雨に曝される空を見上げて   作:空に歌えば

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第4話

 

 

「わーたーしーがー!! 普通にドアからきた!」

 

 個性把握テストから二日後、この学校や教室の雰囲気にも少しづつ慣れはじめ、仲のいい友達も出来始めた頃。

 午前中は通常教科の座学や体力づくりの体育等の所謂普通の授業は意外にも雄英にも存在した。プロヒーローが現代文や英語の授業をするというレアな体験も雄英ならではの光景なのではないだろうか。

 そして勿論、ヒーロー科となればヒーローになる為の必修科目もある。その内の一つが、今日始めての科目。ヒーロー基礎学だ。

 

「オールマイトだ…! すげぇな、本当に先生やってるんだな…!」

「あれ、銀時代のコスチュームね…」

「画風違いすぎて鳥肌が…」

 

 オールマイトが教室に入ってくるだけで生徒達は興奮する。全世界のトップスターが目の前にいるとなると、やはり熱が上がってくると言う物なのだろうか。

 

「私の担当はヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う科目だ! 単位数も最も多いぞ! 早速だが今日はコレ! 戦闘訓練!」

「戦闘!」「訓練…!」

「そしてそいつに伴って…こちら!」

「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた…戦闘服!」

 

『おおお!!』

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」

 

『はーい!!』

 

 

 

「うわっ、えぇーなんこれ…?」

「どうしたの麗日さん、コスチュームがどうかした?」

「見てこれ……」

 

 麗日さんは自分のコスチュームを広げて持ち上げる。ピンクと白を基調としたタイツスーツ。

 

「パツパツスーツやん……」

「麗日さんおっぱいあるし、セクシーでいいんじゃない? フフフ…」

「いやー、恥ずかしいよコレ!」

「うわー! お茶子ちゃん大胆!」

 

 透明人間の葉隠さんが着替えてやってきた。制服を脱いでので、手袋と靴だけが浮いている。

 

「うん、恐らく一番大胆なのは葉隠さんかもしれないね」

「あはは……」

「青ちゃんのコスチュームはどんなのどんなの?」

「僕のは、こんな感じだよ」

 

 自分のコスチュームを広げてみる。僕のコスチュームはモチーフがある。それは不思議な国のアリスだ。

 水色のリボンカチューシャと同色のワンピース、白のエプロン。不思議の国のアリスの衣服の特徴で製作者さんに要望をだして作ってもらっている。

 ただ、要望に無かった部分もデザインされていた。小さい所で、インナーが吸湿速乾性のシャツになっていたり、襟があるデザインなので黒色の紐リボンもついている。大きい所で言うなら、黒と白の縞色タイツと、後スカート部分の丈が少し短くなってフリルが多くつけられている。

 全体的にコミックのヒロインの様なコスチュームに仕上がっている印象。製作者さんは少し変態チックな人なのかもしれない。

 

「アリスだ! 可愛い!」

「本当だ、可愛い!」

「要望はもっとシックなデザインで出したつもりだったんだけど。こ、コレは結構恥ずかしいかも……」

「あーでも、確かにコレを着るのは勇気がいるかもね。私のパツパツスーツといい勝負かも」

「いいじゃんいいじゃん! 早速着てみてよ!」

「葉隠さんはノリノリだね……」

 

 

 

「格好から入るってのも大事な事だぜ、少年少女! 自覚するのだ! 今日から自分は…ヒーローなんだと! さぁ! 始めようか有精卵共!」

 

 ヒーロー基礎学最初の授業は、戦闘訓練。内容は、いわば紅白戦のような物だ。

 2人一組でチームを組み、ヒーローチームとヴィランチームに分かれて戦う訓練だった。ヴィランチームはハリボテの核爆弾を死守するか、相手チームを倒せば勝利。ヒーローチームは、核爆弾にタッチするか、ヴィランチームに捕縛テープを巻きつければ勝利。

 自分がヴィランになるか、ヒーローになるか、誰とペアになるか、組み合わせは全てくじで選ばれた。僕は芦戸さんとペアになった。個性把握テストでも芦戸さんとはペアになる事が何回かあったので、少し気は楽だ。

 ヴィランの2人は先にビルに入り、ヒーローの2人は後からビルに入る。残りの生徒達は別の場所にあるモニタールームで映像のみのモニタリングをする事になった。

 

 初戦は麗日緑谷のヒーローチームと爆豪飯田のヴィランチーム。

 どんな試合になるか注目が集まる中、スタートから早速爆豪君の独断行動で緑谷君を強襲。緑谷君はそのまま爆豪君との一騎打ちの流れに。麗日さんは核爆弾を探しに分かれたようだ。

 

「爆豪の奴何話してんだ? 定点カメラで音声無いと、わっかんねぇな」

「小型無線でコンビと話してるのさ。持ち物はそれプラス建物の見取り図、そしてこの確保テープ! これを相手に巻きつけた時点で、相手を捕らえた証明となる」

「制限時間は15分で、核の場所はヒーローに知らされないんですよね?」

「YES!」

「ヒーロー側が圧倒的に不利ですね! これ」

「ピンチを覆していくのがヒーローさ。それに相澤先生にも言われたろう? アレだよ、せーの!」

 

『Plus ultra!!』

 

「あ、オールマイト、爆豪が!」

 

 爆豪君が果敢に攻めて、緑谷君が裁くか避ける。緑谷君は見てから動いている訳じゃなく、相手の行動が分かってるみたいに一瞬早く動いている。まるで達人だ。

 

「すげえなアイツ!」

「個性も使わずに入試1位と渡り合ってる!」

「なんかすっげえイラついてる、こわっ!」

 

 暫くそんな一進一退の攻防が続く。麗日さんの方は核兵器とそれを守備する飯田君を見つけた様だ。

 

「爆豪少年ストップだ! 殺す気か!?」

 

 オールマイトが急に大きな声でマイクに話しかける。

 そして即座に爆発音と衝撃。定点カメラにはとてつもない爆発が映し出されていた。

 

「授業だぞこれ!?」

「少年! 緑谷少年!!」

 

 定点カメラに緑谷君が映る。どうやら爆風に飛ばされただけみたいで大きな怪我はしていなかった。でもあまりの事にモニタールームの皆は雰囲気が変わった事に動揺している。

 

「先生、止めた方がいいって! 爆豪アイツ相当クレイジーだぜ! 殺しちまうぜ!」

「いや……、爆豪少年! 次それ撃ったら、強制終了で君等の負けとする! 屋内戦に於いて大規模な攻撃は、守るべき牙城の損壊を招く。ヒーローとしては勿論、ヴィランとしても愚策だ! それは!」

 

 オールマイトの注意勧告に爆豪君は苛立ちを見せる。大して緑谷君は一瞬怯えた様な表情を浮かべたけど、すぐに目に力が戻る。恐らく小型無線機で麗日さんと打ち合わせをしている。

 

(あの目は……。危ない気がする)

 

 僕はそっとモニタールームを出て、演習場ビルAに向かって走り出す。あの目の力には、覚えがあったからだ。僕を助けてくれた、あの時の姉と同じ目だったから。

 

「満たせ、瓢丸(ひさごまる)」

 

 僕の予感が、外れる事を祈りながら。

 個性で出した刀を持って走り続けた。

 

 

 

 ビルに向かってる途中で、また凄い音がした。また爆豪君があの大爆発を起こしたのだろうか。

 

『ヒーローチーム、ウィーン!』

 

 ヒーローチームの勝利。それはつまり、緑谷君と麗日さんが勝った事になる。

 あんな状況から勝ったんだ。凄いね二人とも。

 

 走り続けた僕はビルにたどり着く。窓ガラスは軒並み割れ、3階には大きな横穴が開いている。あの大爆発で開いた穴だろうか。およそボロボロの様相と言ってもいい状態だ。

 ビルの中に入って緑谷君を探す。すると大きな横穴がある場所に二人はいた。やっぱり爆豪君の大爆発だったみたいだ。

 立ち尽くしている爆豪君の奥に、倒れている緑谷君が倒れていた。

 

「緑谷君!」

 

 爆豪君を置いて緑谷君に走り寄ると、右腕は折れて腫れ上がっていて、左腕は大火傷を負っていた。右は緑谷君自信の個性の反動で、左は爆破による物かな。

 手に持った刀で緑谷君をそっと斬りつける。この刀で緑谷君が傷つく事は無く、逆に緑谷君の怪我を治していく。そういう能力の刀だから。

 次第に治っていく緑谷君を見て、僕は安堵の息を吐く。よかった、今度は助けられた。

 

「おや、君は空話少女じゃないか。いつのまにここに」

「オールマイト。ちょっと、嫌な予感がして。緑谷君の目が、怖かったから」

「怖かった?」

「はい。あの目は、あの時の……」

「……緑谷少年の怪我は完治しているな。それにその刀は……」

「それはその、えっと」

「――色々と訳ありの様だね。深くは聞かん。取り敢えず、緑谷少年を助けてくれてありがとう。一応、緑谷少年は保健室に運ぼうか」

「はい……オールマイト」

「ん? どうした空話少女」

「……いえ、何でもありません」

「…そうか。よし! では緑谷君を運んでくれるハンソーロボを呼ぼうか。そしてモニタールームで皆で講評に移ろう。私は爆豪少年を呼んでくる」

「分かりました」

 

 

 

 第5話へ続く




 具象化リスト

・瓢丸(ひさごまる)

 BLEACHから。
 護廷十三隊四番隊第七席、山田花太郎の斬魄刀。
 斬りつけた対象の傷を取り込み癒す能力がある。本来はその後一定量の傷を取り込んだ後、形状が変化し、相手に取り込んだ分のダメージを全てぶつける能力もある。今回は癒す事のみに使用。
 使用者は冴えないくせに女子にモテるルックスの持ち主とぬいぐるみに評されていた。


 因みに主人公のコスチュームのイメージは、枯れない桜がある作品のナンバリング4番にそっくりな格好のヒロインがいたりいなかったり。
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