Side 元士郎
ソーナ会長が悪魔だと知って、その『兵士』となり、会長の夢を聞いて深く感動したのは、もう半年前になるか。
駒王学園への入学当初、学校へはGRIDの練習などでしか来る事が無く、来たとしても授業はサボる事が多かったり、校外の連中に喧嘩を吹っ掛けたりしていた俺だったが、そんな俺を、当時副会長をしていたソーナ会長は、事ある毎に探し出しては、厳しくも親身な対応をして来た。
最初は面倒くさい女だと思った事もあって突っぱねる様な対応をして来た俺だけど、そんな俺にも諦める事無く、ソーナ会長は俺を気に掛けてくれた。
それだけじゃない、学内でも相当なワルとして知られ出して来た俺を、ソーナ会長は必死こいて弁解に当たっていたそうで、そんなソーナ会長が、何時しか俺にとって気になる存在になっていた。
そんな気持ちがソーナ会長への恋心へと変わったのは、正直何時頃だったのかは覚えていないが、ともかく俺はソーナ会長に、ソーナ会長の説教で気付いた、これまで大いに迷惑を掛けて来た存在(例えばお袋とか)にこれ以上迷惑を掛ける訳には行かない、そう思い立ち、これまでの行いを正し、真面目に授業を受ける事にした。
そんな努力が認められたかどうかは分からないが、1年の頃の2学期終盤に行われた生徒会役員の選出の折、ソーナ会長からの推薦を受けて、生徒会書記になり、其処でソーナ会長達が悪魔だと言う事を知り、その夢を聞いて感動し、その眷属となった。
ソーナ会長の夢、下級悪魔達をも通える様にしたレーティング・ゲームの学校を創設させると言う、夢。
これまで悪魔社会において差別されて来た存在、スポットライトが殆ど当たらなかった存在に注目し、その埋もれた才能を開花させようと言う、夢。
そんな会長の素晴らしい夢はしかし、今の悪魔社会、それも上級悪魔の中においては異端と言うしかない物で、事実、若手悪魔の会合の場で会長が打ち明けた途端、上層部からの嘲笑の嵐だった。
そんな上層部に我慢ならず、噛みつくも碌に相手にされない(まあ、その後のイッセーの一喝に皆して怯えた様を見て、一応溜飲は下ったが)。
ソーナ会長も言っていたが『バックボーンの無い理念等、下地の無い夢など、絵空事と思われても仕方ない』という事なのかもしれない、特にソーナ会長の夢は、何度も言う様だが今の悪魔社会では異端、それを成し遂げられる程の実力があるという事を見せ付けなければ、叶えるのはままならない。
ならば俺達の実力を見せ付けてやろう、悪魔社会における実力行使の場『レーティング・ゲーム』で勝って実力を見せ付けてやろう、その思いで俺達は、夏休みの終盤に行われる事となったリアス先輩達とのレーティング・ゲームに向けて、堕天使陣営の副総督であるシェムハザさんの下で厳しい特訓を重ねて来た。
リアス先輩、及びその眷属達の特徴も、過去に行われたライザー氏の眷属とのレーティング・ゲームの映像などで把握して来た。
その対策等を織り込み、綿密な作戦も立てて来た。
前評判こそリアス先輩達には届かないと言われていたが、作戦通りに行けば、イッセーやアーシアさんが抜けた今のリアス先輩達に勝てる、そう思っていたし、実際に出だしは順調だった。
が、現実は残酷だった。
リアス先輩達にとって重要な偵察役と言って良いギャスパーを、吸血鬼の弱点としてポピュラーなニンニクを用いてリタイアさせ、其処で動揺しているであろうリアス先輩の眷属に、俺と仁村が奇襲を仕掛けようとしたその時だった。
突然、俺の神器『
そして其処から先は、木場が造ったであろう聖魔剣で武装したフリードや大輔、式波先生に、神器が使用できないままフルボッコにされ、何も出来ずにリタイアとなった。
そしてその後は聞いた話なのだが、作戦の一環で、屋上に待機していたソーナ会長も、リアス先輩の砲撃に飲み込まれてあっさりと敗れ去ってしまった。
俺達が全滅したのに対し、リアス先輩達でリタイアしたのは、最初に脱落したギャスパーだけ。
これ以上に無い、これ程のそれは無いと言って良い位の、惨敗だった。
陸上の短距離走で言えば、最高のスタートダッシュをした途端に、躓いて競技続行不可になるという、体たらく。
いや、後で聞いてみれば、その最高のスタートダッシュすらも、相手の作戦、こっちが大いに警戒しているであろうギャスパーを囮にして、良太がスタッフルームへ行くのを悟らせず、到着したのを見計らって良太の神器を発現させて異能を封じる、そんな作戦の為、させられただけに過ぎなかった。
此処の力量で駄目、作戦でも駄目という状態で、それ以来、俺達の評価がガタ落ちになったのは言うまでも無い。
上層部の連中から「あのレーティング・ゲームでリアス眷属と、随分と差が付きましたぁ。悔しいでしょうねぇ」「いけてないんじゃないの、ソーナ眷属のみなちゅわーん?」なんて嘲笑が聞こえて来そうだが、今のままではそれに言い返す事も出来ない。
このままじゃ駄目だ、このままじゃ…!
そう思い立った俺は、
「アザゼル先生、いや、グリゴリのトップである、アザゼル総督。俺を、オーディン様の護衛に加えさせて下さい!お願いします!」
日本の神々との会談に臨む為に来日した北欧の主神、オーディン様の護衛に加えて貰えるよう、アザゼル総督に土下座で頼み込んだ。
ソーナ会長に内緒で来たのは、此処だけの話な。
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会談の日、もうすぐオーディンさんと日本の神々による会談が始まる時刻。
俺の眷属とリアスの眷属、X-LAWSと堕天使達の特命チーム、そしてロスヴァイセさんは、会談の場となった都内の高級ホテルの屋上で待機していた。
此処にアザゼルさんはいない、会談での仲介役を担う為にオーディンさんと共に会場内だ。
X-LAWSのスナイパーであるナナ、ラーキ、ポーフも、狙撃の為に周囲のビルで待機している。
そして、作戦会議の折に押し入って、護衛メンバーへの加入を申し立てて来た元だが、シトリー会長に無断で押し入っていた事もあって、当初はそれを却下する予定だった、俺達が入っている以上今更だが義兄さんには、育ち盛りの学生は成るべく戦場に送る訳には行かないという考えがあるからな。
だが、何か思う所があったのか、アザゼルさんが「一先ず、グリゴリで預からせてくれないか?護衛に加えるかどうかは其処で判断する」と提案、一先ずその提案に乗る形で、判断は先送りとなった。
「時間ね」
リアスが腕時計を見ながらつぶやいたその時、
「っ!来るぞ!」
「総員、構え!」
『はっ!』
ホテル上空の空間が、歪みだした。