チャプター2『謎の少女・クラーラ』
帝劇2階・来客用宿泊室………
「…………」
ベッドで眠る少女を、医療資格を持つこまちが診察している。
「こまちさん、如何ですか?」
そのこまちに誠十郎が尋ねる。
「「「「「…………」」」」」
騒動を聞いて集まって来た花組の面々も、不安気な様子を見せている。
「………うん、大丈夫やな。ちょっと疲労してるみたいやけど、怪我も無いし、このまま寝かしとけば目を覚ます筈や」
「良かった~」
こまちがそう言うと、さくらが安堵の息を吐き、初穂達も安心した様子を見せる。
「其れにしても………この
「今時行き倒れか?」
となると、疑問が湧くのが“少女の正体”であり、クラリスと初穂がそう言い合う。
「何か“
「いや、荷物らしき物は何も無かったよ」
「つまり、現状では“この
あざみの質問に誠十郎が返すと、アナスタシアがそう言う。
「兎に角、俺はすみれさんに報告して来る。その
「了解しました」
誠十郎はそう言って客室を出ると、すみれの許へと向かった。
「其れにしても、豪い可愛らしい
「ホント………まるでお人形さんみたいです」
少女の端整な容姿に、こまちとクラリスがそんな感想を漏らす。
「肌なんかもスゲェ色白だな」
「
初穂の言葉を聞いて、アナスタシアがそう推測する。
「露西亜………ひょっとして?」
「あざみ? 如何したの?」
アナスタシアの言葉を聞いて、あざみが“或る可能性”に思い至ると、さくらが声を掛ける。
すると………
「………う………ううん………」
寝ていた少女から声が漏れる。
「お? 気が付いたみたいや」
「…………」
こまちがそう言った瞬間、少女がゆっくりと目を半開きにする。
「…………」
「お嬢ちゃん、大丈夫かいな?」
覚醒したばかりでぼんやりとしている様子の少女に、こまちがそう声を掛ける。
「!?」
途端に、少女は目を見開いたかと思うと、掛けられていた布団を撥ね退けながら飛び起きる。
「「「「「「!?」」」」」」
思わぬ行動に驚く、花組の面々とこまちの間をベッドから飛び出した少女は擦り抜けて行き、そのままドアを開けて外へと飛び出して行った。
「! あ、コラッ! 何処行くんだっ!?」
「未だ動いたらアカンで!」
其処で我に返った初穂とこまちが叫ぶ。
「混乱してるみたいね。倒れる前に何か有ったのかしら?」
「其れよりも! 早く追いましょう!!」
「若しも華撃団の施設に入り込まれたら大変」
アナスタシアがまた推測していると、クラリスがそう言い、あざみも同意する。
「待ってっ!!」
そして、さくらが飛び出したのを皮切りに、初穂達も少女の後を追ったのだった。
大帝国劇場・支配人室………
「………と言うワケで、客室へと運びました。勝手な事をして申し訳有りません」
報告を終えた誠十郎が、行き倒れていた様子とは言え“部外者”を勝手に帝劇内へ入れた事に対して頭を下げる。
「気にしないで良いわ、神山くん。
「ありがとうございます」
すみれがそう言い、誠十郎は再度頭を下げる。
「しかし、その少女………気になりますわね?」
「今、さくら達が様子を見ていて………」
と其処で、ドタドタと大人数が階段を駆け下りている音が聞こえて来る。
「うん?」
「何ですの?」
誠十郎とすみれは、直ぐに確認に向かった。
大帝国劇場・階段………
「ハアッ! ハアッ!」
「オイ、待てって!!」
息を切らしながらも階段を駆け下りる少女に、初穂の声が飛ぶ。
其れでも少女は止まらない。
「未だ動いちゃ駄目ですよ!」
「ジッとしとき!」
「ハアッ! ハアッ!」
続いてクラリスとこまちの声が飛ぶが、やはり少女は止まらない。
「あざみ、回り込める?」
「お任せ………」
其処で、アナスタシアがあざみに先回りする様に言う。
しかし………
「!? あっ!?」
其れより先に少女が足を滑らせ、その身体が階段から宙を舞う。
「!? 危ないっ!!」
「おい、如何したんだ?」
「何の騒ぎですの?」
さくらが叫んだ瞬間、誠十郎とすみれが支配人室から出て来て、階段下に現れた。
その2人の目に飛び込んで来たのは、“階段の踊り場から落下して来る少女の姿”だった。
「!?」
「! 危ないっ!!」
驚くすみれと、素早く落下地点に回り込む誠十郎。
「フッ!」
「はうっ!」
見事クラーラをキャッチする事に成功する。
「大丈夫かい?」
お姫様抱っこで抱えた少女に、誠十郎はそう尋ねる。
『大丈夫か?』
「!?」
其処で少女の脳裏に、“誠十郎
しかし、その顔が良く思い出せない。
「…………」
「あ、あの………?」
少女はジッと誠十郎を見詰め、誠十郎は戸惑うばかりだ。
「隊長~」
「!?」
と其処へ、やや不機嫌そうな声が聞こえて来て誠十郎が視線を向けると、其処には………
「まさか、そんな“子供”に手ぇ出すとはなぁ………」
「其れは如何かと思うわ、キャプテン」
“軽蔑する様な眼差し”を向けながら、そう言って来た初穂とアナスタシア。
「地獄に落ちて下さい」
クラリス
「………ロリコン」
あざみも、冷たい視線を向けてそう呟く。
「ご、誤解だああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
“有らぬ疑い”を掛けられ、誠十郎は悲鳴の様な声を挙げる。
すると………
「…………」
その一団の中から、さくらが誠十郎の方へ歩み寄って来た。
「さ、さくら! コ、コレは………」
さくらからも何か言われるのかと、慌てて弁明しようとする誠十郎だったが………
「…………」
「あ………」
さくらは何も言わず、誠十郎が抱き抱えている少女の頭を優しく撫で始めた。
「大丈夫………此処には“貴女を傷付ける人”なんていないよ」
「………!」
驚いた様子でさくらを見遣る少女。
「だから、怖がらないで………ね?」
優しい笑顔を浮かべ、そう言うさくら。
「…………」
其処で、少女は漸く落ち着きを取り戻した様子を見せた。
「さくら………」
「「「「…………」」」」
誠十郎が驚き、初穂達も呆気に取られる。
「………皆、駄目だよ。この
「「「「…………」」」」
振り向いたさくらがそう言うと、気不味そうな様子を見せる初穂達だった。
「何や、修羅場になるかと思ったで」
「ふふふ」
遅れてやって来たこまちがそう言うと、すみれが思わず笑いを零す。
「………あの………降ろしてください」
「! あ、ああ! ゴメンよ」
と其処で少女に言われ、誠十郎は彼女を床へと降ろした。
「こんにちは、お嬢さん」
すると、すみれが少女と“視線を合わせる”様に屈み込んで挨拶をする。
「あ………」
「
「………『クラーラ』………『クラーラ・M・ルシュコヴァ』」
其処で漸く少女………『クラーラ・M・ルシュコヴァ』の名前が判明した。
「では、クラーラさん。貴女は、如何して大帝国劇場の前で倒れていたの?」
「………分からない」
「分からない?」
「何も………
「!?」
クラーラからの思わぬ返事に、すみれの表情が強張る。
「覚えていない………?」
「其れって………?」
「「「「「…………」」」」」
誠十郎やさくら達も唖然となるのだった。
◇
少しして………
帝劇2階・客間前の廊下………
「………ふう~」
「こまちさん。如何でした?」
客間から出て来たこまちに、待機していた一同を代表する様に誠十郎が尋ねた。
「アカン。如何やらホンマに『記憶喪失』みたいや。“自分の名前”以外、全然覚えてへんみたいやわ」
お手上げ状態と言う様に、こまちは答える。
「『記憶喪失』………」
「やっぱり“
さくらが呟くと、アナスタシアは推測が当たっていた事を確信する。
「不安でしょうね………“自分が何者であるか”すら分からないなんて………」
「今如何してんだ?」
クラリスが憐れむ様に言うと、初穂がこまちに尋ねる。
「やっぱり疲れとったみたいやから、眠ったとこや。只、“気になる事”が有ってな………」
「? 気になる事?」
こまちの言葉に、あざみが首を傾げる。
「念の為に霊力計測器で彼女の霊力を計って見たんやけど………かなり高い値が出たんや」
「! 其れって………?」
「彼女は“何処かの華撃団の隊員”である可能性が高い………と言う事ですか?」
さくらが驚き、すみれがそう推測する。
「断言は出来へんけどな………」
「若しそうだとしたら、何処の所属なんだ?」
「名前と容姿から察するに露西亜系………ひょっとすると」
「………
初穂・アナスタシア・あざみがそう言い合う。
「けど、莫斯科華撃団は未だ本国で任務中に筈じゃ? 其れが如何して帝都に?」
「其れは、あてに聞かれても困るわ」
「相手が“
クラリスの質問にこまちが困った様子を見せ、すみれも顎に手を当てて難しい顔をする。
ウルティメイト華撃団とWLOFの関係は最悪であり、莫斯科華撃団の事を問い合わせても、諜報活動か?と疑われかねない。
「ですが、警察に任せるというワケにも行きませんわね。彼女は
「宜しいんですか、司令?」
「まさか、放り出すワケにも行きませんでしょう。あんな小さな
誠十郎の言葉に、すみれはそう返す。
「分かりました。皆、聞いての通りだ。あの
「ハイ、隊長!」
「しょーが無えなぁ」
「分かりました」
「委細承知」
「分かったわ、キャプテン」
誠十郎の指示に、花組の面々が其々に返事を返す。
(あの
(如何にも“何か起こりそうな予感”がするぜ………)
そんな中、クラーラの霊力を測定していた時に“違和感”を感じたこまちと、何か“嫌な予感”を覚えるゼロだった。
◇
その日の夜………
帝都・WLOFの滞在拠点………
ジェネラルAの執務室………
「初めまして、ジェネラルA。私は『ヴァレリー・カミンスキー』と申します。お見知り置きを」
執務机に着いているジェネラルAに向かって、カミンスキーは畏まった様子で挨拶をする。
「…………」
傍には、あの“レイラ”と呼ばれた女性が控えている。
「ぶるあぁ、楽にせい」
そんなカミンスキーに、ジェネラルAは楽にする様に言う。
「…………」
その隣に控えているミスターGは、“胡散臭いモノ”を見る様な目でカミンスキーを見ている。
「恐れ入ります。其れで早速ですが、ジェネラルAに是非“ご提案したい事”がございます」
「言ってみろ」
「ハイ。莫斯科華撃団の事については既にご存知でしょうか?」
「うむ。『“何者か”の奇襲を受けて全滅した』とな。全く、情け無い連中よ」
全滅した莫斯科華撃団の事を、まるで扱き下ろすかの様な物言いのジェネラルA。
「では、私達を“
「!? 何っ!?」
「ほう?」
カミンスキーの提案に、ミスターGが驚きの声を挙げ、ジェネラルAは不敵に笑う。
「このままでは、世界華撃団大戦2回戦は“帝国華撃団の
「ふふふ」
痛い所を突く様なカミンスキーの台詞だったが、ジェネラルAは只笑うだけだ。
「貴様! 何を勝手な事を! 大体、いきなり現れたパッと出の貴様等なぞ、信用すると思っているのか!? 其れに、其処の女は!!」
ミスターGがそういきり立ったが………
「黙れ」
ジェネラルAがそう言って右手の人差し指を上げたかと思うと、ミスターGの身体が青い炎に包まれた!
「!? ギャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」
全身を焼かれ、床を転げ回るミスターG。
「カミンスキーと言ったか?………良かろう。好きにしろ」
そんなミスターGの姿を気にする事も無く、ジェネラルAはアッサリとカミンスキーの提案を受け入れた。
「ありがとうございます。付きましては、もう1つ“お願い”が有るのですが………」
「良きに計らえ」
「ハイ、実は………」
その後も、ジェネラルAとカミンスキーはどんどん話を進めて行く。
「…………」
只1人、静かに控えていた『レイラ』と言う女性は、“何かを耐える”かの様に両手を握り締めていたのだった………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
帝劇の保護された謎の少女、クラーラ。
原作通りに記憶喪失となっており、何も覚えていません。
しかし、何やら印象に残っている人物が居る様で………
一体誰なんだ?(棒読み)
さくらに露骨にヒロイン補正入れてますが、ご了承ください(笑)
そしてカミンスキーはアゴナと接触。
ミスターGの相変わらずの扱いはさておき(爆)、ヤバそうな協力体制が………
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。