突如として鳴り響いた3つの風切り音と、それに少し遅れて聞こえた3つの銃声、それらは全てX-LAWSのスナイパーであるナナ、ラーキ、ポーフの3人による狙撃、それも12.7×99mmNATO弾を用いた超長距離狙撃だ。
3人がメインウェポンとしているFNブローニングM2、元々は機関銃として第二次世界大戦前に開発され、その用途においても今尚日本の自衛隊やアメリカ軍等の様々な国の軍隊で幅広く採用される程の実力を誇るが、大口径の銃弾を用いた事による射程の長さ、弾丸その物の重量からくる風等の外的要因への抵抗力(つまりは長距離弾道性)、更には戦車にこそ通じなくはなっているが軽装車等を貫通できる威力、それらの要素に着目したアメリカ軍スナイパー、カルロス・ハスコックがベトナム戦争中の1967年、狙撃用スコープを装着たM2を用いて約2300mの超長距離狙撃に成功し、1982年のフォークランド紛争においてはアルゼンチン軍がイギリス軍相手にM2を用いた超長距離狙撃で戦況を優位に進め、これに苦慮したイギリス軍が、本来戦車相手に使うべき高価なミサイルを、M2の設置場所に態々ぶっ放して陥落させる羽目になる等、狙撃銃としても凄まじいポテンシャルを誇る(ただ三脚無しでも38kgある重量(これは射撃の反動が少なくなるという利点にもなるが)等もあって、現在は同じ様な大口径弾を用いた所謂対物ライフルが開発され、こうした役目を担っているが)。
そんな威力を誇るM2の超長距離狙撃(それもラキスト曰く『自分達の任務用に改良を施した』物)、喰らえばいくらロキであろうとダメージは少なくない筈、実際、魔力的な障壁を張って銃弾を防いでいるロキだが、その顔には苦み走った様子で、反撃に移れないでいる。
そして、その隙を逃すX-LAWSでは無い。
「全軍砲撃!オーディン様に牙剥く悪神を誅せよ!」
『了解(バシュゥ!)!』
ラキストの指示と共に、クリスが構えている対戦車ロケットランチャー『RPG-29』が、ジョンが構えているリボルバー型グレネードランチャー『ダネルMGL』が、リゼルグが投げつけた手りゅう弾が、ケビンの義手に仕込まれていたミサイルが、ラキスト達残りのメンバーが構えている自動小銃『F2000』に装着されたグレネードランチャー『GL1』が、一斉にロキへと放たれた。
無茶苦茶な威力を誇る銃弾の前に防戦一方な所に、自らへ向けて雨あられと降って来る爆弾の数々、それには、
「うぉぉぉぉぉ!(ドガガガガガガガガガガァン!)」
流石のロキも、必死こいて障壁の強度を上げているのが、声からも伺える。
此処まではこちらの、というかX-LAWSによる圧倒的攻勢、実際、
「や、やったの…?」
と、外で身構えていたイリナがポツリと呟いていた、が、
「いえ、まだまだの様です。皆さん、構えを解かぬよう、お願いします」
メイデンの警戒する様な声を前に、外にいた堕天使チームの大半とイリナは、緩みかけた気を再び引き締め、余りの攻勢に馬車から出るのを忘れていた俺達も外に飛び出し、警戒する。
「たかが天使共の攻撃と侮っていたが、まさかこれ程とはな。一歩間違えれば我とてタダでは済まなかっただろう」
爆風が晴れるとやはり其処には、ロキが健在していた。
尤も全くの無傷という訳でも無く、グレネードが爆発した事による鉄片が切り裂いたのだろう、着ていたローブは全体的にズタボロと化し、身体の所々に大小様々な裂傷も負っていた。
とは言えこれが致命傷とは言えない、精々、行動に少なめな影響がある程度だろう。
「それにしても、だ…
天使は、人間の武器を持った奴が十人余り。堕天使も有象無象の輩共と、最高幹部が3人。悪魔は、確かその赤い髪は現魔王の血筋、グレモリー家だったな、そいつを含めて沢山。二天龍も並び立ち、そして件の龍魔神王とやらもいる。オーディン、唯の護衛にしては余りにも厳重だ」
「お主の様な大馬鹿者が来たんじゃ、結果的に正解だったわい」
決して少なくないダメージを負っているというのに、オーディンさんに馬鹿にされているというのに、ロキは未だ、その不敵な笑みを崩していない。
まだ、何かあるというのか?
「宜しい、ならば少し本気を出そう。出でよ、我が愛しき息子よ!」
高らかに叫んだロキ、それに応じて空中に生じる歪み、ま、まだ来るのか!?
というか、息子って言っていたよな、ロキの息子と言えば、まさか!?
『グォォォォォォン!』
咆哮と共に登場したのは、体長10mは越していそうな巨大な灰色の狼。
ロキの息子で、狼で、ドライグ達すらも上回りそうな威圧感、となればアイツか!
「神を喰う狼『フェンリル』か!」
「良く知っているな、イッセー…
ああ、ありゃあ危険だ!皆、下がれ!」
『はっ!』
俺の発言と、アザゼルさんの緊張に満ちた指示と共に、前線にいた面子は下がって行く。
アザゼルさんが此処までの緊張を浮かべるのも分かる、あれは、フェンリルは世界トップクラスの実力を有していると言っても差支えない程の存在、まともに相手したらひとたまりも無い。
いざとなったら、使うしかないか…!
「良く知っているな、龍魔神王とやら。そう、コイツは我が開発した魔物の中でもトップクラスの部類だ。何せコイツの牙は、どの神でも殺せる程の代物なのでね。試した事は無いが、他の神話体系の神仏にも有効だろう。上級悪魔だろうと伝説のドラゴンだろうと余裕で致命傷を与えられる。本来なら、北欧の者以外に我がフェンリルの牙を使いたくは無いが、まあこの子に北欧の者以外の血を覚えさせるのも良い経験となるかも知れない」
そうフェンリルの事を紹介しつつ、ロキの指先がすーっと動かされる。
その先にいたのは、リアス!?
「魔王の血筋。それを舐めるのもフェンリルの糧となるだろう。
やれ」
『グォォォォォォォォォン!』
やらせるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!
『(ゴシャァ!)ギャウン!?』
「なっフェンリル!?一体何があったと言うのだ!?」
お前らにリアスを、俺の大切な人を良い様にされてたまるかぁぁ!
『(ザシュゥ!)ガゥ!?(ドズゥ!)ギャイン!?(ゴスゥ!)ギィ!?』
「フェンリル!?フェンリル!?一体誰の仕業だ、これは!」
リアスへと襲い掛かろうとしたフェンリル、だが突如として謎の攻撃を立て続けに喰らって、身動きがとれなくなり、その様子にロキも狼狽した様子を浮かべていた。
「くっ今日は一旦引き下がろう!だがオーディン!この国の神々との会談の日、またお邪魔させて貰おう!その時こそ我と我が子フェンリルが、その喉笛を噛み切って見せよう!」
流石に分が悪いと判断したのか、フェンリルを引き上げさせ、背後の空間が歪むと同時に其処に入っていき、そして捨て台詞と共に消えていった。
よし、戻しても大丈夫か。
「リアス(パシッ!)、大丈夫か?」
「え、ええ、大丈夫よ、イッセー。ところで、その剣は…」
リアスの言葉と共に、周りの誰もが俺の左手に『何時の間にか』装備されている剣へと目を向けた。
一見すると先端部がフランベルジュの如く横に突き出て、宝石がはめ込まれた片手剣、しかし柄の先端部に龍の頭を模したレリーフがはめ込まれ、その口から出ているかのように、柄をガードするかの様に、斧状の真紅の刃が形作られている。
それは、
「これか。これはアスカロンだ」
「あ、アスカロン!?で、でもアスカロンはそんな形状していなかった筈…」
「勿論、ちょっと前まではこんな形していなかったんだが、ある時、そう、あの襲撃の時を境に、姿を変えたんだ。これは推測なんだが、俺が『征龍』を具現化させた事で、龍殺しの聖剣たるアスカロンが、俺のドラゴンとしての力に共鳴して、その姿と力を変質させたんじゃないか…
俺はそう思っている。差し詰め、『アスカロン・