一先ずロキ達を撃退した俺達、だが再度の襲撃が考えられる為、改めて作戦会議を行うべく、俺の家の居間に護衛メンバー全員が集結していた。
「それにしてもまあアスカロンをどっかの特撮ヒーロー、その最終形態が使う武器みたいな姿に進化させるとはなぁ。おまけにそのスペックも無茶苦茶と来た。相変わらず凄いぜ、イッセー」
「俺も驚いています。征龍の力、まだまだ俺にすら全容が把握出来ません」
「本当に凄まじいな、主イッセー。フェンリルと言えば全盛期の二天龍にも匹敵すると言われた魔獣。征龍やタスクACT4を使わずして敵う相手では無い筈。それなのにアスカロン・CXを操っただけで圧倒して見せた。ロキ達が束になろうと、主に傷をつける事すら不可能だな。主の背中が、益々遠くなった気がする…」
開口一番、アザゼルさんがアスカロン・CXに興味津々といった様子を見せ、俺がそれに答えるとヴァーリがなんか遠い目をしていた。
まあそれは後で考えるとして、ヴァーリが言った通り、ロキ達を『倒す』事『だけ』を考えるなら、俺1人だけでも十分いける。
フェンリル相手にもアスカロン・CXが有力なのは分かったし、いざとなれば禁手からタスクACT4を使えば良い。
あれから大分トレーニングを積んで、禁手を維持したまま一週間は継戦できる様になったからな。
だが今回の目的は、あくまでロキ達の襲撃からオーディンさんを『護る』事。
俺1人だけをターゲットにロキ達が大軍勢で攻め込んでも勝つ自信はあるけど、その大軍勢を俺が相手をしている間に、別働隊がオーディンさんを狙って来たとしたら、それを阻止する自信は無い。
『強力』な能力はあっても、『万能無敵』な能力は存在しない、どんな強力な能力であっても、必ずどこかに穴は有るんだ。
俺の今挙げた能力で言っても、タスクACT4は効果が及ぶ範囲が限られている、オーフィスにも届くと言われているが、こういった状況下でそれが発揮出来るとは限らないんだ。
そして征龍は、正直今言った様に俺にも未知な事だらけだ。
プラスに言えばまだまだ成長の余地があるという事だが、マイナスに言えば暴走とかが起こり得るという事、オーディンさんを護らなければならない状況下でそんな不安定な能力を使える訳が無い。
これらの事を鑑みると、やはり俺以外のメンバーにも大いに動いてもらう必要がある。
「さて、向こうの戦力を考えると、まあこっちの戦力を考えれば問題は無いか?イッセーは言うに及ばず、X-LAWSの銃撃もロキに少なからずダメージが入っていた事から有効と考えて良いだろう」
アザゼルさんが話を切り出すと、周囲は皆真剣な顔でそれを聞く。
「ただ問題は、それ程の戦力をある程度ながら見せ付けられたロキ側の対応だ。本筋を逸脱して行動している以上、背水の陣を敷いて来る筈、会談の日は、なりふり構わず戦力を投入するに違いない」
そこだよなぁ、もう何が何でもオーディンさんを討つと言いたげな、会談を邪魔してやる、と言いたげな様子だったし。
「フェンリルに匹敵する強敵はいないにしても、それに準ずる戦力だって揃えているかも分からんぞ。フェンリルにはスコルとハティという息子がいた事は、神話でも知られている事だ。同じ様な存在をロキが量産していても不思議じゃ無い」
笑えないなそれ、量産型フェンリルとか。
「そのフェンリル対策として、良く知られているのはグレイプニルだな。ただ、北欧からの報告によると、効かなくなったらしい。其処をどうするかだが」
「心配及びません、アザゼル総督」
フェンリル対策を練ろうとしていたアザゼルさんだったが、突如として『私に良い案がある』と言いたげな声がし、それに振り向くと、メイデンが立ち上がって手を上げていた。
「X-LAWSのメイデンか。何かいい案でもあるのか?」
「ええ。私のサブウェポンである様々な拘束・拷問器具の中に、北欧の民に依頼して作って貰った、グレイプニル製の物があります」
ああ、確かメイデンって、メインウェポンであるF2000の他に、色んな種類の拘束・拷問器具をサブウェポンとして使用していたんだっけ。
「北欧の報告を鑑みれば、私が所有しているグレイプニル製の器具でもその行動を縛り付けるのは厳しいでしょう。ですが其処に殺傷したり苦痛を与えたりする機構を組み込んだ物、例えば
う、うわぁ…
護衛メンバーの中で最も年若い筈のメイデン、そんなメイデンから発せられる、背筋も凍ると言っても過言じゃ無いその言葉の数々に、会って間もない俺達はおろか、同僚である筈のX-LAWSメンバーですら引いていた(ラキストに至っては「何処で教育を間違えたんだ…」と天を仰いでいたし)。
って、朱乃さん!?目を輝かせないで!同類を見つけた的な顔をしないで!
「ま、まあ、そうだな、其処まで言うなら試してみる価値はありそうだ。それじゃあメイデン、何人かにそのグレイプニル製の器具を分けてやって、その使い方を教えてやってくれ。さっきも言ったがフェンリルに準ずる強さを持った奴等もいるか分からん、仮に多数となればお前1人では荷が重いだろう」
「了解しました、アザゼル総督」
そんなメイデンの様子に引きながらも指示を出していくアザゼルさんに、平然とした様子で答えるメイデン。
子供って怖い…
「さ、さて、フェンリルへの対策も一応のメドは立った、奴を拘束すれば後はロキだけ。そのロキもハイパワーな攻撃を叩きこみ続ければ勝てるのはさっきも実証済みだ。いざとなればイッセーもいるしな」
メイデンショックから未だ立ち直っていないアザゼルさんだったけど、何とかして対策会議を締めくくろうとした、その時だった。
「イッセーにアザゼル先生、ちょっと宜しいですか?」
「母さん?一体どうしたんだ?」
「イッセーの母さん?何か?」
「匙君が先生達にお願いしたい事があると訪ねて来たんです。打ち合わせ中と言っても『なら尚更入れて下さい!』と言って聞かないんですが…」
「匙?ああ、支取生徒会長の『兵士』で、イッセーとはバンド仲間でしたね。確かヴリトラの神器を宿していた」
「元が?一体どうして?」
「ともかく中へ入れて頂けますか?話を聞いてみます」
「分かりました。匙君、中へ入って良いそうよ。話を聞いてくれるって」
母さんが突如、作戦会議をしていた俺達に来客を伝えて来た。
それにしても元か、そういえば夏休み中のレーティング・ゲームで惨敗して以来、思い詰めた様な表情をしている所を良く見かけたな。
アザゼルさんが了解の意を伝えると共に、母さんの案内で入って来た元の今の顔も、その思い詰めた様子がひしひしと伝わっていた。
と思ったら、
「アザゼル先生、いや、グリゴリのトップである、アザゼル総督。
俺を、オーディン様の護衛に加えさせて下さい!お願いします!」
と、土下座して頼んで来た。