Fate Grand Order 絶対魔導王政ブルボン 作:華原晋
<<??の回想>>
──運命の刻というものがある──
全ての因果、全ての罪から解き放たれた聖なる時間
天から叩きつけられた稲妻の様な直感と、込み上げてくる熱風のような高揚に身を任せ
理性も、恐怖も、打算さえもかなぐり捨て
なおも自らの天命を信じ、その命を投げ出す運命の瞬間が、英雄を志す者には必ず降りかかる
だがしかし、身を運命に差し出した殆どの者たちの命を、歴史は無情にも刈り取っていく
英雄にあこがれた者達、その無数の屍の跡
その上に立つ、奇跡を体現した〝何者か〟
「───それでいい。〝何者か〟になれない人生なら、失っても構わない」
軍人を目指した幼少の頃より、俺はそう固く信じていた───はずだった
───結局のところ、俺は橋を渡れなかった。
飛び交う弾薬、疲れ切った味方、必死の敵が守るロディ橋
その橋を突破するためオレはその身を運命に投げ出せなかった。
司令官という理性が、直感を妨げ
銃弾の恐怖が、高揚を打ち消し
既に十分な戦果をあげてきたという打算が、勇気を打ち消した
そして新婚という事実が、俺に戦場から逃げ出す口実を与えた。
運命の女神に二度目は無い
彼女は俺の懐から去った。もう戻ることもない
〝何者か〟になれなかった俺は、ただ無為に生き、慰めにつまらない小説を書く日々。
だが願いが一つだけ叶うなら、運命の女神よ。
もう一度だけ、この命を投げ出す運命の瞬間を与えたまわんことを───
ローズ
「ねえクウニー、最後に教えてあげる。
私がなぜ国王の公寵姫になったのかを・・・」
クウニー
「!?」
ローズ
「王様の愛人になって貴方を再び司令官として推挙するためよ!」
──そうか、運命の女神は、去ってなどいなかったのだ──
ローズ
「あなたに、平凡な人生などない。そんな安穏は許さない。〝何者か〟になるか、なれずに死ぬか。そして〝何者か〟になったならば、私はこの人生の全てを、貴方に捧げて尽くしましょう」
──彼女はずっと俺の側で、微笑んでいたのだ──
彼女の笑顔は、何より気高く神々しいものに見えた。
砲煙にまみれようが、他の男に抱かれようが、その美しさは決して汚れない不変のもの
彼女の名は知っている。
君の名は、我が勝利の女神、ジョセフィーヌ・ローズ
そして俺の名は──
あとがき
ジョセフィーヌは、男性名のジョセフの女性名です。
革命で夫を失った二人の子連れの未亡人でしたが、その美貌と才能で時の権力者の愛人となり、その後ナポレオンに乗り換えて皇后の地位を得た才女
なお息子も軍人として優秀で、猛者ぞろいの元帥たちに引けを取りませんでした