チャプター8『重魔導の力』
宇宙ロボット キングジョー
策略宇宙人 ペダン星人登場
屋上遊園地を後にした誠十郎(+ゼロ)とクラリスは、小洒落た店でランチを済ませると、帝都の散策を続けていた。
銀座横丁………
「この後は、如何しますか?」
「そうだなぁ………」
通りを歩きながらそう言い合っていると………
「そこの御2人さん………ちょっと寄ってお行きよ」
「「??」」
何者かに呼ばれて、辺りをキョロキョロと見回す誠十郎とクラリス。
『誠十郎、左だ』
「………!」
とゼロに言われて、誠十郎が左を向くと………
袋小路の奥にひっそりと存在している小さなテントが目に入った。
「………何だ?」
誠十郎は怪訝な顔をするが、クラリスと視線を交わすと、意を決した様にそのテントへ向かって行った。
「………占い師?」
テントに近付いた誠十郎は、其れが占い師のテントである事に気付く。
「そうさ………良かったら、占って行かないかい?」
「占い………面白そうですね! 寄って行っても良いですか、隊長さん?」
姿の見えない占い師がそ問い掛けると、やはり女の子か、興味津々な様子のクラリスがそう言う。
『物は試しだ。やってみろよ、誠十郎』
「確かに面白そうだな。良いよ、占って貰おうか」
ゼロにも促され、誠十郎は占いを受ける事にする。
「はい。何だか、ドキドキしますね!」
「………じゃあ、始めるよ。ロケス・ピラトス・ゾトアス・トリタス・クリサタニトス」
クラリスがそう言っていると、占い師は呪文の様な物を唱え始める。
「………何だ?」
「欧州に古くから伝わる呪文です! 本格的で、ワクワクしますね!」
首を傾げる誠十郎に対し、クラリスはやや興奮した様子でそう言う。
「………フフ、分かったよ。真実は見えた。可愛らしいお嬢さん、あんた、この男の事を愛しているね?」
「えっ………えええええっ!? あ、愛してるって………」
占い師から告げられた、或る意味トンでもない内容に、クラリスは仰天する。
「そ、そんな事………
恥ずかしさからか、そう断言してしまうクラリス。
「ク、クラリス………」
『恥ずかしがってるだけだ。本気にすんな』
「(そ、そうだよな。けど………)そんなに
ゼロからフォローされるも、ショックを隠し切れず、そう零してしまう誠十郎。
「あ、すみません! ちょっとビックリしちゃって………えっと………愛して、とかは無いですが………“嫌い”ってワケじゃ無いですよ」
「ははっ………ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」
クラリスも言い過ぎたと思ったのかそう言い、誠十郎は何とか立ち直る。
「じゃ、クラリス。デートの続き、しようか?」
「そうですね。行きましょう!」
2人は占い屋を後にしようとする。
「フフ………仲が良いねぇ。だけど、行く前にもう1つ聞いてお行き」
しかし其処で、占い師がそう言って2人を呼び止めた。
「どんなモノでも、何時かは壊れるものさ。何故なら、影は何時だって隣に居るものさ。だから、上手く行っていると思っても、必ず後悔する時が訪れる」
『何だ? 急にネガティブな事言い出しやがって?』
先程までとは打って変わって不安を煽る様な事を言って来た占い師に、ゼロは不信感を抱く。
「其れを避けたいと思うなら、助言を1つ………『逃げる』のはね、何も“悪い事じゃない”のさ」
「…………」
「………そうですね。貴重な助言をありがとうございます、占い師さん」
黙り込む誠十郎に対し、クラリスは占い師に向かって頭を下げて礼を言う。
そして、2人は今度こそ占い屋を後にしたのだった。
カフェ ジル・ド・レ………
占い屋を後にした2人は、カフェにて休憩がてらの一服をしていた。
「ふふ、美味しいですね! 流石今1番人気のお店です」
ジル・ド・レの洋菓子に舌鼓を打つクラリス。
「このお店の事を知ってるなんて………ちょっと意外でした」
「いや、雰囲気が良かったから入ってみただけさ。有名な店だったんだな」
『気取りやがって。本当は、ひろみの奴に教えて貰ったんだろ?』
(五月蠅いな。ちょっとは格好付けさせてくれよ)
ゼロのツッコミに、誠十郎は心の中でそう返す。
「はい。雑誌の特集でも、『銀座デートの定番』として必ず載ってますよ」
「そうなのか。じゃあ、デートは成功かな?」
「ふふ、そうですね。本当に楽しいです」
そう言って笑顔を見せるクラリス。
「でも、其れは………“人気のお店”だからじゃ無くて………きっと………」
「え? 何か言ったかい?」
「な、何でも無いですっ!」
後半が小声になってしまっていたので問い返す誠十郎だったが、クラリスは即座にそう返すのだった。
「うう~………ちょっと近付き過ぎでしょ!」
その様子を、店の外から眺めていたさくらが、唸り声を挙げながらそう言う。
「おいおいさくら………ちょっと熱くなり過ぎだろ?」
そんなさくらを落ち着かせる様に、そう声を掛ける初穂だったが………
「そんな事無い! ああもう………何かモヤモヤする!」
さくらは、そう怒鳴る様に返した。
如何やらクラリスに嫉妬している様だが、その理由が“自分でも分かっていない”様である。
「やれやれ………」
(アイツ等、何やってんだ?)
その様子に呆れる初穂と、とっくに2人の存在に気付いていたゼロだった。
一方、その頃………
銀座の一角にて………
「ハァン、此処が銀座か~。美味そうな人間共がご~ろごろ居やがるぜ」
街行く人々を見ながら、そんな物騒な台詞を吐く不審な仮面の男………
「………っと、いけねえいけねえ。先ずは、如何
そう言うと、不審な男は服の内側から『何か』を取り出した。
其れは“黒と白のカラーリングの人型”だが、異様な姿の人形だった。
「
男はそう言って人形をしまうと、雑踏の中へと消えて行ったのだった。
再び、誠十郎(+ゼロ)とクラリスの方は………
カフェを後にし、ミカサ記念公園へと足を進めていた。
帝都・ミカサ記念公園………
「ちょっと疲れましたね」
「じゃあ、少し休もうか?」
クラリスがそう言うと、誠十郎は揃って備え付けられていたベンチに腰掛けた。
「「…………」」
さくらと初穂は、相変わらず花壇の陰からその様子を盗み見ている。
「デートって楽しいんですね………こんなに楽しんで良いんでしょうか?」
「如何言う意味だい?」
「………あの、えっと、其れは………」
『相変わらず鈍い奴だぜ』
クラリスの言葉の意味が分からず問い返す誠十郎に、呆れた様子を見せるゼロ。
「如何、見える?」
「う~ん、よく見えねえなぁ」
様子が上手く窺えず、もどかしい思いをしているさくらと初穂。
「もうちょっと前に出た方が………!」
「あ、おい! 押すなって!」
何時しか2人は、誠十郎とクラリスの至近距離にまで接近していた。
「あ、あの、隊長!」
と其処で、クラリスがベンチから立ち上がる。
「私、若しかしたら………あっ!」
そして誠十郎に何かを言おうとしたが、勢い余ったのか躓いてしまう。
「危ないっ!」
転びそうになったクラリスを、誠十郎が抱き留める。
「「あっ!!」」
その光景を見たさくらと初穂は、思わず声を挙げながら立ち上がってしまう。
「何だ!?」
当然、その声を聴いた誠十郎が振り返り、2人の姿を認める。
「初穂さん、さくらさん………?」
(あ~あ、とうとうバレたか………)
クラリスも2人の姿を確認し、ゼロも呆れた様子を見せる。
「2人共、何をしてるんだ?」
「え!? い、いや、何でも
「そ、その通りです! し、失礼しました!」
誠十郎がジト目で睨み付けると、初穂とさくらは逃げる様にミカサ記念公園を後にして行った。
「何だ、ありゃ?」
「2人共、心配だったんですよ」
「何が?」
「さぁ? 何でしょうね?」
誠十郎の問いに、微笑みながらそう誤魔化すクラリス。
と、その時!!
「な、何だアレはっ!?」
公園に居た市民の1人が、海の方の空を指差しながらそう叫んだ。
「「!?」」
其れに反応して、誠十郎とクラリスがその方向を見遣ると、其処には………
ミカサ記念公園に向かって飛んで来る、4つの巨大な飛行物体が在った。
「飛んでるぞっ!?」
「ひょっとして、アレがUFOってヤツかっ!?」
騒ぎながら集まり出す野次馬達。
『!? アレはっ!?』
しかしゼロは、その飛行物体を見て驚愕の声を漏らした!
「ゼロ! 知ってるのか!?」
と、誠十郎がそう尋ねた瞬間!
ミカサ記念公園の真ん前まで迫った4つの飛行物体の内、1つが海面に着水。
その上に、他の3つの飛行物体が、変形しながら積み重なる様に合体!
グワァシ………グワァシ………
奇妙な作動音と電子音を響かせる、身長50メートル以上は在る巨大なロボットとなった!!
「!? ロボットッ!?」
『『宇宙ロボット キングジョー』! 『ペダン星人』の作った侵略兵器だ!!』
「!? 侵略兵器っ!?」
ゼロの説明に、誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間………
キングジョーは、目の様な部分から破壊光線『デスト・レイ』を放った!!
デスト・レイはミカサ記念公園の一角に着弾!
爆発と共に、ミカサ記念公園の一角が吹き飛んだ!!
「うわあああっ!!」
「きゃあああっ!!」
途端に、人々は悲鳴を挙げて逃げ出し始める!
グワァシ………グワァシ………
キングジョーは作動音と電子音を響かせながら、ゆっくりと前進を始め、ミカサ記念公園へ上陸しようとする。
「あ、あああ………」
「クラリス! 逃げるんだっ!!」
恐怖を露わにするクラリスの肩を揺さぶり、変身する為にも一旦退こうと促す誠十郎。
だが………
「うわああーん!! 助けてぇーっ!!」
転んでしまい、逃げ遅れた女の子が泣き声を挙げた。
「! お、女の子がっ!! くうっ!!」
直ぐ様、誠十郎はその女の子の元へと駆け出す!
「隊長っ!!」
「しっかり! もう大丈夫だっ!!」
駆け寄った誠十郎は、女の子を抱き起こす。
「! 危ないっ! 隊長っ!!」
「!!」
其処へクラリスの悲鳴の様な声が響き、誠十郎が視線を上げると………
グワァシ………グワァシ………
今まさに、自分達に向かってデスト・レイを放とうとしているキングジョーの姿が飛び込んで来た!
「くうっ!!」
『間に合わ無えっ!!』
今からでは意識を代えても間に合わないと悟ったゼロは、已むを得ず変身しようとする。
………が、その瞬間!!
「!!」
クラリスが鞄から何かの本を取り出し、広げながら誠十郎達の前に立った!
「!? クラリスッ!!」
『何をする気だっ!?』
クラリスの思わぬ行動に、誠十郎とゼロが固まってしまった瞬間!
無情にもキングジョーからデスト・レイが放たれる!!
「Mane veni!(重魔導、起動!)」
だが、クラリスがそう叫んだ瞬間!!
霊力が解放され、その眼前に巨大な魔法陣が展開!!
キングジョーのデスト・レイを受け止めた!!
「!!」
『何っ!?』
その光景に、誠十郎もゼロも驚きを露わにする。
「ハアアアアアアッ!!」
クラリスが気合の声を挙げると霊力も上がり、次の瞬間!!
魔法陣の中心から、太いレーザーの様な物が放たれた!!
レーザーはデスト・レイを押し返し、遂には掻き消したかと思うと………
そのままキングジョーへと直撃した!!
「うっ!?」
発生した閃光に、思わず目を覆う誠十郎。
やがて閃光が収まり、目を開けると其処には………
ボディを貫通する巨大な穴が開き、スパークを発しているキングジョーの姿が在った。
「なっ!?」
誠十郎が驚きの声を挙げた瞬間………
キングジョーは気を付けの姿勢を執ったかと思うと、そのまま仰向けにバタリと倒れ、爆発四散した!!
爆発の際に舞い上がった海水が、雨の様に降り注ぐ。
『あの頑丈なキングジョーを………』
「クラリス………」
ゼロが驚愕を露わにし、誠十郎は呆然としながらクラリスに声を掛ける。
「あ………」
だが、振り返ったクラリスは悲し気な表情をしていた。
「………御免なさいっ!」
そしてそのまま、逃げる様に駆け出した!!
「! クラ………」
「うわ~んっ!!」
慌てて追おうとした誠十郎だったが、緊張の糸が切れたのか、助けた女の子が再び泣き出し始める。
「あ………大丈夫。もう大丈夫だから」
誠十郎は女の子の頭を優しく撫でて慰める。
その間に、クラリスの姿は見えなくなってしまった………
「クラリス………」
『あの力は一体………?』
虚空に向かって虚しく呼び掛ける誠十郎と、クラリスの見せた力を気に掛けるゼロだった。
◇
一方、その頃………
大気圏外に待機していたペダン星人の円盤では………
「何と言う事だ! 我々のキングジョーがっ!!」
「ウルトラマンになら未だしも、あの様な地球人の女に負けるとは!!」
キングジョーがクラリスに倒された事に、ペダン星人の兵士達………『ペダン兵士』達がいきり立つ。
「騒ぐな」
「「「「「! 司令!!」」」」」
しかし、司令と呼ばれたペダン星人………『ペダン星人・クザ』が一喝する。
「諸君………コレは寧ろ“良い結果”だと思わないか?」
「良い結果………?」
「如何言う事ですか?」
ペダン星人・クザの言っている事の意味が分からず、首を傾げるペダン兵士達。
「コレを見給え………」
そう言うと、ペダン星人・クザは空中に大型モニターを展開させる。
其処には、帝国華撃団の無限、上海華撃団の王龍………
更に『
世界各国の華撃団の、主力霊子戦闘機の“詳細データ”だった。
「コレは?」
「この地球での防衛組織である、華撃団とやらが使っている“霊子戦闘機”と呼ばれる
「一体何処でこの様な物を?」
「WLOFとやらの本部からだよ。
何と、“最重要機密”である筈の情報を、WLOF本部から盗んできたと言うのだ。
「技術
「『霊力』?」
「先程のキングジョーを破壊した女の力もその霊力と言う力らしい………若しコレを、キングジョーに組み込めば如何なると思う?」
「「「「「!!」」」」」
ペダン星人・クザの言葉に、ペダン兵士達はハッとした様子を見せる。
「コレまでに無い、“全く新しいキングジョー”を開発出来る………そうは思わんかね?」
「成程! 流石は司令!」
「直ぐにキングジョー2号機の準備に掛かれ。『チブル星人』から買った『例のシステム』も搭載して構わん。『霊力』を持つ人間を捕らえるのだ!!」
「「「「「ハッ!!」」」」」
ペダン星人・クザの命令に、ペダン兵士達が慌しく駆け回り始めるのだった………
◇
帝劇・玄関ロビー………
「クラリスッ!」
慌しく帝劇内へと入って来る誠十郎。
「おかえり………って、血相変えてどないしたんや? さっきミカサ記念公園の方が騒がしかったけど、何か有ったんか?」
と、その誠十郎の姿を認めたこまちがそう尋ねて来る。
「いえ、別に………こまちさん、クラリスを見ませんでしたか?」
「さっき帰って来たみたいやで。自分の部屋に
「ありがとうございます」
其れを聞くと、誠十郎は直ぐにクラリスの元へと向かった。
「やっぱり何か有ったみたいやな………頼むで、隊長はん」
“何かが有った”事を悟りながらも、誠十郎を信じて見送るこまちだった。
帝劇2階・クラリスの部屋の前………
「クラリス、居るんだろう? ココを開けてくれないか?」
クラリスの部屋の扉をノックしながら、そう言う誠十郎。
「ごめんなさい………ごめんなさい………」
しかし、クラリスは酷く怯えた様子でベッドに腰掛け、頭を抱えている。
誠十郎の声にも気付いていない様だ。
「…………」
『“あの力”を見られた事が、相当ショックだったみてぇだな………』
如何すれば良いのか分からない誠十郎と、先程見た光景を思い出してそう言うゼロ。
「神山くん」
と其処へ、すみれが姿を見せた。
「支配人………」
「浮かない顔をしているわね。何か有ったの?」
「実は………クラリスが………」
誠十郎は、先程有った事をすみれに説明し始めるが、“込み入った話”になると察したすみれは、場所を支配人室へと移した。
帝劇・支配人室………
「………成程。そんな事が有りましたのね………」
「クラリスのお陰で、俺も女の子も助かったんです。其れなのに、何故逃げ出したんでしょうか………?」
『…………』
クラリスが逃げ出した理由が分からない誠十郎だが、ゼロは何と無く察しが付いていた。
「クラリスは、“何か”を隠しているんですか? あの力は………」
「そう、彼女が持つ『闇』………“隠しておきたかったもの”が、
誠十郎の問いに、すみれはクラリスの事を話し始める。
「クラリスさんはね、自分の持つあの力………『重魔導』を恐れているのよ」
「『重魔導』………其れが、あの力の名前なんですか?」
「クラリスさんの家は、欧州の古い家系。代々“魔導書を作ってきた一族”なのですわ。彼女は………その
(キングジョーを破壊する程の
ミカサ記念公園でキングジョーを破壊した時の事を思い出し、ゼロは思う。
「何故、その力を………恐れる必要が有るんですか?」
「………其れは、クラリスさんに直接聞いて頂戴。
『そうだぜ、誠十郎。コイツは
すみれの言葉に、ゼロもそう同意する。
「2人共、クラリスさんの事………よろしく頼んだわね」
「は、はい………分かりました」
誠十郎は敬礼すると、支配人室を後にする。
「! 皆!」
誠十郎が支配人室から出ると、花組の面々が集まっていた。
「神山さん、クラリスに何が………一体、クラリスに何が有ったんですか!?」
皆を代表する様に、さくらがそう尋ねる。
「実は………」
誠十郎は、すみれにした話をさくら達にも説明するのだった。
帝劇2階・サロン………
「さくら………クラリスの様子は如何だった?」
クラリスの元へ向かったさくらが帰って来たのを見て、そう問う誠十郎。
「駄目です。何度呼び掛けても、返事をしてくれません」
「でも、部屋に居る。間違い無い」
と、天井裏から様子を窺いに行っていたあざみも戻って来てそう言う。
「そうか。さくら達が行っても駄目か………」
「仕方無えよ………大変な事が有った後だもんな」
「こんな時に悪いけど、公演は如何するのかしら?」
誠十郎の言葉に初穂が返すと、アナスタシアがそう口を挟む。
「脚本を書く人間がこの調子では、開演までに間に合わない可能性も有るわよ」
「で、でも! クラリスなら、大丈夫………絶対、大丈夫です………」
現実的な問題を指摘するアナスタシアに、クラリスを信じるさくらがそう返す。
「…………」
『誠十郎。ココはお前が何とかするところだぜ。“隊長”なんだろ?』
沈黙した誠十郎に、ゼロが発破を掛ける様に言った。
「(………そうだな。俺が何とかしなきゃ)クラリスの事は俺に任せてくれ! これ以上、クラリスを1人で悩ませたりはしない」
其れを受けて、誠十郎は奮起する。
「隊長として、もう1度………いや、
「フフッ、言うわね、キャプテン」
誠十郎の態度に、アナスタシアが満足気に微笑むのだった。
クラリスの部屋………
「…………」
漸く落ち着いた様子のクラリスだが、やはり表情は暗い………
と其処で、部屋の扉がノックされた。
「………!」
「………クラリス、今日はありがとう。君のお陰で、俺もあの子も助かったよ」
驚くクラリスの耳に、誠十郎の声が響いて来る。
「君の都合の良い時で良いから、今日の事で話がしたいんだ。其れと、脚本の続き。早く読ませてくれると、嬉しい」
「………!」
脚本と言われて、クラリスは机の上に置かれている書きかけの原稿用紙を見遣る。
「とても面白かったしね。楽しみにしているんだ………其れじゃあ、おやすみ」
そう言うと、誠十郎の気配が離れて行く。
「…………楽しみ………楽しみに、してくれてるんだ………」
ぽつりぽつりと、そう呟くクラリス。
「デートの時も………私を楽しませようとして………何時も、私を気に掛けてくれて………」
其処でクラリスの掌に、あの老人から見せて貰った『ウルトラの星』の温かさが蘇る。
「神山さん………」
クラリスはベッドから立ち上がった………
帝劇・誠十郎の部屋の前………
「隊長、待って下さい!」
「! クラリス!」
部屋に入ろうとした誠十郎は、漸く姿を見せたクラリスに呼び止められた。
「聞いて欲しい事が有るんです」
「………分かった」
誠十郎は頷くと、2人で人気の無い中庭へと向かうのだった。
帝劇・中庭………
空は既に暗くなって来ており、瞬き始めた星々が誠十郎(+ゼロ)とクラリスを照らしている。
「あの………神山隊長は、
「君の“力”の事かい?………さっき、支配人から教えて貰ったよ」
「あんな力が有るなんて………私、気持ち悪いですよね?」
自虐の様に自分の両手を見ながらそう言うクラリス。
「気持ち悪くなんて無いよ。寧ろ、“
「あれは“偶然”です………この力は、そんな
否定する誠十郎だったが、クラリスはそう言い返す。
「私の、いいえ、私の一族の力は、“破壊
そう言って、クラリスは“自分の一族の歴史”について語り出す。
曰く、クラリスの一族は、
城を打ち滅ぼす時には業火を起こし、街を護る時には嵐を呼んだ。
彼女の持つ『力』、一族の歴史は、“破壊の記録”だと。
長い歴史の中で、どれだけの破壊と混乱、そして死を齎したか………
「呪われているんですよ! この『力』は、“忌わしい
感情が昂って来たのか、そう叫ぶクラリス。
「私は、こんな力なんて要りません。欲しいのは、“安らぎを与える力”です。
「………もう書いているじゃないか」
『だな』
だが其処で、誠十郎はクラリスにそう言い、ゼロも同意した。
「………え?」
「読ませて貰った脚本は、とても面白かった。さっきも言ったけど、楽しみにしているんだ」
「神山さん………私に………出来るでしょうか? 沢山の人に喜んで貰える物語」
「出来るさ。俺は信じてる」
一片の疑いも無い表情で、誠十郎はそう断言する。
『俺もな』
聞こえはしないが、ゼロもクラリスに向かってそう言う。
「だから、君の物語を書き続けて欲しい。
「………ふう。分かりました………神山隊長を信じてみます」
笑顔でそう言うクラリスだが、表情には未だ何処か影が有る。
(クラリス………)
だが、誠十郎にはこれ以上に言う言葉が無い。
『…………』
其れを見たゼロは、“何か”を思い付いた様子を見せるのだった。
帝劇・誠十郎の部屋………
「クラリス………未だ立ち直り切れて無いみたいだな………だが、これ以上、如何すれば………?」
クラリスを部屋に送り届けた後、自分の部屋へと戻って来た誠十郎はそう苦悩する。
『誠十郎。こっからは“俺の出番”だ』
すると、ゼロがそんな事を言って来た。
「ゼロ? 如何する気だ?」
『こうするのさ』
誠十郎が問うと、左腕が“独りでに”動き、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイが出現する。
「ゼ、ゼロ………?」
『ホイッ!』
戸惑う誠十郎に、ウルトラゼロアイが独りでに装着される。
「!? うおおおっ!?」
そして誠十郎は光に包まれ………
クラリスの部屋………
「…………」
机に向き合い、原稿用紙を見詰めているクラリス。
しかし、筆が全く進まない………
「………ハア~、駄目だぁ………」
アイデアは有るのに、其れを書き記す気が起きない………
作家はメンタル面が影響し易い仕事………
誠十郎の言葉で立ち直ったクラリスだったが、其れでも“僅かな引っ掛かり”が有り、其れが執筆を妨げていた。
「………やっぱり、私は………」
そうしている内に、またネガティブな気持ちが蘇りそうになってしまう。
と、その時………
「!? えっ!?」
その音にクラリスは驚く。
何故なら、ノックされたのは部屋の『扉』では無く………
『窓』だったからだ。
この部屋は2階………
“誰か”が窓をノックする等、不可能な筈である。
「…………」
しかし、恐怖より好奇心が
「!………!!」
そして、一瞬躊躇しながらもカーテンを開き、窓を開け放った。
其処に居たのは………
「よっ!」
浮遊しているウルトラマンゼロ(人間サイズ)だった。
「!? ええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!? ウルトラマンゼロさんっ!?」
クラリスは仰天の声を挙げる。
しかし無理も無い………
“窓を開けたらウルトラマンが居た”等、驚かない方が無理だ、と言う話だ。
「しーっ、静かに。“近所迷惑”だぜ」
人差し指を口の前に立てて、ゼロはそう言う。
「あ、ご、ゴメンなさい………じゃなくて!!」
「細かい事は気にすんなって。クラリス………で良かったよな?」
一瞬落ち着いたかに見えたクラリスだったが、直ぐにまた慌て出すと、ゼロがそう言う。
「あ、は、ハイ………あの、如何して私の事を?」
(一応は)初対面となる為、何故自分の事を知っているのか?と問い質すクラリス。
「いや~、実を言うと………俺“花組のファン”なんだよ」
「!? ええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!?」
ゼロの
「まあ、其奴は措いといて………」
(措いといて良いんでしょうか………?)
そう言いたくなるクラリスだったが、ゼロの独特な雰囲気に呑まれて言い出せない。
「クラリス」
「は、ハイ………」
「俺とデートしようぜ」
「………えっ?」
一瞬、何を言われたのか分からず、固まってしまうクラリス。
「!? え、ええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!?」
やがて事を認識すると、またも仰天の声を挙げる。
「へへ」
そんなクラリスに向かって、ゼロは右手を差し出す。
「あ………」
クラリスは一瞬躊躇しながらも、やがてゼロのその手を取った。
その光景はまるで………
ピーター・パンに誘われるウェンディの様だった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
デートを続ける誠十郎とクラリス。
尚、上海華撃団の店での食事シーンはカットとなっています。
流石にアレだけの事があった後でさも平然と飯を食いに行ける筈無いですから。
上海華撃団の出番は、華撃団大戦での対決が終わるまで、カットが続く事になると思います。
ご了承ください。
そして順調に見えたデートですが、何とキングジョーが出現!
丁度今日のウルトラマンZでストレイジカスタムのキングジョーが出ている筈なので、まさかの登場となりました。
そのキングジョーを重魔導の力で撃破したクラリス。
しかし、彼女はその力を忌み嫌っていた………
誠十郎の励ましだけでは元気を取り戻し切れなかったクラリスを、何とゼロがデートに誘います。
何かを携えている朧に、チブル星人から購入した『何か』を搭載したキングジョー2号機を用意し、霊能力者を狙うペダン星人。
様々な思惑が絡まりあいます。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。