Fate Grand Order 絶対魔導王政ブルボン 作:華原晋
<<回想・女帝マリア・テレジア>>
『幸いなるオーストリアの花嫁よ、結婚せよ。
戦いの神マルスが与えしものを、美の神ヴィーナスにより授けられん』
政略結婚により大国の地位を築いたオーストリアの皇女として生まれた私には、当然のごとく、政略結婚が宿命づけられていた。
ハプスブルク家の娘達が受け入れてきたその運命を、まだ幼い王女だった私も、当然の様に受け入れていた。
───だが、わずか9歳の私が恋をしたのは、取るに足らない小国の、15歳の王子様だった───
幼き娘が夢中になったはじめての恋。
それは本来なら、穏やかにうち捨てられるべき、儚い夢の如きもの。
だが国是に反したその初恋の成就を、寛大なる父皇帝は認めてくれた。
それはオーストリアの伝統と、国益に背いた奇跡のような恋愛結婚
そしてそれは私の本来の婚約者との長い戦いの始まりでもあった
───フリードリヒ・ヴィルヘルム二世───
軍神マルスの加護を受けし、後に大王と称される稀代の名君
そして私が本来の婚約者だった人物
彼は大改革を行い、中堅国家だったプロシアを比類なき軍事国家に押し上げる
そして父の跡を継いだ私の皇位継承を不服とし、オーストリアに宣戦してきたのだ。
婚姻政策に頼り、尚武の伝統を失ったオーストリア軍は弱く、敗退を重ねる
私は乳飲み子を抱え、国内の諸民族の元に赴く
彼らの支持を取り付け、我が国民にする必要があった
「───私を愛しなさい
そして我が臣民になりなさい!!」
帝王学など受けたことはない、乳飲み子を抱えた若い女王の拙い言葉は、かえって人々の心を打った。
彼らは我が臣民となることを約束してくれたのだ。
私は彼らを慈しみ、学校を建て、減税に勤め、そして彼らは私に忠誠を尽くしてくれた。
そうして、あの宿敵フリードリッヒ大王の烈火のごとき猛攻から、かろうじて帝国を守りぬいたのだった。
自らの決断と運命に、後悔は微塵もない。
夫はフリードリヒのようの様な軍才は無かったが、穏やかで誠実な人物であり、夫との間には16人もの子供を誕生し、私はそれぞれを立派に成長させたのだから。
だが、それでもふと思うことはある
もし私が自らの恋心ではなく、政略結婚たるオーストリアの国是に従っていれば
あのフリードリヒ大王と結婚していれば、無益な戦争は起こらず、オーストリア=プロシアの連合国家はヨーロッパを容易に制覇していたのではないか?
それが王族たる自らに課せられた本来の使命であったのではないか?
そんな後悔の念は、ついに私の心から消え去ることは無かった。
そしてその思いは、我が最愛の娘、マリー・アントワネットを大国フランスに嫁がせることに決意させた。
本来のオーストリアの掟にしたがった政略結婚。
わずか15歳の娘に課した使命
その決断が、祖国の栄光と、ヨーロッパの平和、そして娘の幸せにつながることを祈りながら、私は長い治世を終えた
英霊には、必要な知識が与えられる。
英霊となった私が得た知識は、その思いの全てを根底から、完全に打ち砕くものだった。
愚かなる王妃マリー・アントワネットの莫大な浪費に対するフランス市民の怒りは、フランス革命の引き金となり、
無力な夫ルイ16と妻マリーは、地位と名誉、その全てを奪われたうえで処刑された。
そしてその子、私の孫にあたる幼きルイ17世は、薄暗いタンプル塔で死ぬまで虐待され続けた。
娘と孫を救出しようとしたオーストリアは列強と手を組み大軍をフランスに差し向けたものの
梟雄ナポレオンによって撃退され、逆にウィーンを含むヨーロッパの大半を蹂躙されてしまった。
そして16年にわたって続いた戦乱によって、数百万の民が命を落とした。
娘の幸福、
孫の未来、
祖国の栄光、
そしてヨーロッパの平和
娘の政略結婚に託した思いの全ては、完膚きままに打ち砕かれたのだ。
私の、誤った決断によって。
再び現界した私は、自ら娘の代わりとしてヴェルサイユ宮殿に乗り込み、
培ってきた政治手腕と、外法とされた魔術の力までも用いて歴史に抗った。
まるで美の神ヴィーナスの加護を受けた人間の様に、あらゆる手段で王権を維持しようとした王妃。
だがその努力はことごとく打ち砕かれる。
そして軍神マルスの加護を受けし軍人達は、遂にヴェルサイユに至ることとなる。
───『終章・黄昏のヴェルサイユ宮殿』───
【フリードリッヒ大王】
マリア・テレジアの宿敵にして、元婚約者
軍神マルスに愛された天才で、ナポレオンがイスカンダル並みに尊敬する人物。
幼き日のマリア・テレジアに一目ぼれし、結婚を申し込むが拒否され、女嫌いとなる
小国プロシアを率い、執拗に超大国オーストリアに侵攻を続け、しかも勝ち続けた
彼にとって、オーストリアとの戦争は、マリア・テレジアと繋がるための唯一の手段だったという
マリア・テレジアにとってははた迷惑な、史上最強のストーカー大王
なおマリア・テレジアは「なんかあの男と同じ匂いがする」と、ナポレオンも嫌っている(とばっちり)
【若き日のマリア・テレジア】
帝王学は受けたことがなかったが、政治的な感性は抜群
国民に愛されることがこの時代のオーストリアには最重要であることと
また国民に愛される術を直感的に理解していた愛されギャル女帝
経験を積んで、知識が直感に追いついていくタイプ
マリー・アントワネットと同じタイプだが、マリーの場合は異国フランスであることが致命的にマイナスであり、
真逆の「憎まれ王妃」の役割を担う事になってしまった
宝具は〝幸いなるオーストリアの花嫁よ〟(プローテシラーオス)