新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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第3.5話『立ち上がる龍と燃える獅子』
チャプター1『泥まみれ男ひとり』


第3.5話『立ち上がる龍と燃える獅子』

 

チャプター1『泥まみれ男ひとり』

 

宇宙超人 スチール星人・ソドロ

 

暗闇宇宙人 カーリー星人・ジャッパー登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇・支配人室………

 

「それじゃあ、神山くん。上海華撃団への使者、お願いするわね」

 

「ハッ! 了解しました!」

 

支配人席に着いているすみれに敬礼する誠十郎。

 

華撃団大戦の第1回戦が終わり、幾何(いくばく)かの日が流れた。

 

敗北した上海華撃団は、ジェネラルAによってアッサリと解散させられた。

 

しかしそれは、ウルティメイト華撃団にとっては()()()()展開だった。

 

アッサリと切り捨てられた事で目が覚めた中()政府は、コレまで渋っていたウルティメイト華撃団への参加に対し、前向きになり始めたのである。

 

そして今日、誠十郎が“使者”として直接上海華撃団の元へ向かう事となった。

 

本来なら、試合後“直ぐにでもするべき話”だったのだが………

 

帝国華撃団自体の、ウルティメイト華撃団への所属変更に伴う事務処理、更には上演中だった舞台『超決戦! ベリアル銀河帝国』が千秋楽を迎えていた事もあり、其方に忙殺されてしまっていたのである。

 

(正直、上海華撃団には未だ思う処は有る………しかし今は、“そんな事を言っている時”じゃ無い)

 

『だな。俺が言う事じゃ無えが、“蟠りは捨てて、一致団結”して行かねえとなら無え』

 

支配人室から出ながら、心の中でそう交わす誠十郎とゼロ。

 

「神山隊長」

 

と其れを待っていたかの様に、さくらが姿を現した。

 

「さくら」

 

「上海華撃団の所へ行くんですよね? 私も連れて行ってくれませんか?」

 

誠十郎に向かって、さくらはそう頼み込む。

 

「舞台の方は良いのか?」

 

「クラリスが、未だ次の舞台の脚本を書き終えて無いから、その間ちょっと休憩になったんです。其れに………“ユイさん達の事も心配”だから」

 

表情に陰を浮かべながら、そう話すさくら。

 

(さくら………)

 

『ったく、人が好過ぎるぜ………』

 

シャオロンに殺され掛けた彼女は、()()()()上海華撃団を恨んでも良い筈である。

 

だが、彼女はユイを心底心配し、自分を殺そうとしたシャオロンをも助けようとした。

 

そんな彼女の優しさに、誠十郎とゼロは軽く感動を覚える。

 

「分かった。じゃあ一緒に行くか?」

 

「! ハイッ!」

 

誠十郎(+ゼロ)は、さくらを連れて上海華撃団の帝都での拠点………

 

銀座横丁に在る中華料理店・『神龍軒』に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座横丁・『神龍軒』………

 

「! こ、コレはっ!?」

 

「!!」

 

だが、誠十郎(+ゼロ)とさくらが神龍軒に辿り着くと………

 

其処には衝撃的な光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

銀座横丁の一角に位置し、本場の中華料理店を思わせる造りの神龍軒。

 

その神龍軒は、窓ガラスが粗全て割られ………

 

黄金の龍の形をした看板や、店先に飾られていた大きな中華人形やショーケースはバラバラに壊されており………

 

『出て行け!』、『怪獣野郎!』、『化け物め!』と言った誹謗中傷の貼り紙が壁一面に貼られている。

 

 

 

 

 

「酷い………」

 

余りの酷さに言葉を失うさくら。

 

「シャオロン達は………?」

 

不安を露わにしながらも、誠十郎はさくらと共に店の中へと入って行く。

 

入店してみると、店の中も酷い有様だった。

 

椅子やテーブルは叩き壊されて引っ繰り返され………

 

天井は一部が剥がれ落ち………

 

1番大事な調理場は、棚や冷蔵庫が全て倒れて調理器具と食材が、床一面に散乱していた。

 

「………誰?」

 

そんな中に佇み、箒で必死にゴミを掃いていたユイが、俯いていた顔を上げる。

 

その顔はすっかり(やつ)れており、明らかに疲労の色が見える。

 

よく見ると、涙の痕も有る。

 

「ユイさん………」

 

「! さくら………」

 

さくらの姿を認めたユイの手が止まる。

 

「ハハハ………ゴメンね。折角来てもらったのに、こんな状態で………」

 

「一体何が有ったんだ?」

 

力無く笑ってそう返すユイに、誠十郎が問い掛ける。

 

「其れは………」

 

と、ユイが答えようとしたその瞬間!!

 

石が神龍軒の中へと投げ込まれ、無事だった数少ない窓ガラスが割れて飛び散る!

 

「!?」

 

「ユイさんっ!!」

 

咄嗟に誠十郎が2人を守る様に立ち、さくらもユイを抱き締めて床に座り込んで身を低くする。

 

「出てけっ! 怪獣野郎っ!!」

 

「テメェ等なんざ、もう要ら無えんだっ!!」

 

「“化け物”はとっとと消えろぉっ!!」

 

外から聞こえて来る罵声………

 

其れは()()()()()()のモノだった。

 

「! 何て事を!!」

 

咎めようとした誠十郎だったが、市民達は一方的に言いたい事を言い放ち、去って行ってしまった。

 

「………()()()()()()からずっとこの調子なんだ………“私達が怪獣になった所”は放送もされていたし、皆が知ってるんだ………」

 

「そんな! ()()はユイさん達の所為(せい)じゃ………!」

 

「良いの、さくら。“あの人達の言う事は当然”だから………」

 

と、そう言うユイの目から涙が零れ始める。

 

「ア、アレ?………()()出て来ちゃった………もう()()()()()()と思ったんだけどなぁ………アハハハ……」

 

涙を流しながら、乾いた笑いを零すユイ。

 

その姿は、見ていられないくらいに痛々しい。

 

「! ユイさん………」

 

そんなユイを、さくらは優しく抱き締めてやる事しか出来ない。

 

「………シャオロンは如何したんだ?」

 

と其処で誠十郎は、“店がこんな状態にも関わらず”姿の無いシャオロンについて尋ねる。

 

「シャオロンは………“今、帝都を騒がせている”泥棒を捕まえに」

 

「泥棒?」

 

「今朝、初穂が新聞を見ながら言ってました。ココの処、“帝都の彼方此方で宝石や貴金属類を盗んで回ってる泥棒が居る”って」

 

ユイの言葉に誠十郎が首を傾げると、さくらが思い出した様にそう言う。

 

「ソイツを捕まえて、“その功績で上海華撃団の解散を取り消させる”って………」

 

「馬鹿な!“泥棒如き”を1人捕まえたところで、()()ジェネラルAが“解散を取り消す”だなんて思ってるのか?」

 

傍若無人なジェネラルAを思い出しながら言う誠十郎。

 

「私もそう言ったんだけど………シャオロン、自棄になってて、聞いてくれなくて………」

 

『あの野郎、未だ拗らせてんのかよ………』

 

ゼロが呆れる様子を見せる。

 

「放っておく訳にも行かんか………」

 

「神山隊長。ユイさんとコッチは私に任せて下さい。隊長はシャオロンさんを」

 

「頼むぞ、さくら」

 

誠十郎はユイと神龍軒をさくらに任せ、シャオロンを探しに帝都の街へと繰り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都郊外のと或る寺………

 

其処の敷地内の一角に在る建物の庭で、大勢の子供達が遊んでいる。

 

その中に混じり、縁側に腰を掛けて“何か”を作っている雲水の姿が在った。

 

「出来たぞ」

 

そう言って雲水は、作っていた物………風車を目の前に居た少年に手渡す。

 

「わ~、ありがとう」

 

風車を貰った少年は、嬉しそうに其れを手に持って走り回る。

 

よく見ると、他にも風車を手に走り回っている少年少女達の姿が見受けられる。

 

「ありがとうございます。子供達の相手をして頂いて」

 

と其処で、室内で畳に正座していた白秋が雲水にお礼を言う。

 

この寺は、彼女が個人経営している孤児院なのだ。

 

「何、(ついで)だ………さて」

 

白秋にそう返すと、雲水は立ち上がる。

 

「行かれるのですか?」

 

「“地に堕ちた龍”を再び天に上げねばなるまい………」

 

「お気を付けて………『キング殿』にもよろしくお伝え下さい」

 

無言で頷くと、雲水は孤児院を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・某所………

 

「待ちやがれぇっ!!」

 

シャオロンが1人の男を追っていた。

 

追われるその男は、黒い服に黒い帽子、オマケに黒いマントと言う如何にも怪しい男だった。

 

そう………

 

この男こそが、今帝都を騒がせている泥棒なのである。

 

「逃がすかよ! 絶対に捕まえてやるっ!!」

 

“上海華撃団の復活”の為、必死に泥棒を追うシャオロン。

 

しかし、泥棒の逃げ足は尋常では無く、其れこそ()()()()()のスピードで走っている。

 

と、ココでシャオロンにチャンスが訪れた。

 

泥棒の行く手に川が立ちはだかったのだ。

 

「追い詰めたぜっ!!」

 

そう思い、スパートを掛けるシャオロン。

 

だが………

 

「!? なっ!?」

 

その顔が驚愕に染まる。

 

何故なら泥棒は、幅が10メートルは有るであろう川を“()()()()()()飛び越えてしまった”のだ。

 

走りの速さと言い、明らかに()()()其れではない。

 

「クソッ!!」

 

シャオロンは、悪態を吐きながらも素早く橋へと回り、追跡を続行する。

 

「!? うわっ!? ヤン・シャオロンだっ!!」

 

「怪獣だぁっ!!」

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「助けてくれぇっ!!」

 

と、シャオロンの姿を目撃した市民達が、悲鳴を挙げて逃げ回る。

 

(違うっ! 俺は上海華撃団だ! ()()じゃ無いっ!!)

 

心の中でそう言い返しながら、シャオロンは泥棒を追い続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

「う~ん………シャオロンの奴、一体何処に居るんだ?」

 

頭を悩ませながらそう呟く誠十郎。

 

彼が追っていると言う泥棒について聞き込みを行いながらその足取りを追っていたが、ココまでずっと空振りなのである。

 

『早いとこ見付け無えと(マズ)いぜ。今、帝都の連中にとってはアイツ、()()()()()()()()になっちまってるからな』

 

「分かってる………」

 

と、ゼロの言葉に誠十郎がそう返しながら、角を曲がると………

 

「!? うおわっ!?」

 

突然“凄まじいスピードの何か”にぶつかられ、誠十郎の身体が宙に舞った!!

 

「!? 危ねえっ!!」

 

ゼロが咄嗟に入れ替わり、アクロバットを決めながら無事着地する。

 

「!?」

 

ぶつかってきたのは、あの泥棒だった。

 

「! テメェ………()()()()()()なっ!」

 

するとゼロは、泥棒が“人間では無い”事を見抜く。

 

「!!」

 

泥棒が驚いた様子を見せると、その姿がまるで丸ノコの様な3つの突起が付いた機械を思わせる頭部を持ち、人差し指が異常に発達した宇宙人………

 

『宇宙超人 スチール星人』となった。

 

『! コイツはっ!?』

 

(『スチール星人』だ! 彼方此方の星で盗みを働いているコソ泥宇宙人だ! 昔パンダを盗みに、ウルトラマン(エース)が守っていた地球に現れた事がある!)

 

『………何で“パンダ”なんだ?』

 

ゼロの説明に、疑問を感じざるを得ない誠十郎だった。

 

「このソドロ様の正体を見破るとはな………何者だ、貴様?」

 

「俺は誠十郎! 帝国華撃団・花組の隊長! 神山 誠十郎だっ!!」

 

スチール星人・ソドロに向かって名乗りを挙げる誠十郎(ゼロ)。

 

「帝国華撃団だと? クソッ! “次から次へと()()()()()()に絡まれる”とは………今日は厄日か!?」

 

「“次から次に”だと………?」

 

誠十郎(ゼロ)がその言葉にひょっとしたらと思うと………

 

「此処かっ! 追い詰めたぞっ!!」

 

そう言う台詞と共に、漸く追い付いたシャオロンが姿を見せた!

 

「! シャオロン! やっぱりか!」

 

「!? 神山っ!? 何でこんな所に!?」

 

お互いの姿を確認して驚き合う誠十郎(ゼロ)とシャオロン。

 

「隙有りっ!!」

 

とその隙を突いて、スチール星人・ソドロは再度逃走を開始した!

 

「あ! 待ちやがれっ!!」

 

「オイ待て、シャオロン! お前に………」

 

「退きやがれっ!!」

 

「うおっ!?」

 

シャオロンと話そうとした誠十郎(ゼロ)だったが、シャオロンは誠十郎(ゼロ)を強引に押し退け、スチール星人・ソドロを追う。

 

『駄目だ! 完全に頭に血が上ってるぞ!』

 

「チイッ! 追うしか無えか!」

 

舌打ちをしながらも、スチール星人・ソドロとシャオロンを追い、誠十郎(ゼロ)も走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀座横丁・『神龍軒』………

 

「さくら、そんな事してくれなくても………」

 

「気にしないで下さい。お掃除は好きですから」

 

さくらは、箒を片手に神龍軒の店先のゴミを片付けていた。

 

あの後、ユイが落ち着きを取り戻すと、自主的に店の片づけを手伝い始めたのだ。

 

「………ありがとう、さくら」

 

「だから気にしないで下さい。此処は“上海華撃団の()()()場所”じゃないですか」

 

「“大切な場所”か………そうだね。特に“私やシャオロンにとっては”ね」

 

「? ユイさん?」

 

ユイの口調にさくらが首を傾げると、ユイはポツリポツリと語り出す。

 

「私とシャオロンはね………孤児だったんだ」

 

「えっ?」

 

「“ストリートチルドレン”って奴だね。別に私の国じゃ珍しく無かったよ………来る日も来る日もその日暮らし………明日なんて全然見えなかった………“()を生きるのに精一杯”………」

 

遠く悲しい目をして語り続けるユイ。

 

「或る時WLOFの連中が現れて、“適正が有る”って言われて上海華撃団入り………其れからはもう大活躍。今までの生活が嘘だったみたいに“世界が一変した”の」

 

「…………」

 

「でも、本当を言うと………私もシャオロンも、何処かで()()()()()。結果を出せなくなったら捨てられる………また“あの生活に戻っちゃう”って………」

 

「ユイさん………」

 

「だから、『帝国華撃団が再結成された』って聞いた時には、実を言うと………“私達の居場所が奪われるんじゃないか?”って、凄く怖かった」

 

震える身体を自分で抱き締めるユイ。

 

「ユイさん………」

 

と、さくらが何か言おうとした瞬間………

 

「待ちやがれーっ!!」

 

「!? シャオロン!?」

 

「シャオロンさん!?」

 

シャオロンの声が聞こえて来て、その方向を2人が見遣ると………

 

逃げるスチール星人・ソドロを追うシャオロンと、更にその2人を追う誠十郎(ゼロ)の姿が在った。

 

「! 宇宙人っ!!」

 

「ユイッ! ソイツを捕まえろっ!!」

 

さくらが驚きの声を挙げた瞬間、シャオロンがそう叫ぶ。

 

「えっ!?」

 

「早くしろっ!!」

 

「!!」

 

シャオロンに急かされ、ユイは反射的にスチール星人・ソドロの前に飛び出した!

 

「! ユイさん!」

 

「! 止せっ! 危険だっ!!」

 

その姿にさくらと誠十郎(ゼロ)が慌てる。

 

「退けぇっ! 小娘っ!!」

 

スチール星人・ソドロは、立ちはだかったユイを殴り飛ばそうとしたが………

 

「フッ! ハイィッ!!」

 

「!? ゴバァッ!?」

 

ユイは振られて来たスチール星人・ソドロの腕を弾くと、中国拳法特有の足捌きで懐に飛び込み、掌底を見舞った!

 

「ごおおおお………」

 

仰向けに倒れ、腹を抑えて悶えているスチール星人・ソドロ。

 

「観念しなさい、宇宙人! 私が………」

 

ユイがそのスチール星人・ソドロに向かって何か言おうとした、その時………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユイの身体に衝撃が走り、銀色の鋭い刃が()()()突き出て来た!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ?」

 

突然の事で呆然となるユイ。

 

「ファファファファファ」

 

ユイの身体を刺し貫いた刃の正体………

 

其れは、鳴き声なのか笑い声なのか分からぬ奇声を発している星人………『暗闇宇宙人 カーリー星人』の肩の角だった!

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「ユイイイイイイォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

我に返ったさくらとシャオロンの悲鳴が木霊する。

 

「!? ガハッ!?」

 

其処でユイは、口から夥しい量の血を吐き出し、ガクリと脱力した。

 

「ファファファファファ」

 

カーリー星人は、そんなユイをゴミでも捨てるかの様に無造作に放り捨てる。

 

「! 危ねえっ!!」

 

慌てて誠十郎(ゼロ)が落下地点に回り込み、キャッチする。

 

「ガフッ!………ガッ!」

 

辛うじて生きてはいるものの、更に吐血を繰り返すユイ。

 

「おお、ジャッパー先生! ありがとうございます!」

 

其処でカーリー星人の事を先生と呼びながら、スチール星人・ソドロが立ち上がる。

 

「やっぱり用心棒を雇っておいて良かったぜ」

 

如何やら、カーリー星人はスチール星人・ソドロに雇われた用心棒の様だ。

 

「ファファファファファ………堪らねえぜ………“女を刺し貫く感触”は何時味わって良いものだ………」

 

カーリー星人・ジャッパーはユイを刺し貫いた感触に酔っており、恍惚とした様子を見せている。

 

「この野郎っ! よくもユイをぉっ!!」

 

と、シャオロンが怒りのままに、そのカーリー星人・ジャッパーに殴り掛かる。

 

「ムンッ!」

 

「!? グガアッ!?」

 

しかし、カーリー星人・ジャッパーは肩の角を振り回し、アッサリとシャオロンをブッ飛ばす。

 

「男に用は無い。オイ、ソドロ。もっと女を刺し貫かせろ」

 

「ハイハイ、分かってますって。では、次の仕事に行きましょうか?」

 

カーリー星人・ジャッパーとスチール星人・ソドロはそう言い合い、2人して凄まじいスピードで走り去って行った。

 

「ま、待て………」

 

ダメージが大きかったのか、起き上がれないシャオロンが2体に向かって手を伸ばす。

 

「ユイさん! ユイさん! しっかりして下さいっ!!」

 

「直ぐに医療班を寄越してくれっ!! 大至急だっ!!」

 

一方、さくらと誠十郎(ゼロ)は串刺しにされたユイを必死に応急処置しつつ、上海華撃団の施設がWLOFによって稼働を止められている為、帝劇医療班の出動を要請するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・医療室………

 

「「「「「「…………」」」」」

 

沈痛な面持ちで佇んでいる花組の面々。

 

「…………」

 

同席しているシャオロンに至っては、絶望し切った顔となっている。

 

彼等の視線の先には、治療器『霊子再生槽』に入れられているユイの姿が在った。

 

コレは、体内の霊力を加速させる事で自然治癒能力を高める装置であり、嘗ての帝国(帝都)華撃団でも使用されていたものである。

 

帝劇の物は元々旧式の物だったが、援助が再開されて立て直しが進んだ際に、最新式の物に取り換えられていた。

 

しかし、その最新式霊子再生槽を以てしても、助かるか如何かは“本人の気力次第”とされている。

 

「ユイさん………」

 

「チキショウッ!!」

 

さくらが泣きそうになりながら呟き、初穂が壁を殴り付ける。

 

「如何してこんな事に………?」

 

「ユイ、死なないで………また神龍軒で“ももまん”が食べたい………」

 

クラリスは祈る様に両手を組み、あざみも心配そうに霊子再生槽を覗き込んで居る。

 

「………キャプテン。星人の方は?」

 

「今、陸海軍と警察が総力を挙げて探している。その間、市民達には外出禁止命令が出されたよ」

 

一方、アナスタシアも沈痛な表情を浮かべつつも、逃亡している星人達の行方を気にし、誠十郎がそう返す。

 

「………ユイ」

 

そして相変わらず絶望し切った表情のまま、ユイを見ているシャオロン。

 

「…………」

 

やがて幽霊の様な足取りで、誰にも気取られる事無く医療室から出て行った。

 

「………皆。こうしていても仕方無い。今は兎に角、逃げた星人達への対処が先だ。このまま野放しにしていては、第2、第3のユイくんを出してしまう事になる」

 

と其処で、誠十郎は花組の面々に向かってそう呼び掛けた。

 

「………ハイ」

 

「見てろよ、ユイ。お前のお返しはタップリとしてやるぜ!」

 

「コレ以上の犠牲者は出させません!」

 

さくら・初穂・クラリスは表情を引き締め、星人達への怒りを燃やす。

 

「………? シャオロンは?」

 

「アラ? さっきまで居た筈なのに………?」

 

其処で漸く、あざみとアナスタシアがシャオロンが消えた事に気付くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・路地裏………

 

「…………」

 

医療室から姿を消したシャオロンは、帝劇からも抜け出し、外出禁止命令が出されて人通りが全く無くなった帝都の街を彷徨い歩いていた。

 

やがて、空に暗雲が立ち籠め始め、ボタボタと雨が降り出す。

 

まるで“シャオロンの心情”を表すかの様に………

 

と、その雨に滑ったのか、シャオロンが転倒。

 

倒れ込んだのは、ゴミ捨て場の中だった。

 

「…………」

 

しかし、シャオロンは起き上がらない………

 

ゴミに埋まったまま、冷たい雨に打たれ続ける。

 

その頬を伝っているのは、雨水なのか、涙なのか………

 

「………ハ………ハハハハ………結局、()()戻っちまった………」

 

乾いた笑いを挙げるシャオロン。

 

ゴミに埋もれている状態が、“ストリートチルドレンだった頃の記憶”を呼び覚ましていた。

 

すると………

 

「無様だな………」

 

「!?」

 

突然そう言う声が聞こえて来て、シャオロンが顔を上げると其処には………

 

「何時までそうしている積りだ?」

 

あの雲水の姿が在った。

 

「何だテメェは?………放っといてくれ………()()()()()………この姿が似合ってんだよ………」

 

自嘲の笑みを浮かべて、雲水にそう返すシャオロン。

 

「その顔は何だ! その目は! その涙は一体何だっ!!」

 

その途端、雲水はシャオロンを怒鳴り付けた!

 

「!?」

 

「お前の涙で、あの敵が倒せるのか? この地球が救えるのか?」

 

「…………」

 

「………龍は()()()()()だが、“空を飛ばねばならぬから、空を飛ぶ”。“火を噴かねばならぬから、火を噴く”。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ………?」

 

「トカゲは、()()()()()()を可能にしても、“やらねばならぬ事”が有ったのだろう。『不可能を可能にしよう』そうすれば、多くの者を助けられる」

 

「多くの………者を………」

 

「お前は()か? 其れ共“只のトカゲ”か?」

 

シャオロンにそう問い質す雲水。

 

「俺は………俺は………」

 

「来い。お前を再び“龍にしてやる”」

 

「アンタ………誰なんだ?」

 

其処でシャオロンがそう問うと、雲水は編み笠の鍔を左手で上げる。

 

「俺は『ゲン』………『おおとり ゲン』だ」

 

そう言う雲水………『おおとり ゲン』の編み笠を上げている左手の指には………

 

獅子を(かたど)った指輪『レオリング』に付けられた赤い宝石『獅子の瞳』が輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

解散させられた上海華撃団ですが、それだけでなく、帝都市民からも風評被害を受けます。
そんな中で、帝都を騒がせていた泥棒を捕まえようとしたシャオロン。
しかし、その泥棒の正体はスチール星人・ソドロであり、その用心棒であったカーリー星人・ジャッパーにより、ユイが重傷を負ってしまう。

完全に絶望したシャオロンの前に現れたのは、あの雲水………『おおとり ゲン』!
カーリー星人が相手と言う事で、感想への書き込みもあった様に、もうお察しがついていられるでしょう………
そう!
シャオロンには『伝説のアレ』を受けて貰います!!
色々言われて来た彼ですが、多分次回を見た皆さんは、『そこまでやる事無いだろう!!』と言いたくなるでしょうね(笑)
まあ、お楽しみに。

シャオロン………死ぬなよ!(爆)

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