チャプター1『ツングースカの惨劇』
第5話『太陽より愛をこめて』
チャプター1『ツングースカの惨劇』
円盤生物 シルバーブルーメ
宇宙大怪獣 ベムスター
機械人形 ゴブニュ(ヴァハ) 登場
吹雪が吹き
「進路、異常無し」
「警戒を怠るな。宇宙人共が“積み荷”を狙って来ないとも限らん」
レーダー手からの報告に、艦長席に座る莫斯科華撃団の隊長がそう返す。
「………隊長。やはり“彼女”を我々の元へ引き入れるのですか?」
と其処で、隊長の隣に立っていた副隊長がそう尋ねる。
「当然だ。其れが『祖国からの指示』だ」
「正直、未だ納得出来ません。あんな幼い少女を………しかも彼女は!」
「
「!!」
“同志”と付けて呼ばれた副隊長がビクリとする。
「貴様、『祖国の
「い、いえ! そんな!? 自分は………」
「
「………了解」
副隊長は、其れ以上何も言えなくなる。
権威・
と、その時!!
「! 未確認飛行物体、接近!!」
「何っ!?」
レーダー手から報告に、隊長が声を挙げる。
「は、速いっ!? ああっ、衝突しますっ!!」
だが、未確認飛行物体の速度は尋常では無く、一瞬にして莫斯科華撃団の空中戦艦へと接近。
空中戦艦に衝撃が走る!!
「「「「「!? うおおっ!?」」」」」
艦橋に居た隊員達が声を挙げた瞬間………
艦橋の窓を“何か”が覆い尽くした!
「!? 何だっ!? 何が起こっている!?」
副隊長が、慌てながらもそう問い質す。
艦橋の窓を覆っている
其れは、無数の巨大な“触手”だった。
更に、黄色い液体の様な物が滴って来たかと思うと、ジューッ!という音と共に、空中戦艦の彼方此方から白い煙が上がり始めた。
「!? 溶解液っ!? まさかっ!? 怪獣か!?」
彼方此方が溶け始めている空中戦艦を見て、隊長が悲鳴の様な声を挙げる。
その予測通り………
莫斯科華撃団の空中戦艦に衝突して取り付き、触手と溶解液で攻め立てているのは、まるで“クラゲ”を思わせる円盤状の怪獣………
嘗て防衛チーム『MAC』を全滅させた『ブラックスター』から来た悪魔の使者………
『円盤生物 シルバーブルーメ』だった!!
「撃て! 攻撃しろっ!!」
「し、しかし! 敵は本艦に取り付いています! このまま攻撃を行うと、本艦にも被害が………」
「構わん! このままではどの道
「ダ、
シルバーブルーメを引き剥がそうと、隊長の命令で空中戦艦の武装がシルバーブルーメに照準を合わせ、発射される。
取り付いているシルバーブルーメに対して攻撃している為、空中戦艦にも被害が出るが、そんな事には構っていられない、と次々に攻撃が繰り出される。
やがて、僅かだがシルバーブルーメの触手が緩んで、剥がれそうになる。
「良し! 良いぞっ!!」
希望が見え始め、隊長が歓声を挙げるが………
更なる絶望が襲い掛かった………
「!? 新たな未確認飛行物体接近っ!!」
「!? 何だとっ!?」
レーダー手が新たな未確認飛行物体接近の報告を挙げたかと思うと………
ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!
吹雪を切り裂く様に、腹部に五角形の器官を持つ、平たい鳥の様な怪獣………
『宇宙大怪獣 ベムスター』が現れた!!
「ま、また怪獣がっ!?」
「クソッ! 武装の半分を奴に向けろ! 撃て! 撃てぇっ!!」
副隊長が悲鳴を挙げる中、隊長は武装の半分をベムスターに回して攻撃させる。
ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!
しかし、MATアローのミサイル攻撃すら物共しなかったベムスターには、空中戦艦の攻撃も通用せず、委細構わず突き進む。
そして空中戦艦に肉薄したベムスターは、身体を垂直に立てたかと思うと、腹部の口『吸引アトラクタースパウト』を開き、空中戦艦の艦首を呑み込んだ!
「うおっ!?」
「霊子エネルギー並びに蒸気圧力、急速低下!!」
「!? 何っ!?」
「か、艦首に取り付いた怪獣が、本艦のエネルギーを全て吸い上げています!!」
ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!
莫斯科華撃団の空中戦艦のエネルギーを全て吸収して行くベムスター。
やがて、艦橋の照明が落ちた。
「エネルギー更に低下! 全システムダウンッ!!」
「な、何とかしろっ!!」
隊員からの報告に、最早真面な指揮も出来ない隊長。
と、次の瞬間!!
艦橋の天井が突き破られた!!
「「「「「!?」」」」」
莫斯科華撃団の隊員達が見上げた先には、既に空中戦艦の殆どを呑み込み始めていたシルバーブルーメのグロテスクな体内が広がっていた。
其処から、艦橋中に黄色い溶解液が噴射される!
「ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」
「ウワアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」
幾つもの断末魔が木霊し、莫斯科華撃団の隊員達は無残に溶かされて行った………
一方、その頃………
阿鼻叫喚の地獄絵図となっている空中戦艦の最深部………
まるで
「キャッ!!」
幼い茶色掛かった銀髪の少女が、艦に走った衝撃で床に転ぶ。
少女が居る部屋は、簡素なベッド以外に物が無く、扉は1つで覗き窓には鉄格子が填められている。
まるで牢屋の様な小部屋だった。
「…………」
未だ振動が走る中、立ち上がった少女は不安気に両手を胸の前で組む。
「姉さん………」
と、少女がそう呟いた瞬間………
部屋の扉が轟音と共に大きく歪んだ!!
「!? ひっ!?」
思わず少女が悲鳴を漏らすと、まるで扉を殴っている様な音が数度響き、その度に扉が大きく変形する。
やがて隙間が出来たかと思うと、其処から手が突っ込まれ、鈍い音を立てながら分厚い扉を抉じ開けた。
「…………」
現れたのは、茶色っぽい体に7つの光るカメラアイを持つ人型ロボット………
『機械人形 ゴブニュ(ヴァハ)』だった!
「ヒッ!」
ゴブニュ(ヴァハ)の姿を見て、再度悲鳴を挙げる少女。
「…………」
一方ゴブニュ(ヴァハ)は、少女の姿を確認すると手を伸ばしながら近付く。
「あ、あ、ああ………」
「…………」
ゆっくりと迫って来るゴブニュ(ヴァハ)の姿に、少女の顔がドンドンと青褪めて行く。
「…………」
遂に、眼前に立ったゴブニュ(ヴァハ)の手が少女に届こうとする。
………その瞬間!!
「! 嫌ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
少女の叫びと共に、その身体から“強烈な光”が発せられた!!
「………!」
その光に呑まれたゴブニュ(ヴァハ)は、“一瞬で”消滅。
そして、光はドンドンと広がって行った。
露西亜・ペトログラード上空………
ピギャアッ! キュイイイィィィィッ!!
殆どスクラップになった莫斯科華撃団の空中戦艦を、どんどん呑み込んで行くシルバーブルーメとベムスター。
と、その次の瞬間!!
空中戦艦を“
ピギャアッ!? キュイイイィィィィッ!?
その光を浴びた、シルバーブルーメとベムスターがゴブニュ(ヴァハ)と同様に消滅する。
光は吹雪を吹き飛ばし、まるで太陽の様に辺り一面を照らし出した。
「! 遅かったかっ!?」
と其処で、地上に白いマントを翻して仮面を付けた“謎の怪人剣士”が現れた。
体型と声から察するに、女性の様である。
やや呆然とした様子で光の広がる空を見上げる白マント。
やがて光は収まり、辺りは静けさを取り戻す。
と、空の1点に光が輝く。
「!!」
白マントは、直ぐ様その光の下へと走る。
やがて真下へ到着して足を止めると、光が徐々に降下して来る。
その姿が、目視で確認出来る距離にまで迫り正体が明らかになる。
其れは、背中からまるで“天使の様な白い翼を生やした”、あの少女の姿だった。
ゆっくりと白マントの許へと降りて来る少女。
と、白マントの頭上まで降りて来たかに思われた瞬間、翼が弾ける様に消えてそのまま重力に引かれて落下する。
「!!」
落ちて来た少女を抱き留める白マント。
「…………」
少女は気を失い、目を閉じていた。
「力を使い果たしたのか………」
少女を見ながら、白マントはそう呟く。
(私ではこの子を
やがて、白マントは少女を抱えたままその場を後にしたのだった………
◇
???………
一面が窓になっているテラスの様な場所に、金髪の若い男が佇んでいた。
「失礼します、『カミンスキー』様」
其処へ、後ろ髪をギブソンタックで纏めた青み掛かった銀髪の女性が姿を現す。
「莫斯科華撃団の空中戦艦の撃墜を確認した、との報告が入りました」
「そうですか………『クラーラ』は?」
女性の方を向かずにそう問い質す『カミンスキー』と呼ばれた男。
「残念ながら“確保には失敗した”と………如何やら、謎の存在に保護されて
「帝都ですか………ならば
其処でカミンスキーは、女性の方へと近付く。
「貴女にも“存分に働いて貰います”よ、『レイラ』」
『レイラ』と呼んだ女性の頬へと手を伸ばそうとしたカミンスキーだが………
「ハイ、カミンスキー様。仰せのままに………」
其れを躱す様に、レイラは頭を下げると踵を返して足早にその場を離れて行った。
「フッ………やれやれ………」
そんなレイラを見送りながら、カミンスキーは困った様に肩を竦めたのだった。
◇
その翌日の早朝………
大帝国劇場にて………
朝日が帝都を照らし始め、小鳥の
「うう~~ん、良い天気だ。今日も絶好の公演日和だな」
伸びをしながら出て来た誠十郎が、雲1つ無い快晴の空を見上げてそう言う。
『お前的に言うなら、“モギリ日和”じゃないのか? 誠十郎』
そんな誠十郎に、ゼロがそうツッコミを入れる。
「ゼロ、其れを言うなって」
やや不満気にしながら、誠十郎は左腕を構えてウルティメイトブレスレットに向かってそう言う。
『ハハハハ、ワリィワリィ………! 誠十郎! 柱の陰だ!!』
軽く謝るゼロだったが、其処で何かに気付いて声を挙げる。
「えっ!?」
誠十郎が確認すると、正面玄関にある3つの柱の内、中央の柱を支えている土台部分の陰から、“腕の様な物”がはみ出していた。
「!!」
直ぐ様誠十郎が正面へと回ると、其処には………
「…………」
土台に背を預ける様に座り込み、気を失っているあの少女の姿が在った。
「! 君! 如何した!? 君!?」
「…………」
少女の肩を摑んで呼び掛ける誠十郎だが、少女からの反応は無い………
「! 大変だ!」
「神山さん? どないしたんや? 朝からそんな大声出して?」
誠十郎が少女を抱え上げると、其処へ売店の準備に来たこまちが姿を見せる。
「こまちさん! 来客用の部屋を開けて下さい!!」
「えっ!? そ、その子は!?」
「説明してる暇は有りません! 早くっ!!」
「わ、分かったわっ!」
説明もそこそこに、誠十郎は少女を抱き抱えたまま、こまちと共に来客用の部屋へと向かったのだった。
「…………」
その様子を、帝劇正面の建物屋上の縁で白マントが見下ろしていた。
「………頼むぞ、神山くんに花組の諸君。そして………ウルトラマンゼロ」
白マントは、そう呟くと踵を返して人間らしからぬ跳躍力で屋根から屋根へと跳んで、姿を消したのだった………
つづく
ウルトラ怪獣大百科
怪獣コンピューター、チェック!
『円盤生物 シルバーブルーメ』
全長:0.4~29メートル(無限大)
体重:1.2キロ~1万トン以上(無限大)
能力:150メートルまで伸びる触手、溶解液
初登場作品:ウルトラマンレオ第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC全滅! 円盤は生物だった!』
ウルトラシリーズ史上最悪のトラウマ怪獣。
悪魔の惑星『ブラックスター』から飛来した円盤生物の第1号。
登場回のサブタイトル通り、地球防衛チームMACを全滅させた上、多くの一般市民やゲン(レオ)の親しい人も殺害すると言う類を見ない被害を出した。
円盤生物はその名の通り、円盤状の形態に変形出来、更に小型化もして潜伏出来ると言う厄介さを持つ。
最後はレオのスパーク光線で倒されたが、その際に体内からドロドロに溶かされたマッキー2号を引き摺り出すシーンもかなりのショッキングである。
『宇宙大怪獣 ベムスター』
身長:46メートル
体重:6万1000トン
能力:腹部の口・吸引アトラクタースパウト、角から放つベムスタービーム
初登場作品:帰ってきたウルトラマン第18話『ウルトラセブン参上!』
強豪怪獣の1体。
此方もシルバーブルーメの様に、防衛チームの宇宙ステーションを飲み込んで全滅させるというのを度々やらかしている。
腹部の口・吸引アトラクタースパウトであらゆるエネルギーを吸収出来、ウルトラマンの光線さえ吸収してしまう。
防御力も高く、MATの攻撃をまるで寄せ付けなかった。
帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックも1度は敗れるが、ウルトラセブンによって届けられたウルトラブレスレットにより勝利を収める。
その後も幾度と無く登場し、ウルトラマン達を苦戦させている。
また、ヤプールによって強化された改造ベムスターや、モデルにした怪獣戦艦ベムズン等も存在する。
『機械人形 ゴブニュ(ヴァハ)』
身長:2メートル
体重:350キロ
能力:強力な怪力
初登場作品:ウルトラマンティガ第19話『GUTSよ宙へ・前編』、第20話『GUTSよ宙へ・後編』
謎の喜界島から送られたロボット。
中身はがらんどうだが、機体を構成する金属そのものがコンピューターでありエンジンでもあるというハイテク兵器。
理由は不明だが、GUTSの新戦力『アートデッセイ号』に搭載されたマキシマオーバードライブの破壊を狙う。
無数のヴァハが合体すると、巨大なオグマと呼ばれる個体になれる。
新話、投稿させて頂きました。
遂に始まりました、アニメ版から先行登場となる莫斯科華撃団編。
その莫斯科華撃団ですが………
やはり全滅は避けられない運命でした………
まあ、あの2体に襲われては全滅も必須と言えますが………
そして謎の少女は謎の白マントの手で帝劇へ。
果たしてその意図は?
そして正体は如何に(笑)
カミンスキー達も登場しておりますが、レイラの様子が?………
この理由は後々明らかになります。
お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。