「行きますよぉ!」
「な、なんだこの感じは…」
「ははっ信じられない位のろっちぃな!ギャー君の新しい力が効いているって感じですかい?」
「くっ…!」
「せいやぁ!」
「にゃぁ!?」
「アタタタタタタタタタ!」
「くぅ…!」
リアスの眷属からはギャスパーと大輔、木場とフリードの4人、俺の眷属からはアーサーとゼノヴィア、黒歌と白音の4人、この4vs4で行われている模擬戦、此処でギャスパーの、先日のトレーニングで会得した神器による『鈍くする』力が猛威を発揮していた。
フリードが言う様に、何時ものアーサー達では信じられない位にあらゆる動作が遅く、攻撃に行こうとしても軽く躱され、或いはいなされ、そして相手からの攻撃には対応に苦慮している、そんな展開が終始繰り広げられていた。
リアスの眷属側は前線で活躍出来るメンバーが3人、しかもその内大輔は悪魔になるまでこういった戦闘経験が無かった『元一般人』、一方で俺の眷属側は4人全員が前線でも活躍出来、しかもアーサーと黒歌は少数精鋭で知られた禍の団・ヴァーリチームのメンバー、その実力差は明らかであるにも関わらず、この結果。
間違い無く、先日のトレーニングによる効果は覿面だったと言えるだろう。
「よし、模擬戦はこれで終わりだ。皆、今日の様子はどうだった?」
「いやぁマジビックリ。無茶苦茶強かった筈のアーサーセンセが、今日に限ってむっちゃのろっちぃんだもん、ギャー君の新しい力ってホントすげぇ!」
「そうだね、まるでウルトラハイスピードカメラで撮ったビデオをスロー再生しているかの様だった」
「私もびっくりです。急に私達以外の動きが、まるでビデオの早送りの様にスピードアップしましたからね。自分達の時間を遅くされると、こう感じるのですね」
「急にそんな事されちゃった物だから、戸惑って『気』を練られなかったのにゃ。まあ出来た所で避けられるのが関の山じゃないかにゃ?」
「…未だに何されたのかが良く分からない気分です。これがギャー君の新しい力、敵に回すと恐ろしいです…」
「全くだ。私の持ち味を全殺しだからね」
「イッセー、お前とは長い付き合いだけどさ、TASからこんな発想に辿り着くとか、未だに驚かされるぜ。改めてスゲー奴だな、お前って」
模擬戦を行ったメンバー達からも、ギャスパーの新たなる力の効果を絶賛する。
特に今まではその圧倒的実力差から『止める』事が出来なかったアーサーを、『鈍くする』事に成功したのは大きい。
だけど、そう事が上手く運ぶとは限らず、
「ギャスパーはどうだ、ギャスパー?」
「こ、これ意外と疲れますぅ…」
新たな問題が発生したっぽい。
実際に使う側であるギャスパーから話を聞くと、ちょっと鈍くする程度なら兎も角、今回の模擬戦で木場が言っていた程まで鈍くしようとすると、却って『止める』時以上に力を消耗してしまうそうだ。
例えるなら、ドラクエにおける『ザラキ』と『ベギラゴン』の違い、と言えば良いか?
ドラクエ史上初の即死呪文として知られ、今現在は敵1グループを範囲に取れる『ザラキ』と、ギラ系最高威力を誇り、どっかの動画チャンネルのネーミング元にもなった『ベギラゴン』。
ザラキの方は確率こそあれど一発で死亡させる効果を持つ一方、ベギラゴンの方はせいぜい100台のダメージ、ある程度のHPがあり、回復をこまめにやっておけばそれ程脅威では無い。
だがこの2つの消費MPは、ザラキが7、ベギラゴンが10(共にドラクエ5)と、実はベギラゴンの方が多い。
それも、ベギラゴンを2回余裕で唱えられる程のMPなら、ザラキを3回唱えられる程の差、これならザラキで即死を狙った方が効率的だろう。
だがそれはフィールド上でランダムに遭遇する、通常の敵ならの話で、ボスキャラともなると話は違う。
ゲームバランスの都合上、という側面もあるとは言え、ボスキャラにはザラキが全く通じない一方、ベギラゴン等のダメージを与えるタイプの攻撃呪文は、ある程度ダメージを抑えられはするが通じるって、大分話が脱線したな。
つまり、効果は強烈だが圧倒的な実力を持った存在には通じない『ザラキ』が『止める』効果、効果はそこまでじゃないが実力差に関わらず発揮出来る『ベギラゴン』が『鈍くする』効果、と言えるな。
しかし、これはちょっと予想外だったな。
本来は『止める』為に必要な力の消費を少なくする為に思いついた『鈍くする』効果なのに、使い方を誤れば逆効果となってしまうとか、本末転倒と言わざるを得ないな。
まあ一方で、実力差に関わらず効果を発揮出来る選択肢を得られたのは収穫だった。
となれば、次の課題はその、力の消耗に関する点だな。
最優先はスタミナの強化ではある、が、例え強化した所で有限である事には変わらない、長期戦ともなればスタミナ面の管理に気を配らないといけない。
幾ら『鈍くする』効果が実力差に関わらず発揮出来ると言っても、圧倒的実力差を理由に強めたまま使い続けてはギャスパーの身が持たない。
『止める』効果も『鈍くする』効果も、使いこなせば強烈であるのは揺るぎない事実、そんな重要戦力であるギャスパーが長く戦場に居続ければ相手にとっては脅威となる、長く居続ける為には効果の使い分けや、『鈍くする』効果の強さの調整、そういったマネジメントが欠かせない。
よし、今後のトレーニング方針が見えて来たな。