チャプター6『プレジデントG』
白秋の出迎えを済ませた誠十郎(+ゼロ)は………
ロビーにて、いつきと出会って話している最中にアナスタシアが通り掛かってお願いを聞いて貰って舞い上がったり………
こまちが間違えて風鈴を1000個も発注してしまったのを、帝劇メンバーのサインを入れる事で捌こうと機転を利かせた後………
令士の使いを済ませるべく、帝都の街へと繰り出した。
帝都・停留所………
『お! 誠十郎、アレが本屋じゃねえか?』
「ああ、そうだな」
書店・押問堂を発見したゼロと誠十郎は入店し、令士に頼まれた『月刊・新蒸気』を探す。
「令士に頼まれた本は、『月刊・新蒸気』の新刊だったな。見た事も聞いた事も無い雑誌だが、表紙を見れば分かるだろう。よし、探してみるか」
そう言って本の並ぶ棚を見回す誠十郎。
しかし、探し始めてから15分が経過すると………
『見付から無えな………』
「………何処にも無いぞ? 本当にこの本屋に有るのかな?」
探せども一向に目当ての本が見つからず、途方に暮れ始めるゼロと誠十郎。
「はろはろ~、其処の御兄さん、何かお困りですかー?」
すると其処へ、
「俺の事ですか? 『月刊・新蒸気』と言う本を探しているんですが、見当たらなくて………」
急に声を掛けられ、誠十郎は少し戸惑いながらもそう返す。
「ふむふむ、『月刊・新蒸気』の最新刊ですかぁ。何処かで見た様な………お手伝いしますー」
すると女性は、間延びした声でそう言って来た。
「お店の方………ではないですよね? 良いんですか? 流石に御迷惑じゃ………」
「いえいえ、
『何だかほんわかした姉ちゃんだなぁ』
物腰柔らかい女性の様に、ゼロは率直にそんな感想を抱く。
すると………
「お兄さんお兄さん、『月刊・新蒸気』はコレじゃありませんか?」
棚を見に行った女性が、そう声を掛けて来た。
誠十郎が確認すると、其処には確かに『月刊・新蒸気』と表紙に書かれた本が在った。
「其れだ! ありがとうございます!」
誠十郎は直ぐにその本を手に取ると、会計を済ませる。
「………助かりました。お礼に、俺も其方の探し物を手伝いますよ」
「あらあら、ありがとうございます。でも、もう見付けちゃいました」
お礼にと女性に探し物を手伝おうとした誠十郎だったが、女性は既に見付けたと返す。
「『月刊・和菓子道』。和菓子で心身を磨く、和菓子道の専門誌なんです」
そう言う女性の隣の棚には、『月刊・和菓子道』と表紙に書かれた本が置かれていた。
『へえ~、地球人は菓子で心身を磨くのか』
「(いや、初めて聞いたぞ)凄い本ですね………和菓子に興味があるんですか?」
勘違いをするゼロにそうツッコミを入れつつ、誠十郎は女性にそう尋ねる。
「もちのろんろんですー。
女性………『本郷 ひろみ』は、誠十郎にそう返す。
「成程、本職の和菓子屋さんでしたか。俺は神山 誠十郎、大帝国劇場の者です」
ひろみが会計を済ませると、誠十郎は改めて自己紹介をしながら共に店外に出る。
「あらあら、初穂ちゃんとあざみちゃんとこの方? うちの
『そういや、あざみの奴が“みかづきの御饅頭”とか言ってたな』
ひろみの言葉に、ゼロは誠十郎の部屋であざみと出会した際の事を思い出す。
「御2人共可愛らしいし、食べっぷりも良いから、ついついおまけしちゃうんですよねー」
「ははっ、何時も2人が世話になってます。俺も今度、寄らせてもらいますよ」
「はいはいー、是非いらして下さい。“和菓子は日本人の心”です、じゃぱーん!」
其処でひろみは、両手を挙げるポーズを執り、本屋の隣の和菓子屋『みかづき』へと戻って行った。
「ひろみさん………親切な人だったな。お陰で助かった」
『この隣が店なんだろう? 折角だから顔出して行こうぜ』
「そうだな。令士の本も急ぎじゃないし、良いだろう」
ゼロとそう言い合うと、誠十郎は押問堂の隣に在るみかづきへと向かった。
(あっ! ひろみさんと………あざみ? 成程………お得意様って、さっき言っていたな)
みかづきの前へと来ると、其処にはひろみと見知った顔であるあざみの姿が在った。
「やあ、あざみ!」
「た、隊長!?」
誠十郎が声を掛けると、あざみは動揺した様な様子を見せる。
「あらあら~、神山さんじゃないですか~。早速いらして頂けるなんて………嬉しくて、じゃぱーん!」
一方のひろみは、喜びを露わにする。
「ははっ。お邪魔します、ひろみさん。あざみは………買い物かい? あんまり食べ過ぎたりしてないだろうな?」
「あ、あざみは………」
誠十郎がジト目で見遣ると、狼狽するあざみ。
「あらあら、あざみちゃんなら、もうたっくさん………」
「ひ、ひろみさん、駄目! その………大丈夫、だから………」
ひろみの言葉を慌てて遮るあざみ。
「その慌てよう………成程、買い過ぎて食い過ぎた、と」
「あ、あう………」
しかし、即座に誠十郎に看破され、あざみは恥ずかしそうに黙り込んでしまう。
「あっ、でも何時もよりは、少ないですよ~。今日は、食べるよりお喋りに夢中でしたから」
其処でひろみから、そうフォローらしき言葉が入る。
「ははっ、和菓子より夢中になるなんて、一体、どんな話をしていたんだい?」
「そ、其れは………秘密」
「おいおい、隊長にまで秘密は無いんじゃないか?」
「………さ、里の掟・81条! 乙女の秘密、探るべからず!!」
秘密を探りに掛かって来る誠十郎に、あざみは例の里の掟を持ち出す。
「成程、そうきたか。なら………」
『オイ、誠十郎。“女の子が
と其処で、ゼロがそう釘を刺す。
「(分かってる。冗談だよ)仕方無い。残念だけど、諦めるか」
そう言われて誠十郎は引き下がる。
「意外に、潔い隊長………ちょっとびっくり」
その様子に驚くあざみ。
「おいおい、俺を何だと思ってたんだよ?」
「………秘密」
心外だと言う誠十郎に、あざみはまたそう言う。
「其れはそうと、里の掟って何だい? 何度か聞いてる気がするけど………」
其処で誠十郎は、あざみが良く口にする『里の掟』について尋ねる。
「そ、其れは………秘密!」
しかし、あざみは其れも秘密だ、と言う。
「ははっ、其れも秘密なのか。あざみは秘密が多いな」
「に、忍者だから仕方が無い。其れじゃあ………」
「おっと、待ちな」
(!? ゼロ!?)
と、其処で突然ゼロが表に出た。
「ひろみさん、饅頭1つ」
「あ、は~い」
そして、ひろみに饅頭を1つ注文し、誠十郎の金で支払う。
「ほらよ」
受け取った饅頭を、あざみに差し出す。
「えっ?」
「迷惑掛けたからな。詫びだ。遠慮すんな、奢りだ」
戸惑うあざみに、誠十郎(ゼロ)はそう言う。
「い、良いの………?」
「
そう言って、空いている手であざみの頭をガシガシと撫でる誠十郎(ゼロ)。
「うう………ありがとう……御免!」
あざみは饅頭を受け取ると、逃げる様にその場から消え去った。
(オイ、ゼロ! お前、人の金で………)
『ケチケチすんなよ、饅頭1個ぐらいでよぉ』
勝手に饅頭を買われた事に抗議する誠十郎だったが、ゼロはサラリと流す。
(ったく………)
「ふふっ、神山さん。あんまり、あざみちゃんを苛めたら、メッですよ~」
と其処で、ひろみがやんわりとそう注意して来る。
「ははっ、すみません。そんな積りじゃ無いんですけどね」
ゼロから代わった誠十郎はそう返す。
「ふふっ、其れなら良いですけど~。
「はい、ではまた………」
誠十郎はそう言って、みかづきを後にした。
その後、帝都中央駅にも立ち寄り、売店の新聞で以前にいつきが言っていた帝劇の記事を確認した後、帝劇へと戻った。
帝劇・ロビー………
「ん?」
誠十郎が玄関ロビーへと入ると、其処には高級そうな白いスーツを着た、眼鏡を掛けて嫌な眼付きの白髪のオールバックの男と………
黒いスーツに黒い帽子を被り、サングラスを掛けた全身黒尽くめの男の姿が在った。
他にも、黒スーツにサングラスという出で立ちの人間が、まるで護衛の様に彼方此方に立っている。
「暫く来ない内に、また此処は見窄らしくなった、と思っていたが………まさか陸海軍の支援が入っているとはな」
「新たな人員も確認されています。一体何処から引っ張って来たのか………」
「次は、あのアナスタシア・パルマを使って公演を行う積りか………だが、所詮は二流………いや、三流劇団」
『何だと………』
あからさまに帝国華撃団を馬鹿にしている白スーツの男に、ゼロが怒りを覚える。
「ビッグスタァを呼んだところで、何ともなるものか。まあ、
白スーツの男が笑うと、黒尽くめの男も含み笑いを零す。
(コイツ………!)
その様に、誠十郎も怒りを堪え切れなくなりそうになる。
「神山さん、神山さん………」
「!」
と其処で、売店の前に居たこまちに小声で呼ばれ、誠十郎は何とか怒りを抑えて向かう。
「こまちさん………誰ですか、アレは?」
「『プレジデントG』。『WLOF』のお偉いさんや」
「『ウルフ』?」
「『世界華撃団連盟』の事や。わーるど何ちゃらかんちゃら。略してWLOFやな。そのトップに立つんがあの男や。何やいけ好かん奴やで」
『確かにな』
こまちの言葉に同意し、『世界華撃団連盟』、通称『WLOF』のトップ・白スーツの男………『プレジデントG』に視線を向けるゼロ。
「ええ? そんな人が何の用なんだ?」
誠十郎がそう思っていると、プレジデントGは右腕である『ミスターI』と共に支配人室へと向かおうとする。
『………ウルトラ念力!』
其処でゼロが、極小威力のウルトラ念力をプレジデントGに向かって放つ。
「!? のうわっ!?」
すると突然!
プレジデントGの
「!? プ、プレジデントG!?」
突然スッ転んだプレジデントGの姿に慌てるミスターI。
「ぐううう………」
プレジデントGが顔を上げると、眼鏡は罅割れ、鼻血が滴り、真っ赤になった顔が露わになる。
「やだぁ、何アレ」
「プププ」
「カッコ悪~い」
その、まるで
子供等、ストレートにプレジデントGを
「~~~~ッ!! 行くぞっ!!」
「ハ、ハッ!!」
羞恥で更に顔を真っ赤にしながら、プレジデントGは逃げる様に支配人室へと向かった。
「アハハハハハハッ! 傑作やったなぁ、今のっ!!」
プレジデントGの姿が見え無くなると、こまちは遠慮無しに爆笑する。
(オイ、ゼロ。お前だろ?)
『何の事だ? 全然分からねえな』
ゼロの仕業だと見抜く誠十郎だが、ゼロは露骨に惚ける。
(ったく、相手は
『だろ?』
そんな事を言い合いながら、誠十郎とゼロは売店を後にする。
そして令士に頼まれていた『月刊・新蒸気』を渡すと、脚本の進み具合を確かめにクラリスの元へと向かったのだった。
帝劇・クラリスの部屋………
「ああー、どうしても皆全滅しちゃう。普通、助けになんて来てくれないよね?」
書きかけの原稿を前に、頭を捻っているクラリス。
如何やら、行き詰っている様だ。
(でも、例えば………ウルトラマンゼロさんなら………)
と、ふとゼロの事が頭を過った瞬間、部屋のドアがノックされた。
「神山だけど………」
誠十郎が来訪して来たのである。
「あ、はい! どうぞ」
「失礼するよ」
クラリスに許可され、彼女の部屋に入る誠十郎。
「如何だい、脚本は進んでるかな?」
「えっと、はい………
誠十郎が尋ねると、クラリスはやや口籠りながら答える。
「良かったら、読んでも良いかい?」
「は、はい」
そう言われて、クラリスは書きかけの原稿を手渡した。
「おお………」
食い入る様に、その原稿の内容を熟読する誠十郎。
「…………」
一方、目の前で自分の脚本の原稿を読まれているクラリスは、気恥ずかし気にモジモジしながら沈黙している。
「ど、如何ですか?」
やがて、意を決した様にそう尋ねるクラリス。
『スッゲェ、面白ぇじゃねえか! こんな面白い話初めて読んだぜ!』
「(ああ、その通りだ!)とても面白い。凄いじゃないか、クラリス」
燥ぐゼロに同意し、誠十郎はクラリスにそう伝える。
「ホント………ですか? 良かった………」
其れを聞いたクラリスは、嬉しそうな顔で誠十郎に近付き、安堵の息を吐く。
「でも、良い所で終わっていて、早く続きが読みたいな」
『全くだぜ! これじゃ生殺しだっての!』
ゼロも早く続きが読みたいのか、逸る気持ちを抑えられない。
「えっと。はい、頑張ります」
其れに対し、クラリスは一瞬表情を曇らせながらもそう返すのだった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
本郷 ひろみとプレジデントGが登場。
彼女の月組だったって明かされた時は結構驚きましたね。
全然イメージ出来ないキャラだったので。
そしてプレジデントG。
キャラ発表の時点でいけ好かない感じがしてましたが、まさかラスボスだったとは………
しかし、この作品では今回の様に登場する度に碌な目に合わず、ドンドンと転落していく事になります。
理由は華撃団大戦が始まったら語ろうかと。
個人的な好き嫌いも入ってますが、どうかご了承ください。
それはさておき(笑)………
次回はいよいよ原作での目玉、クラリスとのデートが開始となります。
名前は出ませんが、超スペシャルビッグゲストも登場しますので、楽しみにしていて下さい。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。