなら違う。アザゼルはこっちで俺達のコーチを受け持っている以上、会う機会はかなり多い。また、主イッセーの改革方針に賛同、それどころか関与する気満々だ。そのアザゼルに今回の一件を物証と共に提出したとなれば…」

「アザゼルを始めとしたグリゴリの連中はここぞとばかりに悪魔陣営の批判をおっぱじめ、悪魔陣営は一応の友好関係である堕天使達の話を受け入れるしかねぇ、てか?」

「ああ。今は3大勢力を始めとした人外勢力が力を合わせて禍の団に対処すべき事態、そんな中で自分達の立場を悪くするような対応は避けなければならない。となればやると思われる事は2つ…都合の悪い情報は握りつぶすか…知られた情報を元に改善するしかない、という事か、主イッセー」

 

そう、それが俺の考えだ…サーゼクス様達魔王様は信頼出来るが、所謂その他の上役達は分からない…ヴァーリの話の通り72家の大半は俺の改革方針に反感を示している様で(例外はリアスを始めとしたグレモリー家、ライザー達フェニックス家、シトリー会長を始めとしたシトリー家位か)、そんな中で魔王様達にこの物証を渡せるかどうか…悪魔陣営内に限れば厳しいだろう。

だけどアザゼルさんを始めとした堕天使陣営を介すれば…って事だ、が、

 

「しかし一誠さん、確かに72家は貴方に反感を抱く者ばかりですが、いや、だからこそ、悪魔陣営を無視して他の勢力に情報を横流しする方法を取っては、余計に睨まれませんか?其処を守旧派に突かれて正式な上級悪魔への昇格の道を狭められるかも分かりません。そうなれば、一誠さんの夢の道は遠のくばかり、下手したら閉ざされるかも知れません」

 

アーサーが懸念を述べて来る…まあ、其処も頭の片隅では考えているが、

 

「その守旧派は兎も角、サーゼクス様とセラフォルー様はリアス達との関係もあって見知った仲だ。仮にそういう流れになったとしても、信じるだけさ、魔王様達を」

 

俺のその言葉に、アーサーは黙って頷いてくれたが…さて、どうなるか…

 

------------

 

「失態ですね。猫又の中でも特に高い力を持つ猫魈である黒歌を、その主の身勝手な理由で追い詰めたのを野放しにした挙げ句、本末転倒な結果を導いたばかりか、その原因を黒歌1人に押し付け、それが元で禍の団への流出を招き、更にはその自らの過ちで生み出したテロリストにあっさりと領地侵犯を許すとは…大体、悪魔陣営の管理能力は…」

 

結果としては成功だったと言える…グリゴリの副総督であるシェムハザさんが悪魔の上役の面々を会談ルームに集めて、舌鋒鋭く問い詰めた事で、黒歌のはぐれ悪魔認定が解除、元主がいた家は上級悪魔でも最も階位の低い『男爵』に降格した…流石に禍の団に所属していたテロリストという点までは払しょく出来なかったが、其処は俺の保護観察に置く事で結論は出た。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。