Side アザゼル
魔王領ルシファード、此処へ来るのはリアス達の帰省に同行して以来だったか?
まさか、嘗て敵対していた悪魔陣営のトップと言える連中が集う場所に、此処までの短い間隔で訪れる事になろうとはな。
尤も、今回来たのはその時の様な友好関係では無い、爺さんの護衛をどうするかで悪魔陣営が見せた外交姿勢を問い詰める為、というと真面目かと突っ込まれるが、ぶっちゃけ言えばイッセー達を抜擢した事に対する抗議だな。
昨日の電話会談でサーゼクスが発表した、爺さんの護衛にイッセーとその眷属、リアスとその眷属を起用するという悪魔陣営側の方針、それに色んな意味でマジギレした俺は独断で、堕天使陣営を代表しての反対表明をしちまった訳だが、この件を最高幹部達で協議した所、全会一致で俺の意を支持された。
とは言ってもシェムハザからは「一時の怒りで突き返しても向こうは聞き入れないでしょう」と俺の短絡的な対応を批判されたり、ベネムネからは「ダメな理由の、向こうへ言った分が弱すぎ」と理由の少なさを指摘されたりし、結果としてバラキエルの「改めて悪魔陣営に抗議声明をしてはどうだ」という意見が採決されたが。
確かにサーゼクスの、若手悪魔の会合の場での発言を反故にした、というのも理由としては真っ当ではあるがあくまで悪魔陣営内向けの発言であり、陣営外も含めた情勢次第ではどうとでもなるというのが現実だし、サーゼクスの良心に対する批判も、はっきり言って感情論だ。
もっとだ、もっと理路整然とした、建設的な反論で、アイツらがイッセー達を護衛に起用する事を、せめて「イッセー達で良いか」的な発想で起用するのを阻止しなくてはならない。
イッセー達、特にイッセー本人は、そんな軽々しいノリで戦場に立たせて良い奴じゃ無いんだ!
「グリゴリ総督のアザゼルだ。魔王達に伝えろ、今回の護衛任命の件に関する、悪魔陣営の外交姿勢について問いに来たと」
「あ、アザゼル様!?しばしお待ちを!」
普通なら外交担当の面子に任せるべき案件なんだが、俺の個人的な抗議もあるし、何より堕天使陣営のトップが来るとなれば向こうも事の重大性を理解するだろ。
さて悪魔陣営のお偉いさん方、丸一日かけてでも問い詰めさせて貰うぜ?
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「ようお前ら、護衛の適任チーム探しは順調か?」
「あ、アザゼル…
本当に来ていたとはね…」
「あ、あらら?本当にアザゼルちゃん本人が来ちゃうなんてびっくり」
「本当にアザゼル本人が来るとは思わなかった。余程今回の件が気に食わないのかい?」
「態々ご苦労様だね。もしかして暇?」
待つ事数分、サーゼクス達4人がいる応接室に案内された俺は、ファルビウムの発言に少しイラッとしつつも、本題を切り出す事にした。
「さてお前ら、俺が此処へ来た理由が分かっている様だから早速切り出させて貰うぜ。
今回の事、イッセー達を爺さんの護衛に任ずる事に、堕天使陣営として改めて反対を表明する」
「アザゼル、悪いが今は禍の団の脅威が」
「脅威がある以上、警戒人員は割けない?それはサーゼクスからも聞いたぜ、アジュカ。大体それは他の陣営だって一緒だ。そんな中でも爺さんは自ら日本神話の連中との会談の為に来日していて、天使陣営も堕天使陣営も、爺さんの護衛の為だけに精鋭を付けさせているんだ、それは言い訳にならねぇな」
ダメだ、このままじゃ埒が明かねぇな。
早速だが、核心に踏み込むしかねぇな。
「まあ、イッセー達以上の実力者は存在しない、と言いてぇなら一応の理由として通るが、それなら聞かせて貰うぜ。
お前ら、イッセーという存在をどう認識しているんだ?」
普通に考えると唐突な質問、実際、俺の口から出て来た突然の質問に、サーゼクス達は少しの間、ポカンという擬音が聞こえて来そうな様子だった。
その後、
「イッセー君という存在?それは、『物凄く頼れる義弟』って所かな?」
「私は『すっごく強くて格好いいヒーローみたいな男の子』かな?」
「『これからの悪魔社会、全世界を引っ張って行く悪魔』と言うべきか?」
「『完全無欠なスーパードラゴン』と言っておくよ」
こんな感じの答えが、偏に強くて頼れる存在、という認識を持っている、という答えが返って来た。
まあ、予想はしていたが…
「はぁ、お前ら、良くもまあそんなお気楽な認識で悪魔陣営のトップをやっているな。まあ、俺も1人の堕天使という立場だったらそんな感じの答えを出していたかも知れないが。俺の教え子を貶める様で気が咎めるが、グリゴリのトップとして答えるなら、
『史上最恐にして最も扱いやすい大量破壊兵器』、これだな」
「し、史上最恐ですって!?」
「実力を考えると間違ってはいないが…」
「え、えげつない表現だね…」
「アザゼル、幾ら君でも私の義弟をその様な「うるせぇよシスコンの皮被ったぐう畜」ぐ、ぐう畜!?」
俺の、グリゴリ総督としての俺の認識を聞いた途端、騒めき出すサーゼクス達、特にサーゼクスが気を悪くした様に反論するが、あの電話会談でその義弟を戦場に送り出すという方針を淡々と述べていたお前が言うな、と言わんばかりに罵倒してやった。
「報告は聞いているぜ?旧魔王派が起こした大規模襲撃事件、あれ以来、禍の団のテロ活動が殆ど無くなった事、悪魔陣営に、全世界の大半の人外勢力から、同盟や国交の締結を申し込んだり、会談に招待しようとしたりしている事。何故だか分かるか?イッセーの存在だよ。あの無茶苦茶にも程がある、オーフィスにすら勝る実力を誇るイッセー、今や禍の団だけじゃない、全世界の人外勢力から、その実力を評価され、畏怖されているんだよ。そして禍の団と言う脅威に怯える人外勢力は、そのイッセーを擁する悪魔陣営と友好関係を結んでおけば、集団的自衛権によって的な感じで、その脅威から守ってくれる、と思っている。そんな人外勢力の動きがある中で、禍の団は下手に藪を突けない。突いてイッセーが出張って来たら終わりだからな。
そう、イッセーは『この世のどんな兵器にも勝る抑止力』、もっと言えば『史上最恐にして最も扱いやすい大量破壊兵器』、お前らがどう思おうが、全世界の人外勢力の認識はこうなっているんだよ」
「た、確かに言われてみれば…」
「そう思うと、敵にならなくて良かったと思うよ…」
俺の指摘に、納得したかの様な反応を示すセラとファルビウムだが、まだ話は終わっていねぇぜ?
「で、だ。そんなイッセーを爺さんの護衛に付かせる、とお前らが正式に決定して表明したとしよう。それを聞いた他の人外勢力、特にアースガルズはどう思うだろうな?
『悪魔陣営は、兵藤一誠を使ってオーディンの暗殺を企てている』そう思うんじゃねぇか?」
「あ、暗殺!?ふざけないで!」
「なっ!?そんな馬鹿な!?」
「イッセー君に限ってそんな事をする筈が!?」
「なんでそんな面倒になりそうな事をしないといけないのさ…」
いやだから、お前ら個人個人がどう思おうが関係ないんだよ。
「落ち着けお前ら。俺だってお前らがそんな事をする奴等じゃないのは分かっているし、イッセーだってそんな事を仕出かす様な奴じゃないのも分かっている。だが外交って言うのは面倒くさくてなぁ、ある勢力のある出来事、それを起こした存在にその様な意図が無くとも、他の勢力の中から『こうしようとするつもりじゃなかったか?』と考えちまう輩が出て来ちまうし、そんな輩が構成メンバーの何割かを占めれば、それがその勢力全体の総意として『こうするつもりだったんだろ』と追及して来る事になるのさ。お前らだって、イッセーの所にオーフィスが来なけりゃ、俺達が神器所有者を次々に引きこんだりしていたのを、駒王会談の時まで怪しんでいた筈だぜ?『堕天使陣営は、また戦争を引き起こそうとしている腹積もりだ』とな」
「そ、それは…」
「それと同じだ。お前らにそんな意図は無いにしても、『史上最恐にして最も扱いやすい大量破壊兵器』ことイッセーを爺さんの護衛に付かせるなんて公表してみろ。イッセーと爺さんの実力差からして、例え爺さんが暗殺を感知したとしてもそれを防ぐ術は無い、いわば爺さんの命はイッセーの、ひいては悪魔陣営の掌の上って事になる。そんな向こうとしては危険な、悪魔陣営としては都合の良い状況を態々公表したら、『悪魔陣営は、兵藤一誠を使ってオーディンの暗殺を企てている』、そう思われても仕方がねぇんだぞ。例え何事も無かったとしても、向こうの覚えが悪くなるのは必至だ」
俺の長々とした指摘を聞き終え、押し黙るサーゼクス達。
漸く、状況を理解してくれたか。
「改めて言うぜ。これまで通りイッセー達を爺さんの護衛に付かせるのか、他に爺さんの護衛に相応しい連中を見つけるのか、
そのどっちが、悪魔陣営にとって有益になるのか、よーく検討しておくんだな。」
そう、念を押す様に忠告し、俺は応接室を後にした。
イッセー、お前の夢の為にも、お前を都合よく利用させない様に、俺は俺なりに頑張るからな。