チャプター5『宇宙の忍者』
バルタンバトラー・ゲカホ
バルタン星人・アシサ
四次元ロボ獣 メカギラス・荒吐 登場
帝都・ミカサ記念公園………
「貴様………やはり」
現れた誠十郎(ゼロ)を見て、バルタン星人・アシサは“何か”を確信した様子を見せる。
「爺さん、あざみ………コイツは俺に任せな」
そんなバルタン星人・アシサを見据えながら、誠十郎(ゼロ)は二刀を構える。
「隊長」
「ウル………神山くん」
其処で、バルタンバトラー・ゲカホは八丹斎の姿に戻ると、あざみと共にその場を少し離れる。
「オノレ………邪魔をするか!」
バルタン星人・アシサは忌々し気に叫んだかと思うと、誠十郎(ゼロ)目掛けて赤色凍結光線を放つ。
「おっと!」
しかし、誠十郎(ゼロ)は其れを跳躍して回避。
そのままバルタン星人・アシサの頭上を飛び越えて、背後に降り立つ。
「セエヤッ!!」
「チイッ!」
そして素早く逆手に握った二刀を振るうが、バルタン星人・アシサは左手の鋏で受け止める。
「フオォッ!!」
「フッ!」
反撃にと、身体を回転させる様にして右手の鋏で横薙ぎを繰り出すが、誠十郎(ゼロ)はバックステップして躱す。
「フォッフォッフォフッ!」
その誠十郎(ゼロ)目掛けて、白色破壊光弾を連射するバルタン星人・アシサ。
「フッ! ハッ!」
誠十郎(ゼロ)は連続バク転で躱して行く。
「セエヤッ!!」
そして連射が途切れた瞬間、二刀を投擲した!
「フオォッ!!」
高速回転しながら飛んで来た二刀を、バルタン星人・アシサは両手を振って弾き飛ばす。
だがその瞬間、誠十郎(ゼロ)は一瞬で距離を詰める。
「!?」
「おうりゃあっ!!」
そして、強烈なボディブローを喰らわせる!!
「!?」
「ハアッ!!」
思わずのめり込んだ状態のバルタン星人・アシサを、脇に抱え込む様にして捕まえる誠十郎(ゼロ)。
「神山ハリケーンッ!!」
そして、ウルトラハリケーンならぬ“神山ハリケーン”で竜巻を発生させながら、高速回転させて上空へと投げ飛ばす!!
「フォッフォッフォフッ!?」
上空高くへと舞い上がったバルタン星人・アシサに、先程弾いた二刀が襲い掛かる!!
「!?」
×の字に斬り裂かれた、バルタン星人・アシサはそのまま地上へと落下し、地面に叩き付けられた!!
(良し!)
『いや、
(!? 何っ!?)
勝ったと思う誠十郎だったが、ゼロは油断無く二刀を手元に戻して構える。
すると、倒れていたバルタン星人・アシサの背中が割れ、其処からまるで脱皮の様に“無傷の”バルタン星人・アシサが姿を見せた!
フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………
(!? 脱皮した!?)
『“バルタンの宇宙忍法”だ』
誠十郎が驚き、ゼロがそう返した瞬間………
フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………
バルタン星人・アシサが2体に分裂した。
(!? 増えたっ!?)
フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………
誠十郎が驚いていると、バルタン星人・アシサは更に3体、4体と分裂。
そして青く半透明の姿になると、誠十郎(ゼロ)の周りを回り始めた。
(ど、どれが本物なんだっ!?)
『落ち着け、誠十郎。分身は奴の
(! 心の目で………)
其処で誠十郎(ゼロ)は目を閉じ、意識を集中させ始める。
フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………
そんな誠十郎(ゼロ)を小馬鹿にする様に、不気味な笑い声を響かせるバルタン星人・アシサ。
「…………」
だが、誠十郎とゼロは其れを無視して更に意識を集中させる。
すると、目を閉じている2人の脳裏に、分身して自分達の周りを回っているバルタン星人・アシサのイメージが浮かび上がる。
その分身が1体、また1体と消えて行き………
やがて1体だけが残った状態となる。
「!! 其処かっ!!」
誠十郎(ゼロ)は、その1体が居た場所に向かって蹴りを繰り出す!
「フォッ!?」
その蹴りは、見事にバルタン星人・アシサの本体を捉え、海際のフェンスまでブッ飛ばした!
ぶつかったフェンスが、飴の様にグニャリと変形する。
「やった!」
「嫌………未だじゃ」
あざみが思わず歓声を挙げたが、八丹斎が厳しい表情のままでそう言う。
フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………
と、のそのそと起き上がっていたバルタン星人・アシサが再び脱皮。
元気な状態となり、またも仕切り直しとなる。
(駄目だ! コレじゃキリが無い!)
『チッ! 変身して光線が撃てれば1発だってのに………』
誠十郎の言葉に、ゼロが愚痴る様に返す。
フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………
すると其処で、バルタン星人・アシサの方が勝負を着けようと巨大化した!!
「! 野郎っ!!」
フォッフォッフォフッフォッフォフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………
変身出来ない誠十郎(ゼロ)を踏み潰そうと、バルタン星人・アシサは右足を上げる。
しかし、次の瞬間!!
その身体に“何か”が命中したかと思うと、大爆発を起こした!!
「!? 何だっ!?」
誠十郎(ゼロ)が驚きの声を挙げると、やがて爆煙が晴れて来て………
黒焦げで瀕死となっているバルタン星人・アシサの姿が露わになった。
(? 如何してまた脱皮しないんだ?)
バルタン星人・アシサが、脱皮で“ダメージを回復しようとしていない”事に疑問を持つ誠十郎。
「まさか………?」
と、ゼロは“或る可能性”に思い至る。
其処へプロペラ音が聞こえて来て、ミカサ記念公園の上空に翔鯨丸が進入して来た。
機体に備え付けられている主砲の砲口からは、硝煙が立ち昇っている。
(翔鯨丸! さっきの砲撃の正体は翔鯨丸か!!)
誠十郎が、砲撃の正体が翔鯨丸の主砲であった事を察していると………
「コ、コレは………スペ………シウム………」
バルタン星人・アシサがそう呟き、その言葉を最期として大爆発を起こし、木っ端微塵となった!!
「ハハハ! 見たか!! イデさん特製の『スペシウム弾頭弾』の威力を!! “ウルトラマンの光線を解析して作り出した元素エネルギー”を込めた特製砲弾だぞ!!」
「“霊子エネルギーを『所定の方法』で変換すると、ウルトラマンの光線と同じ元素エネルギーになる”って事を発見した俺の事も忘れないで下さいよ、先生」
「分かってる、分かってる」
翔鯨丸からイデと令士の声が響いて来る。
(イデさん! 令士! さっきのはイデさんと令士の発明か!)
『俺の光線を解析するとは………やるな、アイツ等』
合点が行った様子を見せる誠十郎と、イデ達の技術力の高さに素直に感心するゼロ。
「神山くん! 緊急事態よ! 急いで天宮さん達の救援に向かって頂戴!!」
すると其処で、今度はすみれの声が翔鯨丸から響いて来た。
(救援? さくら達に何か有ったのか!?)
『みてぇだな………身体返すぜ、誠十郎』
やや焦りが感じられるすみれの声から、かなり拙い状況である事を誠十郎が推察すると、ゼロが主導権を返す。
「あざみ! 行くぞ!」
「! うん! 頭領………」
誠十郎が呼び掛けると、あざみは一旦八丹斎に向き直る。
「あざみ、望月流忍術頭領として申し渡す………“免許皆伝”じゃ」
「!」
「もうお前に教える事は何も無い………コレからは“忍の”では無く、
「己の………掟」
「そうじゃ。お前こそ………“
あざみをジッと見据え、八丹斎はそう断言した。
「!………はい!」
其れを聞いたあざみは、表情を引き締めて力強く頷いた。
そして、誠十郎と共に翔鯨丸へと乗り込んで行った。
「…………」
ミカサ記念公園から離れて行く翔鯨丸を見送る八丹斎。
其処で彼は、“青と白に塗られ、小さな窓の様な物が3つ付いた機械”を取り出したのだった。
翔鯨丸へと乗り込んだ誠十郎(+ゼロ)とあざみは直ぐ様戦闘服へと着替え、収納スペースに収められている自分達の無限の元へと向かった。
「………隊長」
と、無限へと乗り込もうとしたところで、あざみが誠十郎を呼び止めた。
「ん? 如何した、あざみ?」
無限へと乗り込もうとしていた姿勢で止まり、あざみに尋ね返す誠十郎。
「隊長………あざみは『本物』になれると思う?」
「…………」
其れを聞いた誠十郎は無限への搭乗を中断し、あざみに向き直る。
「あざみは忍者。本当に、忍者………だけど、誰もあざみが忍者だなんて信じて無い。“本物の忍者”が居るなんて信じてる人はいない」
「あざみ………」
「頭領は免許皆伝だって言ってくれたけど、誰から見ても、あざみは『ニセモノ』………如何したら、『本物』になれる?」
『ニセモノに本物か………』
あざみのその言葉で、ゼロはジードの事を思い起こしていた。
『誠十郎………」
(大丈夫だ、ゼロ。分かってる)
ゼロが何かを言おうとしたが、誠十郎は其れを制した。
「………その答えはもう出てるじゃないか」
「えっ?」
誠十郎の言葉に、あざみは驚いた様な様子を見せる。
「あざみは八丹斎さんが宇宙人でも関係無い。自分のお祖父ちゃんだ。そう言ってたろ?」
「うん………」
「つまり、“そう言う事”だ………何が本物で何かニセモノを決めるのは………
「自分自身………」
「そうだ。あざみが自分の事を忍者だと信じるなら、もう君は忍者なんだ。先ず自分が信じなきゃ、誰も信じてはくれないさ」
そう言いながら、誠十郎はあざみの前へ屈み込み、視線を合わせる様にする。
「………隊長は? 隊長はあざみが忍者だって、信じてくれる?」
「勿論。隊長として、あざみをずっと見て来たんだ。何より………」
「? 何より?」
「………実はな。ホントは内緒なんだけど、俺はウルトラマンゼロと“友達”なんだ」
「!? ええっ!?」
誠十郎の思わぬ言葉に、あざみは驚く。
「ゼロから聞いたんだけど、バルタン星人は“宇宙忍者”と呼ばれているんだ」
「! 宇宙忍者!?」
「そうだ。つまり、そのバルタン星人の八丹斎さんから教えを受けたあざみは紛れもなく忍者………いや、宇宙忍者だよ」
「あざみが………宇宙忍者」
「其れに………ウルトラマンにも忍者が居るそうだ」
「! ウルトラマンにも!?」
「ああ、フーマって言うらしい」
「ウルトラマンにも忍者が………」
あざみが嬉しそうに笑う。
「だから、俺は………周りが如何思っていようと、あざみが忍者だって信じているよ」
「ありがとう………誠十郎!」
「ふふふ………ん? 誠十郎?」
隊長では無く、名前を呼んで来たあざみに首を傾げる誠十郎。
「うん、誠十郎………そう呼んじゃ、駄目?」
「勿論、構わないよ。俺も、あざみって呼んでるんだし………ははっ、まあ、お相子ってヤツだな」
「………うん!!」
あざみが笑顔で頷いた瞬間………
『魔幻空間に突入致しますわ! 衝撃に備えてっ!』
如何やら現場である上野公園に到着したらしく、すみれのそう言うアナウンスが流れて来た後、翔鯨丸に軽い衝撃が走った。
展開されていた魔幻空間内へ突入を果たした様だ。
『魔幻空間内に突入!………!? いけないっ!?』
と、アナウンスの途中ですみれが焦った様な声を挙げたかと思うと、今度は翔鯨丸に大きな衝撃が走った!!
「!?」
「わあっ!?」
誠十郎とあざみが転びそうになると、船内にレッドアラートが鳴り響く。
「何だっ!?」
『敵の攻撃を受けた! 飛行を維持出来ない! 不時着する!! 君達は無限で飛び出すんだ!!』
イデが、船内放送で誠十郎の声に応えるかの様に言って来た。
「! あざみ! すまんっ!!」
「えっ!?」
誠十郎は戸惑うあざみを無視して抱き上げると、そのまま彼女の機体へと押し込んだ!
「! 誠十郎っ!!」
「大丈夫だ! 直ぐに俺も出る!!」
あざみの声に誠十郎がそう返したかと思うとハッチが閉まり、あざみ機が翔鯨丸から射出された!
「! くうっ!!」
戸惑いながらも、あざみ機は空中で姿勢を整え、何とか着地する。
その直後、翔鯨丸が黒煙を曳きながら、離れた場所へ派手に粉塵を巻き上げながら不時着したのだった。
「!? 誠十郎っ!!」
誠十郎機が飛び出さなかった事に、あざみの脳裏に一瞬最悪の想像が過る。
「何だぁ? 白い機体の奴はくたばったのか? くふふふ、ソイツは大戦果だな」
「! その声は………朧っ!!」
其処へそう言う声が聞こえて来て、その声が朧のモノである事に気付いたあざみが、声のした方に向き直る。
其処には、激しく損傷して火花を散らしているさくら達の無限と、倒れて苦しそうに悶えているゼットン………
「ヒヒヒヒヒ………」
そして、其れを見下すかの様に不気味に佇んでいる銀色の巨大なメカ怪獣の姿が在った。
良く見れば、頭頂部に朧の傀儡機兵・荒吐がくっ付いている。
其れは嘗て『四次元宇宙人 バム星人』が作った侵略用兵器………
『四次元ロボ獣 メカギラス・荒吐』だった!
つづく
新話、投稿させて頂きました。
バルタン星人・アシサと戦う誠十郎(ゼロ)
しかし、宇宙忍法を繰り出すバルタン星人・アシサに対し、あざみの目を気にして変身出来ない誠十郎(ゼロ)は決め手を欠く。
しかし、そこへ翔鯨丸が救援に到着。
何とあのメテオール『スペシウム弾頭』をイデさんと令士が開発。
スペシウムが弱点のバルタン星人に致命的なダメージを与えました。
そして窮地に陥っているさくら達の救援に向かう中、あざみは自らの悩みを誠十郎に打ち明ける。
誠十郎も成長してきてるので、今回はゼロのアドバイスなしであざみを励まします。
ヒーロー自身がヒーローと友達だって言って子供を励ましたりするのって王道ですよね。
だが、突然の攻撃で翔鯨丸が誠十郎を発進させられぬまま不時着。
1人放り出されたあざみの前に待ち構えていたのは朧とメカギラス。
傀儡機兵とロボ怪獣を合体させるって言うのをやってみたかったので、今回の朧の怪獣はロボット怪獣になります。
勿論、荒吐は只くっ付いてるだけではないので、どんな力を見せるかご注目下さい。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。