Fate Grand Order 絶対魔導王政ブルボン 作:華原晋
ジャンヌ・ダルク(オルタ)
「倒した?」
ルイ17世
「・・・・・・」
マシュ
「ルイ17世の肉体、再生していきます」
<ダヴィンチちゃん>
『魔力、再び増大。この魔力、無尽蔵なのか?』
マリア・テレジア
「当然です。ここは太陽王の象徴たるヴェルサイユ宮殿なのですから。貴方達は〝宮殿宝具〟の懐の中であがく虫けらにすぎません」
ジャンヌ・ダルク(オルタ)
「どうするのよ?」
共和国皇帝ナポレオン・ボナパルト
「仕方ない。マスター、令呪のバックアップを頼む!
俺の宝具を全力でぶっ飛ばして、ヴェルサイユ宮殿を破壊する。
同時に大陸軍の全軍を突入させる。こうなった以上、宮殿を瓦礫の山に変えるしかない」
立香
「それしかないのか───」
???
「────それには及ばないよ。共和国の皇帝よ」
マシュ
「あ、貴方は?」
立香
「カペー店長!」
ルイ16世
「やあ。また会ったね。カルデアの諸君」
マリア・テレジア
「貴方がなぜここに? そうか、フーシェが裏切ったのですね」
ルイ16世は、乳房の形をたどった陶器でできた杯を、息子たる17世に与える。
カリー・ド・マルシェ
「あれは、性杯?」
ジャンヌ・ダルク(オルタ)
「だからその名でよぶなっての!」
ルイ17世
「かあ、さま・・・」
ルイ16世
「そうだ、息子よ。これは母がお前に与えたものだ」
マシュ
「ルイ17世が、穏やかな表情に───」
<ダヴィンチちゃん>
『ルイ17世の魔力、減少。どういうことだ?』
マリア・テレジア
「・・・それは娘マリーの乳房をかたどった陶器。
乱れた宮中と愚かな娘の象徴たるその陶器が、なぜ孫の怒りを鎮めるのです?」
ルイ16世
「義母上、これはマリーが淫らな目的で作らせたものではありません。なかなか乳離れできなかったこの子のために、マリーが自らの乳房を模して造らせたミルク飲みなのです」
王妃マリー・テレーズ
「──────」
マリア・テレジア
「・・・なぜ、そのことを公にしなかったのです? 娘の名誉にかかわることでしょうに・・・」
ルイ16世
「私も同じことをマリーにいいました、しかし彼女はこう反論したのです」
ルイ16世
「王者たる使命を受けたこの子が乳離れが遅れたという事実は、この子の不名誉になる。淫らで愚かな王妃が享楽のために作らせたという事でいい、汚れ役は私がよろこんで引き受けるわ、と」
マリア・テレジア
「・・・・・・」
ルイ16世
「慣れぬ異国の宮中で、彼女は必死に妻たろう母たろうと努力したのです」
マリア・テレジア
「──私の、誤解だったというのですか」
ルイ16世
「フランス人民の王の名において、ここに宣言する。
朕は、国家ならず!」
<ダヴィンチちゃん>
『──国王の絶対性を否定
ルイ17世の魔力、完全に消滅!』
マリア・テレジア
「──────」
ルイ16世
「共和国の皇帝よ、ボクは王室をたたむ。だが人民たる諸君らを恨まない」
共和国皇帝ナポレオン・ボナパルト
「──ああ国王よ、確かに了解した。
貴方の廃位と、国民への主権の移譲を受け入れよう」
マリア・テレジア
「フランス国王ルイ16世、なぜあなたはそうまで戦うことを拒むのですか? 貴方が強権を発動すれば、革命を潰すことも不可能ではなかったはずです」
ルイ16世
「ボクはどんなことがあっても逃げない。彼らの愛も憎悪も、全て受け入れる。妻とそう誓ったからです」
ルイ16世
「帝王学に〝君主は愛されるより恐れられよ〟との言葉があります」
マリア・テレジア
「マキャベリの君主論の一節ですね」
ルイ16世
「しかし、あまりに有名なその言葉に比べて、次の言葉は知られていません」
──〝何故なら、愛は憎悪に変わりやすいから──
ルイ16世
「王者としても教育を受けたボクはその言葉を理解しているつもりでした」
ルイ16世
「だがその言葉の真の意味を思い知ったのは、フランスから逃げ出そうとして失敗した、いわゆるヴァレンヌ逃亡事件の後でした」
ルイ16世
「ボクを深く愛してくれていた民衆ほど、向けられる憎悪の炎は苛烈なものとなり───」
ルイ16世
「ボクに大きな期待を寄せていた民衆ほど、その失望いものとなりました」
ルイ16世
「そしてその時、ボクはどれだけ彼らに愛され、期待されていたのかを知りました」
ルイ16世
「そして家族で誓ったのです。
これからは、どんなことがあっても、この宿命を、彼らの愛と憎悪を受け入れようと」
ルイ16世
「たとえ断頭台の露と消えることになろうとも、決して彼らを恨まない」
ルイ16世
「何故なら、その憎悪は、彼らからの愛情の裏返しなのだから」
ルイ16世
「ボク達は国民に愛されていたのですよ、義母上。
貴女と同じように。
国王として、これ以上の幸福がありましょうか?」
マリー王妃
「・・・・・・」
ルイ16世
「後悔の思いがあるのなら、あの日、マリーと家族だけを逃がすべきだったという後悔だけです。国王たるボクだけが、最後まで残るべきでした」
マシュ
「・・・・・・」
マシュ
「いいえ、多分ですが・・・マリーさんは国王を残しては逃げたりはしなかったと思います。
〝貴方が残るなら私も残る〟と、言われたのではないでしょうか?」
ルイ16世
「はは、確かに君はマリーの友人だ。
同感だ。きっと彼女はそう言ったろうね」
マリア・テレジア
「ふう、無抵抗主義も、こまで行けば立派な信念ね。
政略結婚とはいえ、私が選んだ相手は間違っていなかった様です」
マリア・テレジア
「最後に一つ、カルデアのみなさんに、教えていただきたい。
貴方が知るマリーは、どんな娘でしたか?」
マシュ
「・・・・はい。フランスの民衆のために、その身を投げ出した、立派な王妃様でした」
ジャンヌ・ダルク(オルタ)
「・・・・・・」
マリア・テレジア
「そう・・・
───よくできたわね、マリー」
その横顔は、どこまでも透き通った、娘を誇らしく思う母親の穏やかな笑顔だった。
ルイ16世
「ボクも教えてほしい。
この権威の象徴たるベルサイユ宮殿は、やはり市民によって破壊されるのかね?」
マシュ
「いいえ、現代でも現存しています。
ベルサイユ宮殿を守ろうとする市民の寄付金によって
そして多くの観光客を魅了し続けています」
ルイ16世
「そうか、愛憎の時代の果てに、王朝は遂に市民と歴史を共有するに至ったわけか」
ルイ16世
「ならばもはや悔いはない」
マリア・テレジア
「これは貴方達にかえします」
ジャンヌ・ダルク(オルタ)
「せ、〝聖杯〟」
マリア・テレジア
「では、孫と共に行きましょう。
婿殿。エスコートをお願いします」
ルイ16世
「よろこんで、義母上様」