Side 大輔
「おのれ、我が息子を!」
X-LAWSの面々による集中射撃によってロキに身動きを取らせず、結果としてゼノヴィア達によるフェンリルの無力化に成功した俺達、その状況にロキが如何にもキレてますと言いたげな様子で叫ぶ。
ったく、キレたいのはこっちの方だっつーの、お前みたいな厄介な輩がオーディンの爺さんを狙うなんて事しているから、こちとら色々と迷惑被っているんだよ!
禍の団の脅威がイッセーのお蔭で幾分か和らいでひと段落、と言いかけた時にこれで、結果として3大勢力は新たな脅威に対応しなきゃならなくなったし、それを巡って一時はアザゼルさん達堕天使陣営と、魔王様達悪魔陣営のトップ同士が一触即発の空気になったとも聞く程、お前の勝手な行動によってどれだけ神経すり減らしただろうな!
まあそんな事言って改める様な輩じゃ無いのは分かり切った事ではあるんだが、それでも心中ながら文句を言わないとやっていられない。
それに、顔には怒りの表情こそ浮かんでいるけど、打つ手が無くなったと言わんばかりの絶望感は全く感じられない、て事はまだ隠し玉を用意しているだろう。
と、考えていたのがフラグになったのかも分からない、
「現れよ、スコル!ハティ!」
ロキが何かしらの指示を飛ばすと同時に、背後の空間が歪み出し、其処からフェンリルと良く似た(といっても大きさは一回り位小さいけどな)、2頭の魔物が姿を現した。
片方は体毛が真紅になった感じ、もう片方は体毛が青み掛かった様な感じで、スコルとハティ、とロキが呼んでいたって事は…!
「太陽を喰らう神狼スコルに、月を喰らう神狼ハティか!其処まで本腰入れるとはな…!」
ま、マジかぁ!
背後から聞こえて来た良太の台詞からして間違い無い、フェンリルの息子で、日蝕や月蝕の原因とも言われているあの2頭、そいつらまで連れて来るか!
「左様だ。ヤルンヴィドに住まう巨人族の女を狼に変えてフェンリルと交わらせ、結果として生まれたのがこの2頭だ。フェンリル程では無いとは言え、その牙は健在だ。十分に神、そして貴殿らを葬れるだろう!
さあ、スコルとハティ!父を奪ったのはあの者達だ!その牙と爪で喰らい千切るがいい!」
『『グォォォォォォ!』』
くっ速い!
ロキの指示を受け、咆哮と共に突進して来た2匹。
真紅の体毛をしたスコルはX-LAWS達がいる方へ、もう片方、青み掛かった体毛のハティは、俺達か!
ゼノヴィアはフェンリルを無力化する為に力を使い果たして気絶しちまったし、メイデンちゃん達が使っていた拘束具も使い果たしちまったらしい、なら!
「喰らいやがれ(ドガガガガガガガガガン!)」
俺は予め持っていた大量の砂に、俺の神器である『爆裂真紅』の効果で爆破因子を付加した物を構え、ハティの接近に合わせてそれを撒き散らし、爆破させた!
冥界での合宿の時、嘗ては六大龍王の一角としてその名を轟かせたドラゴンであるタンニーンのおっさんの下で、スパルタを通り越してサバイバル生活紛いの特訓を強いられた俺、主な特訓内容はおっさんとの実戦だったんだが、過去の栄光に加えて今では最上級悪魔の地位に上りつめたおっさんに対して、当時の俺は悪魔になりたての新米、かなう訳が無いと逃げ腰だった。
そんな最初から逃げ腰の俺が、おっさんには『やる気が無い』と映ったのだろう(実際問題、否定できないが)、その場で一喝された。
「貴様!その様な体たらくで、兵藤一誠達との絆を守り通せると思っているのか!?」
その一喝で目が覚めた、というより図星を刺されて逆ギレしたと言う方が正しいが、
「うるせぇ!なんも知らねぇおっさんが俺達の事に口出すんじゃねぇ!」
と反論(になっていない暴言)、真正面からおっさんに突進、その際にふと掴んだ土に『爆裂真紅』の効果で爆破因子を付加させ、それを撒き散らして爆破させた。
それによって怯ませると共に爆破による爆風で浮き上がって其処から下方向へ突っ込む、という流れで行こうとしたんだが、全く怯んだ様子が無かったおっさんに見破られ、尻尾で叩き落とされた。
が、その戦術と、『勝てる訳無い』とあきらめずに勝機を見出す姿勢と映ったのか、
「その意気やよし!強敵とて打つ手が無い訳では無い、その打つ手を見出そうとする姿勢、それこそが戦場に於いては重要な事だ!特に松田大輔、貴様はその打つ手を模索しやすい程の汎用性を持った力がある!それを忘れるな!」
「は、はい!」
こう、指導してくれ、その後もアドバイスを送りつつ相手をしてくれた。
最終的に、おっさんに与えられたダメージは精々鱗が破損する程度、対して俺はかなりの重傷モノだったが、得られる物は多かった。
その1つが、こういった身近にある物を爆弾に変える効果を利用した戦術。
今持って来た砂も、校庭で集めてリュックサックに入れた物、大して警戒してこないだろうと踏んでぶんなげたら、ものの見事に爆破に巻き込まれてくれた。
流石にこれで倒したと考える程おめでたい頭はしていないが、それでも少なからずダメージは通ってい、
『グォォォォォォォォ!』
あの爆破を喰らっても平気で突っ込んで来やがるってそんな事言っている場合じゃない!
俺の爆破にも怯まずに突っ込んでくるハティ、一方であの爆破に構わず突っ込んでくるとは思わなかった他の面々は、驚きで一瞬だが固まってしまう。
そしてそんな隙を逃してくれるハティでは無く、狙いを付けたのか其処へと突っ込んでくる、その標的は、
「なっ!?間に合わ―」
ろ、ロスヴァイセさん!?
ま、まずい、今しがたハティが突っ込んでくるのに気付いて術式を展開しようとするが、間に合いそうにない!
このままじゃロスヴァイセさんが!
間に合え、間に合え、
「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
キィン!という音が聞こえ、世界は一瞬、白い光に包まれ、その後には、
「ま、間に合った、のか?」
「ま、松田君?何時の間に?」
ロスヴァイセさんの前に『何時の間にか』俺が左手を突き出す様に立っていて、その突き出した左手の先には、『腹が根こそぎ抉られて』息絶えたハティの姿があった。