ハイスクールSBR~堕天した花嫁~   作:不知火新夜

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8話_俺達、説得しました

「来てくれたわね、アーシア。いっちゃんは、良くしてくれた?」

「はい、レイナーレ様!朝ごはんをご馳走になったばかりか、食べ方もレクチャーしてくれました!」

「そう、良かったわね」

 

オカ研の部室に向かう途中でれーちゃんと合流した俺とアーシア、目的地へ向かう中で談笑していた…やっぱり、れーちゃんの心根は10年経っても変わっていないな。

こんな良い娘を、ずっとほったらかしにしていた俺が言えた話じゃないが、能力の低さだけを捉えて蔑んで来た堕天使の連中に『ふざけんな』と怒鳴り散らしてやりたいな…あんな計画を立てて実行するまでにやさぐれていた程だ、それはそれは酷い扱いだったに違いない。

そう俺が決意していたその時、オカ研の部室前に到着した。

 

「着いたわ、此処よ」

「はい、失礼しま…」

「あれ、アーシア?」

 

…まあ俺だって最初にオカ研の部室を見た時は驚きの余り叫びまくった物だ、アーシアが驚きの余り硬直するのも無理は無いわな。

 

「アーシア、大丈夫か?」

「はっ!?私は一体?」

「驚くのも当然ね…何しろ…」

 

改めてオカ研の異様な風景に、アーシア共々苦笑いを浮かべていると、

 

「いらっしゃい、貴方がアーシア・アルジェントね?」

「は、はい!」

 

スタンバイしていた部長が声を掛けて来た…尚此処には部長以外の姿は無い、他の眷属は皆授業の為に出払っているからだ。

 

「初めまして、私の名はリアス・グレモリー。この駒王学園オカルト研究部の部長よ」

「リアスさんですね、初めまして!アーシア・アルジェントです!」

 

にこやかに自己紹介するアーシアと、元シスターが相手でも普段通り慈愛の感じられる応対をする部長…此処は大丈夫な様だ。

 

「それじゃあ部長、行ってきます」

「部長…私の我儘を聞いて頂き、本当にありがとうございます。今回の件は…ちゃんと解決して見せます」

「気を付けてね一誠、レイナーレ。相手は下級とはいえ堕天使、少しでも対応を誤れば死は免れないわ」

「「はい!」」

「あの…イッセーさんにレイナーレ様、どちらへ?」

「ちょっとお話をして来るだけよ。貴方の勤務先にね」

 

アーシアの疑問と、それに答える部長の声を背に、俺達は向かう…今回の計画に関わっている連中の本拠地となっている、あの廃教会へ。

 

------------

 

「じゃ、行って来るよれーちゃん。合図があるまで待機していてね」

「うん…部長も言っていたけど、気を付けてね」

「了解」

 

廃教会に到着した俺達…ちなみに部長以外の面々を授業に出させたのは俺の提案だ。

幾ら悪魔の領域内で、天使陣営の領有権が失われている廃教会を拠点に潜伏し、恐ろしい計画を実行しようとしている…という動かぬ証拠を持っていても、大人数で襲撃すればそれを口実に『悪魔側に宣戦の意志あり』と言い出す輩も出るかも知れない…グリゴリのコカビエル辺りがやりそうだ。

けれど計画立案者であるれーちゃんと、部長の眷属から俺だけ、であればその言い掛かりは無理がある。

それに相手が数十人の大勢であろうと、これまではぐれ悪魔の駆除をしていた俺、その状況も何度かあったし、何れも問題なく対処した…今回も難なく切り抜ける自信はある。

…尤も今回の相手は堕天使達にはぐれ悪魔祓いの集団、俺達悪魔にとって天敵である光力を使う以上、警戒するに越した事は無い。

それにアーシアが来ない事を不審に思っている筈、何らかの対策を取っていると考えた方が良い。

 

「タスク」

 

その掛け声と共にタスクを発現させ、爪を回転させる…と同時に、ベルトに取り付けられている、拳銃用ホルスターみたいな物から『或る物』を取り出し(シュルルルル…)回転させる。

或る物…それ自体は野球ボールサイズの単なる鉄球なのだが、掛かっている回転に対して『俺は何もしていない』…厳密には何もしていない訳じゃあ無いが、その行動が直接、『鉄球が回転している事にはかかわっていない』。

肉体的な動きを与える事無く鉄球を回転させる技術…安直だが、俺はこれを『鉄球回転の技術』と呼んでいる。

タスクによって回転される俺の爪…その回転エネルギーは凄まじいの一言では表現し切れない程の膨大さを秘めている。

そのエネルギーを応用できないか…そう思い立ったのが切っ掛けで試行錯誤の末に編み出したのが、この鉄球回転の技術だ。

外力を加えず『内側から回転する』様に働きかける独特の筋肉動作によって、回転した鉄球が撒き散らす振動波が様々な効果を生み出す…これがこの技術の効果だ。

具体的には蝙蝠の如くエコーで物体の位置を見分けたり、身体組織を局地的に濃密化・硬化させて銃弾を弾き飛ばしたり、飛んで来たもののベクトルを強引に捻じ曲げて方向転換させたり…その効果は多岐に及ぶ。

此処まで言うとかなり強力な効果に聞こえるが実際の所、今まではそんなに役立っていなかった。

というのも、あくまでタスクの回転エネルギーを応用したという関係上、タスクを発現していないと使えないというのはまだしも、生み出される回転が貧弱で、赤龍帝の籠手による倍化と譲渡を使わなければまともな効果を発揮できないという致命的な問題があった。

だが今、俺の右手に収まっている鉄球は、まともに回転してくれている…悪魔に転生した事で、骨格や筋肉組織が発達したからか?

理由がどうあれ…効果を期待するには充分な勢いだな。

 

「オラァ!」

 

回転エネルギーによって強化された右脚で、教会の扉を蹴破るとそこには、

 

「な、何だ貴様は!?」

「侵入者だ!」

 

突如入って来た俺にびっくりするも直ぐに立て直して身構えているはぐれ悪魔祓いの連中らしき、法衣を身に纏った奴等がいた。

 

「俺はこの街の管理を任されている悪魔、リアス・グレモリーの兵士、兵藤一誠だ!てめぇらが此処で行おうとしている悪事全て、こっちは把握している!大人しく首謀者である堕天使の元に案内すれば良し、さもなくば…覚悟出来ているんだろうな!」

「な…馬鹿な…計画が漏れているだと…!」

「此処なら悪魔も干渉できないと言っていた筈だ!」

「そもそも此処は…悪魔の管理地だったのか…!」

 

流石に立場が危うくなると直感したのか、俺の啖呵に怯む奴が大勢だったが、

 

「出鱈目だ!仮にこの街が悪魔の管理下だとしても教会は我らの領地!そこに悪魔でありながら土足で踏み入る等言語道断!貴様こそ覚悟しておけ!」

「やるぜぇ?やっちまうぜぇ?戦争犯罪悪魔は死刑ってねぇ!」

 

俺が知らないと決め付けているのか、或いは精一杯の足掻きをしようと決めたのか…逆に俺が領土侵犯をしたとして何人かが襲い掛かって来たが、

 

「せい!(バキィ!)」

「がぁっ!」

「はぁ!(ドゴォ!)」

「げふっ!」

「おぅぅぅらぁ!(ズドォン!)」

「ギャァァァァ!」

 

左ストレート、右回し蹴り、そして回転していた鉄球のぶち込み…たったそれだけで呆気なく沈黙した。

さて、デモンストレーションも済んだし…出番だぜ、れーちゃん。

 

「証拠なら挙がっているんだ。れーちゃん!」

「大丈夫、いっちゃん!?お前達、何て事を!」

 

俺の呼びかけと同時に教会内に入るれーちゃん…俺が襲われた事に慌てている点、はぐれ悪魔祓いにマジギレしている点から、待たずに向かって来たみたいだ…全く心配性だなぁ、恋人としては嬉しいが。

 

「れ、レイナーレ様!?」

「な…何故悪魔などと一緒に!?」

「彼が言っている事は全て真実よ…この街は悪魔の管理下に置かれている事、私達の計画の全てが露見している事…全て。命が惜しいなら、彼をドーナシーク達の所に案内しなさい。これは命令よ!」

「は、はい、只今!」

 

れーちゃんの大喝で慌てて武装解除し、俺達を案内する様な振る舞いを見せるはぐれ悪魔祓い…どうやら上手く行きそうだな。

 

「此処ね…お前達は下がっていなさい!」

「はっ!」

 

けどれーちゃん、俺が心配なのは分かるけど、そんなに怒らなくても良くない?こいつら明らかに委縮しちゃっているし…

 

「邪魔するぜ」

「今戻ったわ」

「き、貴様あの時の人間!?」

「その気配…まさか悪魔だったのかよ!?」

「悪魔滅べし、みたいな!」

 

奥にある部屋…此処が教会として使われていた時には神父の執務室として使われていたであろう部屋の扉を開けると、堕天使が3人、俺の姿を見るや攻撃態勢に入ろうとするのが見えた。

 

「お前達、武器を下ろしなさい」

「れ、レイナーレ様!?しかし…」

「もう一度言うわ、武器を下ろしなさい。計画は失敗したのよ」

 

それを止めるれーちゃんの声に抵抗を見せるも、事の結末を告げる一言で観念したのか武器を下ろす3人…今更だが、何か俺を知っているかの様な口振りを見せた中年の様な見た目した男の堕天使…アイツがドーナシーク、俺がバイサーを駆除していた現場を目撃していた奴か。

 

「良く聞いて…此処は悪魔の中でも名門、グレモリー家が管理している場所よ。そんな街に私達堕天使が侵入し、アーシアから神器を奪い取ろうとした…これは明らかな侵略行為となるわ。おまけに私達はそれをグリゴリには極秘で進めていた…もしこれが知られてしまえば即刻連行されて死刑は免れないわ。仮にグリゴリを離反出来ても、力の弱い私達では直ぐに討伐されるのがオチよ。そう…私達は詰んだの。堕天使として、もうどうする事も出来ない状況に陥ってしまったの」

「な…何と…」

「結局…結局アタシ達は何も出来なかったって事かよ…!」

「そ…そんな…」

 

れーちゃんから告げられた事実に打ちひしがれる3人…その気持ち、分からなくも無いが、あくまで『堕天使として』だぜ?

 

「けれど…まだ道が途絶えた訳じゃないわ。悪魔陣営には、他の種族を悪魔として生まれ変わらせるアイテムがあるの。それによって悪魔になれば、陣営の庇護に入れるわ。彼も…(バサァ!)そして」

「悪魔の…翼!?」

「レイナーレ様も…悪魔に!?」

「私も、よ。既に主人であるリアス・グレモリーから許しは得ているわ。後は貴方達次第よ。どうかしら?」

「「「そ、それは…」」」

 

れーちゃんから提案された、悪魔として生き長らえる道…客観的に言えば願っても無い事だ。

れーちゃんもそうだが、既に重大な犯罪者である3人、普通なら極刑となる様な身だ。

それを、堕天使陣営から悪魔陣営に鞍替えするだけで御咎めなし…まあ完全にチャラではないが、それでも罪に問われない事に、変わりはない。

それに悪魔は、魔王を頂点とした所謂貴族社会的な一面もあるが、地位が下の悪魔であっても眷属として実績を積む事で上位悪魔に出世出来る、実績主義的な面だってある。

堕天使陣営では日の目を見る事無く終わるかも知れない3人も、のし上がる事だって不可能じゃあ無いんだ。

けれども悪魔陣営は堕天使陣営にとって、3大勢力による大戦を抜きにしても、冥界の覇権を争う敵同士…堕天使としてのプライド故か返答に口ごもっていた…全く。

 

「お前ら悔しくないのかよ!?見返してやりたいと思わないのかよ!?」

「「「!?」」」

「確かにお前達がやろうとしていた事は許される物じゃあ無い。未遂に終わったとは言っても、悪魔が管理するこの地で、人を殺すなんて事になったらどうなるか分かるだろう。けれど、そうまでして得たい力で、お前達を侮辱してきた連中を見返してやりたかったんだろ!それ程侮辱に耐えきれなかったんだろ!悔しかったんだろ!だったら…1回の失敗で諦めんなよ!道が1つでも残っているなら、迷わず突き進めよ!ずっと突き進んで…侮辱していた連中に煮え湯を飲ませてやれよ!幹部連中に、もっと気に掛ければよかった、手放すんじゃあ無かったと思わせる位にのし上がれよ!それとも何か…お前達の悔しさは、1回の失敗で立ち直れなくなる程度の、ショボい物だったのかよ!?」

「「「!」」」

 

俺の一喝に目が覚めたのか、はっとした表情をする3人、程無くその顔は何かを決意したかの様なきりっとした物に変わっていた…いい表情だ。

 

「アタシはこのままじゃ終われねぇ…!」

「何だ、声が小さいぞ!」

「このままじゃ終われねぇよ!」

 

スーツを着用した大柄の女堕天使が先陣を切り、

 

「此処では終わらん、終わらせられん!」

 

ドーナシークが続き、

 

「私、アンタとレイナーレ様の言う主って奴に付いて行きたい…!付いて行って、強くなりたい!」

 

ゴスロリ服を着た小柄の女堕天使が締めた…皆、覚悟は決まった様だな。

 

「なら行こうぜ。俺達の主、リアス・グレモリーと共に!」

「おう!」

「うむ!」

「はい!」

 

こうして、今回の計画に関わっていた堕天使4人全員が、部長の下で、悪魔となる事になった。

が、

 

「何勝手に大団円迎えちゃっているんですかねぇこの鴉共が。立場悪くなったら鞍替えとか都合が良すぎじゃあないですかいご都合主義も大概にしろやクソビッチ」

 

まだ…終わらないか…!

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