76話_俺、後輩から恋愛相談を持ちかけられました
ディオドラとのレーティング・ゲーム(とは名ばかりの、禍の団の襲撃)から数日が経った今、あの時の喧騒が嘘の様な、平穏な日常が繰り広げられたいた。
平日は学校に行き、その放課後には部活に勤しみ、休日は彼女達と過ごし、そして夜は悪魔としての仕事に励み、合間にはトレーニングをする…まるで、禍の団が存在していなかった、認知していなかった時に戻った様になっていた。
実際禍の団の活動と見られる報告は、ぱったりと無くなってしまったというのもこんな認識を生む要因になっている…だが、勿論全てが元通りとはいかない。
その1つが、
「…また駄目か」
ドライグの声が、ぱったりと聞こえなくなった事。
俺が『征龍』を発現させたのをきっかけに、その声は、意識は全く出て来なくなってしまった。
『征龍』でドライグその物を取り込んだからではないか、と主にヴァーリから指摘されもしたが、ドライグの存在は相変わらず俺の内部、俺の『赤龍帝の籠手』から感じ取る事が出来るし、籠手の力も『禁手』も問題無く使う事が出来る。
俺自身も『征龍』が解除されてから、身体に変化は見られない…強いて言うなら体力を一気に持っていかれたからか脱力感が半端なかったが、その割に『覇龍』の副作用である寿命の削減が全く認められなかった。
だけど、ドライグの声だけが、意識だけがすっぽりといなくなった…本当に、なんでだろうな。
人間だった頃は人外勢力との過剰な干渉を避ける為に、籠手の使用を控えていたし、悪魔に転生してからはイマイチ存在感が薄かった様な気がする…が、ドライグは俺にとって戦いの師匠であり、相棒であり…れーちゃんをはじめとした俺の将来の妻とも、ヴァーリをはじめとした俺の眷属とも違う、大事な存在なんだ。
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そんな或る日の放課後、部活に参加する為にオカルト研究部の部室に入った所、
「あ、イッセー兄さん。丁度良かったっす。ちょっと良いっすか?」
「美月?どうしたんだ急に?」
「…此処じゃあれっすから、ちょっと私と2人で外出て貰っても良いっすか?」
「内密の呼び出し?もしかして美月、いっちゃんに愛の告白でもするのかな?」
「いや違うっす、別件でちょっと」
「まあ、別に構わないけどさ」
突然、美月に呼び止められ、部室を出る事になった…どうしたんだ、美月の奴?
「イッセー兄さんは、良太さんとは長い付き合いっすよね?」
「良太?ああ、アイツとは中学からの付き合いだぜ」
何を聞いて来るかと思えば良太の事か…ん、美月の奴、顔がほんのり赤くなっている様な…?
「イッセー兄さん…そ、その、良太さんについてなんすが」
「お、おう…なんだ、美月」
ま、まさか美月の奴…
「良太さんってどんな女性が好みなんすか!?是非教えて欲しいっす!」
やっぱりかぁ!
え、でも何で良太!?確かにアイツ頭良いし、顔だってオタクっぽさを考慮しなければ悪くないし、性格もエロ要素に目を瞑れば熱血な好青年だけど、よりによってアイツなのかよ!?
「美月…正直に言ってくれ。良太のどの辺が好きなんだ?」
「すっ!?え、いや、その、えーと…まあ此処に来た当初は、あんまり好きじゃ無かったっす。白音達から聞いていた通りのエロの権化で。でも良太さんが人間だった頃、イッセー兄さんのバンドの練習を見に行った時があったんすけどね、其処で黙々とベースを弾く姿が、イッセー兄さん達をリードするんだっていう気迫に満ちた姿が、なんか格好良くて。それに匙先輩から聞いたっす。イッセー兄さんを生き返らせてくれた恩を返したいって言って悪魔に転生する事を、リアス姉さんの眷属になる事を自ら言い出したって」
元の奴、喋っていたのかよ…まあ別に口止めを要求してもされてもないけどな。
「それに冥界での修行の時に、必死にアザゼル様や朱乃さん達から魔力や神器の扱い方を覚えようと、修得しようと話を黙々と聞いていた姿、グレモリー家の蔵書を読み漁っていた姿…あれを見て、良太さんは本気でリアス姉さんの為に尽くそうとしている、親友であるイッセー兄さんを生き返らせてくれた恩を返そうとしているって思って…その姿が凄く眩しく見えたっす。まあ、時折グレモリー家の使用人にナンパしたり風呂場覗こうとしたりしていたのは玉に瑕っすが…でもその時、訳の分からないもやもやを胸の中に覚えたっす。このもやもやの原因を考えている内に私、良太さんの事が好きなんだって気付いたっす」
成る程、嫉妬心が切っ掛けで恋心を自覚したって訳か…
「けど良太さんへの想いに気付けたのは良いとして、それを良太さんが受け入れてくれるかどうか…ちょっと不安なんすよ。私、白音程じゃ無いっすけどチビだし、胸だって無いし…」
「安心しろ、良太はロリコンだ」
「ろ、ロリ!?という事は、私の見た目は…」
「ああ、アイツのストライクゾーンど真ん中だ」
「ま、マジっすか!?つまり私には大チャンスって事っすね!イッセー兄さん、色々とありがとうっす!これから頑張って来るっす!」
「おう、吉報を待っているぜ」
良かったな良太、お前にも春が来そうだぜ…で、だ。
「お前ら、物陰から聞き耳とは悪趣味だぞ」
「あり、バレた?美猴センセ、仙術効いていないじゃん。どうなってんの?」
「ヒャハハハ」
「あれー、おかしいなぁ。ちゃんと掛けて置いた筈なんだが」
後方の物陰から見知った気配がしたので声を掛けると其処から、やっぱりと言うべきかフリードが、使い魔であるキリトを連れ、美猴と共に出て来た…美猴までいるのか、コイツもノリはフリード寄りなのか?
だがそれにしては変だな、美猴は仙術を始めとした様々な妖術に長けていた筈、口振りからして仙術による気配遮断も施していた様だが…
「イッセーの言う通りにゃ。仙術まで使ってこそこそ聞き耳立てるなんて、ましてや美月の、可愛い眷属仲間の恋バナじゃない、悪趣味にも程があるにゃ。だから偶々通り掛かった私が妨害を掛けて置いたのにゃ」
「お前かよ!」
その疑問は直ぐ氷解した…どうやら偶然こっちを通りすがった黒歌が妨害していたらしい…いやだったら捕まえるなりシバくなりしてくれよ、ヴァーリチームでも調子こいた美猴をシバいていたってヴァーリから聞いていたんだが。
「それにしても…美月があのエロコンビの一角にねぇ。まあでも、頭の良さは認めるし、イッセーとの友情も熱かったし、中々良い男じゃないのかにゃ?…問題は、向こうが他の女に浮気しないかどうかにゃ…」
「だよなぁ。アイツにとって初めての彼女になる、そこら辺どうなるか…」
5人の恋人を持つ俺が言えた話じゃ無いが、GRIDのメンバー総出で街に繰り出してはアイツ、大輔と一緒に手当たり次第にナンパしていたしな…さっきも言った通り、少なくとも美月の外見は良太の好みど真ん中ではある、そんな美月に好意を寄せられて「一生大事にする!」となれば良いんだが。