Fate Grand Order 絶対魔導王政ブルボン   作:華原晋

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太陽王の王冠

──幼く、無力な王がいた。

尽きることのない国内の動乱と

終わることのない国外の戦争。

国王の玉座は不安定で、幼少の王は二度もパリから逃亡を余儀なくされた。

 

──弱き王を誰も敬わず、

──弱き王を誰も恐れず、

──弱き王を誰も愛さなかった。

 

わずか4歳で即位した幼い国王に与えられたのは、そんな権威の無い色褪せた〝王冠〟

それが神が与えたという王冠だった。

だが彼は絶望し、嘆くことを拒否した。

 

「神が自らに絶対の王冠を与えないのなら、人の手をもってその王冠を磨き、絶対の域にまで高めよう」

 

と、その生涯を捧げることを誓ったのだ。

 

そして彼は政敵を退け、戦争に勝ち、人材を抜擢し、財政を整え、文化を育み、芸術を推奨し、

およそ人間が考え付くあらゆる手法と、在位72年にわたる途方もない年月をかけ、いつしか彼は〝太陽王〟と称されるまでの存在に昇りつめた。

 

自らの王冠を至高のものへと磨き上げたのである。

 

誰もが思わず平伏し、ついには魅了される絶対の権威

 

その象徴、人が作り上げた絶対性の集大成として建造された人の手による至高の王冠、

その名は

 

──ヴェルサイユ宮殿──

 

 

 

【第三身分解放同盟のアジト(ジェネットの酒場)】

 

シェイエス

「君たち、無事に戻ってこれたのか。ロベスピエールが脱走したとパリ市内は凄い騒ぎだ」

 

ロベスピエール

「久しぶりだね。同志シェイエス」

 

シェイエス

「ひいいい!!! 〝生 〟ロベスピエール、怖い!!」

 

ジャンヌ・ダルク(オルタ)

「うるさいわね、大きな声出さないで!」

 

シェイエス

(いや、落ち着け私。よく見たらロベスピエールはボロボロじゃないか。怖くない、これなら怖くないぞ)

 

シェイエス

「お、驚いたな。本当にロベスピエールを救出してくるとは・・・」

 

マシュ

「はい、カペー店長、いえルイ16世のおかげです。しかし、代わりにルイ16世が捕まってしまいましたが、大丈夫でしょうか?」

 

シェイエス

(え? カペー店長がルイ16世? そんなの聞いてないぞ)

 

ロベスピエール

「彼の事なら心配はいらない。命を奪われる可能性は無いからね」

 

<ダヴィンチちゃん>

『なぜ、そう言い切れるんだい?』

 

ロベスピエール

「王族である王妃は、同じ王族である国王を殺せない。王族の神聖性を、自ら否定することにるからだ」

 

ロベスピエール

「そして王族の神聖性、その権威が魔導と呼ばれる神秘の力の源でもある。彼女が苦心して作り上げたその権威を否定する愚は侵さないだろう」

 

マシュ

「魔導の力の源・・・」

 

ジェネット

「ロベスピエール、教えてほしい。〝魔導〟とは何だ? そしてなぜ君には魔導の力が効かないのだ?」

 

ロベスピエール

「王族と貴族、第一身分と第二身分の権威、それらは神から与えられた絶対のものではなく、人の手によって作り上げたものだ。

 そして魔導とは、ある巨大な権威装置を元に、神秘の技術を応用して王妃が編み上げたものだ」

 

<ダヴィンチちゃん>

『巨大な権威装置・・・・・・』

 

立香

「それは一体何?」

 

ロベスピエール

「幼少のころに、多くの反乱にさらされた幼き王がいた。後に太陽王と呼ばれることになる彼が人生をかけて作り上げた人工的な威光。太陽王ルイ14の権威の具現化した存在。

その名はヴェルサイユ宮殿」

 

ジャンヌ・ダルク(オルタ)

「ヴェルサイユ宮殿ですって!?」

 

<ダヴィンチちゃん>

『そうか、ヴェルサイユ宮殿こそ、ルイ14世が残した権威の集大成にして巨大な宝具、いわば〝宮殿宝具〟とでも呼ぶべきもの』

 

マシュ

「しかし、この時代ではルイ14世はすでに亡くなっているはずでは?」

 

<ダヴィンチちゃん>

『仮に彼が亡くなっていたとしても、その権威は残っているし、本物のヴェルサイユ宮殿は現存している。いわば主役不在だが舞台装置は残っている状態だ」

 

ロベスピエール

「王妃はヴェルサイユ宮殿に残された権威と、神秘の技術を応用し、その権威を目に見える形で実体化させたのだ」

 

<ダヴィンチちゃん>

「なるほど、〝宮殿宝具〟であるヴェルサイユ宮殿の権威と〝聖杯〟の力を用いれば、第一身分と第二身分の王侯貴族達を、疑似的な魔術師にすることは不可能じゃない』

 

マシュ

「疑似的な魔術師・・・」

 

ジャンヌ・ダルク(オルタ)

「つまり、第一身分と第二身分が扱う魔導は、人工的に作り上げたパチモンというわけね」

 

ジェネット

「同志ロベスピエールだけがその権威に屈しなかったため、魔導が効かなかったということか」

 

ジャンヌ・ダルク(オルタ)

「フン、あんた達、自称〝革命家〟とは大違いね」

 

シェイエス

「ううっ・・・言葉もない」

 

ジェネット

「・・・・・・」

 

ジャンヌ・ダルク(オルタ)

「しかし、だんだんと腹が立ってきたわ。私の時代の王族も狡猾で嫌な奴らだったけど、ここまでじゃなかったわ。それよりもムカつくのが、偽物の権威にびびって、そのまま搾取されている民衆よ。ほんと馬鹿じゃないの?」

 

ロベスピエール

「そうだな。民衆はいつの時代も権威に弱い。だが彼らを啓発していくのが未来に生きる我々〝革命家〟の役割でもある」

 

ロベスピエール

「かつて民衆は、太陽王とヴェルサイユ宮殿の権威に屈し、その威光に魅了された。だが時がたち、次第に知識を深め、人々はその権威から脱却しはじめた。

 それが革命。

 人類の歴史の、橋頭堡に必然。

 その時計の針は、決して戻してはならない絶対のモノ」

 

ジェネット

「ならば方法は一つだ。ヴェルサイユ宮殿が彼らの権威の源ならば───」

 

ジェネット

「それを、徹底的に破壊すればいい」

 

シェイエス

「なんだと!」

 

ジェネット

「強風の日を選び、計画的にヴェルサイユ宮殿に放火すれば可能だ」

 

シェイエス

「は、反対だ! あれは、フランスの宝でもある!」

 

ジェネット

「だから何だ? あれこそブルボン朝の権威の象徴にして、市民から搾取した富の象徴なのだぞ!?」

 

シェイエス

「なんと言われようと反対だ。それに、ヴェルサイユには召使いや兵士として雇用されている第三身分の者たちもいる。彼らを一緒に焼き殺すことはできない」

 

ジェネット

「目的のためになら多少の犠牲はやむを得ない!」

 

シェイエス

「た、多少の犠牲だと!?」

 

ロベスピエール

「二人とも止めたまえ。確かにヴェルサイユを焼くのも一つの手だが、もう一つ方法がある」

 

<ダヴィンチちゃん>

『それはなんだい?』

 

ロベスピエール

「〝魔導〟を発動するためのエネルギー源として、王妃はパリの住民の血液と、ヨーロッパ中から収奪した宝石を用いていることは知っているだろう?」

 

<ダヴィンチちゃん>

『血液と宝石を利用した、一種の宝石魔術だと我々は推測している。だが工房の場所がわからなくて、手の打ちようがないんだ』

 

ロベスピエール

「場所なら私が知っている」

 

マシュ

「?! その場所はいったいどこですか?」

 

ロベスピエール

「バスチーユ牢獄だ」

 

ジェネット

「バスチーユ牢獄、あんなパリのど真ん中に、工房があるというのか」

 

<ダヴィンチちゃん>

「ありうる話だ。パリの中心なら新鮮な血液を集めるのに便利だし、牢獄なら人目も避けられる。おまけに血が流れていても不思議はない」

 

ジェネット

「ならバスチーユ牢獄を襲撃すべきだ。あそこを抑えれば、勝機はある」

 

シェイエス

「だがしかし、あそこは元々は王城を守るための要塞として建造されたものだ。現在の戦力で落とすのは不可能だ」

 

ジェネット

「ならば、まずヴェルサイユを破壊し、彼らの権威の源を断つべきだ」

 

シェイエス

「ヴェルサイユを焼くのはダメだと言っているだろう!」

 

クウニー

「おいみんな大変だ!!」

 

ローズ

「ビッグニュースよ!」

 

シェイエス

「どうしたんだ血相を変えて?」

 

クウニー

「国王を名乗る偽物が逮捕されたんだが、なんとそれがカペー店長なんだ! どういう事だ?」

 

 

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