Side アザゼル
「サーゼクス?今、なんつった?」
昨日、日本の神々との会談に臨むべく、教会から護衛として派遣されたX-LAWSと共に来日した爺さん、その今後の予定を立てるべく、俺とサーゼクス、ミカエルによって始まったテレビ電話による会談、其処で俺とミカエルは、未だ決まっていない悪魔側の、派遣予定のチームを聞く事になっていた。
ミカエル達天使陣営は、実力もずば抜けていながら教会内では『異端』と騒がれている程の独特の理念を持つX-LAWS、俺達堕天使陣営は、最高幹部であるアルマロスを中心とした特命チーム、という様に、爺さんの実力、及びその爺さんを狙うであろう刺客の実力を想定した、良く言えば『ドリームチーム』、悪く言えば『物々しい』編成にした。
故に悪魔陣営もまた、それに見合った連中を派遣して来るだろう、俺は、いや恐らくミカエルも、そう思っていたし、サーゼクスの口から発表された案もまた、実力で言えばそうだった。
『実力で言えば』、だが。
『我々悪魔陣営からは、イッセー君及び彼の眷属、そして彼の主であるリアスとその眷属を、オーディン様の護衛に任ずる事にした、と言ったんだ』
「サーゼクス、お前もう一辺言ってみろ!」
聞きなおした俺へ再度、サーゼクスの口から発表された内容、それが俺の聞き間違えじゃないと分かった時には、俺は画面越しのサーゼクスに噛みついていた。
確かにイッセー、及びアイツの眷属達は、今の世界においてトップクラスの実力を誇る、単純な実力面で見れば、コイツら以上の適任はいないと言っても良い。
俺が納得できないのは、もっと別の理由だ。
「サーゼクス、お前はイッセー達若手悪魔の会合の時、こう言った筈だよな?『君達は君達が思う以上に、我々にとっては宝なんだ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている』、と。バアル家の跡取りが『いずれ禍の団との戦いに投入されるのか』と質問したのに対して『出来るだけ、若い悪魔達は投入したくは無いと思っている』と、返したんだよな?お前達4大魔王や、悪魔陣営の上層部が顔をそろえた会合で、そう言ったんだろ!?それを、舌の根も乾かねぇ内に反故にするってのかよ!?」
『それは、済まないと思っている。その会合で語った事は私の本心だが、状況的にそうも言っていられなくなったんだ。禍の団による襲撃が再度予想される中、警戒の為の人員を割く訳には』
「そんな見苦しい言い訳何ざ聞きたくねえんだよオイ!」
禍の団による襲撃?そんなの悪魔陣営だけじゃねぇ、俺達堕天使陣営や、ミカエル達天使陣営だって同じだし、爺さん達北欧勢力の様な、地方勢力にも言える話だ!
けれどその懸念も、最近は少し心配し過ぎじゃないかという風潮もある。
禍の団・旧魔王派が引き起こした襲撃、あれ以来禍の団によるテロの報告は、実を言うと殆ど無い、あったとしても下っ端構成員の独断で引き起こしたらしい小競り合い位だ。
首領だったオーフィスが抜け、ヴァーリが自分をリーダーとしたチームの面子と共にとんぼ返りしてきたばかりの時とは違って、ハプニングによる混乱も収まった筈の状態でコレでは、何を企んでいるのかと勘繰ってみた結果、最近1つの結論に達した。
そう、イッセーという存在だ。
ヴァーリから聞いた話では、禍の団は当初イッセーの事を『赤龍帝である以外、何も無い』と、的外れにも程がある位の評価を下していた。
そしてイッセー達から聞いた、襲撃事件の首謀者の1人であるディオドラ・アスタロトの狼狽ぶりから、その認識はあの時まで変わっていなかった。
余りにもマヌケ過ぎて信じがたい話だが、その認識はあの襲撃事件の時にイッセーが見せた『征龍』の力、上級、中には最上級悪魔級の実力を持った存在が何人もいた筈の襲撃者達を、ただ『命じた』だけで捻じ伏せ、その命を絶たせた力、オーフィスすら歯が立たないであろうその圧倒的な力、それを目の当たりにして改められたであろう。
そのイッセーに恐れをなした、とこれだけが結論ではない、これだけならばこの街を標的にせず、イッセーが関与出来ない所でテロを起こすだろうからな。
けれどこれは限りなく正解に近いと言える、何故ならそれ以外の要因も、イッセーが関わる話だからだ。
あの襲撃事件以来悪魔陣営に、同盟関係や国交締結を望んだり、会談を申し込んだりする人外勢力が急激に増えた、ぶっちゃけ、世界のほぼ全ての人外勢力から来ているだろうな、こりゃ。
まあ気持ちは分かる、禍の団という危険分子がいる中、イッセーが所属する悪魔陣営と友好関係を結んでおけば集団的自衛権によってうんぬんかんぬん、といった感じで、自分達の勢力が危険にさらされても直ぐに鎮圧してくれる、と考えるだろうから。
そう、イッセーはもはや、全世界の人外勢力からその実力を畏怖され、そしてテロへの『抑止力』として大いに渇望されている。
そんな状況下では下手に藪を突きたく無い筈、突けばイッセーが出る。
禍の団は今、イッセー1人によって四面楚歌な状態に陥りかけている、それが結論だ。
無論、警戒するに越した事は無い、キューソネコカミでは無いが、追い詰められたテロリスト程危ない奴はいないから、警戒人員を配置したい気持ちも分かる。
けれど俺達もミカエル達も、そんな状況下でも人員を割いて爺さんの護衛に、精鋭と言える人材を当たらせているんだ、そんな中サーゼクス達は公式発言を反故にしてまでイッセー達若手に当たらせたいだと、ふざけんな!
そして俺の怒りはそれだけじゃ、悪魔陣営の対応に対してだけじゃない!
「大体サーゼクス!リアスはお前にとって妹、イッセーは義理の弟だろ!自分の近親に、まだ年端もいかねぇ妹弟に『戦場へ行って来い』と命じる事に対して、何とも思わねぇのかよお前は!」
『っ!』
サーゼクス自身がこの事に対して、自分の妹と義弟を戦場へ送る事を何とも思っていないんじゃないか、その疑念が俺の怒りを増幅させていた。
俺には本当の意味で兄弟と言える奴は居なかったし、子供を持った事も、いや、何でも無い!
だから俺がサーゼクスの立場だったらどう感じるかは、俺には想像し切れないが、それでも到底我慢出来る物じゃねぇって事くらいは分かる。
だが、サーゼクスは平然とその事実を受け入れた様に、俺には感じられた。
魔王としては、悪魔陣営のトップとしては当然の姿だろうが、兄としては最低な姿、それが俺には我慢ならなかった。
「お前の生まれであるグレモリー家は身内への慈愛に満ちていると聞いていたし、リアスの様子からもそれが本当だと思いかけたんだが、リアス達がそうなだけのデマだったようだな!こんな冷血野郎が家系にいる位だしな!」
『なっ!?』
『アザゼル!此処は非公式とはいえトップ同士の会談の場、言葉を慎んだらどうです!』
「うるせぇ!とにかく、堕天使陣営を代表して、悪魔陣営の案に反対を表明する!イッセーには遠く及ばなくとも、俺達が派遣した連中以上のチームがそっちにはゴロゴロいるんだろ!そいつらを派遣する案を纏めてから出直して来やがれ!」
ブチィ!という効果音が響きそうな位に荒々しく、回線を切ってやった。
冗談じゃねぇ、冗談じゃねぇよ!
こんな奴等に、イッセーをやりたい放題されてたまるか!