Side ゼノヴィア
ロキと言えば北欧神話に疎い私でも知っている程の有名さを持つトリックスター、当然、何かしら奇策を用いて来るかと思ったが、まさかの真正面突撃か。
この前の交戦の時、イッセーのアスカロン・CXによって、向こうのエースと言って良いフェンリルがボコボコにされたにも関わらずこの行動、何か勝機があっての事か?
まあ良い、貴様がどんな策を仕掛けようと、私達に、特に我が将来の夫であるイッセーの前には無駄だという事、この場で嫌と言う程分からせてやる!
「メイデン、手筈通りに頼むぞ」
「了解です、ゼノヴィアさん。それでは皆さん、指示と共に参ります」
向こうで朱乃先輩の父であるバラキエル氏とロキが口論を繰り広げている中で私は、グレイプニル製の拘束具・拷問器具を手にスタンバイしているメイデン達に声を掛け、指示を待つ。
私達が担当するは、フェンリルの無力化。
手筈は一言で纏められなくも無い位にシンプル、メイデン達が持つ拘束具・拷問器具によってフェンリルの動きを封じ込めた隙に、私がエクス・デュランダルの力によってフェンリルの無力化を行う、という物。
無論、口で言うのは簡単でも、実際に行うのは簡単では無い。
アザゼル先生の報告にもあったが今のフェンリルに、拘束具としてのグレイプニルの効力は薄いと言って良い、メイデンが使うそれは拷問器具としての運用も想定されている為に、拘束を引きちぎろうとする際にダメージを与えられはするが、それでも拘束時間を多少は伸ばせる、程度でしか無い。
そしてそんなフェンリル相手に、聖剣エクス・デュランダルを有しているといっても、私がまともに太刀打ちできる筈もない。
だが、まともに太刀打ちできないなら、まともじゃない方法をとれば良い。
私のエクス・デュランダルは、そのまともじゃない方法のやり方を知っている…!
「そろそろ始まります。皆さん、構えを」
「了解、メイデンちゃん!」
「ええ、了解しましたわ!」
「了解したっす!」
「任せろ!」
「準備万端にゃん!」
バラキエル氏とロキの口論も大詰めとなったのを見計らい、メイデンとレイネル、朱乃先輩と美月が其々所持しているグレイプニル製の拘束具・拷問器具を構え、私はエクス・デュランダルを構え、黒歌は術式を練る。
そして、
「それでは、神殺しの牙をご覧に入れよう!先の襲撃では不意打ちにあったが、もう引っ掛から
「今です!グレイプニル・ブーツ!」
「巻きつけ!グレイプニル・ジベット!」
「締め上げなさい!グレイプニル・スクリュー!」
「砕け散れッす!グレイプニル・フォーク!」」
ロキが何かを言って、フェンリルを突撃させようとした瞬間を狙い、メイデンが具足型の拷問器具『スペインの長靴』を、レイネルが
「むっ!?その器具はグレイプニル製か!?だが無駄だ!グレイプニルの対策など、とうの昔に織り込み済みだ!」
だが、ロキの言う通り、それらをフェンリルは事も無げに振りほどこうともがき出す、が、
『ガァァ(ブチィ!)ァァァァ(ブツブツッ!)ァァ(ザシュゥ!)ァァァァ!』
「なっ!?フェンリル!?一体どうしたと言うのだ!?ま、まさかその器具か!?」
振りほどこうとしたフェンリルが突然、苦痛にのたうち回る。
全身を取り囲んでいたジベットは、内側に仕込んだ鋲が突き刺さり、4本の脚に食いついた『スペインの長靴』は、元々締め上げていた突起に加え、折れた際に出来た断面まで突き刺さり、その指先に噛みついた親指締め機は、締め上げが更に強烈になり、首に巻きついて顎と身体を抑え込んでいた『異端者のフォーク』は、顎の部分が突き抜け、其々がフェンリルですら無視できない程のダメージを与えていた。
だが、まだまだ終わりでは無いぞ!
「よし、スタートダッシュは成功にゃ!ほいっと!」
フェンリルが苦痛によって隙だらけになっているのを見逃さず、黒歌が練り上げていた転移魔法の陣をフェンリルのいる場所に形成、こちらに転移させようとする。
私達がフェンリルに対し更なる策を仕掛けようとしているのに気付いているのだろう、ロキが妨害しようとするも、
「撃て!撃て!」
「くっ!(ガガガガガガガ!)また天使共の目障りな銃撃か!」
X-LAWSの一斉射撃の前に防御せざるを得ず、結果として黒歌の行動は難なく成功した。
よし、締めは私だな!
「超越せよ、支配の力!森羅万象を我が意に置く力!『
エクス・デュランダルの鞘として刀身を覆っていた7本のエクスカリバー、それが刀身を中心に周り、支配の聖剣が刃の部分に移動すると共に、柄の部分が巨大化して行く。
やがてエクス・デュランダルは十字架の形をし、刀身が真っ黒に染まった大剣『
だが、これだけでは終わらないぞ!
「剣達よ!我らに牙を剥く魔狼を支配せよ!」
私の宣言と共に、まるで紙ファイルを開くかの様に、支配の超越聖剣を起点に、時計回りに血染めの炎剣が生成され、花開くかの様にその刀身をフェンリルへと向けて行き、
「貫け!」
そして一斉にフェンリルへと向かう!
拷問器具による苦痛にのたうち回っていたフェンリルにはそれに対処する術など無く、
『(ザザザザザザザ!)ガァァァァァァァ…!』
串刺しとなり、今までのたうち回っていたのが嘘の様に、急速に大人しくなっていき、そして眠るかの様にその目を閉じて、私の元へと寄って来たのを最後に突っ伏した。
っ、やはり『
フェンリルの封印、その為に持てる力を出し切った私はそのまま気絶、次に目覚めたのは事が終結した後だった。