Side アザゼル
現実って言うのは、残酷だ。
『我々悪魔陣営はオーディン様の護衛に、これまでの方針通りイッセー君とその眷属、更にはイッセー君の主であるリアスとその眷属を派遣する事で採決された』
サーゼクスやミカエルと、改めて開いた電話会談で、サーゼクスからそんな報告を聞いて、改めてそれを思い知った。
イッセーが易々と起用されない為に、イッセーが悪魔陣営の上層部共に良い様に利用されないようにと奔走し、サーゼクス達4大魔王に、脅迫まがいのメッセージを告げもしたんだが、悪魔陣営の答えを変える事が出来なかった事で、改めてそれを突きつけられた。
「訳を、聞いても良いか?まさか、俺が言った事を早速忘れたとかじゃねぇだろうな?」
俺の意見に聞く耳持っていないんじゃねぇかコイツら、と一瞬思いもしたが、怒りにかられても良い結果など生み出せる筈も無いと思い留まり、内心を落ち着かせつつサーゼクスに聞いてみた。
『勿論忘れていないよ、アザゼル。忘れられる筈も無いよ、私達の目を覚まさせたあの忠告は。あの忠告があったからこそ私達は、少なくとも私を含めた魔王全員は、イッセー君という存在の認識を改める事が出来た。一歩間違えれば世界的な大事になる、そんな存在なんだと、思い知ったよ』
帰って来た答えは、俺がして来た事が無駄じゃ無かったと言える物ではあったが、だったら何故、イッセー達を派遣するという方針を変えなかったんだ?
爺さんの護衛にイッセーをつける事、それによる周囲の反応、それらを知った上で、何故?
『その上で、改めて関係者達と協議を進めたんだ。イッセー君が世界においてどの様な存在であるかを、イッセー君を起用した場合の、他の人外勢力からの反応を、君が忠告してくれた事を説明した上で。そしたら、とある上層部の悪魔が、こう進言したんだ。
『ならばもし兵藤一誠を起用せず、オーディン様の護衛に失敗してしまったら、各人外勢力の反応はどうなります!?『何故兵藤一誠を派遣しなかった』というバッシングが、悪魔陣営に集中するに違いありません!確かにオーディン様は、全世界において最高クラスの実力の持ち主です!あの方を上回る実力者の中で、オーディン様を討とうと画策する者も思いつきません!ですが絶対はありえないのです!群を抜いた実力者であろうと、呆気なく討ち滅ぼされる事も現実として起こり得るのです!そうなってしまった時、もし打てる手を打たなければ『何故そうしなかった』と批判されるのは必定!我々にとってその打てる手というのが、兵藤一誠の抜擢なのです!』
とね。他の上層部もその意見に賛同した以上、それを悪魔陣営の総意としたんだ』
成る程な、状況をまともに理解し切れない老害共だと思っていたが、中々キレる奴もいるじゃないか。
其処まで議論した上でその結論とあらば、無念だがもう俺には反対出来る術は無い。
「はぁ、分かったよ。其処まで考えた上での結論とあらば、もう俺には反対する理由が無いな」
『そうか、アザゼル。それなら、』
「ああ、天使陣営はX-LAWS、堕天使陣営は最高幹部アルマロスを中心とした特命チーム、悪魔陣営はイッセー眷属とリアス眷属、この編成で爺さんの護衛に当たる事にする」
まあ『イッセーで良いか』的な軽々しいノリでイッセーを起用する事が避けられただけでも、良しとしないとな。
そう内心を納得させつつ、俺達3大勢力の、爺さんと日本神話の神々との会談に関する協議は締められた。
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「まあそう言う訳で、この前言った事を反故にする形にはなっちまったが、お前らも爺さんの護衛に参加して貰う事が決まった。悪いな、色々と忙しいこの時期に」
そう言って、申し訳なさそうに頭を下げたアザゼルさん。
俺達は既に覚悟していた事もあって、やっと来たかという思いだったけど、あの時の説得等、俺達の事を親身になって想ってくれているアザゼルさんにとっては、罪悪感が残る物だったんだろう。
「アザゼルさん、顔を上げて下さい。覚悟していた事ですから。それに、この街でオーディンさんを狙っている輩がいるかも知れなくて、オーディンさんとX-LAWS達、堕天使の皆がそいつらとドンパチをするかも知れないって時に、指を加えて見ているのは我慢出来なかったんで、むしろ良かったです」
「それに、北欧の主神たるオーディンを狙う輩となれば、相当な腕利きになる筈。俺自身そいつと戦ってみたかったから丁度良い」
「そうよ、アザゼル。ヴァーリは少し戦闘狂振りが過ぎるけど、貴方が気に病む事じゃ無いわ」
「本当に済まねぇな。そしてヴァーリは少しも自重しねぇな、全く」
まあ、色々一悶着はあったけど、これで俺達もオーディンさんの護衛となった訳だし、今後の方針を聞いておかないと。
「それじゃあ爺さんの護衛につくメンバーも正式に決まった事だし、今後のスケジュールを発表するぞ。この前も言った通り、爺さんが来日した目的は、日本の神々との会談だ。これは俺達3大勢力も大いに関わっている。ミカエルとサーゼクスが、爺さん達北欧の神々と日本の神々の仲介をし、俺が会談に同席する運びとなっている。その正式な会談の前には、爺さんが各所を視察する事になっているから、その間の護衛をお前達には頼みたい。そのポジションだが…」