雨に曝される空を見上げて   作:空に歌えば

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第1話

「青、あんたやりたい事ってないの?」

「ない」

「なりたい物は?」

「ない」

「ほしい物は?」

「ない」

「恋人は?」

「いらない」

「行ってみたい所は?」

「興味ない」

「お金」

「必要最低限でいい」

「物欲」

「特に無い」

「食欲」

「そんなにない」

「睡眠欲」

「普通」

「性欲」

「……あんまりない」

「むっつりスケベ」

「からかわないでよ面倒くさい」

 

 

 

 ***

 

 

 

『入試要項通り、リスナーにはこの後10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!』

『演習場には仮想ヴィランを3種多数配置しており、それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある』

『各々なりの個性で仮想ヴィランを行動不能にし、ポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ!』

 

 雄英高等学校ヒーロー科入学試験会場。同・演習場Bにて。

 

 数々のヒーローを輩出する有名な高校、雄英高。その入学試験中。筆記試験が終わり次は実技試験だ。

 ジャージ、体操服、自作コスチューム、動きやすい服に着替えた受験生達が、試験場の大きな入り口の前で緊張感を持って待機している。

 自分の中学校から生徒ではたった一人で受験しているから、話し相手がいない。一人で周りを観察しながら試験を待っているが、試験担当の教師はいつ来るんだろうか。

 

「ハイスタート!」

「ん?」

 

 頭上から声がする。建物の屋上に試験進行役の教師(プレゼントマイクって言うヒーローだったかな?)がいた。

 

「どうした!? 実践にカウントなんてねぇんだよ! 走れ走れ! 賽は投げられてんぞ!」

 

 ……。

 え、もしかして開始?

 周りをみると他の受験生達は既に走り出していた。皆反応早っ!

 あ、一人だけ隣にいた。緑色の髪の毛もっさもさの人。

 

「で、出遅れた~~!!」

 

 びっくりした! いきなり叫ぶなんて。

 

「あぁ、ごめん! 驚かしちゃって」

「いやいいけど、僕達も早く行った方がいいんじゃない?」

「あ、そうだね! えっと、じゃあ行くね!」

 

 緑髪のジャージ君が走り出す。俺も行こう。

 試験場の中は市街地演習と言うだけあって立派な街並みだ。全国でも有名な雄英高の敷地は相当広いらしい。小規模だろうけど、街が試験場として存在するなんて。規模が凄すぎる。

 取り敢えず先ずは「仮想ヴィラン」ってのを探さないといけないらしい。あ、いた。深緑色の非人型のロボットだった。しかもその前にいるのはさっきの受験生だ。襲い掛かってきたロボに構えもせずにいる。あれ? もしかして固まってる? ピンチ?

 

「ヒョウテキホソク、ブッコロス!」

「具象化:皇帝(エンペラー)!」

 

 個性で出した銃で撃ち出した銃弾がロボを撃ちぬく。6つの穴が開いたロボはもう襲い掛かってはこないようだ。

 何があったか分からず立ち止まっている受験生に向かって走っていく。普通の人には見えないらしいからね、皇帝も撃ち出す弾丸も。

 

「危なそうだったから倒しちゃった。ごめんね、大丈夫?」

「え? あ、うん! ありがとう。でも今のは?」

「僕の個性だよ。でもそれより、今は試験の方が大事じゃない?」

「そうだ! ごめんありがとう!」

 

 また受験生が走り出す。近くにあるロボを見ると黄色い塗料で1と書いてあった。これで1ポイントか。もしかしたら一番弱いのかな?

 

「あと6分2秒!」

 

 おっと、僕ものんびりしていられない。急いでポイントを稼ぎに行こう。でも6分2秒って中途半端なタイムカウントだな。色々変な学校だなぁ。雄英高校。

 

 

 

 

 試験会場からすこし離れた校舎にある部屋で、教師達が入学試験をモニタリングしている。

 

「この実技試験は、受験生にヴィランの総数も配置も伝えていない。限られた時間と広大な敷地、そこから炙り出されるのさ。状況をいち早く把握する為の情報力、あらゆる状況に対応する機動力、どんな状況でも冷静でいられる判断力、そして純然たる戦闘力。姿勢の平和を守るための基礎能力がポイント数、という形でね」

「今年は中々豊作じゃない?」

「いやぁまだ分からんよ? 真価が問われるのは、これからさ」

 

 YARUKISWITCH ポチッとな

 

 

 

 

 なんだろう、地面が揺れてる。地震かな?

 んー?

 

『ところせましと大暴れしてるギミックよ! リスナーには、うまく避ける事をお勧めするぜ!』

 

 頭の中で試験要項を説明していた教師の話しが思い返される。

 もしかしてこれがギミック?

 

「でかすぎない?」

 

 ビルより遥かに大きいロボが出てきた。馬鹿じゃないの?

 

「残り2分をきったぜ!」

 

 ちょっとまずいかも、まだ30ポイント位しか取れていない。他の人が48って呟いていた。皆がどれぐらいのポイントを取ってるか分からないけど、もう少しとっておきたいな。

 他の仮想ヴィランを探しに行こう。ここにいても0ポイントのギミックに邪魔されるだけだ。

 

「って、またさっきの人だ、縁があるなぁ」

 

 超大型ロボにびっくりして後ずさりしてる。まぁ皆も逃げてるしね。ん?

 件の緑髪受験生が走り出した。ギミックロボに向かって。なんで?

 あ、足元に女子がいる。どうやら超大型ロボが崩したビルの破片に足が挟まったようだ。成る程、彼は女子を助けたいのか。あ、ロボに向かって跳んだ。高っ!

 

「SMAAASH!」

 

 な、殴り飛ばした。ビルより大きい仮想ヴィランを。派手だなぁ。見た目に合わず。

 今の内に女子を安全な所に移動させよう。

 

「具象化:テレポート」

 

 ぱっと行って、女子の近くに移動する。女子は自分の個性で瓦礫から抜け出していた、表情はあまり優れない。もしかしたら怪我をしたのかも。

 

「大丈夫?」

「わっ! びっくりした!」

「安全な所へ連れて行くよ。怪我していない?」

「怪我は大丈夫、ちょっと酔ってるだけだから……」

 

 酔ってる? え、もしかして飲酒してるの? 個性発動にアルコール成分が必要だなんて大変な個性だ。

 

「それなら尚更危ないから、ぱっと連れて行くね」

 

 女子と手を繋いで個性を発動。ぱっと移動して、少し離れた安全圏までテレポートする。

 

「わ、凄い景色が一瞬で! 凄い個性だね! ありがとう!」

「どういたしまして、お礼は彼にも言ってあげてね」

「彼って、そういえば!」

 

 件の受験生こと緑髪の彼は。

 

「あれどうやって着地するつもりなんだろう」

 

 フリーフォール中だった。しかも心なしか両足と右腕が関節を無視した気持ち悪い動きをしている。あれきっと折れてるよね?

 

「痛ってえええええええええ!」

 

 あれはちょっとまずい。助けなきゃ。どうやって助けよう。

 

「あのままじゃ、彼! 助けんと!」

「あ、ちょっと待って! どうやって助けるの!?」

「私個性:無重力だから! 手で触って!」

「なら!」

 

 テレポート! せっかく安全圏まで移動したが、もう一度女子の手を取り受験生の近くの空中まで移動する。

 

「うわあ落ちてる!」

「あれ!? いい人とさっきの人!?」

「話は後だ! 女子の人お願い!」

「うん分かった!」

 

 女子が個性を発動して、僕達3人の落下速度が大きく緩やかになる。これは中々凄い個性だな。

 

「た、助かった。凄い個性だ……」

「うぅ、やばい気持ちわるい……」

「だ、大丈夫!?」

 

 程なくして無事着地する3人。女子は即効で走り出し、ロボの残骸に隠れて、

 

「君、大丈夫? 足とか腕とか凄い曲がり方してるけど」

「だ、大丈夫です・・・! それより!」

 

 緑髪の彼は無事な左腕だけで這いながら進みだす。

 

「せめて、1ポイントでも・・・!」

「試験!終了!!!」

 

 あ、試験終わっちゃった。これは実技落としたなー。まぁダメで元々の受験だったし、仕方ないか。

 緑髪の彼は力尽きたようだ。せめて1ポイントって事は、彼は出遅れて0ポイントか。この女子を助けなかったら少しでもポイントは取れていただろうに。自己犠牲の精神か、彼は間違いなくこの女子にとってヒーローだった。

 

「アイツ、なんだったんだ? いきなりギミックに飛び出したりして?」

「増強型の個性だろうけど、規格外だ」

「けど、あれだけの個性を持っておいて、どういう生き方すりゃ、あんなビクビク出来るんだ?」

「他を出し抜く為の演技じゃね?」

「にしちゃ、出し抜いて得られる恩恵があった様にみえねぇよ」

「とりあえず、すげぇ奴だってのは間違いねぇよ」

 

 周りにも受験生が集まってきた。そりゃそうか、あのロボを殴り飛ばしちゃったんだから。

 

「おやまぁ、自身の個性でこうも傷つくかい、まるで体と個性がなじんでないみたいじゃないか」

「貴女は」

「雄英高の看護教諭、妙齢ヒロインリカバリーガールだよ。はいグミお食べ」

「あ、ありがとうおばあちゃん」

 

 リカバリーガールの個性によって緑髪の彼の怪我は治っていた。……治癒か。参考にしよう。

 

「よっと」

 

 気を失ってる彼をおんぶって、重っ! なにこの人地味目の痩せ型の癖に滅茶苦茶重い! しかもなんか触った感じが硬い。もしかして細マッチョ君なのか。僕もここ数ヶ月頑張って筋トレしたけど、ちょっと彼は重たいや、試験担当の教師が来たら代わってもらおう。

 

 

 

 ***

 

 

 

 1週間後、雄英高校から試験結果発表通知が届いた。手紙の中は、

 

「なにこれ」

「私が! 投影された!」

 

 まさかの小型映像投影機だった。なんで。ってか。

 

「オール、マイト……」

「私はオールマイト、NO.1ヒーローさ! 今年度から、私もこの雄英高校ヒーロー科の教師を勤める事になった。そして早速君の試験結果だが、筆記は合格ライン! 素晴らしい! だが実技の方はと言うと、33ポイント。残念だが、不合格だ」

 

 やはりそうか。まぁ倍率が凄い数値の雄英高は簡単じゃないよね。

 

「但しそれは審査基準がそれだけなら、の話だ」

「今回の実技試験は総合的に受験生の能力が分かる様にポイント制による試験内容だった。しかしその中にもう一つ、ヴィランポイントとは別のポイント制もあるのさ! それが、レスキューポイント!」

「ヒーローは無論守ってこそ! ギミック用のあのロボが現れた時、君の、君達の自己犠牲の精神は、は、我々教師の目にもしっかりと映っていたぞ!」

「緑谷少年が麗日少女を助けんとギミックに向けて飛び出した後、君は即座に麗日少女を救って見せた! 麗日少女は助けてくれた緑谷少年を助けようとした! あの場では3人共、皆ヒーローだった! ここはヒーロー育成の為の学校! そんな受験生を評価しないなんて、ある訳がない!」

「故に合格! 君は今日から雄英の生徒だ!」

 

「きなよ空話少女、ここが君の、ヒーローアカデミアだ!」

 

 

 

 




 具象化リスト

・皇帝(エンペラー)
 ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースから。
 スタンド能力という常人には見えない能力で生み出される銃、およびその弾丸。
 使用者の意思で曲げたりも出来た。原作では使用者は実は当初主人公達に仲間入りする予定だったらしい

・テレポート
 ポケモンシリーズから。
 エスパータイプの特殊技。攻撃力はない。別に寝ていなくとも発動する。
 ゲーム内ではあなをほるより使用頻度が少ないかもしれない。
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