新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター8『虚しき勝利』

チャプター8『虚しき勝利』

 

三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー

 

さそり怪獣 アンタレス・ブラザー 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

「怪獣だあっ!!」

 

「上海華撃団が怪獣になっちまったーっ!!」

 

突如としてマイナスエネルギーの塊と化し、其処からファイヤードラコ・アナザーとなった上海華撃団の姿を見て、観客達は慌てふためいて出口に殺到する。

 

「シャ、シャオロン!」

 

「ユイさん!」

 

「人間が………怪獣に!?」

 

誠十郎・さくら・あざみも、驚愕を露わにファイヤードラコ・アナザーを見上げる。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーが、足元の誠十郎達を見下ろす。

 

「「「!!」」」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

誠十郎達が驚きを示した瞬間、ファイヤードラコ・アナザーはボールを蹴るかの様に右足を振った!

 

「! 危ないっ!!」

 

咄嗟に、誠十郎機がさくら機とあざみ機を突き飛ばした!!

 

「! 神山隊長っ!?」

 

「隊長っ!?」

 

さくらとあざみが声を挙げた瞬間、ファイヤードラコ・アナザーの蹴りが誠十郎機に叩き込まれる!

 

「うおわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

誠十郎機はまるで玩具の様にブッ飛ばされ、空の彼方へ消えた!

 

「誠兄さあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!」

 

誠十郎機が消えた空に向かって手を伸ばしながら悲鳴を挙げるさくら。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

と、誠十郎機をブッ飛ばしたファイヤードラコ・アナザーは、残る2人に視線を向ける。

 

「「!!」」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

咆哮と共に、さくら機とあざみ機に襲い掛かろうとするが………

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

突如現れたゼットンが、ファイヤードラコ・アナザーを後ろから羽交い締めにした!

 

「ゼットン! そのまま押さえて!!」

 

「今、ウルティメイト華撃団に加入した華撃団の隊員達が観客の避難誘導に入ってくれたわ」

 

「よっしゃあっ! 今回はキッチリと相手してやるぜ!!」

 

其れに続く様に、クラリス機・アナスタシア機・初穂機が試合会場へと入って来る。

 

「初穂! 誠兄さんが! 誠兄さんがっ!!」

 

「落ち着け、さくら!!」

 

誠十郎がブッ飛ばされてしまった事で動揺しているさくらを、初穂が落ち着かせようとする。

 

「神山さんなら大丈夫です!」

 

「其れを1番知ってるのは貴女じゃないの、さくら」

 

「!!」

 

クラリスとアナスタシアからもそう言われ、さくらは落ち着きを取り戻す。

 

『その通りよ』

 

『神山くんの機体のシグナルは途切れていない。彼は生きている。安心し給え』

 

更に其処へ、すみれとサコミズからもそう通信が入って来た。

 

「ホントですか! 良かった………」

 

『兎に角! 神山くんが戻るまで、私が指揮を執ります! 全員、怪獣を迎撃して観客達が避難する時間を稼いで頂戴!』

 

漸く安堵した様子を見せたさくらに、すみれは続けてそう呼び掛ける。

 

「けど、あの怪獣は()()()()()………」

 

しかし其処で、あざみがファイヤードラコ・アナザーを見上げながらそう呟く。

 

「チキショウッ! 如何すりゃ良いんだ!?」

 

何だかんだで上海華撃団とは付き合いの長い初穂も、苦悩を露わにする。

 

「皆さん! ()は戦いましょうっ!!」

 

「! クラリス!?」

 

すると其処で、意外にもクラリスがそう声を挙げた。

 

「諦めなければきっと何とかなります! 兎に角今は、()()()方法を模索しましょう! そして、その努力が及ばなかった時には………きっとゼロさんが助けに来てくれます!!」

 

「「「「…………」」」」

 

クラリスの言葉に聞き入るさくら・初穂・あざみ・アナスタシア。

 

「………そうですね! 戦いましょう!!」

 

「ああ! アイツ等にコレ以上に酷い事はさせねえ!!」

 

「ギリギリまで頑張って………ギリギリまで踏ん張ってみせる」

 

「そして如何にもこうにも、如何にもならない時には………ウルトラマンゼロの力を借りましょう」

 

そしてさくら達は、ファイヤードラコ・アナザーに向かい会うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

無限ごと蹴り飛ばされてしまった誠十郎は………

 

『大丈夫か?誠十郎』

 

「ああ………何とかな」

 

何とか受け身を執って着地に成功した誠十郎に、ゼロが呼び掛ける。

 

「しかし、かなり遠くまで飛ばされてしまった………」

 

コクピットのモニターに、遠方に映る世界華撃団大戦の試合会場を拡大して映し出しながらそう言う誠十郎。

 

今からでは、全速で飛ばしたとしても戻るまでに時間が掛かり過ぎてしまう。

 

『誠十郎、俺が行く。上海華撃団の奴等も救ってやらねえとな』

 

「頼む、ゼロ」

 

其処で、誠十郎は無限を自動操縦で会場に向かう様にセットすると、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出す。

 

「デュワッ!」

 

ウルトラゼロアイを装着した誠十郎の姿がゼロへと変わり、光となって無限から飛び出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

暴れるファイヤードラコ・アナザーを羽交い締めで押さえ付けようとするゼットン。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

と其処で、ファイヤードラコ・アナザーの3つ在る首の内、左側の青い首が鞭の様に撓り、ゼットンに頭突きをお見舞いした!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

かなりの石頭の頭突きに、ゼットンは思わずファイヤードラコ・アナザーを放してしまい、後退る。

 

「おおりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

其処で、初穂機がファイヤードラコ・アナザーを転ばせようと、足に向かってハンマーを振るう。

 

しかしハンマーが当たるかと思われた瞬間、ファイヤードラコ・アナザーの姿が忽然と消える。

 

「!? 消えたっ!?」

 

「初穂! 上っ!!」

 

「!?」

 

さくらの言葉に、初穂が空を見上げると………

 

其処には、自身の身長の何倍もの跳躍をしたファイヤードラコ・アナザーの姿が在った。

 

そのまま、やや離れた場所へと着地するファイヤードラコ・アナザー。

 

「其処っ!!」

 

そのタイミングを狙って、あざみ機が無数のクナイと手裏剣を投擲する。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

するとファイヤードラコ・アナザーは、咆哮と共に振り返りながら回し蹴りを繰り出す。

 

風切り音と共に、鋭い蹴りがあざみ機が放ったクナイと手裏剣を叩き落とす!

 

「!!」

 

まさか叩き落されるとは思わなかったあざみが驚きを露わにする。

 

「其処っ!!」

 

今度は、アナスタシア機が中央の緑色の首を狙って氷の弾丸を放つ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーの中央の緑色の首は咆哮と共に大きく口を開くと、其処から火炎を吐いてアナスタシア機の銃弾を蒸発させた。

 

「アルビトル・ダンフェールッ!!」

 

と、必殺技のアルビトル・ダンフェールを放つクラリス機。

 

無数の魔導弾が、ファイヤードラコ・アナザーを取り囲む様に迫る。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、ファイヤードラコ・アナザーは向かって来た魔導弾に向かって次々にパンチや蹴り、手刀を繰り出して叩き落としてしまった!

 

「! そんなっ!?」

 

「あの動き………“シャオロンさん達が何時も使ってる”功夫(クンフー)!?」

 

クラリスが驚愕する中、さくらはファイヤードラコ・アナザーの動きが“シャオロンの功夫”のソレである事に気付く。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーの中央の首が再び口を開き、辺りに火炎を撒き散らす!!

 

「「「「「!!」」」」」

 

花組メンバーは、慌てて散開して火炎を避ける。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

するとファイヤードラコ・アナザーは散らばった花組メンバーの内、さくらに狙いを定めて尻尾を振るった!

 

「! ハアッ!!」

 

既の処でさくら機は跳躍し、横薙ぎに振るわれた尻尾を躱す。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし其れを読んでいたかの様に、左の青い首が口を大きく開けて近付き、さくら機に噛み付いた!

 

「!? キャアッ!?」

 

ファイヤードラコ・アナザーに摑まるさくら機。

 

と、次の瞬間!

 

ジューッと言う“何かが溶ける様な音”と共に、さくら機の装甲から煙が上がり始めた。

 

「!? 装甲が溶け始めてる!?」

 

「いけない! 毒だわ!!」

 

さくらが驚愕すると、アナスタシアがそう推測する。

 

装甲すら溶かす強力な毒によって脆くなり始めたさくら機を、ファイヤードラコ・アナザーの左の首は噛み潰そうとする。

 

さくらの無限から鉄が軋む鈍い音が響き始める。

 

「嫌あっ!!」

 

「さくらぁっ!!」

 

さくらが思わず悲鳴を挙げ、初穂が叫ぶ。

 

その時!!

 

「オリャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

上空から現れたゼロが、ファイヤードラコ・アナザーに飛び蹴りを喰らわせる!

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

「わわわっ!?」

 

衝撃でファイヤードラコ・アナザーは倒れ、さくら機も解放されて着地する。

 

「セヤアッ!!」

 

続いてゼロも着地を決める。

 

「ゼロさんっ!!」

 

「待ってたぜっ!!」

 

ゼロの姿を見たクラリスと初穂が歓声を挙げる。

 

「ゼロさん! あの怪獣は()()()()()()()()なんです!」

 

「分かってる! 俺に任せておけっ!!」

 

さくらの言葉にそう返しながら、ゼロは構えを執る。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーも起き上がると、功夫の構えを執る。

 

「へっ、面白れぇ! 師匠(レオ)直伝の宇宙拳法、受けてみやがれ!!」

 

そう叫んで、ファイヤードラコ・アナザーに右腕を振り被って殴り掛かるゼロ。

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーはその拳を片手で受け止める。

 

「ヘヤッ!!」

 

其れを読んでいたゼロは、素早く身体を回転させて左腕で裏拳を繰り出す。

 

しかしファイヤードラコ・アナザーは、其れも両腕で防御姿勢を執って防ぐ。

 

「オリャアッ!!」

 

するとゼロは、防御姿勢を執ったファイヤードラコ・アナザーの腕を摑み、そのまま身体を縦に回転させる様に投げ飛ばす。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーはそのまま1回転して難無く着地を決める。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

そして今度は、ファイヤードラコ・アナザーの方がゼロに向かって行く。

 

ゼロに向かって右のハイキックを繰り出すファイヤードラコ・アナザー。

 

「フッ!」

 

其れを防ぐゼロだが、ファイヤードラコ・アナザーは右足を下ろさず、そのまま鞭の様に撓らせて次々と蹴りを繰り出す。

 

「うおっと!」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

ゼロは身体を横に回転させながら、バックステップを踏んで距離を取るが、ファイヤードラコ・アナザーは蹴りを繰り出す勢いを利用し、軸足を摺り足の様にズラして追撃して来る。

 

「! のうわっ!?」

 

遂にその蹴りがゼロの胸に命中し、ブッ飛ばされるゼロ。

 

「このぉっ!!」

 

倒れたままゼロスラッガーを投げるゼロ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、ファイヤードラコ・アナザーは両腕を振ってゼロスラッガーを弾き飛ばす。

 

「フッ! エメリウムスラッシュッ!!」

 

立ち上がりながらゼロスラッガーを頭部に戻したゼロは、続けてエメリウムスラッシュを放つ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ファイヤードラコ・アナザーは大きく跳躍して回避!

 

「!?」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

見上げたゼロ目掛けて跳び蹴りを繰り出す!

 

「おうわっ!?」

 

再び胸に蹴りを喰らい、後退るゼロ。

 

「いけない! ゼットンッ!!」

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

其処で、クラリスがゼロを援護しようとゼットンに呼び掛け、1兆度の火球を放つ。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、背後から迫って来ていた1兆度の火球を、ファイヤードラコ・アナザーは回し蹴りで掻き消す!

 

「! 嘘っ!?」

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

クラリスが驚く中、ファイヤードラコ・アナザーは素早くゼットンに接近。

 

掌をゼットンの身体に押し当てたかと思うと………

 

突然ゼットンがブッ飛ばされた!!

 

「! 寸勁っ!!」

 

あざみがファイヤードラコ・アナザーが“寸勁”を繰り出したのだと見抜く。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

倒れたゼットンは起き上がれない。

 

ウルトラマンの光線にも耐える頑強な表皮も、“()()()直接ダメージを与えて来る”寸勁に掛かっては意味が無かった。

 

「! ゼットン! 戻ってっ!!」

 

已む無くゼットンを魔導書へと戻すクラリス。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

其処でファイヤードラコ・アナザーは、残ったゼロに向き直る。

 

「チッ、やるじゃねえか」

 

『“功夫を使う怪獣”だなんて、質の悪い冗談だ』

 

攻めあぐね悪態を吐くゼロと誠十郎。

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

そんなゼロに気を良くしたかの様に、ファイヤードラコ・アナザーはジリジリと距離を詰めて来る。

 

「チイッ………!」

 

構えを執りながらも、迂闊に手が出せないゼロ。

 

 

 

 

 

………と、その時!!

 

 

 

 

 

!? グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

突如、ファイヤードラコ・アナザーが悲鳴の様な咆哮を挙げた!

 

「!?」

 

『何っ!?』

 

「「「「「!!」」」」」

 

ゼロと誠十郎、花組の面々も驚きを露わにする。

 

何故なら………

 

ファイヤードラコ・アナザーの()()()()()()が………

 

中央の緑色の首に噛み付いたのだ!!

 

グワアゴアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

ファイヤードラコ・アナザーは、腕を使って中央の首に噛み付いた右の首を引き剥がそうとするが、右の首は噛み付いたまま離れない。

 

「何だ? 仲間割れか?」

 

『如何なってるんだ?』

 

思わぬ事態に、ゼロも誠十郎も困惑する。

 

「黄色い首………」

 

とその時、さくらの脳裏に“『黄色』が()()()()()()()()()()”であった事が過る。

 

「! ひょっとしてあの黄色い首………ユイさんなんじゃ!?」

 

「!? 何っ!?」

 

「そう言えば………」

 

さくらがそう声を挙げると初穂が驚き、クラリスもユイのシンボルカラーを思い出す。

 

「若しそうだとしたら………」

 

「彼女は今“必死に(あらが)っている”、と言う事ね」

 

あざみとアナスタシアもそう推測する。

 

その推測を裏付けるかの様に、ファイヤードラコ・アナザーの動きが鈍くなり始める。

 

『ゼロ! 今だっ!!』

 

「おっしゃあっ!!」

 

“絶好のチャンス”だと誠十郎が言うと、ゼロはウルティメイトブレスレットを叩いた。

 

「………ルナミラクルゼロ」

 

ウルティメイトブレスレットから青い光が溢れ、落ち着いたトーンの低い声と共にハープの様な効果音が響き、ルナミラクルゼロへと変わる。

 

「フルムーンウェーブッ!」

 

そして、ファイヤードラコ・アナザーの周りを高速で浮遊して回りながら、フルムーンウェーブを放つ。

 

無数の光の粒に包まれたファイヤードラコ・アナザーの姿が、徐々に小さくなって行き………

 

最後には3機の王龍へと分離し、地面に転がった。

 

「ユイさん!」

 

「シャオロンッ!!」

 

直ぐに、花組の面々が救助に向かう。

 

『ふう、コレで一安心だな………』

 

その光景を見て、安堵の息を吐く誠十郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………だが!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エ゛エーイッ!!」

 

突如、奇声が響いたかと思うと、シィエナァン機のハッチが弾け飛んだ!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

「!? 何っ!?」

 

『こ、今度は何だっ!?』

 

思わず足を止める花組の面々と、驚くゼロと誠十郎。

 

と、ハッチが弾け飛んだシィエナァン機から“何か”が飛び出し、試合会場の地面に着地する。

 

「シィエナァンさん?」

 

其れが、搭乗者であるシィエナァンである事を確認したクラリスが声を挙げた瞬間………

 

「エ゛エーイッ!!」

 

シィエナァンが奇声を発し、その身体が赤い光を放ったかと思うと………

 

赤い煙を放出しながら身長よりも長い2本の尻尾と、両手足と2本の尻尾の先端に鋏を持った、巨大な怪獣の姿へと変わった!!

 

「!?」

 

「なっ!? また怪獣に成りやがった!?」

 

その光景を見たさくらが驚き、初穂が声を挙げる。

 

「いや、違う! コイツは『さそり怪獣 アンタレス』! “人間に化ける能力”を持った怪獣だっ!!」

 

「ええっ!?」

 

「じゃあ………シィエナァンは………」

 

「“()()()()怪獣だった”って事ね………」

 

ゼロがそう言うと、今度はクラリスが驚き、あざみとアナスタシアは再び推測する。

 

「その通り! 上手く上海華撃団に潜り込んで貴様を倒す事が出来ると思ったが………あの小娘め! 余計な事をしやがってっ!!」

 

と其処で、2本尻尾のアンタレスが人間の言葉でそう言い放つ。

 

「こうなれば仕方無い! ウルトラマンゼロ! 俺自身の手で貴様を始末してやる!!」

 

「お前もフルムーンウェーブを浴びた筈だ。何故其処まで俺に敵意を向ける?」

 

「“あんなモノ”がこの俺に効くか!? 『弟』の為にも貴様を殺す!」

 

「『弟』だと?」

 

「そうだ! 嘗て、貴様の師匠・ウルトラマンレオに倒されたアンタレスは、『俺の弟』だ!!」

 

「!? 何っ!?」

 

何と、この2本尻尾のアンタレスは、嘗てレオが倒したアンタレスの『兄』だった!

 

「ウルトラマンレオ………奴だけは絶対に許さん! 先ず弟子である貴様を殺し、その死体を見せ付けて俺と同じ思いを味合わせてから、じっくりと嬲り殺しにしてやるのだ!!」

 

如何やら、2本尻尾のアンタレス………『アンタレス・ブラザー』は、“弟の復讐の為”にゼロを倒す積りの様だ。

 

「ヘッ、逆恨みも良いとこだぜ。しかも、捕らぬ狸の皮算用だな………師匠(レオ)()()()()()()奴の仲間が、俺に勝てると思ってるのか?」

 

「黙れっ! 俺は弟とは一味違うぞっ!!」

 

ルナミラクルゼロである為に口調が落ち着いている事が余計に癇に障ったのか、アンタレス・ブラザーは両目からショック光線を放つ。

 

「フッ!」

 

其れを跳躍して躱すと、ルナミラクルゼロから通常状態へ戻り、アンタレス・ブラザーに飛び掛かるゼロ。

 

「おおりゃあっ!!」

 

「ぬおおっ!?」

 

そのまま倒れ込む様にしてアンタレス・ブラザーを投げ飛ばす。

 

「ハアアアッ!!」

 

だが、アンタレス・ブラザーは素早く起き上がると、2本の尻尾の先端から火炎を放射する!

 

「おっとっ!!」

 

連続バク転で距離を取って躱すゼロ。

 

「エ゛エーイッ!!」

 

またもや奇声を挙げ、大きく跳躍したかと思うと、飛び蹴りを繰り出して来るアンタレス・ブラザー。

 

「うおっ!?」

 

ゼロは回転する様に動いて躱すと、アンタレス・ブラザーの側面を取る。

 

「貰ったっ!!」

 

そのまま右の拳で殴り掛かったが………

 

「フッ!!」

 

アンタレス・ブラザーは其れを見切っていたのか、左の鋏でゼロの右腕を挟み込んだ!

 

「うおっ!? コイツッ!!」

 

「馬鹿めっ!!」

 

素早く左の拳を繰り出したが、其れも読まれていた為、右の鋏で挟み込まれる。

 

「ぬあっ!?」

 

「フンッ!!」

 

其処でアンタレス・ブラザーは、自分の両足でゼロの両足を踏み付ける!

 

更に、2本有る尻尾の片方をゼロの身体に巻き付けた!!

 

「!?」

 

「ハハハハハハッ! 弟は足で尻尾を切られて敗北したが、コレでは足技も使えまい!?」

 

勝ち誇る様にそう言い放つアンタレス・ブラザー。

 

彼の言葉通り、嘗てレオと戦ったアンタレスは、得意技の組み付いて動きを止めてからの尻尾攻撃を、レオの足技で攻略されて敗北した。

 

しかし、尻尾を2本持つアンタレス・ブラザーは、片方を相手の身体に巻き付ける事で完全に拘束。

 

弟が敗れた足技を封じたのである。

 

「終わりだっ! ウルトラマンゼロ! レオへの手土産にしてくれる!!」

 

アンタレス・ブラザーがそう言い放つと、残る1本の尻尾がアンタレス・ブラザーの頭上から伸び、ゼロの首を狙う。

 

「「ゼロさんっ!!」」

 

さくらとクラリスの悲鳴が木霊する。

 

しかし、アンタレス・ブラザーは()()()()()()を犯していた………

 

レオに破られた必殺攻撃を強化・改良したまでは良かった………

 

だが、今アンタレス・ブラザーが戦っているのはウルトラマン()()では無く、ウルトラマン()()なのだ!

 

「ハッ!!」

 

ゼロの掛け声と共に、ウルトラ念力で独りでにゼロスラッガーが外れ、迫って来ていたアンタレス・ブラザーの尻尾を切断した!

 

「!? 何ぃっ!?」

 

アンタレス・ブラザーが驚いている間に、ゼロスラッガーは更にゼロの身体に巻き付いていたもう1本の尻尾、両手足の鋏をも切り裂いた!!

 

「ぬおおっ!?」

 

「ヘッ! “その程度”で、この俺を如何にか出来ると思ったのかよ!? 2万年早いぜ!」

 

忽ちゼロを解放してしまい、蹌踉たアンタレス・ブラザーに向かってゼロがそう言い放つと、その手元にゼロスラッガーが戻って来る。

 

「ハッ!!」

 

その戻って来た2つのゼロスラッガーを合体させ、弓状の剣・『ゼロツインソード』に変えるゼロ。

 

「セヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

そして必殺の『プラズマスパークスラッシュ』を繰り出す!

 

光輝くゼロツインソードの刃が、アンタレス・ブラザーに叩き込まれる!

 

「ハッ!!」

 

そのままアンタレス・ブラザーの背後に着地するゼロ。

 

その瞬間………

 

アンタレス・ブラザーの首がボトリと地面に落ちた。

 

「言ったろ………師匠に勝てなかった奴の仲間が、俺に勝てると思ってるのか?ってな」

 

ゼロツインソードをゼロスラッガーにして頭部に戻すと、首の無くなったアンタレス・ブラザーに背を向けたままそう言い放つゼロ。

 

………しかし!!

 

「未だだぁっ!!」

 

何と!!

 

首の無くなったアンタレス・ブラザーの身体が、斬り落とされた首を拾い上げ、ゼロに向かって投げ付けて来た!

 

「!? なっ!?」

 

「ウルトラマンゼロォッ!! せめて貴様だけはぁっ!!」

 

驚くゼロにアンタレス・ブラザーの首が迫る!

 

が、ゼロに到達すると思われた瞬間!!

 

何処からとも無く『赤いエネルギー弾』が飛んで来て、アンタレス・ブラザーの首に命中した!!

 

「!?」

 

「うおおおおおっ!? 弟よーっ!! スマンッ!!」

 

ゼロが驚く中、アンタレス・ブラザーの首はそう断末魔の叫びを残し、木っ端微塵に爆発した。

 

残っていた身体も、首が無くなったのを切っ掛けにした様に切断面から火花を噴出させながら倒れ、爆発四散した。

 

「あっぶねー。“アンタレスは首を斬り落とされても向かって来た”って師匠(レオ)が言ってたっけ………」

 

『其れにしても、さっきの攻撃は一体?』

 

思わず額を拭うゼロと、アンタレス・ブラザーにトドメを刺した赤いエネルギー弾の正体を気にする誠十郎。

 

しかし、試合会場の()()には何も見当たらなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場・観客席の出入り口………

 

「未だ未だ甘いぞ、ゼロ」

 

観客が居なくなり、無人となった客席の出入り口で、『雲水の様な格好をした壮年の男』がゼロを見上げながらそう言い放つ。

 

「まあ良い。今は………」

 

其処で男は視線を落とし、花組の面々に救出されている上海華撃団に目を遣る。

 

「………アイツの方が()か」

 

その中で、応援に駆け付けたウルティメイト華撃団の隊員達によって担架で運ばれて行くシャオロンを見ながら、そう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想外の事態に見舞われたものの………

 

世界華撃団大戦・第1回戦は………

 

帝国華撃団の勝利で幕を閉じた。

 

だが、予想していた事ではあったが、敗れた上海華撃団には、ジェネラルAから即座に解散命令が出された………

 

花組の面々に勝利の喜びは無く………

 

只虚しさだけが込み上げて来たのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

シャオロン「俺は今までずっと上海と帝都を守って来た。

 

これからも俺がずっと2つの都市を守る。

 

他の奴等や何かにやらせねえ!

 

其れが『俺の存在価値』だった筈だった………

 

其れが無くなったら、俺には………

 

次回『新サクラ大戦』

 

第3.5話『立ち上がる龍と燃える獅子』

 

太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!

 

俺は………一体“何の為に”戦って来たんだ………」

 

???「その顔は何だ! その目は! その涙は一体何だっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3話・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ怪獣大百科

 

怪獣コンピューター、チェック!

 

『三つ首怪獣 ファイヤードラコ・アナザー』

 

身長:80メートル

 

体重:3万トン

 

能力:中央の緑の首が火炎・左の青い首が毒の牙・右の黄色い首が噛み付き

 

初登場作品:ウルトラマン80第35話『99年目の竜神祭』

 

嘗て80が戦ったファイヤードラコを元にし、マイナスエネルギーと怪獣カードを組み合わせ、上海華撃団を取り込んで誕生した怪獣。

 

その為、原典のファイヤードラコとは異なる存在故に、アナザーと付いている。

 

首の色も、赤だった中央が緑色、白だった右が黄色と、上海華撃団の王龍のカラーリングを模している。

 

上海華撃団が得意とした功夫と、火炎・毒の牙を使ってゼロと帝国華撃団を苦しめるが、原典と同じ様にユイの意識が宿っていた黄色い首が反逆。

 

その隙を突かれ、ルナミラクルゼロのフルムーンウェーブで浄化され、元に戻ったが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さそり怪獣 アンタレス・ブラザー』

 

身長:1.7~56メートル(尻尾の全長は80メートル)

 

体重:200キロ~3万トン

 

能力:目からのショック光線、尻尾の先端からの火炎

 

初登場作品:ウルトラマンレオ第14話『必殺拳!嵐を呼ぶ少年』

 

嘗てレオと戦って敗れたアンタレスの兄。

 

弟の復讐の為、先ずレオの弟子であるゼロを倒そうと、上海華撃団に潜入。

 

やがて正体を現して直接交戦した。

 

特徴である長い尻尾が2本となっており、これを使ってレオに破られた必殺技を強化し、対策した。

 

しかし、ゼロスラッガーを持つゼロ相手に使った為、破られてしまう。

 

プラズマスパークスラッシュで首を落とされたが、執念でゼロに一矢報いようとする。

 

だが、謎の赤いエネルギー弾によって散った。




新話、投稿させて頂きました。

ファイヤードラコ・アナザーと化した上海華撃団を元に戻そうと奮戦する帝国華撃団とゼロ。
功夫に苦戦しながらも、何とかルナミラクルゼロの力で浄化に成功。

しかし、何と!
シィエナァンの正体が発覚!
奴は『さそり怪獣 アンタレス・ブラザー』だった!
レオに倒された弟の復讐に燃えるアンタレス・ブラザーだったが、レオの為に改良した技をゼロにかけてしまし、破られます。

そして解散を言い渡された上海華撃団………
次回はその上海華撃団の掘り下げ話です。
そして客演回でもあります。
いよいよ最初の客演ウルトラマンが登場です。
何と、いきなりレジェンド級のあのウルトラマンが登場です!
シャオロンに渇を入れてくれます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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