ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

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ISSEI無双、開幕。


72話_俺、覚醒しました(5)

Side ヴァーリ

 

「我、目覚めるは」

『い、いかん!イッセーの奴、怒りに駆られて覇龍を使おうとしている!』

「止めるんだ、主イッセー!今の貴方にその力は危険過ぎ…!?」

 

禍の団に寝返り、このレーティング・ゲームの場に旧魔王派であろう連中を引き入れたディオドラ・アスタロト、奴がアーシアに対して余りにも無情な、淡白な言葉を投げ掛けて転移すると同時に、主イッセーが口にした言葉…それは俺にとって、白龍皇である俺にとって馴染みの深い、それでいて恐らく俺以外のドラゴンを宿した神器の所有者にとっては禁句とも言える言葉だった。

覇龍の呪文…ドラゴンの魂を宿した神器の所有者が自らの身体を依代に、神器に封ぜられたドラゴンの魂を解放、その全力を顕現させる物だ。

発動さえすれば、封印されているドラゴンにもよるが神すらも上回る力を発揮するが、勿論そんな無茶苦茶な力を維持するには多大なエネルギーが要求され、その渇望は所有者を蝕む…俺ならばハーフ悪魔という素性、旧魔王ルシファーの子孫という素性からなる膨大な魔力を消費するだけで済むが、魔力で賄いきれない場合は…所有者の寿命が、下手したら命が奪われる事になる。

幾ら主イッセーが圧倒的な実力を有していると言っても、アザゼルが言った様にそれはあくまでも主イッセーが培って来た技術による物、純粋な能力…身体能力や魔力と言った面で言えば俺の足元にも及ばない、そんな主イッセーが覇龍を使うとしたら…!

そう思い立ち、止めさせようと説得を試みたが…何故だ、何故身体が竦んでいる!?

周りを取り囲んでいる旧魔王派の連中が何かをした訳じゃ無い、そんな連中如きに恐怖を覚えてもいない、だが、だが何で身体が竦んで、主イッセーの元に向かえないんだ!?

 

「覇の理を神より奪いし二天龍なり」

『何をしているんだヴァーリ!早くしないとイッセーが覇龍の詠唱を完成させてしまう!そうなってしまったら、イッセーは!』

「分かっているアルビオン!だが、だが何故か身体が言う事を聞かないんだ!主イッセーを止めないと行けないと言うのに!ま、まさか…!」

 

まさか…主は、タスクACT4を用いて、俺達が止めるのを阻止しているのか!?

タスクACT4…主イッセーの、強さの秘訣とも言えるタスクを、主が最高な物に昇華させた物。

コイツの力は、一言で言うなら『無限回転による因果操作』…つまり、主イッセーが「やる」と決めた事への障害を、無理矢理捻じ曲げて「やる」事を成し遂げてしまうという、正に神の所業だ。

だとしたら何を考えているんだ主イッセーは、ドライグから覇龍の危険性は教わった筈だ、それを一時の怒りで発動しようとし、それを無理矢理実現させようなど…!

こいつら程度、主ならば片手間でも楽勝だと言うのに、怒りに駆られて我を失ったら…!

 

「無限を嗤い、夢幻を憂う」

『何と言う事だ、止められないのか…!』

「っ!そうだ、レイネル、アーシア、ゼノヴィア!お前達、主イッセーを…!」

「「「――――!――――!」」」

「口封じ!?馬鹿な…主イッセーは、怒りの余り恋人達の説得も聞く気は無いと言うのか!」

 

主イッセーの恋人たる3人に至っては声も出せない…これでは止める術が無い…!

 

「我、赤き龍も過去の意も征し」

『む!?どういう事だ、イッセーの詠唱が変だ…!』

 

詠唱が違う…これは一体…いや、それよりも詠唱が終わりかけている…もう駄目か…!

 

「汝を絶対意志の牢獄へと誘おう!」

『がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

『な、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?止めろぉぉぉぉぉぉぉぉ相棒ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『どういう事だ!?赤いのが、歴代赤龍帝の念が、悲鳴を上げているだと!?』

「何だって!?一体何が起こっているんだ…!?」

 

詠唱が終わると同時に、断末魔とも言える悲鳴を上げる歴代の赤龍帝の残留思念達、その中に、覇龍によって解放される筈のドライグの悲鳴まであった…おかしい、覇龍で、こんな事が起こるのか…?

 

「ApocalypseDrive!」

 

主イッセーがそう告げた瞬間、視界が真っ赤な光に包まれ、主イッセーがいると思われる場所から、膨大な力の奔流が巻き起こった…

 

「くっ!?眩しい…!これが、これが主イッセーの覇龍か…!」

『いや…これは!?イッセーが…赤いのを、歴代赤龍帝の念を、喰っている…!?そんな馬鹿な!?』

 

アルビオンが発した言葉の、余りの突拍子の無さに突っ込もうとしたが、主イッセーがいると思われる場所からの間隔…主イッセーの他に感じられる複数の力の1つ1つを、主イッセーの力が順番に取り込んで行き、最後にはドライグの物と思われる膨大な力をも取り込んで行った…そんな感覚が、それが現実だと…アルビオンが言った通り、ドライグを、歴代赤龍帝の残留思念を、主イッセーが喰っているのだと、感じさせた…馬鹿な、こんな事が、こんな馬鹿げた事が起こって良いのか…幾ら主イッセーが常識外れの存在だからって…!

そして、ドライグの力をも全て取り込んだ瞬間、力の奔流が爆発するかの様な感覚を覚え、真っ赤な光が晴れたのを感じて、目を開くと其処には、

 

真紅に染まり、純度の高いルビーの様な真紅の輝きを放つ鱗に覆われた全身の皮膚

鱗にびっしりと覆われながらも存在感を失わず、密集した火成岩の様な鍛え抜かれた体格からは、何時も着用していた駒王学園の、制服の上着の存在は既に無い

肩まで伸び、新品の銅線の様な光沢を放つ赤茶色の髪

炎の様に爛々とした光を放つ、真紅に染まった瞳

赤龍帝の籠手を更に大きく、刺々しくしたかの様に発達した両腕

胸に大きく開いた口を中心に埋め込まれた、赤いドラゴンの頭部

背中から大きく飛び出した、真紅のドラゴンを思わせる一対の大翼

駒王学園の制服の、ズボンの上から飛び出した、ドラゴンの尻尾

 

まるで、主イッセーの原型を留めたままドラゴンと化した様な、神々しい存在と化した様な、そんな姿…今の主イッセーは、そんな姿だった。

 

「あれが、あの姿が、主イッセーの覇龍…」

『いや違う…あの姿から感じる、圧倒的な力…俺達二天龍がちっぽけに感じてしまう、あのオーフィスですら及ばないと感じてしまう、それ程までの力…あれが、あれが覇龍である筈が…!』

「いっちゃん…綺麗…」

「ああ…イッセー、まるで神の如き姿だ…」

「イッセーさん…凄く、美しいです…」

「びっくりなのにゃ…イッセーの覇龍…ビューティフルなのにゃ…」

「…凄く、美人です…」

「何でだ…イッセーは男の筈なんだが…すげぇ、綺麗だ…」

「あれが、イッセーさんの覇龍…何と、美しい姿だ…」

「本当ですわ、アーサーさん…何と神々しい、姿でしょう…」

「イッセー様…正に現代に舞い降りた神の如き、美しい姿です…」

 

そんな主イッセーの姿に、魅了の術に掛かった様にみとれる仲間達…だが俺には、その美しさに一種の畏怖すら覚えた…その、美し過ぎる姿に。

 

「主イッセー…貴方が神か…?」

 

その余りに美しい姿にポツリと俺が言ったのを聞いたかどうかは分からないが、主はこう言い放った。

 

「俺は今、赤龍帝の怨念も、二天龍その物すらもわが物として見せた。これが俺の覇龍…いや、覇龍では無いな。

 

征龍(ApocalypseDrive)』…これが今の俺だ」

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