Fate Grand Order 絶対魔導王政ブルボン 作:華原晋
<<???の回想>>
「───神は死んだ」
フランス革命の人民の熱狂の中で、私もそう叫んだ。
神の名のもとに主権を独占していた国王を処刑し、幼い共和国は産声をあげた。
だが新たな共和国の誕生を、列強は許さなかった。
ヨーロッパ全土に及ぶ大同盟が結成され、列強は一斉に祖国に侵攻したのだ。
貴族出身の将校の大半が亡命したこともあって、私は人民の軍を率いる将校として戦地を駆け巡った。
訓練も、装備も未熟な新設の軍を率い、列強の常備軍に挑む。
泥をすすり、血で血を洗う様な苦戦に次ぐ苦戦。
歴戦の中、私の力もついに尽きた。
血の池の中で、最後の時を覚悟する。
祈るべきか?
だが神は革命で死んだ。ならもはや、祈るべき存在はいない。
神が起こすという奇跡もない。
───はずだった。
神は死んだ。
───だが、軍神はいた。
数え切れぬほどの敵、絶望的な逆境のなかで、それでも奇跡を起こし続ける軍神が───
数え切れぬほどの奇跡と栄光の結果、軍神は皇帝となった。
神によって与えられた王位ではなく、選挙で選ばれた皇帝に
王政と共和制、その中間に位置する共和国の皇帝になったのだ。
〝大陸軍〟(グランダルメ)
皇帝がそう名付けた最強の軍を率い、今度は我々がヨーロッパを席巻する。
かつて伝説で語られた英雄達の様に、私も元帥の一人として、皇帝による伝説の一部となる。
最強を誇った大陸軍、その中にあってなお不敗の軍団、私が率いた軍団はそう呼ばれた。
───皇帝は敗れた。
敵に敗れたのではない。常勝の大陸軍60万を壊滅させたのは、ロシアの冬だった。
だが諸外国はこの隙を見逃さなかった。
ヨーロッパ全土にわたる大同盟が結成され、100万を超える敵が、祖国に押し寄せた。
疲れ果てた兵を鼓舞し、なおも奇跡を起こし続ける皇帝。
だが奮迅むなしく、皇帝不在の中パリは陥落した。
敵に敗れたのではない。愚かなる部下たちが、皇帝を裏切ったのだ。
私は悔やんだ。
私がお傍にいれば、パリが陥落する等という事は無かったはずだ、と。
皇帝の翼は折れなかった。
軍と国民の熱狂的な支持の元に、不死鳥の様によみがえったのだ。
私は今度こそお側で戦うことを望んだ。たとえ敗北しようとも
だが今度はパリの死守を命じられた。安心してパリを任せられる部下が、他にいなかったという理由で
──ワーテルローで、軍神は敗れた。
皆は言った。勝っていたはずの戦いで皇帝が敗北したのは、味方元帥達の失態によるものだと。
だが、私は気づいていた。
かつて軍神と呼ばれ、敵味方を問わず、軍人ならだれもが畏敬した皇帝。
その才覚はついには枯れ果て、過去のモノになってしまったのだということを。
こみ上げてきたのは耐えようのない虚無感。
それはいつの日か黒く染まり、熱を帯び、どす黒い感情へと変化を遂げていった。
──私がこの手で皇帝を殺したかった──
──朽ちた軍神に代って、私が皇帝ナポレオン・ボナパルトに取って代わるべきだったのだ──