チャプター3『帝劇忍者・望月 あざみ』
帝劇・誠十郎の部屋………
自室にて、溜まっていた仕事の片付けに没頭していた誠十郎。
区切りが着いた頃には、日がすっかり落ち、帝劇は夜の闇に包まれていた。
「う~ん………気が付けば、もうこんな時間か。しかし、今日は結構頑張ったんじゃないか?」
『ハア~、漸くかぁ………』
片付いた仕事を見てそう呟く誠十郎と、漸く退屈な時間が終わってホッとするゼロ。
と其処で、誠十郎のスマァトロンが鳴った。
(ん? 電文? 令士からか………)
誠十郎が確認すると、令士からの電文が送られて来ていた。
『話が有る。直ぐに舞台へ来てくれ』
との事である。
悪友同士らしい、飾り気の無いメッセージである。
「令士の奴………何の用事だ? 仕方無い。一先ず舞台へ行って見るか」
誠十郎は、令士の待つ舞台へと向かった。
帝劇・舞台上………
誠十郎が到着すると、夜の静かな闇に包まれた舞台の上に、令士と更にはイデの姿が在った。
「来たか、誠十郎」
「相談って何だ? イデさんも一緒に………舞台修理の目処でも立ったのか?」
「そんなところだ。舞台を
「は、半日!? そんな短時間で可能なのか!?」
驚異のスピード修理時間に、誠十郎は思わず驚きの声を挙げる。
「ああ。
「“帝劇の華”である舞台を何時までも閉めてたら、お客さんに申し訳無いからね」
そう言う令士とイデ。
1日でも凄いのだが、其れを半日に縮めたイデも大概である。
「凄いな………分かった。其れで進めてくれ」
「ああ。其れと舞台の
「“人目を驚かせるセット”でお客さんの目を惹く方法は手っ取り早いからね」
「其れは助かりますが………」
『大丈夫なのか? そんなに働いて?』
至れり尽くせりと言えるが、オーバーワークではないかとゼロも心配する。
「大丈夫なのか? 只でさえ、無限が一気に配備されて大変だろうに………」
「何だ、心配してくれるのか? お前らしくないぞ」
「な~に、やってみせるさ。コレが
誠十郎の心配の声に、令士は誰に物を言っていると返し、イデも笑顔でそう返す。
「分かった。よろしく頼む。で、具体的には如何する積りなんだ?」
「オレが開発した高精度霊子投影機、コイツを仕込む。元々は、
「戦闘訓練装置って………物騒なモノじゃないだろうな?」
元の用途を聞いて、誠十郎は心配気な声を挙げる。
「安心しろ。飽く迄、“映像を舞台に投影する
「データさえ有れば、シャンゼリゼ通りだろうが、
令士の説明に、イデがそう補足する。
「凄いな。其れが本当なら、凄い舞台が出来そうだ」
「作業には明日から取り掛かる。まあ、期待していてくれ」
その後、細かい打ち合わせをすると、誠十郎は自室へと戻るのだった。
帝劇・誠十郎の自室前………
(舞台装置の方は、令士とイデさんに任せておけば何とかなる。後は公演の中身の方だな)
『だな。何時までもチャンバラ劇じゃ飽きられちまう』
(アナスタシアも来て人員も増えた。新しい演目を決めないといけない。明日もまた忙しくなるぞ。良し、今日はもう休んで………)
そう思いながら、誠十郎が自室のドアを開けようとする。
『! 待て! 誠十郎!』
「ゼロ?………!」
突然ゼロが呼び止め、誠十郎は怪訝な顔をしたが、次の瞬間には自室の中から気配がする事に気付いて顔を強張らせる。
「鍵は閉めた筈………! まさか、降魔のスパイが!?」
『或いは星人かも知れねえ。奴等からすれば、鍵なんて無いも同然だ』
降魔かと思う誠十郎と、星人の可能性も考えるゼロ。
『代われ、誠十郎。星人だったら俺がやる』
「分かった………」
誠十郎の身体の主導権が、ゼロへと切り替わる。
「さて………鬼が出るか蛇が出るか」
誠十郎(ゼロ)はそう呟きながら、ドアを開けて自室内へ入った。
「………誰だ! 出て来いっ!!」
そして直ぐ様そう言い放ったかと思うと………
誠十郎(ゼロ)の眼前に小さな影が音も無く降り立ち、そのまま誠十郎(ゼロ)の首に刃を………
「………!?」
「俺の隙を衝こうなんざ、2万年早いぜ!」
突き付けようとしたが、腕を摑まれて阻止された!
「クッ!!」
「テメェ、一体何も………って、お前は!?」
悔し気な声を漏らした侵入者を誠十郎(ゼロ)が問い質そうとした瞬間、その姿を見て手を放してしまう。
「!!」
その瞬間、バッと距離を取る侵入者………望月 あざみ。
「(あざみくん!? ゼロ! 代わってくれ!)君は………望月 あざみくんだね?」
「! 私の名前を知っている。其れにさっきの反応………何者?」
直ぐ様、誠十郎が主導権を取り返して呼び掛けると、あざみは睨み付ける様に誠十郎を見据える。
先程の攻撃を止められた事で、警戒心が増している様だ。
「………ううん、何者でも良い。名前を知られたからには、只では置かない………里の掟62条。秘密を知る者、生かして置けぬ」
『オイオイ、随分物騒なこと言うじゃねえか』
生かして置けぬと言うあざみの言葉に、ゼロは呆れる様に呟く。
「覚悟召されよ!」
しかし、あざみは本気の様で、再度右手にクナイを握る。
「待て待て待て!(ど、どうする!?)」
そんなあざみを見据えながら、如何するかと慌てて考える誠十郎。
そして………
「そ、そうだ! おやつをあげよう! 其れで手打ちにしてくれないか?」
そう思い付いて、あざみに呼び掛けた。
「…………」
(やっぱ、無理か………)
自分で思い付いて置いて、流石に“コレは無い”と思った誠十郎だったが………
「………『みかづき』の御饅頭、10個」
「………え? 本当に? 其れで、良いの?」
『やっぱ子供だな………』
あざみがそう言って来たので、思わずゼロと共に呆けてしまう。
「! よ、良くない! 里の掟79条。おやつで買収されるな」
と其処で、あざみは恥ずかし気に頬を染めながら、慌ててそう言う。
「ふう………危うく、掟を破るところだった………思わぬ強敵………」
「い、いや。強敵じゃなくて、“キミの隊長”なんだけどな、俺は」
漸く、自分が“花組の隊長に就任した者”だと伝える事に成功する誠十郎。
「隊長………?」
「キミは帝国華撃団、花組の1人。望月 あざみくんだろう? 俺は、神山 誠十郎。先日から花組の隊長を任されている」
「………神崎司令から聞いている。
「その割に、いきなり物騒だったな」
未だにクナイを出したままのあざみの姿を見て、誠十郎はそう呟く。
「そうか。貴方が神山 誠十郎。新しい隊長か………」
漸くクナイを納めるあざみ。
「改めてご挨拶
先程までとは打って変わり、あざみは畏まった様子を見せる。
「あ、ああ。よろしく」
『やっぱ、変わった奴だな』
やや戸惑いを隠せない誠十郎と、率直な感想を抱くゼロだった。
「承知した。では、ご免!」
と、そう言い残してあざみが跳び上がったかと思うと、その姿が一瞬にして消え失せる。
「!? 何処へ消えたんだ、一体? しかし………忍者だって?」
『『フーマ』を思い出すな』
忍者を自称したあざみに誠十郎は若干の困惑を見せ、ゼロは同郷で、『ウルトラマンタロウ』の息子・『ウルトラマンタイガ』の戦友『ウルトラマンフーマ』の事を思い出していた。
「あざみ、お帰り!」
「ん? さくらの声か?………何だか、外が賑やかだな。一寸様子を見に行ってみるか」
すると其処へ、廊下の方からさくらの声が聞こえて来て、賑やかな様子が窺えたので、再度部屋から出た。
「皆、ただいま。今さっき、戻って来た」
「ん? さくら達の部屋の方からだな。何があったんだろう?」
部屋の外に出た誠十郎が、賑やかな声が聞こえるのがさくら達花組メンバーの部屋の方だと気付き、其方へ足を進める。
「………変わった格好の子ね。若しかして、メイドさんかしら?」
其処には、部屋の前で話し合っているあざみ・さくら・アナスタシアの姿が在った。
「メイドじゃない、忍者。其れに“望月 あざみ”という名前が有る」
「そう、ごめんなさい。私はアナスタシア・パルマよ。よろしく」
あざみと初めて会うアナスタシアがそう挨拶を交わす。
「そうだ、あざみ! 他にも新しい人が居るの。紹介するね!」
「俺の事かな? さっき挨拶させて貰ったよ」
と、さくらが誠十郎の事を紹介しようとしたので、誠十郎はそう言って話の輪に入る。
「隊長、引き続き見回りをしている。“さっきの隊長以外”に、不審者はいなかった」
「ひ、人聞きの悪い事を言わないでくれ………とはいえ、ご苦労様。もう切り上げて休んだら如何だ?」
不審者呼ばわりされた事に若干狼狽しながらも、誠十郎はあざみを労う。
「問題無い、大丈夫。忍者あざみ、悪の魔の手から帝劇を守る!」
しかし、あざみはそう返してポーズを決める。
「忍者………フフッ、興味深いわね。詳しい話を聞いてみたいところだけど………」
「そうですね。今日はもう夜も遅いですし、明日にしましょう」
詳しい話を聞きたがるアナスタシアだったが、さくらが夜も遅いので明日にしようと言う。
「あざみは見回りを続ける。何かあったら連絡を………にんっ!」
そう言うとあざみは、再度一瞬にして誠十郎達の前から姿を消した。
「消えた………本当に忍者みたいだ。凄い
『にんっ! なんて言うところまでフーマと一緒だな』
(誰だよ、フーマって?)
誠十郎とゼロがそんな事を言っている間に、さくらとアナスタシアはその場から離れる。
「………望月 あざみか。個性的な
『全くだぜ。上手く纏めろよ、誠十郎』
「ははっ、何と言うか………楽しみだな!」
ゼロの言葉に、誠十郎は楽しみだと言う返事を返す。
と其処で、スマァトロンが鳴った。
(ん? さくらからの電文だ)
電文を送って来たのはさくらだった。
文題は『出汁入り志願して来ます』
『アナスタシアさんのところへ行ってきます! 頑張りまーす!』
と言う内容だった。
『
文題を見て、思わず首を傾げるゼロ。
「いや、コレは誤字だろう………
誤字の内容をそう推測する誠十郎。
「頑張るのは良いけど………こんな調子で大丈夫かな?」
『こりゃあ、様子を見に行くしか無いな』
「だな………」
ゼロと誠十郎はそう言い合うと、さくらの様子を見に行くのだった。
帝劇・舞台………
『お! 居たぞ!』
「此処だったか………」
あざみと別れた後、さくらとアナスタシアが訪れていたのは舞台だった。
「お願いします、アナスタシアさん! わたしを………弟子にして下さい!」
「お断りよ」
『いきなり撃沈かよ………』
にべも無く断られたさくらの姿を見て、思わずツッコミを入れるゼロ。
「いきなりやって来て、何を言い出すかと思えば………少々、無礼じゃ無くて?」
「すみません………でも、如何しても演技を教えて欲しかったんです」
少々不機嫌そうな様子を見せるアナスタシアだが、さくらは引き下がらない。
「あの! 如何しても、ダメなんですか!?」
「ええ。駄目なものは駄目。私は“先生”になる積りは無いの」
「2人共、話は聞いたよ………」
と其処で、誠十郎が会話に混ざる。
「アナスタシア。俺からも頼むよ。さくらを弟子にしてやってくれないかな?」
「神山さん………!」
誠十郎が味方してくれた事に、さくらは嬉しそうにする。
「貴方まで、そんな事を言うのね、キャプテン。私を“便利な道具”だとでも思ってるのかしら?」
「いや、それは………!………お前、其れでも“世界的な女優”か?」
と其処で、ゼロが出て来る。
(ゼロ!?)
「………何ですって?」
その言葉に、アナスタシアの目が鋭くなる。
「いや、なに………世界的な女優だってんなら、“自分の舞台には妥協しない”モンじゃ無えのか? 例えば、脇を固める連中が“未熟なままなのを放って置く”とかな」
アナスタシアを挑発するかの様な台詞を投げ掛ける誠十郎(ゼロ)。
(また誠兄さんの雰囲気が………)
「そんな事は言ってないわ。兎に角、弟子入りはお断りよ。幾ら頼まれても、答えは変わらないわ」
益々不機嫌になったアナスタシアは、そう言うと踵を返して舞台を去って行く。
「うう………“取り付く島も無い”とはこの事ですね」
さくらもガッカリとした様子で去って行く。
(ゼロ! 何であんな事を言ったんだ!?)
「心配すんな。アイツはきっと、さくら達の面倒を見てくれるさ」
アナスタシアを挑発する様な事を言ったゼロを責める誠十郎だが、ゼロは心配は要らないと返す。
(本当か?………兎も角、さくらが心配だ。代わってくれ)
「あいよ」
再度誠十郎に主導権が戻ると、見回りがてらにさくらの様子を見に行くのだった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
舞台の修理はイデ隊員のお陰で半日縮めました。
更に、令士だけでなくイデ隊員が作った舞台装置も登場しますのでお楽しみに。
そしてあざみとの正式会合。
前回はゲキゾウくんとして出会いましたからね。
今回はちゃんと誠十郎として出会いました。
次回はさくらの信頼度イベントをお送ります。
ゼロの行動に注目かも?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。