新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター4『憧れのさくら』

チャプター4『憧れのさくら』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・さくらの部屋の前………

 

(さくらの奴………落ち込んでるかな?)

 

アナスタシアへの弟子入りを断られた、さくらの様子を見に来た誠十郎。

 

部屋の前に辿り着くと、ドアをノックする。

 

「………はい」

 

やや元気の無い返事が返って来る。

 

「俺だよ、さくら。入っても良いかい?」

 

「………どうぞ、入って下さい」

 

『声に覇気が無えぞ………』

 

ゼロも、さくらが落ち込んでいる事を感じ取る。

 

「………失礼するよ」

 

其れを聞きながら、誠十郎はさくらの部屋へと入って行った。

 

「…………」

 

部屋に入ると、さくらは壁に貼られているポスターをジッと見つめていた。

 

それは先代の帝国華撃団・花組の公演『愛ゆえに』のポスターだった。

 

主演の『マリア・タチバナ』と『真宮寺 さくら』が映っている。

 

(さくら………かなり落ち込んでるみたいだな………何とか………励ましてあげたいが………でも、何と言えば………)

 

『兎に角声を掛けろ、誠十郎。先ずは会話の糸口を作るんだ』

 

「(分かった)さくら」

 

ゼロにそう言われ、誠十郎は意を決してさくらに話し掛ける。

 

「えへへ、みっともないところ、見られちゃいましたね」

 

誠十郎に声を掛けられて、さくらは漸く彼の方を見遣る。

 

「アナスタシアさんに教えて貰えば………もっと上手になれるって思ったんです。だけど………駄目でした」

 

(やっぱり、其れが原因か………でも………どうして其処まで………アナスタシアの弟子になりたかったんだろう?)

 

『自分より凄い奴に師事したいってのは分かるが………確かに、一寸“熱が入り過ぎてる感じ”がするな』

 

誠十郎が考えていると、ゼロもそう言って来る。

 

「そんなに、アナスタシアの弟子になりたかったのかい?」

 

「…………」

 

誠十郎の問いに沈黙で返すさくら。

 

『如何やら、其れ()()じゃ無いみたいだな』

 

(ああ………)

 

と、ゼロがそう言うのを聞きながら、誠十郎は先程までさくらが見ていたポスターを見遣る。

 

「伝説の花組達、か………さっき、そのポスターを見てたよな?」

 

「昔の花組は、凄い人達がいっぱい居たんです。伝説の公演、伝説のスタァ………」

 

『すみれもその1人だな』

 

すみれが映っているポスターも有るのを見ながら、ゼロがそう言う。

 

「私なんかじゃ………全然敵わない。どれだけ夢を見ても、()()()()()()()

 

(伝説の公演、伝説のスタァ達………そう言えば、どれも『真宮寺 さくら』さんが映っているな)

 

と、誠十郎は張られているポスターに、()()『真宮寺 さくら』の姿が有る事に気付く。

 

「そう言えば、さくらは………以前に、『真宮寺 さくら』さんに助けられたって言ってたよな?」

 

「………はい。私の、憧れです。強くて、綺麗で、優しくて………私も、『真宮寺 さくら』さんみたいになりたかった」

 

『成程………察するに、其れが原因か。一体どんな奴なんだ? その『真宮寺 さくら』ってのは?』

 

「(そう言えば、俺も良く知らないな………)なあ、俺は知らないから聞きたいんだけど………真宮寺さんって、強かったのか?」

 

ゼロの言葉で、自分も『真宮寺 さくら』について詳しく知らない事を思い出し、さくらに尋ねる誠十郎。

 

「勿論です! 私を助けてくれた時だって、降魔を一刀両断です! 其れに、“強いだけじゃ無い”んです。花組のトップスタァで………素晴らしい人なんです!!」

 

先程まで落ち込んでいた様が嘘では無いか?と思う程に、熱く語るさくら。

 

『相当入れ込んでるみてぇだな………』

 

「『真宮寺 さくら』さんみたいになりたい………花組に(はい)れてその夢が叶う、って思ってたのに………」

 

(成程………真宮寺さんを目指して自分を高める為に………アナスタシアに弟子入りしたかったのか)

 

合点が行く誠十郎。

 

「その夢を諦めるのかい? さくらには、強い想いが有るんだろう?」

 

「私は………」

 

「俺は、そんな思いに気付かされたんだ。()()()“諦めてはいけない”って」

 

“さくらの前向きな姿”が有ったからこそ、誠十郎はゼロの叱咤を受け止め、再び前向きになる事が出来た。

 

其れは事実である。

 

「そのさくらが………“大切な夢を諦めてしまう”のかい?」

 

「私は………諦めたくないです。でも………神山さん!」

 

『誠十郎。さくらは今、“自分を見失ってる状態”だ』

 

(ああ、確かに………今のさくらは、()()()()()()()()んだ)

 

ゼロと共に、誠十郎はそう推察する。

 

(さくらには、“彼女だけの良い所”が沢山有る。其れを伝える事が出来れば、きっと………)

 

其処で誠十郎は、さくらを観察する。

 

そして、先ず目に付いたのはその髪だった。

 

「さくらの髪、さらさらとしていて、とても綺麗だな」

 

「えっ? あ、ありがとうございます………」

 

突然の誠十郎の誉め言葉に、さくらは気恥ずかしそうにする。

 

「髪を上げれば、真宮寺さんみたいな髪型も出来るんじゃないか?」

 

先ず“形から入ってみる”のは如何かと言う誠十郎だったが………

 

「いえ………私には、未だ、そんな自信がありません。何時か、追い付いたって思えたら試してみようと思います」

 

さくらはそう言って断る。

 

「そうか………そのリボンは?」

 

と其処で、今度は彼女がしているリボンに目が行く。

 

「あ、このリボンですか? 真宮寺さんみたいに………大きなリボンを付けてみたかったんです」

 

『良いじゃねえか。似合ってるぜ』

 

「(そうだな)とても似合ってるよ。黒髪にピッタリの色だね」

 

ゼロに同意して、さくらにそう言う誠十郎。

 

「えへへっ、ありがとうございます!」

 

子供の様に無邪気に笑って喜ぶさくら。

 

『良い笑顔じゃねえか。前向きなさくららしいぜ』

 

(ああ………! そうだ! ()()()()()! 其れがさくらの1番良い所じゃないか!)

 

と其処で、誠十郎がさくらの1番良い所………

 

“諦めない心”の事に思い至る。

 

「聞けば聞く程、真宮寺さんへの強い思いが伝わってくるよ。其れだけ強い思いを持っていれば、必ず夢を叶えられる。“真宮寺さんみたいになりたい”、その夢を真っ直ぐに追い掛けて行けば良い」

 

「神山さん………優しいですね」

 

さくらの表情が明るくなり始める。

 

「不思議です。さっきまで不安で一杯だったのに………神山さんに勇気付けられて………心が(あった)かくなって………私、やっぱり………」

 

と其処で、さくらが誠十郎に密着しそうなくらいに近付いて来た。

 

(さ、さくら………? こ、こんな近くに………!?)

 

『オイ、落ち着け、誠十郎』

 

動揺する誠十郎を、ゼロが落ち着かせようとする。

 

「神山さん………」

 

(げ、元気になってくれたみたいなだな………良かったけど………えっと、如何しよう………)

 

『何やってんだ、誠十郎。迷う事は無え。“お前の素直な気持ち”を伝えんだ!』

 

(よ、良し………)

 

ゼロにアドバイスされ、誠十郎は肚を括る。

 

先ず誠十郎は、さくらの瞳を見据える。

 

(青みが掛かった瞳………そう言えば、珍しい瞳の色だよな。でも、とても綺麗だ。透き通っていて、吸い込まれそうな………)

 

「余り………見詰めないで下さい。その………ドキドキして………」

 

瞳をジッと見詰められたさくらは、恥ずかしそうに一瞬視線を逸らす。

 

「さくら………君の瞳は、輝いている。何が有ったって、その輝きが失われる事は無い………其れが“さくらの強さ”だよ」

 

「神山さん………」

 

うっとりとした表情で誠十郎を見遣るさくら。

 

「(さらさらな髪………)さくら………その、髪を撫でても良いかい?」

 

と、続いてさくらの綺麗な黒髪が目に留まった誠十郎はそんな衝動に襲われて尋ねる。

 

「! だ、駄目です………子供じゃ、ないんですから………」

 

断るさくらだったが、嫌がっている様子は見えない。

 

(駄目だ………抑え切れない)

 

そんな様子を見た誠十郎は、さくらの髪を撫で始めた。

 

「せ、誠兄さん………もう………強引なんだから………」

 

言葉こそ怒っている様に聞こえるが、終始笑顔なさくらだった。

 

『誠十郎! ココが男の見せ所だぞ!』

 

(よ、よし!)

 

ゼロに言われ、誠十郎はさくらの顔の前まで上げていた手を握る。

 

「さくら………俺は君を信じている。“どんな事が有っても、負けたりしない”って」

 

「ふふっ、ありがとうございます。神山さんは………本当に優しいです………」

 

「さくら………」

 

誠十郎のさくらの手を握っている力が強くなる。

 

「ふふっ、手を握ってもらうと、ドキドキしますね。まるで………恋人同士みたいです」

 

『良し、行け! ビシッと決めろ!』

 

「(ゼロ、盛り上がり過ぎだ)恋人同士さ………いや、恋人になっちゃおうか、さくら?」

 

自分よりも盛り上がり始めたゼロの所為で、逆に冷静になりながらも、誠十郎は心のままにさくらにそう言う。

 

「あ………か、神山さん………も、もう、冗談ばっかり! そんなの、ま、()()()()です!!」

 

(『未だ』、か………こりゃ、完全に“脈有り”だな)

 

思わず零したさくらの言葉に、ゼロはそう確信する。

 

「はあ………びっくりした………顔が熱くなっちゃたよ」

 

(良い()をしているな………これならもう大丈夫だろう)

 

と其処で、さくらの瞳に輝きが戻って来ている事に気付いた誠十郎は、もう大丈夫だ、と確信する。

 

(俺は隊長として………これからもずっと、さくらのこの瞳を守り続けて見せる!)

 

そう決意を固める誠十郎。

 

(あれ………何か聞き覚えの有る言葉だな………何だっけ………?まあ、良いか)

 

と其処で、何か“引っ掛かりの様なモノ”を感じたが、思い出せないので後回しにする。

 

「さくら………君は、もう大丈夫な筈だ」

 

「ハイ………何だか元気が湧いてきました! 神山さんに勇気付けられて………私、未だ未だ頑張れます!」

 

「ああ………応援している。君は、もっともっと素敵になれる。そう………真宮寺さんの様に!」

 

断言する様な力強い声音で誠十郎は言う。

 

「ハイ! ありがとうございます! えへへ、神山さんが来てくれて良かった。昔みたいに………“優しい誠兄さんのまま”でいてくれて、本当に良かった………」

 

屈託無く笑って、本当に嬉しそうにそう言うさくら。

 

「私、嬉しいです。神山さんとなら、何処までだって頑張れます! だから………見ていてくださいね。アナスタシアさんには断られちゃったけど………でも、絶対にへこたれません!」

 

何時もの前向きな気持ちが漲っている。

 

「神山さん。元気をくれて、ありがとうございました!」

 

「どう致しまして………」

 

さくらのキラキラとした瞳が眩しく、思わず目を逸らす誠十郎。

 

するとその視線の先に、“さくらが使っていると思われる刀”が飛び込んで来た。

 

『ん? 誠十郎、その刀はさくらのか?』

 

「(え? 多分そうだと思うが………)ところで、さくら。其れはさくらの刀かい?」

 

と、ゼロが急にその刀の事を気にし出した様な様子を見せたので、誠十郎はさくらに尋ねる。

 

「あ、ハイ。お母さんの形見………『天宮國定』です」

 

「形見?………そうか………そう言えばお母さん、亡くなったんだったな」

 

形見と言われて、誠十郎はさくらの母親が他界していた事を思い出す。

 

「ええ………もう10年になります」

 

少し遠い目をしてそう言うさくら。

 

『…………』

 

(ゼロ。さくらの刀が如何かしたのか?)

 

『………いや、何でも無え。多分、気の所為だ』

 

「(? そうか?)じゃあ、俺はそろそろ行くよ」

 

「あ、ハイ。ホントにありがとうございました。神山さん」

 

珍しく歯切れが悪いゼロの様子に、内心で首を傾げながらも、そろそろ夜も更けて来たので、何時までも女性の部屋に居るのはマズイと思い、誠十郎はさくらの部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・廊下………

 

さくらの部屋から出て、少しするとスマァトロンが鳴る。

 

(ん? さくらからだ………)

 

さくらからの電文である事を見ると、確認する誠十郎。

 

『ありがとうございました! 今日は本当にありがとうございました! 神山さんは、やっぱりわたしの………1番の隊長さんです! 股明日からいっしょに頑張りましょう!』

 

相変わらず、所々誤字しているがお礼の電文だった。

 

『相変わらず個性的だなぁ』

 

(ははっ、さくらにしては字の間違いが少ないな。1番の隊長さん、か………)

 

『その期待、裏切るんじゃないぜ、誠十郎』

 

(ああ。何時までもそうでいられるよう、俺も頑張るさ!)

 

先程のさくらの笑顔を思い出し、やる気に溢れる誠十郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、夜の見回りに入り………

 

中庭で初穂とあざみが談笑していた中に入り、初穂が去るとあざみに忍者の仕事について尋ねたり………

 

頑張っている花組の為に、自分も一肌脱いで知り合いの記者に記事を書いてくれる様に頼むと言ったいつきにお願いをしたり………

 

資料室で本の整理をしていたクラリスに、お勧めの本を紹介して貰ったり………

 

売店を常に清潔に保っているこまちを褒め千切り………

 

音楽室でピアノの調律をするアナスタシアの姿を見て、“世界的な女優を迎え入れた”のだ、という事に改めて気を引き締めたり………

 

風呂に入って行った初穂を見て、身体が勝手に動きそうになったり(ゼロが全力で阻止した)して………

 

やがて疲労を感じると、部屋に戻って就寝したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

さくらの信頼度イベントとなります。
粗原作通りとなっていますが、さくらはこの作品のメインヒロインなので外すワケにはいかないと思いまして。
ゼロのアドバイスや野次を入れましたので、その辺を楽しんでもらえれば。

あと、他のヒロインの信頼度イベントに関しましては1文で済ませる感じになるかと思いますので、予めご了承ください。

それと、キーアイテムである『天宮國定』にもチラッと触れておきまして。
後々深く関わってきますので、何処かで登場させないといけなかったので。

次回からいよいよ本格的にクラリス回となりますので、お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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