Side リアス
屋上階…良太の音色が止まった事で猫又の力が使える様になった(黒歌との再会、及び和解で使う決心が付いた様ね)小猫によって、ソーナが此処に潜伏しているとの情報を得た。
本陣である1階を捨て、屋上階に行くとは、ソーナらしいわね…王が取られてしまえばゲームはその瞬間に終わってしまう、ならば最も奥まった地点へ移動して此方へ来られる迄の時間を稼ぐって所かしら。
だけど、その地点を選んだのは私にとっても好都合よ…今から、王が取られてしまうという、ゲームに負けてしまうというリスクの重すぎる愚策を弄してまで一騎打ちを仕掛けようとする私にとっても、ね。
「来たわよ、ソーナ…随分と苦い顔しているわね、余程今回の作戦には自信があったって事ね」
「まさか、私達の作戦が悉く封じ込まれるとは思いませんでした…この1ヶ月余り、戦略面でもメキメキと力を付けていた、という事ですか」
「残念だけど、今回の作戦を考えたのは私じゃないわ。良太よ」
「元浜君…!?学園きっての問題児という点にばかり目が行っておりましたが、テストにおいて学年1桁順位を常に保つ程の学力がありましたね…失念しておりました…!」
確かに良太は、GRIDのベーシストとして、何より大輔と一緒に『変態コンビ』として余りにも知られてしまっているから、その学力面がクローズアップされないのも無理は無いわね…駒王学園の1桁順位となれば難関大学も容易に入れる『秀才』の筈なんだけどね…
「ですがこうして正面からのこのこと、王自ら出向くとは感心しませんね。貴方はレーティング・ゲームを甘く見過ぎでは?一度勝ったとは言え、今が圧倒的優勢とは言え、何時かは足を掬われかねません」
「親友の忠告、重く受け止めて置くわ。勿論、レーティング・ゲームが一筋縄で行かないのは分かっているわよ。今回の事が余りにも愚策だという事も、承知の上よ。だけどね、ソーナ…私は貴方とのゲームに、ある想いを抱いて臨んで来たの。その想いの為に、敢えて貴方との一騎打ちを望むわ」
そう、その為の、私の想いを示す為の、愚策。
「貴方が若手悪魔の会合の時に打ち明けたあの夢、今までスポットライトを浴びられなかった存在にも光を向ける、その為の学校を作るという夢…サイラオーグが打ち明けたあの夢、才能無き者でも努力次第で頂点にのし上がれるという事を、自らの身を以て証明するという夢…貴方達の夢を聞いた時、私の夢がどれだけちっぽけな物か、思い知らされたわ。自分の為だけじゃない、大勢の為、悪魔社会全体の為、世界の為…その為に本気で思っているんだと、痛感させられたわ」
「そうですか。ならば(ドゴォォォン!)私の夢の為に散って下さい!」
そうソーナが一声上げると同時に、背後から爆発音が響き渡る…確かそっちの方向には、貯水タンクが…やるわね、ソーナ。
「部長!危な「待って!手出しは無用よ!」」
それを防ごうとする皆だが、私がそれを制止した為に動く事が出来ず、そして貯水タンクから放たれた水流の槍が私へと牙を向け、
「ブラックホール(ギュォォォォォォォ!)」
「なっ、馬鹿な!?」
全て、私が天へと掲げた左手の先へと軌道を変え、何かに吸い込まれる様に消えた。
「貴方がまだ策を用意していたなんて事、予測済みよ。だからこそ敢えて正面から出向いたのよ…貴方の策略全てを打ち砕ける力があると知らしめる為に。私が抱く想いが、貴方のそれにも引けを取らないと知らしめる為に!皆、左右へ散開しなさい!」
『は、はい!』
私の指示を聞いた眷属達が左右に散開したのを確認しつつ、私は掲げていた左手…滅びの魔力を帯びた左手を後方に突き出し、
「
「な(ズドォォォォォン!)きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
滅びの魔力の奔流を後方へ発射し、その反動によるロケット噴射でソーナに突進し、上空へと飛ばした。
さっきソーナの攻撃を吸い取ったのは全て、この左手に帯びさせた滅びの魔力による物…でも、これで終わりじゃないわ!
「あの日、イッセーがどんな夢を語ったか覚えている?1万年以上もの間、今の様な体制で続いて来た悪魔社会を抜本的に改革すると、その先陣に立って指揮して行くと…新世界の神になると。サイラオーグの夢もソーナの夢もちっぽけに聞こえる様な、そんな壮大な夢を語ったのよ」
普通ならば余りにも壮大過ぎて、実現出来る訳が無い、夢を見過ぎだと突っ込まれそうな物、だけどイッセーなら、彼とその周りにいる眷属となら…そして、彼と愛を結んだ私達なら…出来る、イッセーなら、無限の龍神オーフィスと肩を並べる程の彼なら出来る、そんな力がある。
勿論、実現には高く険しい関門が幾重にもそびえたっている事だろう…そんなイッセーの為に、私は、
「イッセーの主として、イッセーと恋仲を結んだ存在として、私はイッセーの夢を、共に叶えに行くわ!イッセーが何かを成そうとするならば、私はその道筋を作って見せる!イッセーが事を起こそうとするなら、私はその準備を万全な物に整えて見せる!
イッセーが新世界の神を名乗るならば、私は新世界の神の妻…新世界の女神になるわ!」
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グレモリー領に帰省したあの日、お母様から衝撃の事実を告げられた。
「正直、貴方に伝えるべきかと思っていましたが…フェニックス家とのレーティング・ゲームと、それを行う事になった経緯をきっかけに、貴方をグレモリー家の次期当主とするのは、人格的な面から止めた方が良いのではという意見が、嫡子であるサーゼクスの子…つまりは嫡流であるミリキャスが成人となるまで代替わりを待つべきではという意見が、支援者の間から飛び出て来ました。結果としてライザー殿が引き籠り状態に陥ってしまったのも、その意見に拍車を掛けた様です」
「じょ、冗談じゃありません!あのレーティング・ゲームは両家納得した上での事だと聞きました。それに勝ったら掌返しで次期当主にするべきじゃない等と意見が出るのは、理不尽にも程があります!」
「私達もその様に反論し、結果としてその意見は直ぐに鎮静化しました。然しながら、先日のイッセー君の上級悪魔への昇格、及び禍の団の元構成員の眷属入り…それらが、その意見を再び上げさせる原因となりました。元テロリストを眷属としたイッセー君の主であるリアスが、グレモリー家の次期当主とするのは外聞が悪すぎる、と。勿論彼らは、元はそういった集団に属していた身とは言え、現状は更生の道を辿ろうとしています、そう説明しても収まる気配がありませんでした」
「な…!」
「更に言えば、未成年ながら上級悪魔となったイッセー君…兵藤家に嫁を出すべきではという意見まで出ました。其処までの実力者であるイッセー君との…兵藤家とのパイプを早めに構築するべきだと」
「何と…なんという…!」
「…私とて、此処まで理不尽な意見を出されては我慢がなりません、粘り強く説得に当たります…が、向こうもありとあらゆる手を使って要求を突きつけて来ています。決断するなら、なるべく早めにお願いしますね」
その支援者からの要求に、腹立たしさの余り声が出なかった。
普通に聞けば御尤もな意見ね…元テロリストを抱きこんだ状態で、グレモリー家という有力な家の当主の座を継ぐ等、周囲から見れば何かしでかすのでは無いかと勘繰るのも当然ではあるわ。
でも、旧魔王ルシファー様の血筋を持ちつつも身に宿した『白龍皇の光翼』によって虐げられ続けて来たヴァーリ、及び色んな経緯で彼と同じ道を歩んで来た仲間達…彼らを間近で見て来た私には、一見正論であるその意見も暴論だと言いたい…誰が、誰がそんなテロリストを生んだのか、自分の胸の内に聞いてみなさい、と。
だけど、別の視点で考えて見れば、これは私の夢の1つを叶える為のチャンスでもあるわね…
イッセーと、私を1人の女性『リアス・グレモリー』として見てくれる彼と、一緒になる…そんな私の夢を叶える、そんなチャンス。
イッセーと恋人となった今、その関係が大っぴらになった今、周囲はその間を裂くような縁談を申し込もうとは思わないでしょう…例え申し込まれたら、その時はぶち壊しにして見せるけど。
だからと言って、イッセーにはレイネルという、彼にとって一番の女性がいるし、他にもアーシア、ゼノヴィア、オーフィスもいる…そんな彼を婿入りさせるのは、私を本妻としろと言うのは、レイネルを捨てろと言う事と同義で気が引けるし、周囲もそういった関係を持つイッセーとの縁談を、元人間の彼を夫として迎えるのを良く思わないだろう。
だとすれば…支援者たちの暴論を丸呑みする様で腹立たしいが、そうしなければ、私はイッセーと一緒にはなれない。
でも、私にはもう1つの夢が…
そんな私の迷いは、
「俺は新世界の神になる!」
その、彼の言葉で、吹っ切れた…私の想いは、此処で決した。
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「私はこれからイッセーの妻、兵藤リアスとして生きて行くわ!ソーナ…この一撃を、この決意の重さを、受け取りなさい!」
その言葉と共に、私は滅びの魔力を極限まで込めた両手を、上空を舞うソーナへと向け、
「
両手から、今か今かと放出を待つ魔力の塊を作り出し、
「
その塊をドンドンと巨大化・濃縮させ、
「
標的であるソーナへの照準を調整して、
「
そして解き放つ…私の滅びの魔力と、イッセーの回転の力、それらを組み合わせた、私の新たなる力を!
「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「な!?(ヒュゴォォォォォ…!)きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
私の両手から放出された、巨大な滅びの魔力の奔流は、ソーナを余裕で呑み込み、
『ソーナ・シトリー様の
そして、勝負を決める、私の決意を物語る一撃となった。