チャプター7『上海華撃団』
上海華撃団
三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー 登場
世界華撃団大戦の試合会場………
帝国華撃団の控え場所………
「何だよ………いきなり
「寄りにもよって………残酷です」
戦闘服姿で待機している花組とすみれ、カオルの中で、初穂とクラリスがそう呟く。
“例の1件”以来疎遠となっているが、上海華撃団は帝国華撃団が立ち直る前に“帝都の防衛”を担ってくれていた華撃団であり、花組の面々も良く知る仲だった。
その上海華撃団と1回戦から戦わなければならなくなった事に、少なからず動揺が有った。
「よう」
「「「「「「!!」」」」」」
其処へ声が響いて来て、花組の面々がその方向を見遣ると………
「久しぶりだな………」
「「…………」」
既に殺気を放っているシャオロンが、俯き加減のユイと見知らぬ戦闘服の男を伴って現れた。
「シャオロン………」
「ユイさん………」
誠十郎がシャオロン、さくらがユイに視線を向ける。
「!………」
ユイは気不味そうに視線を逸らす。
「オメェは誰だ? 見ねぇ顔だな?」
其処で初穂が、見知らぬ戦闘服の男に問い質す。
「ニーハオ、花組の皆さん。ワタシは上海華撃団の隊員『シィエナァン』アルヨ。ドゾよろしく」
戦闘服の男………『シィエナァン』は、まるでインチキ中国人の様な喋り方で笑顔を浮かべて挨拶して来る。
しかし………
その笑顔は、何処か薄気味悪かった………
「「…………」」
クラリスとあざみが、そんなシィエナァンの雰囲気を感じ取り、無意識に警戒態勢を取る。
「『シィエナァン』………『蠍男』ねえ」
一方アナスタシアは、シィエナァンの名が日本語に直すと『蠍男』になる事に、訝し気な様子を見せる。
「漸くだ………漸くテメェ等を叩き潰せる時が来たぜ。しかもこんな大舞台でな」
邪悪な笑みを浮かべてそう言い放つシャオロン。
その姿に、嘗ての爽やかさは微塵も感じられない。
下手をすれば“狂人”と言われても違和感が無い程である。
「………シャオロン。お前は“今のWLOFに”何の疑問も抱かないのか?」
と其処で、誠十郎はシャオロンにそう問い質し始める。
「あのジェネラルAの態度を見ただろう?今やるべき事は、各国の華撃団の再建の筈だ。なのに、壊滅した華撃団をアッサリと切り捨てて華撃団大戦を強行するなんてマトモじゃない」
「そうですよ! こんな試合で、私達が戦う理由なんて無い筈です!!」
さくらもそう声を挙げたが………
「ウルセェッ! “WLOFの意向”なんざ知った事じゃ無えっ!!」
「なっ!?」
「!?」
シャオロンの思わぬ反論に、誠十郎とさくらは絶句する。
「俺は
「…………」
叫ぶ様にそう言い放つシャオロンの後ろで、シィエナァンがまたあの邪悪な笑みを浮かべている。
「! ユイさん! ユイさんは其れで良いんですか!?」
「!!」
さくらが今度はユイに呼び掛けると、ユイはビクリッと身体を震わせる。
「私達は人々を守る華撃団です! 決して“誰かの私利私欲の為”に戦う存在じゃ無かった筈です! 『ジェネラルAのWLOF』の下で戦う事が、誰かを守る事になるんですか!?」
「わ、私は………」
「ユイ! 慣れ合うんじゃ無えっ!!」
「!!」
何かを言おうとしたユイを遮り、シャオロンが叫ぶ。
「ユイさん!」
「………ゴメン………ゴメン、さくら………」
震えながら、絞り出す様にそう呟くユイ。
「ユイさん………」
そんなユイの姿に、さくらは何も言えなくなる。
「……如何やら、お前の目を覚まさせてやるには………もうブン殴るしか無さそうだな」
其処で、誠十郎は覚悟を決めた表情となり、シャオロンを見据えてそう言い放つ。
「ブン殴る? “テメェ等
そんな誠十郎の台詞に、シャオロンは嘲笑で返す。
「ま、精々頑張る事だな…。この“亜細亜の龍・上海華撃団”が、瞬きする間に屠ってやるぜ!!」
シャオロンは、吐き捨てるようにそう言うと踵を返し、ユイとシィエナァンを連れて去って行く。
と一瞬………
シャオロンの身体から、“赤黒いオーラの様な物”が立ち上ったかの様に見えた。
『!? 今のは!?』
(ゼロ! アレは!?)
『………気を付けろ、誠十郎。あのシャオロンって奴………ひょっとすると………』
その様子に、ゼロは“或る懸念”を抱いた。
「皆。色々と有るでしょうけど、其れは一旦置いて頂戴。いよいよ華撃団大戦の初戦。この戦いは、最早帝国華撃団再興
と其処で、すみれが皆にそう呼び掛けた。
「「「「「「!!」」」」」」
其れを受けて、花組の面々は一旦上海華撃団の事を忘れ去る。
「改訂されたルールによると、華撃団大戦は3対3での戦いとなります。途中での選手交代も認められません」
「選抜した3人で最後まで決着を付けろ、という事か………」
『コッチは向こうの土俵に乗ってる身だ。ルールに関しちゃ、言われた事に従うしか無え』
カオルの説明に、誠十郎とゼロがそう言い合う。
「加えて、隊長には“出撃義務”が有りますので………1番選手は神山さん、と言う事になりますね」
「と言う事は、後2人か………」
其処で、誠十郎は花組の面々を見遣る。
「「「「「…………」」」」」
花組の面々は、引き締まった表情で誠十郎を見返していた。
“選ばれても選ばれなくても異議は無い”と言う様に。
「頼むわよ、神山くん」
「ハッ!」
すみれに敬礼して返すと、誠十郎は改めて花組の面々に向き直る。
「今回出撃する隊員は、俺を含めて3名………出撃する隊員は“その力”で、待機する隊員は“その想い”で戦ってくれ!
「当たり
「私達は、
「戦いも、応援も………手は抜かない」
「“想いは1つ”。其れが花組の力よ」
「私達の絆で………奇跡を見せてやりましょう!!」
誠十郎の言葉に、初穂・クラリス・あざみ・アナスタシア・さくらが威勢良く返事を返す。
「では、神山さん。1回戦の出場選手は誰にしますか?」
「1回戦のメンバーは………」
カオルの言葉に、誠十郎は1回戦の出場メンバーを告げるのだった………
◇
世界華撃団大戦の試合会場………
スタジアム………
『世界華撃団大戦、第1回戦は上海華撃団と、ウルティメイト華撃団の新生・帝国華撃団の戦いです!』
既に上海華撃団が待機しているスタジアムに、実況者の声が響き渡る。
『今回の世界華撃団は、異例の事態となっております。先日の【地獄の開会式】で世界中の華撃団が壊滅………WLOFは、“其れ等の華撃団を切り捨てる”と発表。其処へ【真の世界華撃団】構想の組織………【ウルティメイト華撃団】なる存在が名乗りを挙げました』
実況者の声と共に、スタジアムの巨大モニターにウルティメイト華撃団のエンブレムが表示される。
『WLOFから切り捨てられた華撃団を吸収し、瞬く間に巨大組織となったウルティメイト華撃団。その中核を成すのが、あの新生・帝国華撃団です』
続いて、新生・帝国華撃団の無限達が映し出される。
『しかし、WLOFはこの組織の存在を否定。“華撃団大戦にてその是非を問う”と宣言し、ウルティメイト華撃団は其れを了承。謂わば今回の華撃団大戦は、“WLOF対ウルティメイト華撃団の戦い”と言う構図になります』
今度は、WLOFとウルティメイト華撃団のエンブレムが相対する様に並べて表示される。
『地獄の開幕式以降の対応に批判が噴出しているWLOFと、突然現れたウルティメイト華撃団。果たして我々は、どちらを信じれば良いのでしょうか? 全ては、この試合で明らかになります』
「ケッ! 『どちらを信じるか?』だと!? 下らねえ事言いやがって!!」
コクピットの中で、実況者にまで悪態を吐いているシャオロン。
「…………」
傍に佇んでいるユイ機からは、覇気が感じられない。
「フフフフ………」
一方、青色の王龍に乗ったシィエナァンは、相変わらず不気味な笑みを浮かべていた。
『あ! 今、帝国華撃団が姿を見せました!!』
と其処で、実況者のそう言う声が響き、上海華撃団の正面に帝国華撃団の無限3機が現れる。
現れたのは………
「絶対に、勝って見せる!」
「忍者、望月 あざみ………参る!」
「皆! 行くぞっ!!」
さくらとあざみを伴った誠十郎だった。
「フフ、龍の餌食になるのはテメェ等か? 力の差を見せてやるぜ!」
「シャオロン。“
シャオロンの言葉に、誠十郎はそう返した。
『さあ………皆様、準備はよろしいでしょうか? 『上海華撃団』対『帝国華撃団』………いよいよ試合開始です! 其れでは! 華撃団大戦! レディィィ・ゴゥッ!!』
「うおおおおおおおおおっ!!」
と、実況者の試合開始の合図と共にゴングが鳴らされた瞬間!!
シャオロン機が、誠十郎機に突撃して来た!!
「!!」
驚きながらも、繰り出された拳を交差させた二刀で受け止める。
「神山誠十郎ぉっ! テメェはこの俺が潰すぅっ!!」
「シャオロン! くうっ!!」
最早狂気さえ感じさせるシャオロンの言葉と共に、勢いまで殺し切れなかった誠十郎機が押されて行った。
「! 神山隊長!!」
「隊長っ!!」
さくらが驚いている中、あざみは素早く2機を追おうとする。
「!?」
しかし殺気を感じて立ち止まると、その眼前にシィエナァン機が跳び蹴りと共に飛び込んで来た!
「お嬢ちゃんの相手は私アルヨ」
「お嬢ちゃんじゃない………あざみは忍者」
「アイヤー、ニンジャアルカ。ニポンの神秘ネ」
構えを取るあざみ機を見据えながら、シィエナァンは相変わらずスッ惚けたインチキ中国人口調を続ける。
「シャオロン! シィエナァン!」
2人に遅れて、ユイ機が近付いて来るが………
その前にさくらの無限が立ちはだかる。
「! さくら………」
「ユイさん………お相手して貰います」
「…………」
さくらの言葉に、ユイ機は一瞬間を置いて、構えを取った。
『おおっと! 早くも、厳しく激突が始まりました!! 上海華撃団の王龍と帝国華撃団の無限が其々戦闘を開始です!!』
(元プレジデントGの)現・ジェネラルAの執務室………
「フフフフフ………戦えぃ、上海華撃団。其れこそ龍の様になぁ」
モニターで、試合の様子を観ていたジェネラルAが面白そうに笑う。
その右手には、
あざみVSシィエナァン………
「フッ! ハアッ!」
掛け声と共にアクロバティックな動きをしながら、あざみが次々と手裏剣やクナイを投擲する。
「ホッ! ホッ! ホッ!」
しかしシィエナァン機は、其れを全て蹴りや手刀で叩き落として行く。
「ニンッ!」
すると其処で、あざみ機が印を結んだかと思うと、煙と共に消え失せる。
「おおっ!? 消えたアルッ!?」
キョロキョロと辺りを見回し、あざみ機を探す素振りをするシィエナァン機。
その背後の空中に、あざみ機が音も無く出現する。
「貰ったっ!!」
そのまま、無防備なシィエナァン機の背中に向かって跳び蹴りを繰り出す。
「!?」
だが蹴りが命中するかと思われた瞬間、嫌な物を感じたあざみは、態と機体を失速させた。
するとその眼前を、何か“黒い物”が鞭の様に撓って通り過ぎた!
「!!」
「おおっと、気付かれたアルカ」
着地したあざみ機がシィエナァン機から距離を取り、“黒い物”の正体を確認する。
「フッフッフッフッ」
其れは、霊子戦闘機『王龍』の特徴の1つ・『尻尾』だった。
しかしシィエナァン機の尻尾は、シャオロン機やユイ機に比べて長く、更に
「尻尾………」
「これぞ私の得意技。この尻尾が最大の武器ネ」
シィエナァン機が両手を地面に衝け、2本の尻尾をグネグネと動かす。
その姿は、正に
「…………」
あざみ機はそんなシィエナァン機から距離を取りつつ、左腰の小太刀を右手で逆手に構えるのだった。
さくらVSユイ………
「はああああぁっ!!」
「フッ!」
ユイ機の繰り出した正拳突きを、独楽の様に回転して躱すと、背中に横薙ぎを繰り出すさくら機。
「ハイッ!!」
「!!」
しかし、素早く裏拳が繰り出されて来たので、後退する。
「………?」
其処で、さくらは違和感を感じた。
「ハアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」
さくら機に向かって次々に拳や蹴りを繰り出すユイ機。
其れを後退しつつ躱し、躱し切れないものは刀で弾いて防ぐさくら機。
「………やっぱり」
其処でさくらの感じていた“違和感”が、
「ハアアッ!!」
その瞬間、ユイ機が大きく踏み込んで体重の乗った拳を繰り出す。
だが………
「!? 嘘っ!?」
その拳は、さくら機の峰に返した刀で受け止められた。
「ユイさん………貴女、迷ってますね」
「!?」
「動きにキレが有りません。“本当は分かってる”んじゃ無いんですか?今の上海華撃団が………
「わ、私は………」
「もう止めて下さい! 今は“私達が戦っている場合じゃない”んです!!」
「…………」
其処で、ユイ機がさくら機から離れる。
「私………何やってるんだろう………?」
そしてそのまま膝を折り、両手を地面に突いた。
「ユイさん………」
そんなユイ機に、さくら機が手を差し伸べる。
「さくら………」
その手を取ろうとするユイ機。
しかし………
突如、ユイ機のモノアイが不気味に発光した!!
「!?」
殺気を感じたさくらが、咄嗟に機体に防御姿勢を取らせた瞬間!
不意打ちをする様にユイ機の拳が叩き込まれた!
「ぐうっ!? ユイさんっ!?」
「えっ!? ち、違うっ!! 私は………」
反動で後退したさくら機が呼び掛けると、“ユイの戸惑いの声”が返って来る。
ユイ機はモノアイを不気味に発光させたまま、さくら機へと襲い掛かる!
「わ、王龍が! 勝手にっ!?」
「くっ!!」
先程までとは打って変わり、動きに全く容赦が無くなったユイ機がさくら機を追い詰め始めるのだった。
誠十郎VSシャオロン………
『オイ、誠十郎! さくらの方の様子が変だぞ!!』
「! 何だ!? あの動きは!?」
ゼロがユイ機の様子に気付くと、誠十郎も其れを確認して驚きの声を挙げる。
「余所見してんじゃ無えっ!!」
そんな誠十郎機に、シャオロン機は容赦無く襲い掛かる。
「グウッ!」
繰り出された手刀を、二刀を交差させて受け止める誠十郎機。
「死ねぇっ! 神山ぁっ!!」
「待てシャオロン! ユイさんの機体の様子がおかしい! 一旦試合を中止しよう!!」
殺気を漲らせているシャオロンに向かって、ユイ機の異常を察知した誠十郎がそう呼び掛けるが………
「うるせぇっ! 死ねぇっ!!」
シャオロンは全く意に介さず、攻撃を続けて来る。
「くうっ! シャオロン! ユイさんが危ないかも知れないんだぞ!!」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇっ!!」
更に呼び掛ける誠十郎だったが、シャオロンから返って来るのは狂った様な罵声だった。
「…………」
するとその瞬間………
誠十郎機がまるで脱力した様に腕を下ろし、その場に立ち尽くした。
「くたばれええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!! 神山ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
絶好のチャンスに、シャオロン機は炎を纏った拳を振り被って襲い掛かる!
………その次の瞬間!!
二筋の閃光が走ったかと思うと、『何か』が宙に舞い地面に落ちた。
「なっ!?」
驚愕するシャオロン。
彼の機体からは、
先程、宙に舞い地面に落ちたのはシャオロン機の両腕だった。
「この………馬鹿野郎おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」
シャオロン機の両腕を斬り飛ばした誠十郎機は、そのまま怒声と共に縦横無刃「嵐」を繰り出した!!
「うがああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
全身を斬り刻まれ、傷痕だらけになったシャオロン機が、そのまま仰向けに倒れ、スパークと蒸気を噴出した。
「…………」
そんなシャオロン機を一瞥すると、誠十郎機はさくら機とユイ機の元へと向かう。
あざみVSシィエナァン………
「アイヤー、隊長やられたアルカ?」
その様子を見たシィエナァンが、呑気にそう言う。
しかし、彼の機体は2本の長い尻尾であざみ機に絶え間無く攻撃を続けている。
「隙が無い………」
2本の尻尾の攻撃を躱しながらも、攻め手を欠いているあざみ機。
「ホレホレ、逃げ回ってばかりじゃ何も出来ないアルヨ」
「………その通り」
と、シィエナァンが挑発する様にそう言い放ったかと思うと、あざみ機が霊力を開放する。
「オッ?」
「望月流忍法………無双手裏剣!!」
そして必殺技を繰り出すと、無数のクナイ型手裏剣がシィエナァン機へと殺到した!
「ホワアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」
迫り来るクナイ型手裏剣を、2本の尻尾を振り回して叩き落して行くシィエナァン機。
「!!」
と其処で、あざみ機がシィエナァン機に向かって突撃した!
「必殺技を目眩ましにした積りアルカ? 無駄ねっ!!」
だがあざみ機が到達する前に、シィエナァン機はクナイ型手裏剣を全て叩き落し、2本の尻尾であざみ機を迎撃しようとした。
が!
「!? アイヤッ!? 動かないアル!?」
突然尻尾が動かなくなり、シィエナァンが尻尾を確認すると、其処には………
“可動部分の隙間
「何と!? さっきの手裏剣はこの為カ!?」
「!!」
シィエナァンが驚愕している間に、あざみ機はシィエナァン機に組み付く。
「ハアッ!!」
そしてそのまま跳び上がったかと思うと、空中で自機諸共逆さまになり急降下!
シィエナァン機の頭部を地面に叩き付けた!
『
「…………」
「アイヤー、やられたアルカ………」
叩き付けたシィエナァン機から離れて油断無く構えを取るあざみ機だが、シィエナァン機は彼の呑気な声と共に蒸気漏れを起こして動かなくなる。
「ハハハハハ。まあ、こんなものアルカ」
「…………」
負けたと言うのに、“
さくらVSユイ………
「止めて王龍! 止めてぇっ!!」
「ぐううっ!?」
ユイの悲鳴も意に介さず、彼女の王龍は容赦無い連撃をさくら機に浴びせて行く!
「!? キャアッ!!」
と其処で、不意に繰り出された回し蹴りを真面に喰らってさくら機がブッ飛ばされ、転がりながら仰向けに倒れた!
ユイ機は仰向けに倒れたさくら機に向かって地を蹴り、トドメを刺そうとする。
「止めてえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」
再び悲鳴を挙げるユイ。
その瞬間!!
誠十郎機が右腕、あざみ機が左腕を摑み、ユイ機を拘束した!
「! 隊長! あざみ!」
さくら機が起き上がる中、誠十郎機とあざみ機に組み付かれたユイ機は、2機を振り解こうと暴れる。
「グウッ! 何だこのパワーはっ!?」
「明らかに“機体の限界”を超えてる」
明らかにカタログスペックの何倍ものパワーを出しているユイ機に振り回され、誠十郎とあざみが思わずそう漏らす。
「あざみ! 出力最大だ!!」
「了解っ!!」
しかし、誠十郎機とあざみ機も出力を最大にして無理矢理抑え込む。
ユイ機はさくら機に背を向ける形で、漸く止まる。
「さくら! 今だ!! 霊子機関を狙えっ!!」
「! ハイッ!!」
誠十郎の指示で、さくら機はユイ機の背中・霊子機関部に向かって突きを繰り出す!
「ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」
渾身の突きが、ユイ機の霊子機関を貫通!
モノアイの光が徐々に消えて行ったかと思うと、ユイ機は脱力して漸く止まる。
「止まった………」
「一体何だったんだ、今のは?」
ユイ機が完全に停止した事を確認したあざみ機と誠十郎機が離れる。
「ユイさん!」
さくら機は、ユイを助け出そうとする。
『決まったぁっ! 華撃団大戦の第1回戦! 勝利したのは………帝国華撃団です!!』
「「「「「「「「「「わああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
と其処で、実況者が帝国華撃団の勝利を伝え、観客席から割れんばかりの歓声が響き渡る。
「ふざけるなああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
だが、其れを消し飛ばす凄まじい怒声が響き渡り、観客達は一瞬にして黙り込んだ。
「!? シャオロン!?」
誠十郎が驚愕の声を挙げる。
彼の視線の先には、両腕を無くして全身滅多斬りにされたにも関わらず、立ち上がっているシャオロン機の姿が在った。
「そんな………あの損傷で動ける筈無い………」
その光景に、あざみも信じられないモノを見る様な目になる。
「テメェ等なんざ要らねえんだ………俺達が居れば良いんだ………上海も帝都も………俺達が守るんだ………其れが“俺達の価値”なんだ………」
何やら、ブツブツと呟き始めるシャオロン。
「うおわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」
と、シャオロンが獣染みた咆哮を挙げた瞬間!!
シャオロン機から“赤黒いオーラの様な物”が発せられた!!
「!? アレはっ!!」
『間違い無い! 【マイナスエネルギー】だっ!! アイツ、クレッセントと戦った時に奴のマイナスエネルギーを浴びてやがったんだ!!』
驚愕する誠十郎に、ゼロがオーラの正体が『マイナスエネルギー』である事を告げる。
ジェネラルAの執務室………
「その力………解放せよ」
と、モニターに映るマイナスエネルギーの立ち上るシャオロン機を見ながら、ジェネラルAはダークリングを取り出し、持っていた怪獣カードをリードした。
『ファイヤードラコ』
ダークリングからくぐもった闇の声が響くと、カードを挿し込んでいたのとは反対側の方向から赤い竜巻の様なエネルギーが放たれ、ジェネラルAの執務室から飛び出して行った。
華撃団大戦の試合会場………
ダークリングから放たれたエネルギーは試合会場まで到達し、シャオロン機に降り注いだ!!
「! うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」
途端に、シャオロン機から発せられていたマイナスエネルギーのオーラが増大。
シャオロン機の姿がマイナスエネルギーの塊となる。
「えっ!? な、何っ!?」
すると其処でユイ機が浮かび上がり、まるで吸い込まれる様に、マイナスエネルギーの塊となったシャオロン機へ引き込まれて行く。
「い、嫌ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
「ユイさん!」
さくら機が慌てて手を伸ばしたが、1歩間に合わず、伸ばした手は虚しく空を切った。
「さくらああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
ユイの悲鳴が木霊する中、彼女は機体ごとマイナスエネルギーの塊に呑み込まれた!
「! そんな! ユイさん!!」
「ハハハハハッ! 遂に来たぜぇっ!! ヒャッハーッ!!」
さくらが思わず叫ぶ中、シィエナァンが喜々として、自ら機体ごとマイナスエネルギーの塊の中へ飛び込んで行った!
「!?」
「なっ!? 自分から飛び込んで行ったっ!?」
シィエナァンの思わぬ行動に驚くあざみと誠十郎。
ユイとシィエナァン、そして2人の機体をも飲み込んだマイナスエネルギーの塊は、そのままドンドンと巨大化。
やがて、粘土の様に変形して形を作り始めたかと思うと………
グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!
黄色、緑、青の3つの首を持つ龍の様な怪獣………
『三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー』となったのだった!!
つづく
新話、投稿させて頂きました。
遂に上海華撃団との対決の時。
その戦いは単純な激突ではなく、ウルティメイト華撃団とWLOFの存在意義を掛けた戦いとなります。
今回はさくらとあざみを選抜しましたが、都合によりさくらは以後の試合にも出ずっぱりになります。
この作品でのメインヒロイン補正と思って、どうかご了承ください。
そんな中、判明したシャオロンの狂気の理由………
何と、クレッセントと戦った際に、マイナスエネルギーを浴びて、その影響を受けていたのです。
正確には、元々抱えていた歪んだ感情が、マイナスエネルギーで増幅されたって事になりますが………
ユイの機体に細工がされていたり、謎の3人目『シィエナァン』の存在などがあったものの、見事勝利を納める帝国華撃団。
しかし何と!!
ジェネラルAがダークリングと怪獣カードを使い、上海華撃団をファイヤードラコ・アナザーへ変えてしまいます!
アナザーと付いている理由は次回の怪獣大百科にて。
果たして、上海華撃団を救う手立てはあるのか!?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。